[ネギ]
タカミチが
「……美味いね。」
「それなら良かった。」
「わたしにはブラッディ・マリーを貰おうか。あれなら簡単だろう?」
「マクダウェルさんは、ブラッディ・マリー……と。……どうです?」
「ふむ、悪くない。一流とは言えんがな。」
まあ、それはそうだろう。僕は前世の知識とかあっても、今の肉体年齢は16歳だ。国によっては酒は飲めるが、飲酒年齢は日本では20歳から、イギリスでは一部例外を除き18歳からだ。当然作るのを練習したことも無い。
「褒められたと思っておきますね。」
「安心しろ、褒めた方だ。」
ちなみに何で宇宙船に来ているかと言うと、タカミチがあまりに悩んでいるので無理矢理に連れ出したんだよね。で、酒を浴びる程に飲ませてしまおうと。僕だけじゃなんなので、マクダウェルさんとガンドルフィーニさん、瀬流彦さんに協力を願い出た。ガンドルフィーニさんには、酒が強くないそうなのでノンアルコールカクテルのフォ・キール・ロワイヤルを。瀬流彦さんにはシャンパン・ジュレップを出した。
おっと。タカミチのグラスが空になってる。僕はおかわりを急ぎ作って出す。タカミチはがぶがぶと、浴びる様に飲んだ。と、タカミチがぽつりと漏らす。
「……僕に……人に愛される資格は、ない。」
あー、そういう事か。タカミチだって、これほどの猛者と言える戦闘者だ。汚れ仕事をこなした数とて、軽く2ケタは行ってるだろう。下手をすれば3ケタも。でもなあ、と思わなくもないが、僕もこの手の事は弱い。だってなあ……。僕も、理屈では自分に責めは無い事を理解しつつ、未だに故郷の村に顔出せてない。理屈ではないんだよね。
と、ガンドルフィーニさんがタカミチに話しかける。
「愛される資格なんて、誰も持ってないさ、高畑先生。」
「……?ガンドルフィーニ先生は、奥さんとお子さんが……。」
「彼女らは、わたしを愛してくれている。うぬぼれでは無く、ね。でもね、愛する愛される云々は、そうじゃないんだ。愛される資格なんてものは、持っている持っていない以前に、存在さえしていない。
高畑先生。君は、愛される資格とか言う話じゃなく、既に「愛されて」いるんだ。そこに君の主体は存在しない。君はボールを投げられた。今度は君が、それをどう返すか、だ。
ちなみにわたしは、夫として父親として、恥じない男であろうと心を決めている。言い換えれば、彼女らの愛に、愛で返しているんだ。」
「いい事を言うな、ガンドルフィーニ。その通りだ、タカミチ。神楽坂明日菜はお前を愛している。その事実はお前が資格云々をほざいたところで、どうにも動かない。言って置くが、後ろ向きな答えだけは出すな。受け入れるにせよ謝絶するにせよ、きっちり前を向いて応えてやれ。」
「そう……だね。ありがとうございます、ガンドルフィーニ先生。ありがとうエヴァ。」
僕はカクテルのおかわりをそれぞれに出すと、カウンターの隅に退避している瀬流彦さんのところに移動した。
「なんとかタカミチも、前を向けそうですね。」
「僕、なんで来たんだろう。彼女もいないのに、助言なんてできないと言うか欲しいくらいだよ。」
「ははは……。」
「うん、わかってる。笑ってごまかすしか無いよね。」
そしてガンドルフィーニさんの台詞。
「けれどもし、受け入れる事にしたなら。彼女は実年齢100歳以上らしいがね。戸籍年齢は15歳なんだ。きちんと卒業までは待ちたまえよ。」
対してマクダウェルさんの台詞。
「いいではないか。奴が元の神楽坂明日菜であったときから、あやつの恋慕の情は見ていて笑……可哀想になるほどだった。多少なら隠れてヤルことはヤッたとて……。」
火花が散った。情の面から攻めるマクダウェルさん。理屈面から攻めるガンドルフィーニさん。喧々諤々丁々発止のやり合いは、何時までも続いた。挟まれたタカミチは、どんどん憔悴して行く。仕方ないので、僕は
