魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第015話:ネギの計画

[ガンドルフィーニ]

 

 眼前に、立体映像が広がる。無数の、無数の宇宙船だ。これはCGとか魔法による幻影とかじゃない。今現実に、火星周辺で活動している宇宙船群を撮影し、超空間通信とやらでタイムラグ無しに送ってきた物だそうだ。……わたしの常識は、どこに逝ったのだろう。絡繰君と共にネギ君の助手をして、映像を切り替えたり資料を配ったりしている高畑先生は、何故動じていないのだろう。

 ちょっと聞いて見た。

 

「え?いや、ね。ネギ君がちょっと前の木乃香君誘拐事件で、『リョウメンスクナノカミ』相手にするのに巨大ロボットひっぱり出した事がありましてね。ネギ君の科学力に関しては、何があってもおかしく無いと。そう心の準備をしていたんです。」

 

 なんだ、諦めていたのか。

 

「巨大ロボット!?」

「なんですかソレは!羨ましい!」

 

 超鈴音と葉加瀬聡美が食いついて来た。うん、さっきまでは自分たちの計画が頓挫した事で落ち込んでいたのに、もう元気なのだね。いや、生徒が元気なのは喜ばしい事だ、うん。そう思おう。

 そしてネギ君が口を開く。

 

「この宇宙船群は、火星の機械惑星化(サイバーフォーミング)のため、用意した物です。」

「「サイバー……フォーミング!?」」

 

 超と葉加瀬の2人が、愕然とした顔になった。なんだろう、サイバーフォーミングって。そうしたら、長谷川君がその疑問の答えを口にしてくれた。

 

「サイバーフォーミングって、アレか?人が住めない惑星を改造して住めるようにする、地球化(テラフォーミング)の親戚か?テラフォーミングが地球環境に似せるのに対して、サイバーフォーミングは惑星を機械仕掛けにして人が居住できるようにするって言う……。」

「そうだよ。機械惑星化(サイバーフォーミング)の利点は、地球化(テラフォーミング)に対して非常に手っ取り早い事だ。資材や機材さえ何とかなれば、あとは人海戦術であっと言う間に人類居住可能にできるんだよ。」

「ヤパリか!前に火星を望遠鏡で見タときに、火星表面ニ金属質の平原が広ガテいたヨ!アレ、ヤパリご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)の仕業だたネ!?」

 

 火星の機械惑星化、か。もしや……。と、ここで葉加瀬聡美が突っ込む。わたしの考えと、ほぼ同じ様だった。

 

「もしかして、それは現実の火星に魔法世界(ムンドゥス・マギクス)のうちの6,700万人を迎え入れる準備では?他の約11億3300万人をどうやって救うのかは分かりませんが……。」

「5.583%だけ、正解かな。僕は魔法世界(ムンドゥス・マギクス)全人口12億人のうちの5.583%、6,700万人だけでなく、100%の12億人を現実の火星に迎え入れるつもりでいる。」

「な!ど、どうやってカ!?魔法世界(ムンドゥス・マギクス)から純粋魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人は出てコレナイと言たのはご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)ネ!」

 

 ……なるほど。ここがネギ君の計画の肝だね?ソレを解決しなければ……。いや、ネギ君の不敵な笑みからして、解決策があるんだろう。

 

「……僕は今、火星に独自のゲートを設置して、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へ大量の現実世界の物資を運び込んでる。内訳は、水、炭素、アンモニア、石灰、リン、塩分、硝石、硫黄、フッ素、鉄、ケイ素、その他諸々……。大量なんて言葉じゃ言い表せないか。莫大な、莫大な量だ。大半は宇宙空間の小惑星や、木星の衛星、木星のガスから採取してる。」

 

 ???……大半は、地球上のどこにでもある元素とか物質だな。それが何……あれ?何か長谷川君の顔が引き攣っているな。

 

「ね、ネギさん……。アンタ、人体でも合成するつもりか?」

「千雨から答えが出るとは。超さんからだと思ってたよ。」

「いや、わたしも分かったが。まあ、暇つぶしに読んでいた、漫画の知識だがな。」

「マクダウェルさんもですか。」

ご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)……!?ま、まさか貴方(アンタ)……。12億、いや11億3,300万の人体を合成して、ソレに魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を押し込めて現実の火星に連れて来るつもりカ!?」

「力技だろう?」

 

 ネギ君は、ほがらかに笑っていた。これで目が疲れ果てた老人の様でなければ、さぞかしモテるだろうに……。いや、そうではない。そんな事よりも。

 

「ネギ君、流石に無茶ではないか?」

「ガンドルフィーニさん?」

「それほどの人体を合成するとなると、どうしても大量生産品になってしまう。多少のカスタマイズは為されるやも知れないが、元々の自分と違う肉体に押し込められた精神に、どんな障害が出るか……。

