魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第024話:奮戦と混戦

[愛衣]

 

 わたしは『戦いの歌(カントゥス・ベラークス)』出力全開で、影の戦闘服を身に纏ったお姉さまの背後に回り込みます。

 

「なっ、愛衣、(はや)い……!?」

 

 そして無詠唱魔法の射手(サギタ・マギカ)雷の一矢(ウナ・フルグラリース)を乗せた正拳突きで、お姉さまの脾腹を叩きました。パジィッ!!と言う音がして、お姉さまの身体に雷撃が走ります。

 わたしはネギさんや小太郎さんとの猛特訓で、炎以外の系統に関しても扱える様になっています。更に得意な炎の魔法の射手(サギタ・マギカ)を乗せた拳であれば、相手を黒焦げにしてしまう事も……。お姉さま相手に、それはやりませんけどね。ちなみに〈ケイオス・ヘキサ式プログラム魔法〉も初歩の初歩を学びましたが、まだ呪力増幅杖(ブースターロッド)は頂いていません。

 麻痺して崩れ落ちるお姉さま。幸いに意識はある様で、影の戦闘服は脱げていません。わたしは言います。

 

「基本にして原点……。『雷華正拳』!!」

 

 お姉さまは麻痺して動けない模様。審判の朝倉さん?が、10カウントを数え、わたしの勝利が決定しました。わたしはお姉さまに肩を貸す形で担ぎ上げ、試合場を後にします。

 

「くっ……。愛衣、何故……。」

「お姉さま。車に()かれかけた人がいるとします。周囲には人目が多く、そこで魔法を使ったら、「魔法を秘匿する」と言う魔法使いの掟を破ってしまいます。……いわば、「悪」になります。」

「!?……何を言っているのですか、愛衣!」

 

 救護室に向かう廊下には、人影はありません。面食らったお姉さまに、わたしは言葉を続けます。

 

「あの人たち、超さんも含めたあの人たちは、目先の「悪」を犯しても、車に()かれかけた人を助けます。いえ、今まさに「そうしよう」としているんです。ガンドルフィーニ先生も、今「悪」を犯さなければ救えない命がある、と知って……。正義を名乗る事を辞めたんです。」

「!!で、ですが、正義の志を捨てる必要はないはずです!わたしとて車に()かれかけた人を救うためならば、自身の正義の心に従い、魔法を使います!」

「甘いです、お姉さま。」

「!」

 

 自分でも、ぞっとするほど冷たい声が出ました。

 

「所詮、「悪」は「悪」です。「正義のため」という免罪符で「悪」を行った結果、ナチスドイツは何をしました?いっしょにするな、なんて言わないでください。彼らはまぎれもなく、自分たちの「正義」を免罪符にして悪行を行ったんです。歪んではいても、「正義のためならあたりまえ」と。」

「め、愛衣……。」

「もし「正義のため」に悪行を繰り返す事に慣れてしまったら、どうなりますか?いつしか「正義」は暴走し、取り返しのつかない事になるかも知れません。普遍的な正義は存在しない。誰かにとっての正義は、別の誰かにとってはそうでは無いんです。」

 

 もうすぐ救護室です。あまり長くは話していられませんね。

 

「あの人たちは……。「わたし」は、正義のためと言う免罪符は使いません。行いが「悪」である事を認めた上で、その中での最善を模索します。無論、総体的に見れば正しくは無いです。間違ってます。でも間違った行いを断行しなければ、救えない命があるんです、現実問題として。そして……。その「罪」は、わたしたちの物です。「正義」と言う形の無い物に、負わせたりはしません。」

「……。」

「あの人たちの受け売りですけどね。救護室です。

 先生、試合での負傷者です。お願いできますか?」

「ああ、今行くわ。」

 

 わたしはお姉さまを寝台に横たえると、その胸元にわたしの仮契約カード(パクティオーカード)を置きました。とりあえず、今は「さようなら」ですね、お姉さま……。

 

「愛衣……。」

 

 わたしは呼びかけには応えず、(きびす)を返します。涙が流れていたの、見られてしまったかも知れません。

 

 

 

[ナギ]

 

 へえ……。麻帆良の若いもんも、なかなか頑張ってるじゃねえか。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)みたく適度に過酷で、腕を磨く場に事欠かねえ場所じゃねえ。適度に過酷って、なんか変な言い方だな。おいとこう。

 麻帆良の安全でヌルい環境なのに、これだけの「気」を練り上げられるってのは、やはり麻帆良が異常なんだろな。

 

烈空掌(れっくうしょう)!!」

『凄い!またも「遠当て」です!これは、これは本物だあっ!!スプリングフィールド選手、しかしそれを軽々と避ける、避ける!