ちなみに瀬流彦さん。
「ほんと僕、なんで来ちゃったんだろう。」
[フェイト]
なかなか興味深いね。この『
「
「……は?ふぇ、フェイト様。それは危険です。未だ新しい右腕も出来ていないと言うのに。」
「いや、戦わないから。話がしたいんだ。そしてその話し合いの結果しだいでは。」
「フェイト様……?」
僕は
「僕は君に、「世界を変えよう」と言った。だけど
「えっ……。」
「僕は、君たちに責任感の様な物を感じている。この人形の僕がね。けれど
ネギ君がこの『
そして僕は彼方の空を見遣る。
「彼はその破滅の「解決策」を持っている可能性がある。」
「しかしフェイト様……。」
「方法は任せるよ。ただし、穏便な手段を取って。」
[ナギ]
麻帆良祭も今日で最後。学園全体かくれんぼで、鬼の役が必死に学園を走り回ってやがる。そんな中、俺は学祭門の下に立っていた。こっからまっすぐ行けば、麻帆良駅だ。うん、そろそろ麻帆良を去る事にしたんだわ俺。
ネギ、エヴァンジェリンと従者の茶々丸、タカミチ+α、アルが見送りに来てくれている。俺は何か言おうと思ったが、陳腐な言葉しか思いつかねえ。この天才魔法使い、
「……んじゃ、頑張れよネギ。」
「父さんも。」
「おう。……おまえらもネギのこと、頼むな。」
エヴァンジェリンは、にやりと笑う。
「任せて置け。しっかりと並の悪を超える巨悪に仕立て上げてやろう。」
「おいおい。」
「大丈夫です。こう見えてもマスターはネギさんを買っています。下手な事にはならないでしょう。」
「ならいいんだが。」
「茶々丸……。」
タカミチは何か吹っ切れた様な顔つきだ。
「僕にできるだけの事はします。ナギも、元気で。」
「……その左手にしがみついてる姫子ちゃんはどうしたんだ。」
「これから学園祭デートなのよ。」
「そうか。」
事情はネギから聞いたんだが、タカミチは落とせたのか?タカミチの吹っ切れた顔が、よくわからん。聞いてみるか。
「タカミチは落とせたのか?」
「今日、返事もらうのよ。でも、駄目でも諦める気は欠片も無いけどね。」
「ははは。」
「タカミチ、笑ってる場合かよ。」
そしてアル。
「なあアル。ネギたちの事、頼むな。」
「……。」
「アル……。」
「…………。」
「クウネル。」
「任せてくださいナギ。わたしの全力を持って、愉快なことにしてさしあげましょう。」
「こいつは……。」
そして俺は歩き出した。振り返ると、もう少しこの街に居たくなるから、振り返らない。次来るときは、たぶんネギの方がこの街にいないだろう。今度は、いつ会えるかな。
いや、携帯番号は交換したから、会おうと思えば簡単なんだがな。いいじゃんかよ、カッコつけたって。
[鈴音]
「超さん、新型……量産性向上型のタイプⅤなんですが。一般市民タイプでしたら、もう少し使用する資材を削れると思うんですが。」
「ソウだネ。ただ、応用性トカ汎用性無くなると困ルから、見極め大事ヨ。」
「それとT-ANK-α3、田中さんの改造タイプですけど、宇宙基地のブレイン0-0も、火星ブレインのリーダー、ブレイン4-1も、警官タイプとしてもう少し多く火星に配備したいと要求が。」
「ムムム。いっそ宇宙基地のロボット工場、拡張するカ?」
「その件は、任された権限越えますね。ネギさんに相談しないと。」
うーん、
[茶々丸]
「了解です。その時間であれば空いています。では……。」
わたしは超からの、ネギさんのアポイントメントを取りたいと言う電話を受けて予定を入れました。最近は皆が気を使ってくれているので、一時の様な殺人的スケジュールではありません。
「絡繰さん。明日の午後、皆が放課後の時間は空いてるかい?」
「はい。お昼休みに超の相談が入っているだけですので。」
