魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第027話:それぞれの幕間

[ネギ]

 

 タカミチが項垂(うなだ)れている。黄昏(たそが)れている。ここは僕の宇宙船の食堂だ。僕は知識だけはあったので、カウンターの中に陣取って、ソルティ・ドッグを作って出してやった。いや、現実に作る事ははじめてだったけどさ。見た目だけは上手く作れたが。

 

「……美味いね。」

「それなら良かった。」

「わたしにはブラッディ・マリーを貰おうか。あれなら簡単だろう?」

「マクダウェルさんは、ブラッディ・マリー……と。……どうです?」

「ふむ、悪くない。一流とは言えんがな。」

 

 まあ、それはそうだろう。僕は前世の知識とかあっても、今の肉体年齢は16歳だ。国によっては酒は飲めるが、飲酒年齢は日本では20歳から、イギリスでは一部例外を除き18歳からだ。当然作るのを練習したことも無い。

 

「褒められたと思っておきますね。」

「安心しろ、褒めた方だ。」

 

 ちなみに何で宇宙船に来ているかと言うと、タカミチがあまりに悩んでいるので無理矢理に連れ出したんだよね。で、酒を浴びる程に飲ませてしまおうと。僕だけじゃなんなので、マクダウェルさんとガンドルフィーニさん、瀬流彦さんに協力を願い出た。ガンドルフィーニさんには、酒が強くないそうなのでノンアルコールカクテルのフォ・キール・ロワイヤルを。瀬流彦さんにはシャンパン・ジュレップを出した。

 おっと。タカミチのグラスが空になってる。僕はおかわりを急ぎ作って出す。タカミチはがぶがぶと、浴びる様に飲んだ。と、タカミチがぽつりと漏らす。

 

「……僕に……人に愛される資格は、ない。」

 

 あー、そういう事か。タカミチだって、これほどの猛者と言える戦闘者だ。汚れ仕事をこなした数とて、軽く2ケタは行ってるだろう。下手をすれば3ケタも。でもなあ、と思わなくもないが、僕もこの手の事は弱い。だってなあ……。僕も、理屈では自分に責めは無い事を理解しつつ、未だに故郷の村に顔出せてない。理屈ではないんだよね。

 と、ガンドルフィーニさんがタカミチに話しかける。

 

「愛される資格なんて、誰も持ってないさ、高畑先生。」

「……?ガンドルフィーニ先生は、奥さんとお子さんが……。」

「彼女らは、わたしを愛してくれている。うぬぼれでは無く、ね。でもね、愛する愛される云々は、そうじゃないんだ。愛される資格なんてものは、持っている持っていない以前に、存在さえしていない。

 高畑先生。君は、愛される資格とか言う話じゃなく、既に「愛されて」いるんだ。そこに君の主体は存在しない。君はボールを投げられた。今度は君が、それをどう返すか、だ。

 ちなみにわたしは、夫として父親として、恥じない男であろうと心を決めている。言い換えれば、彼女らの愛に、愛で返しているんだ。」

「いい事を言うな、ガンドルフィーニ。その通りだ、タカミチ。神楽坂明日菜はお前を愛している。その事実はお前が資格云々をほざいたところで、どうにも動かない。言って置くが、後ろ向きな答えだけは出すな。受け入れるにせよ謝絶するにせよ、きっちり前を向いて応えてやれ。」

「そう……だね。ありがとうございます、ガンドルフィーニ先生。ありがとうエヴァ。」

 

 僕はカクテルのおかわりをそれぞれに出すと、カウンターの隅に退避している瀬流彦さんのところに移動した。

 

「なんとかタカミチも、前を向けそうですね。」

「僕、なんで来たんだろう。彼女もいないのに、助言なんてできないと言うか欲しいくらいだよ。」

「ははは……。」

「うん、わかってる。笑ってごまかすしか無いよね。」

 

 そしてガンドルフィーニさんの台詞。

 