 威力は本物です!躱された「遠当て」があたった場外の廊下屋根の破損状況からして、あたったらタダでは済みそうにない!』

 

 ま、でもな。頑張ってる方ではあるんだが。やっぱり「素人」でしか無いからな。

 

「これなら()けられるか!?烈空双掌(ダブルれっくうしょう)!!……な、なにっ!?」

「もうちっと「気」を強く練れるようにならんと、一流どころにゃ辛いぞ?若いの。」

『は、はじいたーーー!?中村選手の秘技、2連続の「遠当て」を……無造作に振り払う様にして、手ではじきましたスプリングフィールド選手!まるで銃弾をはじく、□ボコップのごとし!』

 

 必死で「気弾」を連発する若いのに、「気弾」をはじきながら無造作に近寄って一撃。くたっと崩れ落ちて、10カウント。

 

『強い!絶対に強い!スプリングフィールド選手、貫録勝ちだーーー!』

 

 俺は黄金バ○トか。そして俺は、選手席にいる白髪のガキ……「(テルティウム)」もといフェイト・アーウェルンクスへと視線を向けた。あー。あいかわらず無表情だな。ま、「(セクンドゥム)」みたいに無駄に騒がしいよりもいいんだがな。俺は奴に、ニカッと笑ってみせた。驚いた事に奴は、無表情は変わらんけど頷き返してきやがったよオイ。

 ……へぇ。案外こいつはもしかすると……。

 

「あ、あのう……。次の試合準備があるので。」

「お?おう悪ぃな審判の姉ちゃん。」

 

 俺はステージを降りる。さあて、『完全なる世界(やつら)』は何を企んでやがる?

 

 

 

[楓]

 

 ……届かなかった、でござるな。流石に悔しい……。拙者は第二回戦の第三試合で、順当にフェイトと当たったでござるが、残念ながら敗北を喫したでござるよ。決定的に、地力が足りなかったのでござろうな。

 拙者は魔法は使えんでござる故、派手にやっても言い訳は効く。なれど敵は魔法が無くば戦闘力は半減以下の、魔法使いタイプのはずだとの事。しかし……拳士としての技の切れは、魔力による強化を計算に入れたとて、恐るべきものでござった。そして苦労して一撃入れても、相手は目立たぬ様に曼陀羅(マンダラ)の様な障壁を展開し、打撃をアッサリ殺してくれたでござる。にんにん。

 今現在の拙者が持てる、即座に放てるうちで最大級の攻撃力を持つ忍術、『楓忍法・四つ身分身・朧十字(おぼろじゅうじ)』を放ってすら、曼陀羅(マンダラ)障壁は破れなかった。高畑先生は咸卦法を使った居合い拳であの障壁を破ったと聞く。拙者の攻撃力が、そこまで至っていなかったと言う事でござろうなあ……。

 そして15分の熱戦の末、メール投票になり拙者は敗北したでござるよ。中盤と最後にいいのを貰わなければ、投票で勝てたやも知れぬが。こちらは一見いいのを入れても、曼陀羅(マンダラ)障壁のせいではあるが、まったく効いていないのは一目瞭然でござったから、この投票結果も、さもありなんでござる。

 

「楓姉ちゃん!」

「長瀬さん!お怪我は……。」

「おお、小太郎(コタロー)、佐倉。流石に良いのを2発ばかりもらったでござるからな。今、「気」を循環させて自己治癒させてるところでござる。にんにん。

 小太郎、気を付けるでござるよ。あ奴の攻撃は、重い。内部に浸透し、体組織の深い場所にダメージを与えるでござる。」

「菲部長の技みたいなもんやな。」

 

 拙者は頷く。さて敗北はしたが、(しのび)の本領は戦闘ではない。某も何か勘違いをしていたでござるが。まあ戦闘で強いに越したことは無いが、(しのび)の本領は情報収集にあるでござるよ。拙者これからは裏手に回り、「敵」の情報を探るでござる。にんにん。

