[エヴァンジェリン]
ふう、このところ麻帆良から出る機会が多いな。まあ、あの街は呪いが解けて何時でも出られる前提であれば、そう悪くは無い。だがやはり魔力が抑制されて身体能力も何も10歳の子供並になってしまう事を思えば、やはり、な。
まあだが、来年3月の卒業までは一応居る事にしておくつもりだ。まあネギの火星政府の仕事を手伝ってやらねばならんし、学校の出席は卒業に必要な最低限度になってしまうだろうが、な。
に、しても。ネギが「夏休みですし、遠出の仕事になるんですが、手伝っていただけませんか?」と言うので、先払いで夏休みの宿題を手伝わせた。夏休みの宿題、読書感想文みたいな、わたし自身でなければいけない物以外が、半日経たずに全部終わったのは凄いと思ったが。
で、その上でなんでも手伝ってやるぞと言ったのだがなあ……。
「遠いと言っても、火星まで来るとは思わなかった。」
「人生二回目の海外旅行が火星か……。」
「なんだ千雨、貴様一回目はどこだ。」
「ついしばらく前の、修学旅行のハワイだよ、エヴァンジェリン。あんときゃ、オマケで京都旅行まで付くとは思わなかったが。」
こいつとも、名前で呼び合う様になってどれぐらいか。ずいぶん気安くなったものだ。こいつもネギに手伝ってもらって、夏休みの宿題を早期に終わらしてこの火星旅行についてきた。他に学生では、茶々丸、木乃香、刹那、楓、古菲、超、葉加瀬、龍宮、五月、愛衣と
ちなみに夏休みの宿題を、
そう言えば葉加瀬と超が、「そうだ!手書き風フォントを新規に作れば!」「オオ!そのフォント、乱数デ微妙に崩せば手書きと見分けられぬヨ!」と騒いでいたな。そして「さっそくわたしたちの筆跡データを取って、それを元にプログラムを開発……。」とか言い始めたところで、その場に偶然いた瀬流彦が「君らならその労力で、普通に宿題やった方が早く無いかい?」と突っ込んだ。超と葉加瀬は肩を落として素直に夏休みの宿題を片付けていたな。天才とは馬鹿なのか。
「お茶の支度ができました。」
「ああ、ご苦労
うん、茶々丸の妹壱号から参号も、この旅に付いて来ている。いちいち「
とりあえず宇宙港兼空港の一室で、茶と茶菓子で一服する。先ほど名を挙げた学生連中の他に、今回
「火星で食べる肉まんも、なかなか乙なものだねえ。」
そう言っているのは弐集院だ。五月がたくさん作った肉まん、あんまん、ピザまん他諸々を次々に平らげ、満足気にしている。奴とガンドルフィーニは娘がいるからな。あまり長くこの仕事に拘束しておくわけにもいくまい。
そこへネギが戻って来た。ちょっと難しい顔をしている。
「皆さん、2~3日は現実の火星に居る予定だったんですが……。少し予定を早めて、今すぐ独自ゲートで
「何があった?」
「向こうに送り込んでいた僕の分身が、急ぎ戻って来まして。
まず間違いなく、『
どういう事だ?奴らの計画には、神楽坂明日菜が必須だったはず。なのに
「麻帆良学園の図書館島地下と母の故郷旧オスティアを繋ぐ、20年以上前に封印・廃棄された『ハズ』のゲート……。ですが、それは破壊されたわけではありません。麻帆良に残っている面々からも連絡があり、確認が取れました。『今現在、麻帆良学園の世界樹が一瞬発光した』そうです。また、火星にある僕の独自ゲート周辺にも魔力溜まりが出来ています。
まだ撤去していなかった僕の、魔力を抜いて電力に変換する装置を稼働させて、世界樹発光現象は食い止めたそうですが。
『
「ネギさん、それでどうするつもりだ?」
「とりあえず、敵の計画は止めておかないといけないですね。こっちの儀式準備は、儀式場の建設がまだ終わってないんです。作業ロボットたちを送り込んで、人海戦術で造営してはいますが。」
千雨の問いに答えたネギが、にやりと不敵に笑う。そこへ古菲が突っ込みを入れた。
「だけど転移魔法でも行けないアルね?どうやって行くつもりアル?」
「それは大丈夫。
その返しに、全員がビミョー、と思ったのは間違いない。
[
僕と「
「さあ、ではまず3手に分かれて『目標』の捜索にあたる。「
「!」
「く!」
ぎりぎりで感知できた、わずかな殺気。僕らはかろうじて攻撃を回避する。凄まじいまでの雷撃。
「躱されてしまいましたか……。神鳴流奥義、『真・雷光剣』。やはり技名を言葉に出さないと、気合いが乗りませんね。」
「いや葛葉、悪いが今一瞬だけ殺気が漏れていたぞ?」
「それは……。我が身の未熟でしたか。」
「貴様らは!」
葛葉刀子と神多羅木、明石の3人の魔法先生が、ゲート前の物陰に待ち構えていたのだ。明石がため息混じりに言う。
「やれやれ、『アーウェルンクス』が3人も、かね。『ちょっと』骨だな。」
