[ガンドルフィーニ]
眼前に、立体映像が広がる。無数の、無数の宇宙船だ。これはCGとか魔法による幻影とかじゃない。今現実に、火星周辺で活動している宇宙船群を撮影し、超空間通信とやらでタイムラグ無しに送ってきた物だそうだ。……わたしの常識は、どこに逝ったのだろう。絡繰君と共にネギ君の助手をして、映像を切り替えたり資料を配ったりしている高畑先生は、何故動じていないのだろう。
ちょっと聞いて見た。
「え?いや、ね。ネギ君がちょっと前の木乃香君誘拐事件で、『リョウメンスクナノカミ』相手にするのに巨大ロボットひっぱり出した事がありましてね。ネギ君の科学力に関しては、何があってもおかしく無いと。そう心の準備をしていたんです。」
なんだ、諦めていたのか。
「巨大ロボット!?」
「なんですかソレは!羨ましい!」
超鈴音と葉加瀬聡美が食いついて来た。うん、さっきまでは自分たちの計画が頓挫した事で落ち込んでいたのに、もう元気なのだね。いや、生徒が元気なのは喜ばしい事だ、うん。そう思おう。
そしてネギ君が口を開く。
「この宇宙船群は、火星の
「「サイバー……フォーミング!?」」
超と葉加瀬の2人が、愕然とした顔になった。なんだろう、サイバーフォーミングって。そうしたら、長谷川君がその疑問の答えを口にしてくれた。
「サイバーフォーミングって、アレか?人が住めない惑星を改造して住めるようにする、
「そうだよ。
「ヤパリか!前に火星を望遠鏡で見タときに、火星表面ニ金属質の平原が広ガテいたヨ!アレ、ヤパリ
火星の機械惑星化、か。もしや……。と、ここで葉加瀬聡美が突っ込む。わたしの考えと、ほぼ同じ様だった。
「もしかして、それは現実の火星に
「5.583%だけ、正解かな。僕は
「な!ど、どうやってカ!?
……なるほど。ここがネギ君の計画の肝だね?ソレを解決しなければ……。いや、ネギ君の不敵な笑みからして、解決策があるんだろう。
「……僕は今、火星に独自のゲートを設置して、
???……大半は、地球上のどこにでもある元素とか物質だな。それが何……あれ?何か長谷川君の顔が引き攣っているな。
「ね、ネギさん……。アンタ、人体でも合成するつもりか?」
「千雨から答えが出るとは。超さんからだと思ってたよ。」
「いや、わたしも分かったが。まあ、暇つぶしに読んでいた、漫画の知識だがな。」
「マクダウェルさんもですか。」
「
「力技だろう?」
ネギ君は、ほがらかに笑っていた。これで目が疲れ果てた老人の様でなければ、さぞかしモテるだろうに……。いや、そうではない。そんな事よりも。
「ネギ君、流石に無茶ではないか?」
「ガンドルフィーニさん?」
「それほどの人体を合成するとなると、どうしても大量生産品になってしまう。多少のカスタマイズは為されるやも知れないが、元々の自分と違う肉体に押し込められた精神に、どんな障害が出るか……。
それに次代の話もある。皆が画一化された肉体に宿れば、精神的にはともかく、肉体的には皆が兄弟姉妹だ。その子供は、孫は、近親結婚を繰り返す事になり、危険ではないかね?」
だがネギ君は笑って言う。
「そんな事にはなりませんよ。元
「え?それはどう言う?」
「……まさカ!?」
「さすが超さん、理解してくれたか。では答え合わせも兼ねて、超さんが説明してくれるかい?」
超鈴音?あれだけの説明で、理解したのか?わたしには、まったくわからない。
「怖いコト考えるネ……。簡単なハナシだヨ。個々人の
「でも超さん。「
「そうネ!「
「「「「「「な、なんだってーーー!!」」」」」」
魔法的手段で、
「だ、だが……。そんな大魔法に使う大量の魔力を何処から……。」
「瀬流彦先生……。ヒントはもう、今までの話の中ニ出ているヨ。秘密結社『
「え……。
「そう言うことネ。
!!……なんと。わたしは思わず、平然としている高畑先生に食って掛かる。
「高畑先生!あなたはそれを知っていたのか!?かつて『
「やらねば皆、死ぬ!!」
高畑先生の一喝に、わたしは言葉を失う。
「ガンドルフィーニ先生。やらねば最低でも11億3,300万人が一瞬で死に、6,700万人が火星表面に放り出されます。手出ししなければ、その6,700万人もまた、わずかな資源を争い多数が死ぬでしょう。
そしてもしも多数が生き延びたとしても、6,700万人程度では、地球の人類との軋轢の結果起きるであろう戦争によって圧し潰されます。地球人類は、近い未来かならずや火星を欲します。」
わたしは思わず超鈴音を見た。見てしまった。まるでネギ君の様な、ハイライトの無い疲れ果てて死んだ魚の様な瞳になった彼女を。今高畑先生が言った台詞の情景を、思い浮かべている……否、「思い出して」いるかの様なその表情を。
わたしは、頭を抱えて自分の椅子に崩れ落ちる。これは絶対に
高畑先生の言う事もわかる。やらねば皆死ぬ。死んでしまう。やるのは正義では無い。ではやらないのは?もっと正義では無い。どうすれば……。どうすれば……!
