[ネギ]
小太郎君、なかなかやるね。ただ我流が行き過ぎて、ちょっと悪い癖もついてる。……僕もあの霊的高次空間で得た達人の知識や技量や経験の情報がなければ、おそらく陥っていただろう落とし穴とかに、見事にハマってるよ。
「はぁっ、はぁっ、も、もう1番お願いしますっ!」
「駄目。少し休まないと。いいかい?定期的に休みを入れてやらないと、かえって効率が悪くなる。僕はきちんと計画立てて君を教導してるんだ。F-1レースだって、ときどきピットインするだろ?」
「……わかったで。」
「とりあえず、コレ。特製ドリンク。養分補給と水分補給。」
僕は影の中の空間歪曲庫からドリンクを取り出して、小太郎君に渡した。彼は
「かぁ~~~っ、なんや不味いのに美味く感じる!」
「身体に必要な成分ばかりだからね。それだけ身体が疲弊して、それらの滋養分を欲していたって事さ。」
僕も同じくドリンクを飲む。うん、不味い。が、それでも美味い。……見ると、小太郎君がこちらをしげしげと見ている。まあ、分からないでもない。
「ふむ。最初は僕に、魔法使いとの戦い方を教わりたいと思ってたんだろ?だけど実際に師事したら、本格的な徒手格闘を基礎から叩き込まれてる。身に付いた技は殺さない様に伸ばして、だけどマズい癖の類は丁寧に潰されて、本格的な修行を積む事ができてる。
それでびっくりしたんだろ?」
「読心術の魔法でも使こたんか?」
「いや。たぶんこうだろうなって事を推測して言っただけ。まあ悪いけど、小太郎君が反応とか表情とかから内心が読みやすいってのもあるけどさ。あ、そうだ。それもどうにかして、克服しないといけないな。」
僕はこの際だから、小太郎君のまずい点を指摘する事にした。
「小太郎君は、動きや攻撃がちょっと読みやすい部分がある。派手な大技をよく出すし。地味な基本技も、重要だよ?まあ、それはともかくとして。読まれやすい事への対処は大別して2つ。読まれない様にするか。読まれても関係ない、敵が対処できない圧倒的な攻撃をするか。
まあ、どちらかに偏るのは、お勧めしない。両方の方法を均等に使い分けるべきだね。」
「ぐうの音も出えへん……。」
「あと、必殺技の技名を叫ぶのはどうかと思うんだよね。魔法とかみたいに呪文名を唱えて発動させないといけない場合はあるけれど。あれ、攻撃タイミングが完全に相手にバレちゃうだろ。今しがた言ったけど、読まれても関係ない、敵が対処できない圧倒的な攻撃をする場合だったら、攻撃に気合も入るし良いかもしれないけどね。」
あ。あっちの方で組手をしてる刹那と楓がガクっとなった。そういや彼女らも、技名とか叫んでたっけ。真名は後ろ向いてしゃがみ込んで、肩を震わせてるな。あれ、笑ってるよね。古菲は良くわかってない顔してる。
「格好つけたいならさ。敵を必殺技で倒した後にさ。「必殺、『倒竜剣』……!」とか、「これぞ基本にして奥義、『剛拳』……!」とか渋く言えばいいと思うんだ。僕はそうやってるよ。これなら敵に攻撃を躱されたとか技に失敗して発動しなかった時とか、何も言わずに次の攻撃に入れば誤魔化せるからね。」
「なんか台無しになった気がすんのは、気のせいやろか。」
「結局、戦いとかは泥臭い物なのさ。戦場の浪漫とかは、戦いの凄惨さに人間が耐えきれないから、それをマイルドにして兵士を戦わせるための物だよ。個々人レベルでの競技的な闘いならば、また話は変わって来るんだけどね。
あ、競技的な闘いを僕は否定してないからね。それどころか、互いに高め合うと言う面では素晴らしいとさえ思ってる。だけどそれを殺し合いや潰し合いの戦場に持ち込んだり、逆に殺し合いや潰し合いの戦場の掟みたいなのを競技的闘いの場に持ち込むのは、間違いだと思う。」
「耳、痛いなぁ……。」
僕は時計を見る。ああ、もう予定時刻になってしまっている。
「熱中してると、時の経つの早いね。そろそろダイオラマ魔法球の外に出ないと。流石に時差に体を慣らさないと、いけないからね。」
「あれ?休んだらもう1番やるんやなかったんか?」
「そのつもりだったけどさ。時間切れだよ、残念ながら。おおい皆、外に出るよ。」
僕がダイオラマ魔法球の中に製作した運動施設で運動していた、千雨と木乃香が戻って来る。刹那、真名、楓、古菲も組手を終了してこっちへ来た。そう、ここは僕のダイオラマ魔法球の中だ。ちなみにこのエリアは、若干ばかり高山病を発症しない程度に酸素濃度を薄くしてある。ここでの運動や戦闘に慣れておけば心肺機能が鍛えられて、普通の場所で有利に戦えるはずだ。
そして僕らは鍛錬用のエリアから、中枢エリアに移動する。ここには僕の研究施設があり、生活空間もある。まあ生活空間は粗末で質素なんだけど。いや、「だった」んだけど、だね。何故なら……。
