[美空]
うひいいいぃぃぃ!?
「何をやっているのです春日さん!」
「そんな事いったってー!」
シスター・シャークティにいくら叱咤されても、力量の差はあきらかだよーーー!こっちはタダの、見習い魔法使いっすーーー!あの狂ったバイオリンの音撃と、炎のカタマリになったあの女が放つ炎弾ーーー!たーすけーてえええぇぇぇ!ってココネ危ない!
「ミソラ!?」
「あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃーーー!?」
ひーん、炎の一撃受けちゃったよー!ココネが無事だったのはいいけどって、ココネーーー!?倒れたわたしの前に立ちはだかっちゃ、だめっすーーー!!逃げ、逃げてーーー!!逃げてココネーーー!!あ゛ーーー!!バイオリン女、やめ、やめ、やめてーーー!
「くっ……。」
シスター・シャークティの投げた十字架が、障壁を張ってココネとわたしと神楽坂さんが庇われたけど……。十字架を使っちゃったシスター・シャークティが火だるまにーーー!?必死に地面転がって火を消してるけど……。これで戦力が無くなっちゃった……。
「あ、あ、あんたたち!何者よ!なんでこんな事すんのよ!」
「……なるほど。何も理解していないのね。フェイト様の推測の通りか。身元を消すために、記憶も消している、か。」
「
「ご、ごめん
「記憶を消す?何の話よ!こんな手品じみた妙な技で、美空ちゃんやシャークティ先生たちを!あんたたち、超能力者か何かなの!?」
あ゛ーーー!!やめとき明日菜ーーー!!なんか詳しい事情は知らねーけど、こいつらの狙いはアンタなんだからーーー!!
「間違いないとは思うけれど、確かめておかないと。」
「わかった。任せて。」
炎女が火炎弾を明日菜に!
ドゴオオオォォォン!!
目を
「遅くなってすまない。生きてるか?」
え、この声は……。目を開けたわたしの眼前には、明日菜の直前に空いた巨大なクレーター。明日菜は無事。傷一つ無い。間違いなく、火炎弾を吹っ飛ばした一撃が、クレーターを空けたんだ。
そしてそのクレーターの
「何か言ったかしら、美空ちゃん?」
「イエイエイエ、ワタシナニモ言ッテナイデス、神楽坂明日菜サン。ソレトワタシ謎ノシスターネ。ミソラチャン?ダレノコトデスカ?って、いたいいたい火傷いたいから服ひっぱらないでーーー!」
そして直後、空から2人の人影が降って来た。片方は浅黒い肌……長身の黒人男性、ガンドルフィーニ先生。片方はちょっと情け無さそうな優男、瀬流彦先生。
「シスター・シャークティ!生きているかね!?」
「が、ガンドルフィーニ先生……。」
「酷い火傷だ。瀬流彦君!」
「春日君、ココネ君、神楽坂君、君らは?」
「せ、瀬流彦せんせい~~~!痛いです~~~!」
「ミソラト、シスター・シャークティノオカゲデ、無事……。」
「せ、瀬流彦先生!?どこから!?」
……!バイオリン女が!
「瀬流彦先生!バイオリン女が!」
「見えてるさ。」
バイオリン女の音波攻撃が、瀬流彦先生の無詠唱で張った障壁に阻まれて!?アンタ、いつの間にそんな強く!?そして高畑先生に追い詰められた炎女がヤケになって放った炎弾も、同じく瀬流彦先生の障壁が防ぐ!
だけど……。明日菜がちょっと炎にビビって、後退する。そして瀬流彦先生の障壁に触れた。次の瞬間、障壁が砕け散って、炎が押し寄せて来る。必死に障壁を再展開した瀬流彦先生のおかげで、大事には至らなかったけど……。明日菜、アンタいったい……?
「……!!皆、確認は取れたわ!ただ目標の奪取は困難よ!ここは高望みはしないで、この情報を持ち帰る!誰か1人でも逃げ切って!」
「……!了解。」
「くっ……。わかった。」
「「逃がすと思うのかい?」」
逃げようとした襲撃者の女たちを、2つの声が押しとどめた。1つは高畑先生。もう1つは……。誰?あの黒づくめ。
[ネギ]
タカミチたちが間に合ったのは、ぎりぎりだった様だ。連絡の不行き届きでもあったかな?木乃香が怪我人のところに駆け寄って行き、治療魔法を施している。刹那と千雨が、各々抱えていた
いや、『
それはともかく、僕はタカミチに問いかける。
「タカミチ、どうしたのさ。見たところなんか遅くなって、間一髪間に合ったかって風情だけど。」
「うん、別の「アーウェルンクス」が出てさ。なんかぎりぎりで調整間に合ったのが、「
「神楽坂君が危ない事は皆が承知していたから、エヴァンジェリン、絡繰君、絡繰君の妹壱号~参号、龍宮君、弐集院先生、葛葉先生、神多羅木先生、明石教授がその場を押さえてくれて、わたしたち3人が急行して来たんだ。ぎりぎりだったよ。」
「ガンドルフィーニ先生……。」
まあ、そんな事情なら仕方ないか。この2人の結界に引っ掛かってた僕も僕だしな。僕らは3人の女……おそらくは人形に入った
「……!」
「
文節ごとに、念を押す様に発音する。聞く者の意識に直接介入する、
「そのバイオリンを
動こうとした
「な、なんであたしたちの名前を知ってるの!?まさか
「僕は『
「な、き、汚いわよ!そんなプライバシーの侵害みたいな魔法を!」
「
「「「!!」」」
あえて
それはともかく、こいつらはテロリストそのものだ。『
ああ、そうだよ。僕はこいつら叩き潰したくて、仕方がないんだ。さっきの『
キュキュキュン!