 

 

 

(タマキ)

 

 わたしたちは「人形」の身体に入って、ここ旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)は麻帆良という土地に来ている。今は人気のない林の中。フェイト様から命じられた使命を、なんとしても果たさなくては。フェイト様からは、当初フェイト様の主である「造物主(ライフメーカー)」が封印されていると思われる場所の調査も命じられていたが……。

 依り代であるはずのナギ・スプリングフィールドが存在し、しかも自由に闊歩しているとの事。何がどうなったのかは不明だけど、もしかしたら何らかの手段を用い、「造物主(ライフメーカー)」の影響力を封じて自らの中に厳重封印しているのではないか、と言うのがフェイト様の予想。

 そちらについては、「まほら武道会」にナギ・スプリングフィールドが出場しているので、『陽動作戦』として「まほら武道会」に出場しているフェイト様自ら調べる、との事。なので、わたしたちの任務はもう1つの件だけになる。なんとしても果たさなくては……。

 

「あ、(ホムラ)。お帰りなさい。第一目標と第二目標はどうでしたか。」

「駄目だったわ。人ごみに紛れてこっそり弱い炎を投げつけたんだけれど。普通に火傷してたわ。」

「となると……。残る第三目標の神楽坂明日菜が怪しいわね。麻帆良の魔法使いが護衛についたらしいし。

 よし、全員で行きましょう。(ホムラ)はわたしたちが麻帆良の魔法使いを相手にしている間に、神楽坂明日菜に炎を投げつけて確認とってちょうだい。確認が取れ次第、全力で確保して……。」

 

 調(シラベ)がそう言った直後の事。声が響いた。心臓を氷の手につかまれるような、そんな感触。明らかに魔力の介在した発声法だけど、こんな魔法技術、聞いた事ない。

 

謹聴せよ。(ヒア)

「ヒッ!?」

「な……。」

「あ、ああ……。」

「ここ現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)において、無辜の一般市民に対し魔法もしくはそれに準ずる行いで危害を加える事は、魔法使いたちの掟で禁じられている。

 すみやかに投降せよ。さもなくば、攻撃を開始する。」

 

 そこに居たのは黒い制帽、黒い革ジャン、黒い皮ズボン、黒い装甲ブーツ、黒い籠手、黒い皮コート、そして黒い仮面を着用し、巨大な機械仕掛けの杖を右手に持った、2人の男女。

その両脇に、黒いローブの魔法使いらしき少女と、黒い戦装束を纏った刀剣を携えた少女が。

 あの中の黒一点、あの男は……。外見的特徴も、一致する。

 

「ネギ・スプリングフィールド……。」

「ええっ!?」

「京都とか言う所で、フェイト様の邪魔をしたうちの1人!?」

「馬鹿!言うんじゃ……!!」

 

 (ホムラ)の失言に、ネギ・スプリングフィールドは低く(わら)う。

 

「ふふふ、やはりフェイトの手の者だったね。」

「あああーーーっ!しまったーーー!」

(コヨミ)!!」

「わかりました!皆、わたしと(タマキ)で足止めします!そのうちに、任務を果たしてください!『時の回廊』!」

「これで……。『無限抱擁』!」

 

 わたしのアーティファクト、『無限抱擁』が決まった。(ホムラ)調(シラベ)(シオリ)は結界の外に置いて、敵を閉鎖結界の中に取り込んだ。(コヨミ)のアーティファクト『時の回廊』で敵の周辺ごと時間の流れを遅くし、その隙にわたしの『無限抱擁』で無限の広さを持つ結界に敵を取り込む……。わたしと(コヨミ)は「この場」を動けないけど、足止めと言う意味ならば……。

 

「これはしまった、かな?」

「どうすんだ?ネギさん。」

「まあ、大丈夫。明日菜さんだっけ?彼女の傍には、優秀な、これ以上無い護衛がいるからね。それより、これだけの力を持つ足止め要員を、逆に僕ら側に足止めできた事の方が幸運かも知れないよ。」

「そんなら、明日菜は大丈夫やなー♪」

「では、とりあえずあの者たちをひっ捕らえておきますか。」

 