「茶々丸。わたしの別荘から持って来た酒は?」
「チャチャゼロ姉さんが半分飲み尽くし、あとの半分はマスターご自身が空になさいました。」
「チャ~チャ~ゼ~ロ~!」
「ケケケ、ゴ主人モ自分ノコト棚ニ上ゲテンジャネエヨ。」
うん。マクダウェルさん達が自分たちの生活環境を整えるついでに、全面改修してくれたんだよね。まあ、ありがたくお受けしたけどさ。それのお礼と、僕の
そしたらマクダウェルさんはしばらく僕の図書館に籠ったあげく、「これではわたしが貰い過ぎだ。
なので『
結果としては、かなりありがたい取引であったと思う。僕が普段使っている〈ケイオス・ヘキサ式プログラム魔法〉とは異なる形式ながら、古式の魔法とかマクダウェルさんのオリジナル魔法とか、色々手に入ってしまった。マクダウェルさんに関する伝承とか調べた時に知った、『
ちなみに『
……理由は、たぶんおそらくだが、分からなくも無い。だがそれが、彼女の感情が、「僕」に対しての物なのか。それとも「父さんの子供」に対しての物なのか。「父さんによく似た」この姿に対しての物なのか。「父さん」への気持ちが行き場をなくして僕に向かっているだけの物なのか。色々と、悩んでしまう。いや、もしかしたら彼女自身にもわかってないんじゃないだろうな?
「マクダウェルさん。絡繰さん。チャチャゼロ。そろそろ外に出るよ。」
「む、もうそんな時間か。」
「了解しました。」
「イツニナッタラ、オレト斬リ合イスンダ?待ッテンダケドヨ?」
「皆の修行が一段落するまで待ってくれないかな。彼女らと小太郎君が、戦力として独り立ちしてくれれば、色々と楽になるんだよね。」
まず今大事なのは計画第一段階の完遂、
そこまで終わらせないと、僕の心の中に突き刺さった楔は外れない。そこまで終わらせないと、僕は自分で自分にかけた呪いから自由にはなれないんだ。それを放っておいて、自由になる気もないけど。
[聡美]
素晴らしい……。素晴らしいです。ネギさんから提供された睡眠学習装置、厳密には
「す~ば~ら~し~い~で~す~!!」
「ソコで逝ってナイで、ちゃんと勉強するネ。
「わかってますとも。ネギさんから貸し出されたデータディスクの中身も、恐るべしの一言!この技術、茶々丸に応用したいですよ!」
「残念ながら、ソレは後ネ。コチラにある、火星のロボット国民の基本設計図。コレを修正、改良シテ、量産効率ヲ高めるのが我らの目的ヨ。葉加瀬はコチラの作業をお願いするネ。」
「超さんは何を?」
超さんとわたしの睡眠学習装置はリンクしており、互いに夢の中で会議もできるんです。
「ワタシは量産効率をもっと上げタ、まったくの新型ロボット国民を設計するヨ。イマしがた現状のロボット国民基本設計見タところ、性能ハ高いガ、量産性はおそらくある程度向上させたところデ、頭打ちネ。だから現状および改良型のロボット国民ハ、基本的に高い能力を必要とする高級軍人など高い地位としての役割に就イテもらうヨ。
ワタシが新規設計スるロボット国民は、一般市民と警官や下級軍人向けボディなんだヨ。数を揃える事ヲ最優先にして、性能は若干低いトコロで断念する。無論、コレは生産直後の話ネ。将来的にAIが学習を重ね、功績も積んで昇進しタ場合は、ボディを高性能型に交換するなり、改良強化するなりデ、高い地位に移らせるんだヨ。」
「超さん、わたし思ったんですが。麻帆良祭に向けて用意していたT-ANK-α3、田中さんたちをこのまま腐らせるのは惜しいです。数としては2500体に過ぎませんが、AIをこのロボット国民の物に換装して、更に駆動系もネギさんの新技術で強化すれば……。」
「ムムム、ワタシが予定していた一般市民タイプよりは強力になりそうネ。警官タイプとして採用できるヨ。デハその方針で行くヨ!」
わたしたちは、24日間の長い夜を徹して研究と新技術の学習、そしてロボット国民の設計改良や新設計に勤しみました。……まさに、天国でした。
[鈴音]
いい夢ダたヨ。科学者の天国だたネ。惜しむラクは、この
目が覚めたワタシは、夢の中の成果物である火星のロボット国民新型の設計図と、葉加瀬が描いた改良型の設計図が入ったデータディスクを、急ぎバックアップを取たネ。これが万一失われたら、ヤバいなんて物じゃないンだヨ。
その後ワタシは、超包子ノ屋台で調理の仕事に入たネ。この仕事も大事だヨ。ワタシの計画のために作タ組織と資金ダたけど、ソレは
超包子の役割は、大きく変わタけど、やるべきコトは今の段階デハ、あまり変わらないネ。お客サマを大事に!肉まんは世界を救うのヨ!