「じゃあ、明日の放課後にタカミチが咸卦法の実際の運用について講義と訓練してくれるそうだから。僕と小太郎君と千雨と古菲と、それとあと神楽坂明日菜さんがタカミチと一緒に来るそうだからね。予定を入れて置いてくれるかな?」
「はい。」
そう言えば、超と葉加瀬が忙しい中を縫って、わたしの新型の義体をもうすぐ完成させてくれるとの事。身体の交換には丸一日かかります。丸一日しかかからないと言った方がいいのでしょうか。ネギさんは、「へえ、それだけで出来るんだ。さすが超さんたち。」と褒めていました。
その間はわたしが居なくてもいい様に、仕事を全て片付けておかねばなりませんね。それか代理を置くか。千雨さんの能力なら、ある程度片付けておけばなんとかなってくれるかも知れません。
千雨さんに話を通しておきましょう。
[千雨]
充実……してねえ。なんでだ。「ちうのHP」も更新した。新しいコスも用意して、お披露目した。今週のネットアイドルのランキングで1位を取った。愚民どもの
「……なんかルーチンワーク化して、る?」
な、何!?いつもの行いが、いつの間にかルーチンワークになってるだと!?そんな馬鹿な!わたしに取ってこの行為は
「マズい……。と言うか、ヤバい……。」
ルーチンワーク化しても1位取れるってのは我ながら凄いと思うが。だが熱意もなにも無く、ただネットアイドルの上位ランキングを取るだけの機械になって、何が面白い。ふと時計を見る。
「あ。そろそろ今日の鍛錬の時間だな♪」
マテ。
待て、まて、マッテクレ。なんだ今の「♪」は。魔法と気と咸卦法と武術の鍛錬。それが、た、たの、楽しい、ってのか?い、いやしかし。価値観、わたしの価値観が、壊れつつある!?
「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
床をゴロゴロ転がる。凄い速さで。前までなら、のたくたと転がるのが関の山。鍛錬の成果が出ている。そしてその成果が出た高速回転のまま、壁にドガッ!とぶつかった。けっこうなダメージ。
「ピィー……ジャッ!ジャジャ、ジャー……。」
反射的に
「!?」
「……。」
そこに居たのは、わたしと寮の部屋が同室ながら、部活のサーカス小屋に寝泊まりして滅多に帰ってこないザジ・レイニーデイだった。ヤバい!治癒魔法の行使を見られた!?
「……。」
ザジの奴は、無言でサムズアップを出す。そして右手をわたしの影の中に突っ込……!?まて!まてまてまて!?ザジの右手は空間歪曲庫の中から、制帽を引っ張り出した……!!そしてわたしの頭に被せる。
「!?」
その瞬間、制帽の
……LADYって、LORDつまり貴族の、その子女につけられる敬称だよな。って言うか、その前。DEMONって、悪魔だっけ。DEVILがキリスト教の堕天使系とかの悪魔だっけ?DEMONは異教の神とかが悪魔にされたもんだっけか。つまり悪魔っつーか魔族の貴族階級。
「……マジ?」
こくり。
頷きやがった。
「なんで正体をわたしにバラした?」
「……交渉準備。」
喋った。……よく考えろ、わたし。交渉準備って事は、わたしと?いや、わたしは単なる伝手である可能性が高い。となると、まさかネギさんか?
「……ネギさんとの交渉、か?」
こくり。
頷いたよ。もしやこいつ、ネギさんの……。
「ネギさんの計画、知ってるのか?」
ふるふる。こくり。
首振って、その後頷いた。ってことは……。
「サワリ程度だけ、知ってる?」
こくり。
頷いた。
「ネギさんには伝えとく。だけど、あんま期待すんなよ。あと、誰にも言うなよ。」
こくり。
「んじゃ、わたしは出かける。またな。」
ふるふる。
手を振るザジに手を振り返して、わたしは外出準備を整えて鍛錬に向かった。ネギさんと、
わたしはマクダウェルの家までランニングを開始した。
ちうたんが、いきなりザジさんの襲撃を受けました。そしてあえて結果は