 それに次代の話もある。皆が画一化された肉体に宿れば、精神的にはともかく、肉体的には皆が兄弟姉妹だ。その子供は、孫は、近親結婚を繰り返す事になり、危険ではないかね?」

 

 だがネギ君は笑って言う。

 

「そんな事にはなりませんよ。元魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人の方々には、元の身体と寸分たがわぬ完全な個々人向けの肉体をプレゼントします。まあ、抱えていた負傷や疾病までくっついて来るのは仕方ありませんが。」

「え?それはどう言う?」

「……まさカ!?」

「さすが超さん、理解してくれたか。では答え合わせも兼ねて、超さんが説明してくれるかい?」

 

 超鈴音?あれだけの説明で、理解したのか?わたしには、まったくわからない。

 

「怖いコト考えるネ……。簡単なハナシだヨ。個々人の魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人に現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)向けの肉体を創ってアゲル為にハ、既に存在する「鋳型(いがた)」に「素材」を流し込んで固めればいいネ。素材はさっき言たトオリ、独自ゲートで大量に魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へ運び込まれてるヨ。」

「でも超さん。「鋳型(いがた)」はどこにあるんです?……って、まさか!」

「そうネ!「鋳型(いがた)」は既に「その場」にアルんだヨ!魔力で構成されタ、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人の身体そのものだヨ!ご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)ガ言てルのは、魔法的手段で魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を「受肉」させるコトだったんだヨ!!」

「「「「「「な、なんだってーーー!!」」」」」」

 

 魔法的手段で、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に存在する全魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を受肉させ、あらかじめ用意しておいた機械惑星化(サイバーフォーミング)された火星へと移住させる……!!これがネギ君の計画!!

 

「だ、だが……。そんな大魔法に使う大量の魔力を何処から……。」

「瀬流彦先生……。ヒントはもう、今までの話の中ニ出ているヨ。秘密結社『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の、「完全なる世界」ハどうヤッテ魔法世界(ムンドゥス・マギクス)全てを書き換え(リライトす)る予定だたネ?」

「え……。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を破壊して、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を構成していた魔力を用いて……。え、え、えええっ!?」

「そう言うことネ。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に自分でトドメ刺しテ、その構成魔力で魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を受肉させル……。チャンスは1回キリの、一世一代の大舞台ヨ!」

 

 !!……なんと。わたしは思わず、平然としている高畑先生に食って掛かる。

 

「高畑先生!あなたはそれを知っていたのか!?かつて『紅き翼(アラルブラ)』が救った魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を破壊する計画に、賛同して!?」

「やらねば皆、死ぬ!!」

 

 高畑先生の一喝に、わたしは言葉を失う。

 

「ガンドルフィーニ先生。やらねば最低でも11億3,300万人が一瞬で死に、6,700万人が火星表面に放り出されます。手出ししなければ、その6,700万人もまた、わずかな資源を争い多数が死ぬでしょう。

 そしてもしも多数が生き延びたとしても、6,700万人程度では、地球の人類との軋轢の結果起きるであろう戦争によって圧し潰されます。地球人類は、近い未来かならずや火星を欲します。」

 

 わたしは思わず超鈴音を見た。見てしまった。まるでネギ君の様な、ハイライトの無い疲れ果てて死んだ魚の様な瞳になった彼女を。今高畑先生が言った台詞の情景を、思い浮かべている……否、「思い出して」いるかの様なその表情を。

 わたしは、頭を抱えて自分の椅子に崩れ落ちる。これは絶対に魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人の承諾は得られない。これを断行するならば、可能な限り計画の中身は伏せておかねばならない。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を破壊してしまうのだから。正義とは程遠い。だがしかし……。

 高畑先生の言う事もわかる。やらねば皆死ぬ。死んでしまう。やるのは正義では無い。ではやらないのは?もっと正義では無い。どうすれば……。どうすれば……!

 ここで、ネギ君の声が聞こえた。

 

「ガンドルフィーニさん。石化解除の際に言いましたよね。トンデモないお願いをするだろうって。……力を貸してくださらなくてもいい。でも、黙っていてくださいませんか。」

 

 な!?

 

「本当は、麻帆良の魔法先生級の人材の助力は、喉から手が出るほど欲しいです。ですが、強要するつもりはありません。ただ、邪魔だけはしないで欲しい。」

 

 そ、れ、は……。

 

「ネギ君。僕で良ければ、協力させてもらえるかな。まあ、大したことは出来ないかもだけど。」

「お、俺もやるで!何でも言ってくれや!……もう一度、もう一度!!一度は道を間違えた俺やけど!」

「瀬流彦さん、小太郎君……。」

 

 わたしは……。

 

「僕も何かできるかな?是非、力を貸させてくれ。」

「わたしも及ばずながら……。」

「弐集院さん、葛葉さんも……。」

 

 わ、た、し、は……。

 その時、目の端にエヴァンジェリンの姿が映った。つい今さっきまで、わたしが誤解していた人物。わたしが理解しようともしなかった人物。悪の大魔法使い。不死の魔王。人形使い。禍音の使徒。童姿の闇の魔王。……童姿のッ!!くっ!!