「けれどもし、受け入れる事にしたなら。彼女は実年齢100歳以上らしいがね。戸籍年齢は15歳なんだ。きちんと卒業までは待ちたまえよ。」

 

 対してマクダウェルさんの台詞。

 

「いいではないか。奴が元の神楽坂明日菜であったときから、あやつの恋慕の情は見ていて笑……可哀想になるほどだった。多少なら隠れてヤルことはヤッたとて……。」

 

 火花が散った。情の面から攻めるマクダウェルさん。理屈面から攻めるガンドルフィーニさん。喧々諤々丁々発止のやり合いは、何時までも続いた。挟まれたタカミチは、どんどん憔悴して行く。仕方ないので、僕は呪力増幅杖(ブースターロッド)を引っ張り出すのだった。

 

 

 

 ちなみに瀬流彦さん。

 

「ほんと僕、なんで来ちゃったんだろう。」

 

 

 

[フェイト]

 

 なかなか興味深いね。この『心理歴史学(サイコヒストリー)』と言うのは。そして彼、ネギ君が僕にこれを渡した理由がはっきりと分かる。

 

調(シラベ)。ネギ君に連絡を取りたい。」

「……は?ふぇ、フェイト様。それは危険です。未だ新しい右腕も出来ていないと言うのに。」

「いや、戦わないから。話がしたいんだ。そしてその話し合いの結果しだいでは。」

「フェイト様……?」

 

 僕は調(シラベ)に顔を向ける。

 

「僕は君に、「世界を変えよう」と言った。だけど僕ら(コズモエンテレケイア)の手段で変えただけでは、破滅を若干先延ばしするだけなのかも知れない。それがはっきりしてしまうかも知れない。」

「えっ……。」

「僕は、君たちに責任感の様な物を感じている。この人形の僕がね。けれど僕ら(コズモエンテレケイア)の手段が、破滅を先送りするだけなのであれば。僕は君に嘘をついた事になる。

 ネギ君がこの『心理歴史学(サイコヒストリー)』技術を僕に渡したのになんらかの意味があるなら。」

 

 そして僕は彼方の空を見遣る。

 

「彼はその破滅の「解決策」を持っている可能性がある。」

「しかしフェイト様……。」

「方法は任せるよ。ただし、穏便な手段を取って。」

 

 調(シラベ)は僕の意志が固いと見ると、黙って頭を下げた。

 

 

 

[ナギ]

 

 麻帆良祭も今日で最後。学園全体かくれんぼで、鬼の役が必死に学園を走り回ってやがる。そんな中、俺は学祭門の下に立っていた。こっからまっすぐ行けば、麻帆良駅だ。うん、そろそろ麻帆良を去る事にしたんだわ俺。

 ネギ、エヴァンジェリンと従者の茶々丸、タカミチ+α、アルが見送りに来てくれている。俺は何か言おうと思ったが、陳腐な言葉しか思いつかねえ。この天才魔法使い、千の呪文の男(サウザンドマスター)ともあろう者が。

 

「……んじゃ、頑張れよネギ。」

「父さんも。」

「おう。……おまえらもネギのこと、頼むな。」

 

 エヴァンジェリンは、にやりと笑う。

 

「任せて置け。しっかりと並の悪を超える巨悪に仕立て上げてやろう。」

「おいおい。」

「大丈夫です。こう見えてもマスターはネギさんを買っています。下手な事にはならないでしょう。」

「ならいいんだが。」

「茶々丸……。」

 

 タカミチは何か吹っ切れた様な顔つきだ。

 

「僕にできるだけの事はします。ナギも、元気で。」

「……その左手にしがみついてる姫子ちゃんはどうしたんだ。」

「これから学園祭デートなのよ。」

「そうか。」

 

 事情はネギから聞いたんだが、タカミチは落とせたのか?タカミチの吹っ切れた顔が、よくわからん。聞いてみるか。

 