脳裏の
「『
言って置くけど、死を恐れないとか、殺すなら殺せとか、そう言う態度はあまり良くないよ。さっきも言った通り、必要だったら
……いかんいかん。テロリスト娘3人だけじゃなく、仲間達まで一歩引いている。あれ?千雨が震えてはいても、必死で下がらずに耐えてる。……何にせよ、悪い事したなあ。
カシャアアアァァァン!
「申し訳ないけれど、彼女らを殺さないでくれないかな。あともし「良ければ」だけど、解放してやって欲しい。」
「「「フェイトさ!……ま?」」」
ガラスが割れる様な幻聴と共に、周囲に張っていた人払いの結界が破れる。そしてテロリスト娘どもが黄色い声を上げかけ、中途半端に終わった。どうしたんだと、彼女らの視線を追って僕の後ろの気配に目を遣る。うん、こいつが来たのはなんとなく分かってた。だからこいつが止めに入るだろうと考えて、少しどころじゃなく堪忍袋の緒を緩めておいたんだ。
……なるほど。テロリスト娘どもの黄色い声が中途半端に終わった理由がわかった。フェイトの学生服が、ズタボロになっている。
「ふぇ、フェイト様!そのお姿は!」
「ああ、「
けれど小太郎君、強くなったよ。中盤までは僕の障壁を破れなかったけれど、最後の一撃は凄かった。僕の障壁を見事に破って、僕の胴体にすさまじい威力の一撃を喰らわせたんだ。あれは咸卦法、かな?上手く負けるのに都合が良かったよ。」
「な、なんてこと!おのれ、おのれ犬上小太郎!泣かします!キャンと泣かしてや……。」
「
「ひ……。」
何度目かの
「貴様はネギ・スプリングフィールド……。あの英雄、ナギ・スプリングフィールドの縁者だろう!」
「そうだよ。息子さ。年齢が高いのは、ダイオラマ魔法球使って修行してたせいでね。」
「あ。」
フェイトが何かに気付いた様に、右手を挙げて
「何がテロリストだ!恵まれた英雄の、恵まれた息子に、周囲から祝福されたおぼっちゃんの貴様に、何がわかるんだ!親兄弟を殺され、塗炭の苦しみを味わ……。」
キュキュン!バギィッ!!
「き、きさま……。」
「んだぁ?自分が不幸だから?だからなんだ?同情してくださいってか?」
「なっ……。」
「それは構わんさ。同情してやるさ。けどな、ネギさんが恵まれた英雄の、恵まれた息子で、周囲から祝福されたお坊ちゃんだ?てめえらの目は節穴だ!いいか、英雄だからって恵まれてるなんてわきゃ無えんだ!増してやその息子だからって、何不自由なく生きて来たわけじゃ無え!」
そして千雨は、僕に問いかける。と言うか、前に言った事の確認をする。
「ネギさん。3歳ごろの時分に食べた、一番のご馳走って、何でしたっけ?」
「あ、うん。そうだね。朽ち木にいたカミキリムシの幼虫とか、
「「「「「「え゛。」」」」」」
「あと、柔らかめの木の根とかあった時は、嬉しかったなあ。」
「「「「「「え゛。」」」」」」
「あ、うん。そんなもんだろうね。僕が保護した彼女らよりも、たぶん貧しい暮らしだったんじゃないかな。」
そう言ったのは、フェイトだ。
「ふぇ、フェイト様!?」
「いや、ネギ・スプリングフィールドはさ。3歳ごろまでナギの故郷の村で「1人で」暮らしてたんだそうだよ。まあ村人には親切にはされていたようだけれど、逆に言えばある意味腫れ物に触る様な扱いだったみたいだね。」
「「「!!」」」
「その村は、メガロメセンブリア元老院の手の者によって襲撃されて、1回滅びた。召喚された悪魔の群れが、村を襲ったんだ。で、村人は皆が石化されて、そこで3歳のネギ・スプリングフィールドは行方不明になる。正直、生きていたのには驚いたけどね。」
「「「……。」」」
千雨が、苛立たし気に言う。
「その村人を石化解除したのが、ネギさんだ。1年間山野を駆け巡り魔法の修行をし、ダイオラマ魔法球の材料を自力で採掘したり採取して集めて創り上げた。村が襲われたショックで思い出した前世の記憶が無きゃ、死んでたってよ。いくら前世の記憶があっても、メンタリティは3歳児だ。
信じられるか?3歳児が、村が自分のせいで襲われたって思いつめて、村人を石化解除するために1時間が6時間になるダイオラマ魔法球に6年間、表の時間で1年間こもって修行したんだぞ?たった1人でだ!そしてわずか2年後にネギさんは10歳になって、村人たちを石化解除した。でも再建された村には戻れないでいる。自分のせいで村が襲われたって、村人に会わせる顔が無えって!