ここで、ネギ君の声が聞こえた。
「ガンドルフィーニさん。石化解除の際に言いましたよね。トンデモないお願いをするだろうって。……力を貸してくださらなくてもいい。でも、黙っていてくださいませんか。」
な!?
「本当は、麻帆良の魔法先生級の人材の助力は、喉から手が出るほど欲しいです。ですが、強要するつもりはありません。ただ、邪魔だけはしないで欲しい。」
そ、れ、は……。
「ネギ君。僕で良ければ、協力させてもらえるかな。まあ、大したことは出来ないかもだけど。」
「お、俺もやるで!何でも言ってくれや!……もう一度、もう一度!!一度は道を間違えた俺やけど!」
「瀬流彦さん、小太郎君……。」
わたしは……。
「僕も何かできるかな?是非、力を貸させてくれ。」
「わたしも及ばずながら……。」
「弐集院さん、葛葉さんも……。」
わ、た、し、は……。
その時、目の端にエヴァンジェリンの姿が映った。つい今さっきまで、わたしが誤解していた人物。わたしが理解しようともしなかった人物。悪の大魔法使い。不死の魔王。人形使い。禍音の使徒。童姿の闇の魔王。……童姿のッ!!くっ!!
そしてわたしは、椅子から立ち上がっていた。
「わたしも……。わたしも協力させて欲しい。もとよりわたしは、正義など名乗る資格は無かったのだ。だがせめて……。せめて妻と娘には、誇れる父親でありたい。」
「……ようこそ、ガンドルフィーニさん。暗い宇宙の闇の中へ。この闇の中を、小さな小さな灯を掲げて一歩ずつ歩み続け、約束の地へと何時の日かたどり着きましょう。」
わたしは、ネギ君の差し出した手をしっかりと握り返した。
[ネギ]
一段落したところで、細かい質疑応答に入った。さっそく超さんが問いかけて来る。
「ところで
「今、火星には12基の大型量子コンピューター「ブレイン4-1」から「ブレイン4-12」までと、1億体の
ただ、ロボットの数が足りない。計画の実施までに、もっと多くのロボット国民が必要だ。そうでなくば、難民の暴動などに対処する警察力も、万が一の軍事力も足りない。そこで超さんと葉加瀬さんの出番だ。技術を提供するからそれを学び、
「わかったヨ。」
「任せてください。」
次に質問してきたのは、弐集院さんだ。
「火星の政治体制はどうなるのかな?それと地球との関係性は?」
「初期は12基のブレインによる、完全管理の
それと、火星を拠点に木星圏土星圏とかの開発も行いたいですね。ロボットたち数億体と、元
地球との関係は、初期はうかつに双方から手が出せない冷戦関係を構築したいと思います。無論、裏では僕らは行き来して、調整しますけれどね。折を見て、徐々に雪解けムードを演出したいと思います。……せっかく助けた人たちが、戦争で死ぬなんて御免です。バランス取りには綱渡りみたいな緊張を強いられるでしょう。学園長あたりの全面協力が欲しいものですが……。」
小太郎君も質問して来た。
「なあ、
「ん?うん。」
「めがろなんちゃらの、げんろーいん、やっったか?その陰険な奴らも、まとめて助けちまうんか?なーんか釈然とせえへんなあ。」
「はっはっは。……そんなわけ無いだろう。」
「ひっ……。」
至近距離だった小太郎君も、他の気が小さめの皆も、ちょっと後ずさり。ああ、悪い事したね。深呼吸して落ち着こう。
「……ふぅ。うん、そんなわけは無いさ。難民として一時収監した際に、メガロメセンブリア元老院の連中は確保して
「な、なんやソレ?」
「頭の中を調べる機械でね。もしかしたらパーになるかもね。ならないかも知れないけれど。下手に抵抗しなければ、比較的安全に記憶を洗い浚い読み取れるよ。たぶん。
村に刺客を送って来た連中。母さんに濡れ衣着せて、自分たちはこの世の春を謳歌してた連中。父さんたちを反逆者扱いしたくせに、表では英雄と持て囃して利用した連中。みんな「どうにか」してやるさ。」
あれ?みんなどうしたんだい?……僕はそんなに怖かったかなあ。ねえタカミチ。
「さっきの君の前に立つくらいなら、ジャック・ラカンさん100人とガチの殺し合いする方が気が楽だね。ははは。」
またまたご冗談を。相性から言って、魔法主体の父さん相手なら6~7割の勝率はいけると思うけど、噂で聞くジャック・ラカンさんだと「気」と格闘戦主体だから、なんとか上手く行って五分五分でしょ。たぶん。きっと。おそらく。……そのジト目は何?
……と言うわけで、ネギの計画は思いっきり力技の、しかもたいした物じゃありませんでした。ちゃんちゃん。
いやいやいや、ほんとに大した考えじゃ、ないですよね?