「超!来たアルよ!」
「おお、早速接客に入て欲しいネ!」
「あと、ネギさん客席に来てるアル。例のブツ、今のうちに欲しいそうアル。」
「ワカたヨ。コレがブツだヨ。ソレに白湯ナンカ零したら、地獄落ちネ……。」
「ハハハ、そんな事しないアル。」
「ソレの後も、ドンドン量産効率上げた版ヲ設計するから、楽しみにしてと伝えるネ。」
「了解アル。」
古がデータディスクを客席の
デモ、すこーし心配だネ。
こないだ宇宙に行た時、少しだけど配下のロボたちと話したネ。皆、
[瀬流彦]
ガンドルフィーニ先生は変わった。あのエヴァンジェリンとすらも足しげく交流し、意見交換に努めている。そしてそのガンドルフィーニ先生を始め、弐集院先生、葛葉先生の3人の努力で、新たに神多羅木先生と、麻帆良大学の明石教授が協力を約束してくれた。ちなみに説得の最終局面には、ネギ君と彼の宇宙船の力を借りた。やはりあの宇宙から見た地球の迫力と、火星宙域に集結している宇宙艦隊の説得力は、大きい。
だが、それだけの働きをしたガンドルフィーニ先生なのだが、何か悩みを抱えている模様だ。色々吹っ切れたと、思ったんだがなあ……。
「どうしたんですか、ガンドルフィーニ先生。」
「ああ、瀬流彦君。いや、少し……。少しでは無いか。生徒との関係性でね。グッドマン君の事なんだよ。」
「ああ、彼女が何か?」
「エヴァンジェリンと和解した、わたしを裏切り者の様な目で見ていてね。いや、それは仕方の無い事だ。だがそれが切っ掛けで、より一層エヴァンジェリンや超君たちに反発する様になってしまった。」
「あー……。」
高音・D・グッドマン君かぁ……。魔法生徒の中でも、
そして「悪」を憎む心があるのはいいんだが、エヴァンジェリンなどに対しては、事情があった事や、良い面がある事なども、まったく認めようとしない一面がある。
「ナギ・スプリングフィールドを尊敬しているそうですから、ネギ君が説得したらどうにかなりませんかね。また彼に頼ってしまう事になりますが。」
「いや、彼女の事だから、ネギ君を「悪の道」から救い出そうとするだろうな。それが大きな過ちであると気づきもせずに。結果として、ネギ君の大きな邪魔をするだろう。だからわたしは、彼女にネギ君の事を一切教えていない。
放っておくしか無いかと思ったのだがね……。最近エヴァンジェリンや超君の周囲を嗅ぎまわっている様なのだ。わたしと彼女をなんとか和解させたがっている、佐倉君が教えてくれた。グッドマン君の『
「……それは、まずいかも知れませんね。」
「ああ。」
とりあえず、ネギ君たち、エヴァンジェリン、超君たちに警告しておくかぁ……。大事に、ならなきゃいいけど……。僕に出来る事はなんでもやって、事をできるだけ小さく収めなきゃな。まず、佐倉君に会って話を聞いてみるか。
「正義の味方」高音・D・グッドマン出現。しかし危険な香りが……。順調に計画が進んでいる様に見えるネギたちだが……?