[近右衛門]
ネギ君は、自分の計画を全て話してくれた。わしが、自分から教えてくれと言い出すのを待っていた、との事じゃった。わしの方から申し出たなら何時でも教えたが、だが言い出さなければずっと黙って、自分たちだけで計画を進めるつもりじゃったとも言っておったのう。
しかしその計画の内容を聞いたとき、わしは頭を抱えたくなったわい。
じゃがその方法は、
じゃが受け入れ難くとも、「難い」だけで「不可能」ではないのじゃ。これは……受け入れねばならん。そうせねば、11億3,300万人が
今から間に合う計画は、ネギ君のこの計画か、あるいは『
わしはネギ君の計画に、賛同し協力せねばならん。この先どんな苦難が待ち受けていようとも……!!
と言うか、わしに計画を明かされた時点で、既に計画は実行中であり完了間際であったんじゃがの。
わしは思わず、んじゃワシなにすればいいんじゃい、と突っ込んでしまったわい。そしたら投げられたのは、
その冷戦構造の構築を手伝え、と言われた。さすがにわしもトシじゃからな。地球と火星が仲良くなるまでは生きておれんじゃろうて。ならば双方が惑星間戦争を起こせぬよう、政治工作して冷戦構造を構築するのが最後の大仕事になろうて。婿殿にも手伝ってもらわぬといかんな。まずは日本政府からじゃ。とりあえずコトが起きる前に、今あるパイプを、太くして置く事からじゃの。
[千雨]
茶々丸が義体の交換のため、今日はいない。なので頼まれてわたしがネギさんの秘書役をやってる。って言うか、茶々丸の奴こんな七面倒くさい事よくやれてたな!?ひいこら言いつつ仕事をこなす。ちなみに、素人秘書のわたしが何とか仕事をこなせているのは、茶々丸の奴が付箋とかで資料に注釈を細かく入れてくれてるからだ。
芸が細かいんだよ、あのロボ。ヘルプ頼む上で手土産に美味しいお茶と茶菓子を用意して、わたしの部屋までわざわざ来たしな。電話1本で済むのに、妙に律儀なんだよ。……今度、ネジでも巻いて
「ネギさん、そろそろ……。」
「そうだったね。ザジ・レイニーデイさんだったか。どんな人だい?いや、人間じゃなかったっけ。」
「わたしも先日まで知りませんでしたがね。何と言いますか、無口でもって……。
どっか浮世離れしてる奴らばかりだからな。って言うか、今はわたしもそんな連中の仲間入りして逸般人になっちまったが……。
お、ザジの奴が来たかな?ネギさんは今はまだ、マクダウェルの家の客間借りて住んでる。本当は麻帆良祭終わったらホテル住まいに戻るつもりだったらしいんだが。それだと一応女子中学生の茶々丸がホテルに訪ねて行くのも何だと言う事なので。でもって今、マクダウェルん
「ネギさん。長谷川さん。お客様がおいでなさいました。」
「ザジ・レイニーデイさん?」
「はい。」
「お通ししてくれるかな。」
「了解いたしました。」
んでもって、ザジの奴がやって来た。いつも通りの、いつものザジ。制服着て、焦点の合わない……いや、どこに焦点が合ってるか微妙な目。肩に乗せた、いつもの鳥。だが、今なら解る。解ってしまう。その細身の身体に内包された、強烈なまでの圧力……魔力。
こいつはそれを、「あえて隠さずに解き放って」いるだけだ。威圧とかじゃねえ。威圧するんなら、それに更に指向性を持たせて、「噴き付ける様に」こちらへ流してくるだろう。それをしないって事は、あくまで礼儀として、「普段隠してる物」をさらけ出してるだけだ。
ふうん……。わたしはお茶とお茶菓子を出しながら、ザジに問う。
「なあザジ、大丈夫なのかよ。麻帆良の魔法使いどもに感知されねーか?」
「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル家の周囲は、わたしの仲魔が弱い結界を張っています。結界の存在を気付かせるほど強くは無く。結界の中の物を察知させるほど弱くは無く。」