 そしてわたしは、椅子から立ち上がっていた。

 

「わたしも……。わたしも協力させて欲しい。もとよりわたしは、正義など名乗る資格は無かったのだ。だがせめて……。せめて妻と娘には、誇れる父親でありたい。」

「……ようこそ、ガンドルフィーニさん。暗い宇宙の闇の中へ。この闇の中を、小さな小さな灯を掲げて一歩ずつ歩み続け、約束の地へと何時の日かたどり着きましょう。」

 

 わたしは、ネギ君の差し出した手をしっかりと握り返した。

 

 

 

[ネギ]

 

 一段落したところで、細かい質疑応答に入った。さっそく超さんが問いかけて来る。

 

「ところでご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)機械惑星化(サイバーフォーミング)した火星ニ12億の難民を受け入れテ、どうやって食わせるのカ?」

「今、火星には12基の大型量子コンピューター「ブレイン4-1」から「ブレイン4-12」までと、1億体の人工知能(AI)ロボットが、曲がりなりにも国家を建設している。その国家で難民認定をして、受け入れる。その上で、労働力として働かせて報酬を支払って食べさせる。

 ただ、ロボットの数が足りない。計画の実施までに、もっと多くのロボット国民が必要だ。そうでなくば、難民の暴動などに対処する警察力も、万が一の軍事力も足りない。そこで超さんと葉加瀬さんの出番だ。技術を提供するからそれを学び、人工知能(AI)ロボットの設計に手を加え、あるいは新規設計して、量産効率を向上させて欲しい。」

「わかったヨ。」

「任せてください。」

 

 次に質問してきたのは、弐集院さんだ。

 

「火星の政治体制はどうなるのかな?それと地球との関係性は?」

「初期は12基のブレインによる、完全管理の暗黒郷(ディストピア)です。ですが管理社会は息が詰まる上に発展性に乏しいですからね。徐々に上からの改革を行って、将来的には議会制民主主義あたりに落ち着かせようかと。ブレインたちは引退したら、宇宙開発の第一線に立ちたいと言っていましたね。

 それと、火星を拠点に木星圏土星圏とかの開発も行いたいですね。ロボットたち数億体と、元魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人12億が住んだら、火星も狭くなりますから。開拓地(フロンティア)はたくさんあります。血の気の多い人たちには、どんどん外宇宙へ向かってもらいましょうか。

 地球との関係は、初期はうかつに双方から手が出せない冷戦関係を構築したいと思います。無論、裏では僕らは行き来して、調整しますけれどね。折を見て、徐々に雪解けムードを演出したいと思います。……せっかく助けた人たちが、戦争で死ぬなんて御免です。バランス取りには綱渡りみたいな緊張を強いられるでしょう。学園長あたりの全面協力が欲しいものですが……。」

 

 小太郎君も質問して来た。

 

「なあ、まほーせかい(むんどーす・まぎくす)の奴ら、全部まとめて助けるんやろ?」

「ん?うん。」

「めがろなんちゃらの、げんろーいん、やっったか?その陰険な奴らも、まとめて助けちまうんか?なーんか釈然とせえへんなあ。」

「はっはっは。……そんなわけ無いだろう。」

「ひっ……。」

 

 至近距離だった小太郎君も、他の気が小さめの皆も、ちょっと後ずさり。ああ、悪い事したね。深呼吸して落ち着こう。

 

「……ふぅ。うん、そんなわけは無いさ。難民として一時収監した際に、メガロメセンブリア元老院の連中は確保して精神探査機(ブレインスキャナーデッキ)にかけてやる。」

「な、なんやソレ?」

「頭の中を調べる機械でね。もしかしたらパーになるかもね。ならないかも知れないけれど。下手に抵抗しなければ、比較的安全に記憶を洗い浚い読み取れるよ。たぶん。

 村に刺客を送って来た連中。母さんに濡れ衣着せて、自分たちはこの世の春を謳歌してた連中。父さんたちを反逆者扱いしたくせに、表では英雄と持て囃して利用した連中。みんな「どうにか」してやるさ。」

 

 あれ?みんなどうしたんだい?……僕はそんなに怖かったかなあ。ねえタカミチ。

 

「さっきの君の前に立つくらいなら、ジャック・ラカンさん100人とガチの殺し合いする方が気が楽だね。ははは。」

 

 またまたご冗談を。相性から言って、魔法主体の父さん相手なら6~7割の勝率はいけると思うけど、噂で聞くジャック・ラカンさんだと「気」と格闘戦主体だから、なんとか上手く行って五分五分でしょ。たぶん。きっと。おそらく。……そのジト目は何?




……と言うわけで、ネギの計画は思いっきり力技の、しかもたいした物じゃありませんでした。ちゃんちゃん。
いやいやいや、ほんとに大した考えじゃ、ないですよね?
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