ネギさんは吹聴はしてねえが、秘密にもしてねえから、頑張って調べればわかる事だ。いや、頑張らなくとも、最初のネギさんの村が1回滅ぼされた事は、ネギ・スプリングフィールドについて調べれば比較的容易にわかる。」
「……。」
「
「僕もネギ・スプリングフィールドの村の事は知っていた。でも彼女らが知らないとは知らなかった。それは、指示する立場だった僕に責任がある。」
フェイトは無表情で、しかし真摯に言う。
「じゃあ、彼女らが「目標」を選別するために「無辜の一般人に魔力の炎をぶつけて火傷させてみる」って方法を使っていたのも、知らなかったのかな?」
「そうなのかい?うん、知らなかった。でも命令者として、責任逃れをするつもりは無いよ。」
「じゃあ、どうするんだい?」
「これで。」
「「「きゃああああっ!?フェイト様ーーー!?」」」
3人のテロリスト娘どもが、悲鳴を上げて顔面蒼白になる。理由はわかる。フェイトが自分の右腕を折り取って放り捨てたからだ。
「これで僕は、しばらく前線には出られなくなる。まあ、所詮僕は人形だから、直せば直るけどね。少なくとも時間はかかるよ。」
「それを誠意と受け取れ、と?」
「そうしてくれると、ありがたい。」
「……あー、いいかな。前線に出るも何も、僕らは君らを逃がすつもりは無いんだが。」
タカミチが言うと、フェイトは顎をしゃくる。そちらには、フェイトが人払いの結界を破ったために徐々に集まってくる一般人の姿があった。
「……あれで?」
「……。」
タカミチは黙りこくる。再度人払いの結界を張っても、フェイトが再度破るだろう。この場でこれ以上、派手な立ち回りはできない。
「
「「「は、はい……。」」」
落ち込んだ様子のテロリスト娘たちを引き連れて、フェイトは踵を返した。そこへ僕が声をかける。
「フェイト、これ持ってきなよ。」
「……これは?」
「君らの組織を攪乱するための、一手。」
僕は影の中からひっぱり出した、3冊の本を投げてやった。フェイトは器用に残された左手で、上手く掴み取る。
「……『
「確率統計の観点から、未来をおおまかに予測する学問さ。
「新しい腕ができるまでのヒマつぶしには良さそうだ。貰っても?」
「いいさ。」
「感謝するよ、ネギ・スプリングフィールド。」
そしてフェイトとテロリスト娘たちは、近場の側溝に溜まっていた水を媒介に、水の
「はい、カットおおおぉぉぉ!一発撮影ってのは疲れますね!」
「え、あ、そ、そうだね!ああ皆さん!同人映画の撮影です!お気になさらず!」
ガンドルフィーニ先生も、引き攣った笑顔で叫んだ。僕?僕はそこはかとなく影の中から出した、ちっちゃなビデオカメラを回してるよ?と、周囲に聞こえない小さな声で千雨が謝って来た。
「すいませんネギさん。あまりに腹が立っ……。」
「ありがとう千雨。」
「え。」
千雨の謝罪を遮った僕の感謝に、千雨は驚きの声を上げる。顔は仮面で覆われて見えないが。ちなみに僕も仮面をしている。嫌な感じがするペアルックだね。ははは。
「千雨のおかげで、随分と溜飲が下がったよ。言い返してくれて、ありがとう。」
「あ、え、あ……。いえ、どういたしまして。」
「うん。それでいい。」
僕は仮面を取って、笑った。見ると、千雨の耳が赤く染まっていた。顔は仮面で見えないけどね。
そして僕らは、神楽坂明日菜嬢への説明に苦慮しているタカミチの応援に行く事にした。だけどなあ……。ある程度、
タイトルは、比喩的な意味ではなく、はっきり言ってそのまんまの意味でした。まあ、直るんですけどね。時間は少々かかっても。
そしてネギさんがフェイトに渡した、