 む……。敵の言葉が聞こえる……。(コヨミ)が、もうアーティファクトを解除したの?まだ早い。わたしたちもこの結界を解除しないと中から出られないとは言え、せめて無限結界内で数十キロは距離をとる時間が……。

 

「た、(タマキ)!おかしいです!『時の回廊』は働いている、働いているんです!なのに、奴ら普通に動いているんです!」

「えっ……。」

「はっ、自分たちだけが時間制御技術を持っていると思ってたのか?」

「わたしたちも、持っているんですよ。魔法的じゃなく、科学の力ですがね。」

「スイッチ入れるのワンテンポ遅れたから、この結界には取り込まれてしもたんやけどなー。」

 

 な!?それは、まさか……。

 

「まさか……!加速装置とかです!?」

「あ。大当たりや。」

「変なとこで鋭い奴らだな。」

「今はとりあえず1.2倍速だがな。……そちらのアーティファクトによる時間経過速度の指定よりも、こちらの科学技術による加速率指定の方が優先される様だな。では……神鳴流奥義、斬空閃!」

「「わひゃーーーっ!?」」

 

 必死で敵剣士の放つ、飛ぶ斬撃を避ける。いや、今のはわざと命中させる気が無かった?おそらく剣閃の飛ぶ速度も1.2倍のはず。避けられるはずが……。なるほど、目的はわたしたちを屈服させ、結界を解かせること。

 (コヨミ)が必死で敵剣士の気を引いてる。今のうちに転移すれば。……成功。300km強、離れた場所に出現。

 

「……ぷああぁぁー!死ぬかと思ったです!」

「ご苦労様。」

「でも、加速装置だなんて……。なんて非常識な人たちなんです!?」

「……他人の事言えない。」

 

 とにかく、アーティファクトの能力で結界内の様子を調べる。敵の様子を見なければ。

 

『さて、ネギさんどうするんだ?』

『明日菜の事は心配いらへん言うても、やっぱり……。できれば助けにいきたいんよ。』

『ネギさん、敵の位置はお分かりですか?』

『ここから2時の方角に311.095kmだね。でもそこまで行っても、また逃げられるかもなあ。いや捕まえる方法はいくらでもあるけどね。転移も封じるのは難しくないし。』

 

 ……こちらの位置を、正確につかんでいる。転移も封じられる?まずい、何か対策を考えなくては。

 

『だけど、ちょっと試してみたい事がある。〈ケイオス・ヘキサ式プログラム魔法〉にコンバートしてない術があってね。この無限結界、破れると思う。』

 

 え。

 

『また無茶な術なんだろ?』

『うん。じゃあ、始めるかな。

 ……。』

 

 なんか詠唱始めた。まずい。

 

『収束されたマイクロブラックホールは、特殊な解を持ちます。』

『剥き出しの特異点は、時空そのものを蝕むのです。』

『重力崩壊からは逃れられません!』

『事象の地平に消え去りなさい。』

暗黒縮退星(ブラックホール)群集合体砲(クラスター)。』

 

 それって……。

 

(コヨミ)、まずい。」

「え゛。」

 

 ネギ・スプリングフィールドの両手の間に出現した漆黒の塊、それが現れたと同時に無限の閉鎖結界空間が揺らいだ。超高重力による時空の歪み。それにより結界が砕け散る。わたしと(コヨミ)の眼前に、ネギ・スプリングフィールド一同が姿を現した。

 結界空間の中で300km強の距離があっても、現実空間では最初に居た場所から動いていない。ネギ・スプリングフィールドの両掌の間には、漆黒の塊が。呪文詠唱の中身をそのまま信じるなら、あれはマイクロブラックホールの集合体。障壁で防ぐ事も、魔法で撃ち落とす事も、無理。

 わたしたち2人にできた事は、ほんの僅かの間、この化け物を足止めできただけ。それでも、フェイト様のためなら。(ホムラ)調(シラベ)(シオリ)の3人が、任務を無事果たす事を祈る。

 

『……発射。』

 

 そして暗黒の塊が、発射された……。




フェイトガールズ、いきなりの登場!人形に入って、現実世界へとやってきたのはいいけれど……。いきなりラスボス(ネギ)に遭遇。
そして愛衣、がんばりました。いや逆の意味で戦闘力には差がありすぎますが、かけらも油断せずにお姉さまを沈めました。
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