「そうなのか、ネギさん?」
「15分ほど前からかな。だけど悪意があったり、攻性の物じゃなかったんで。様子見してたんだよ。と言うか、千雨もそのうち知覚できるようになってね。」
「面目ねえ……。」
「いや、そのうちでいいから。」
そしてネギさんも、「礼儀として」隠してた魔力をさらけ出す。1テンポ遅れてわたしも続く。いや、ネギさんデカいな魔力が。わたしとザジ合わせたよりも……と言うかその何倍もデカい。わたしの表情を見たんだろう、ネギさんは言った。
「ああ、僕の魔力と「気」はもっと大きいですが、さすがにこれ以上さらけ出すと色々とまずいですからね。お仲魔さんの結界ごしでも感知できてしまいます。
ちなみに僕の魔力は科学的な手法で増強してるからさ。千雨にもそのうち同じ処置を受けてもらうから。」
まだもっとデカいのかよ。と、ザジが微妙に微笑んで言った。
「お初にお目にかかります、ネギ・スプリングフィールド殿。わたしはザジ・レイニーデイ。金星に
「お初にお目にかかります、ザジ・レイニーデイさん。本来貴女の様な高貴な方と話せるような身分では無いのですがね。」
「いえ、貴方のお母上は王女であり、かつての女王ではありませんか。」
「それは昔の事。今は大罪人としての冤罪を着せられ、全ての地位を剥奪された亡国の女性に過ぎません。しかも……いえ、その事は。その息子である僕も、その手の地位は持っていませんし、必要ともしていません。」
ザジの奴、何を……?って言うか、ザジがにっこり笑った。微笑だったらわずかに見た事あるけど、こんなにはっきり笑うのは初めてかも。
「では私設宇宙軍ネギ・スプリングフィールド艦隊(仮称)総司令官殿の肩書きであれば?太陽系に現状で64もの宇宙基地を持ち、月の裏側をほぼ支配下に置き、火星圏、木星圏、土星圏にも進出している軍事独裁政権の長であるならば?」
「木星圏と土星圏は、ごく最近です。ブレイン……人格を持つ大型量子コンピューターたちですが、彼らの助け無くば流石にここまでは。働いてくれている
魔界の方と言うのは、随分と科学方面にもご理解がある様だ。もっと
「いえ、わたしを含む高位の更にごく一部だけです。わたしは更にその中でも異端でしょうね。」
ジャブの応酬は終わったのか?ネギさんが話題を微修正する。
「……金星を依り代とする異界、魔界ですか。もしや
「それはどうなのでしょうね。わたしも
「知っています。」
「では、これは姉の研究機関が試算したデータなのですが、あと最短で9年8ヶ月弱で
「申し訳ありませんが、試算が甘いかと。最短は、5年4ヶ月です。ただし『
「……。」
ザジは一瞬詰まったが、再度口を開いた。
「此度は、貴方のお立場と貴方の考えている「計画」をお聞きしに参りました。対価はまず最初の物として、情報です。魔族たちは、
「答えを聞く前に、対価の内容を話してしまうのは悪手では?」
「わたしは交渉が下手ですので。」
にっこり笑うザジ。タヌキめ。ネギさんは良い意味で甘い人だから、そう言う手段を取れば……。だがザジ。ネギさんはそれもたぶん、計算済みではあるんだぞ。甘いけど、甘いだけじゃないんだ。
「まず最初に、僕は『
「では賛成している、と?」
「いえ、反対しています。今
「それはどう言う……。」
「確率論の観点から、未来のおおまかな歴史の流れを掴む学問、『
そしてネギさんは、『
「申し訳ありません、よく分かりません。」
「つまりおおまかな説明をいたしますが……。火星に進出した人類は、位相の異なる空間に蓄積されたクリーンな新エネルギー「魔力」を発見、火星と宇宙開発のために使ってしまう、と言う事です。その「魔力溜まり」の中で、12億の
いえ、何らかの形で知らされていても、あえて使ってしまうのは、数学的に証明されています。宇宙は過酷です。「冷たい方程式」は、SF小説のタイトルだけじゃないんですよ。」