「タカミチは落とせたのか?」

「今日、返事もらうのよ。でも、駄目でも諦める気は欠片も無いけどね。」

「ははは。」

「タカミチ、笑ってる場合かよ。」

 

 そしてアル。

 

「なあアル。ネギたちの事、頼むな。」

「……。」

「アル……。」

「…………。」

「クウネル。」

「任せてくださいナギ。わたしの全力を持って、愉快なことにしてさしあげましょう。」

「こいつは……。」

 

 そして俺は歩き出した。振り返ると、もう少しこの街に居たくなるから、振り返らない。次来るときは、たぶんネギの方がこの街にいないだろう。今度は、いつ会えるかな。

 

 

 

 いや、携帯番号は交換したから、会おうと思えば簡単なんだがな。いいじゃんかよ、カッコつけたって。

 

 

 

[鈴音]

 

 ご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)から任された仕事、ロボット国民(改良型タイプⅡ)とロボット国民(新型タイプⅣ)の生産ハ、順調ネ。従来型ロボット国民の改良は既ニ限界に達してイテ、そちらを担当していた葉加瀬ハ今は新型設計を手伝ってルンだヨ。

 

「超さん、新型……量産性向上型のタイプⅤなんですが。一般市民タイプでしたら、もう少し使用する資材を削れると思うんですが。」

「ソウだネ。ただ、応用性トカ汎用性無くなると困ルから、見極め大事ヨ。」

「それとT-ANK-α3、田中さんの改造タイプですけど、宇宙基地のブレイン0-0も、火星ブレインのリーダー、ブレイン4-1も、警官タイプとしてもう少し多く火星に配備したいと要求が。」

「ムムム。いっそ宇宙基地のロボット工場、拡張するカ?」

「その件は、任された権限越えますね。ネギさんに相談しないと。」

 

 うーん、ご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)は最近少し余裕アルからネ。秘書やている茶々丸に連絡取って、アポ取るカ。

 

 

 

[茶々丸]

 

「了解です。その時間であれば空いています。では……。」

 

 わたしは超からの、ネギさんのアポイントメントを取りたいと言う電話を受けて予定を入れました。最近は皆が気を使ってくれているので、一時の様な殺人的スケジュールではありません。

 

「絡繰さん。明日の午後、皆が放課後の時間は空いてるかい?」

「はい。お昼休みに超の相談が入っているだけですので。」

「じゃあ、明日の放課後にタカミチが咸卦法の実際の運用について講義と訓練してくれるそうだから。僕と小太郎君と千雨と古菲と、それとあと神楽坂明日菜さんがタカミチと一緒に来るそうだからね。予定を入れて置いてくれるかな?」

「はい。」

 

 そう言えば、超と葉加瀬が忙しい中を縫って、わたしの新型の義体をもうすぐ完成させてくれるとの事。身体の交換には丸一日かかります。丸一日しかかからないと言った方がいいのでしょうか。ネギさんは、「へえ、それだけで出来るんだ。さすが超さんたち。」と褒めていました。

 その間はわたしが居なくてもいい様に、仕事を全て片付けておかねばなりませんね。それか代理を置くか。千雨さんの能力なら、ある程度片付けておけばなんとかなってくれるかも知れません。

 千雨さんに話を通しておきましょう。

 

 

 

[千雨]

 

 充実……してねえ。なんでだ。「ちうのHP」も更新した。新しいコスも用意して、お披露目した。今週のネットアイドルのランキングで1位を取った。愚民どもの褒め称える声(チャット)も反応が素晴らしかった。なのに何故だ。

 

「……なんかルーチンワーク化して、る?」

 

 な、何!?いつもの行いが、いつの間にかルーチンワークになってるだと!?そんな馬鹿な!わたしに取ってこの行為は大事な趣味(おたのしみ)だったハズだろ!?それが、それがタダのルーチンワークになってるだとっ!?