「……。」
「金星の魔族たちは、そのときどう動きますか?元
そしてネギさんは、呟く様に言った。
「まあその未来は、もう僕らが潰しましたが。」
「え?」
「現実の火星は今、急速に
「火星にあったのは、幾つかの基地だけでは……。」
「なるほど、情報が古いんですね。今はほぼ火星全土が機械の惑星になって、重力モーター発電システムやブラックホール炉、衛星軌道上の真空エネルギー発電所とかから送電されています。人格型ロボットたちが、張り切って国家を建設してますよ。」
「いつの間に……。」
まあ、宇宙で生産してた大量の物資や資材、大量の作業ロボット、大勢の人格ロボットを投入して、あっと言う間に数ヶ月でなんとかしたからなあ……。でもそのせいで、宇宙艦隊の方はほぼ物資が尽きたらしい。今、あちこちの宇宙基地では物資を大車輪で生産してるって話だな。
最初は幼少期のネギさん1人だったが、分身まで使ってロボットの部下たくさん作って、たくさんのロボットの部下がたくさんのロボットの部下を作って……。って感じで倍々ゲーム?で人員?増やしてったらしいな。小惑星ジュノーの宇宙基地とロボット工場、それにブレイン0-0が出来てからは、物凄く楽になったって言ってたが。
「ではその機械の惑星に、人は住めるのでしょうか。」
「大丈夫です。重力制御と大気調整のシステムは、既に稼働しています。食料プラントは、まだ予定数に足りていませんが、着工はしていますので。」
「食料プラント……。と言う事は、なるほど。ロボットでは食料は必要ないはず。
貴方の計画は、
「違うぜ。」
「違います。」
「え。」
ネギさんは、真顔で言葉を紡ぐ。これで目が死んでる、残念な美形でなかったらなあ。まあ、いいか。それでネギさんの真価を知らない他の女が、無作為に寄って来ないんだから。
……え?なんで他の女が寄って来ない事を、喜ばにゃならねーんだ?
「これ以上を話すには、情報の対価を含めて2つの約束をしてもらわねば話せません。
1つ、僕の了解無しに、貴女から他者へこの件についての情報開示を禁じます。最低でも、僕の計画の第一段階が完了するまで。
2つ、貴女の力が及ぶ程度でいい。『
「……わかりました。それらについては、わたし自身が「契約」しましょう。魔族の「契約」です。わたしの誠意として。」
「了解です。千雨、契約書を用意して。」
「ああ。」
そしてネギさんは、自らの計画を語る。ザジは驚きの色も見せずに聞いていたが、ネギさんが話し終えると、少し哀し気に目を伏せた。
やがて全て話が終わると、お開きの時間となった。
「本日は、本当にありがとうございました。」
「いえ、僕の方こそ。今日は有意義な話し合いでした。」
「それでは今日はこの辺で。」
ザジは、解放していた自分の魔力の気配を普段通りに収める。ネギさんとわたしも、それに倣った。そしてザジは帰って行く。
「……疲れたぜ。」
「ご苦労さま、千雨。」
「いや、とりあえずお茶淹れなおすか。」
ちなみにザジは、お茶とお茶菓子を綺麗に平らげて行った。食った様子見せてなかったのに、いつの間に……。
[フェイト]
「申し訳ありません、フェイト様。ご命令のあったネギ・スプリングフィールドとの会談、未だ実現しておらず……。」
「そうか。やはり僕が自分で彼のところに行くしか無いかな。」
「お、お待ちを!いま少し、お時間をいただけないでしょうか!必ずや……!」
まあ、
「うん。できるだけ急いで。」
「ははっ!」
困ったね。ネギ君とできるだけ早く話し合って、彼の「真意」を聞かねばならないのに。
フェイトだけ交渉できなくて、困ってます(笑)。
なお交渉の裏で、こっそりそこはかとなく茶々丸強化。たぶん原作より強くはなるかな、と。どうなることやら。