 

「マズい……。と言うか、ヤバい……。」

 

 ルーチンワーク化しても1位取れるってのは我ながら凄いと思うが。だが熱意もなにも無く、ただネットアイドルの上位ランキングを取るだけの機械になって、何が面白い。ふと時計を見る。

 

「あ。そろそろ今日の鍛錬の時間だな♪」

 

 マテ。

 待て、まて、マッテクレ。なんだ今の「♪」は。魔法と気と咸卦法と武術の鍛錬。それが、た、たの、楽しい、ってのか?い、いやしかし。価値観、わたしの価値観が、壊れつつある!?

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 床をゴロゴロ転がる。凄い速さで。前までなら、のたくたと転がるのが関の山。鍛錬の成果が出ている。そしてその成果が出た高速回転のまま、壁にドガッ!とぶつかった。けっこうなダメージ。

 

「ピィー……ジャッ!ジャジャ、ジャー……。」

 

 反射的に情報圧縮音声(データコンプレッション・ヴォイス)呪文(スペル)を唱える。痛みはさくっと消えた。顔を上げる。

 

「!?」

「……。」

 

 そこに居たのは、わたしと寮の部屋が同室ながら、部活のサーカス小屋に寝泊まりして滅多に帰ってこないザジ・レイニーデイだった。ヤバい!治癒魔法の行使を見られた!?

 

「……。」

 

 ザジの奴は、無言でサムズアップを出す。そして右手をわたしの影の中に突っ込……!?まて!まてまてまて!?ザジの右手は空間歪曲庫の中から、制帽を引っ張り出した……!!そしてわたしの頭に被せる。

 

「!?」

 

 その瞬間、制帽の徽章(エンブレム)にはめ込まれた『霊視眼(グラムサイト)』が、ザジを識別(アイデンティファイ)した。……識別(アイデンティファイ)の結果は、『ゆうこうてきな DEMON LADY』。

 ……LADYって、LORDつまり貴族の、その子女につけられる敬称だよな。って言うか、その前。DEMONって、悪魔だっけ。DEVILがキリスト教の堕天使系とかの悪魔だっけ?DEMONは異教の神とかが悪魔にされたもんだっけか。つまり悪魔っつーか魔族の貴族階級。

 

「……マジ?」

 

こくり。

 

 頷きやがった。

 

「なんで正体をわたしにバラした?」

「……交渉準備。」

 

 喋った。……よく考えろ、わたし。交渉準備って事は、わたしと?いや、わたしは単なる伝手である可能性が高い。となると、まさかネギさんか?

 

「……ネギさんとの交渉、か?」

 

こくり。

 

 頷いたよ。もしやこいつ、ネギさんの……。

 

「ネギさんの計画、知ってるのか?」

 

ふるふる。こくり。

 

 首振って、その後頷いた。ってことは……。

 

「サワリ程度だけ、知ってる?」

 

こくり。

 

 頷いた。識別(アイデンティファイ)結果が『ゆうこうてきな~』だったって事は、悪意は無い……か?今まで2年半、同じクラスだったし……。ネギさんにはあまり負担かけたか無えんだが……。伝えないといかん、よなあ。

 

「ネギさんには伝えとく。だけど、あんま期待すんなよ。あと、誰にも言うなよ。」

 

こくり。

 

「んじゃ、わたしは出かける。またな。」

 

ふるふる。

 

 手を振るザジに手を振り返して、わたしは外出準備を整えて鍛錬に向かった。ネギさんと、幻想空間(ファンタズマゴリア)の中で魔法とか練習した後で、外の空間で調整だ。それと、空間歪曲庫のユーザー認証、もう少し強化してもらわんと。ザジに自由に中身を取り出されちゃ、たまらん。

 わたしはマクダウェルの家までランニングを開始した。




ちうたんが、いきなりザジさんの襲撃を受けました。そしてあえて結果は(ぼか)してますが、明日菜の愛の行方は!しずな先生は巻き返しあるのか!?
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