「ちょっと、だと?貴様ら3人ごとき……。」
「3人だけじゃないよ。」
「……!タカミチ・T・高畑!?」
高畑が別の物陰から、ゆっくりと歩み出て来る。その両手はズボンのポケットに入っているが、油断はできない。あれは『無音拳』とも言う、拳による居合いの「型」なのだ。おそらく通常の『無音拳』ならば我々の障壁で防げるだろうが……。
「わたしも混ぜてくれませんか?」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。たまにはわしも、若い者に混ざって運動するのもいいじゃろうて。」
「アルビレオ・イマ!?近衛近右衛門まで!?」
「アル、きっちり頼むよ。」
次の瞬間、アルビレオ・イマが鋭く叫ぶ。敵味方問わず、その場の全員に緊張が走った。
「みなさん!!」
「「「「「「!!」」」」」」
「わたしの事は、クウネル・サンダースと呼んでくださいと言ったはずです!」
「「「「「「……。」」」」」」
空気が一瞬でぐだぐだになった。……チャンスだ。
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。
「え、あ、ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!!」
やはり「
「君らが明日菜君を狙って来ているのはわかっているんだ。であるならば、容赦はできないな。」
「
キュキュン!
高畑の右腕から高い音が発する。「
パチン!
神多羅木がフィンガー・スナップ。無詠唱で風の魔法が発動し、カマイタチが僕を襲う。切断はされなかったが、ダメージは大きい。そこへ葛葉が斬りかかって来る。障壁は既に再展開しているが、いつ再度の中和をされるかわからない。障壁は頼れない。
「作戦失敗だ!即座に撤退!」
近衛とアルビレオが、大きな魔法の準備をしている。高畑は2人の「アーウェルンクス」を相手取って余裕がある。ここで『
機会はまだある……。今は戦力の保全が優先目標だ。
だが、逃げられるか?
[デュナミス]
旧オスティア空中王宮跡の再稼働させたゲートポートより、3人の「アーウェルンクス」を麻帆良に送り込んだ。過剰戦力かとも思うが、万全を期さなくてはならん。『黄昏の姫御子』を手にしたなら、早急に
今、旧オスティアの周辺にはクルト・ゲーデルらの率いるメガロメセンブリア艦隊やヘラス及びアリアドネーなど各国艦隊が集結している。しかし超大規模積層障壁に阻まれ、こちらへの手出しは出来ないでいる。今に見ておれ。なんとしても
しかし、妙だな?旧オスティア周辺への、魔力の集まりが微妙に弱い。まるで何処か1ヶ所ほど、ゲートポートを破壊し損ねた様な……?いや、それであれば魔力の集まりは半減するはず。そこまでは行っていない。いや、もっと小規模な……小さなゲートであればどうだ?何処かに違法の未確認ゲートでもあったとすれば?
いや、今となってはそれを確認してはおれん。これだけの魔力が集まれば、余裕で
「『
わたしは
ブウウウゥゥゥン……。
無線機のハム音の様な、低い音が響いた。そして円錐形の光のカーテンが幾つもその場に出現する!……なんだ、これは?魔力は感じぬ。なんなのだ、コレは!?
「転移魔法が働かないなら、科学の力で空間転移すればいいじゃないか。」
「無茶苦茶アル。」
「いや、正しいは正しいけどよ。もうちょっと何かこう……。」
「さすが
こやつは……!黒い制帽、黒い革ジャン、黒い皮ズボン、黒い装甲ブーツ、黒い籠手、黒い皮コート、そして黒い仮面!右手には巨大な、機械を束ねたかの様な杖!間違いない、こいつは「
「ネギ・スプリングフィールド!!」
「やれやれ。僕の様な立場で有名になっちゃうのは、あまり有益では無いんだけどな。いや、害があると言ってもいい。」
「なら、さくっと潰すか?」
「エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルまでもが!?な、何故だ!麻帆良に封じられていると聞いた……そうか!ここは今、麻帆良と繋がっている!
だ、だが貴様が何故、そいつに味方しているのだ!?」
「なんか見当違いな事を言っているな。」
まずい!このままでは……。右腕を復元したばかりだからと、「
「デュナミスはん?お困りの様ですなあ。」
「き、貴様は月詠!?そうか、そいつらに与していたのか!」
「あーん、センパイ。覚えていてくだはったんやねえ。うち、うれしおすわぁ……。」
「わたしは嬉しくもなんとも無いがな。」
「ああん、いけずやなあ。」
む、あの月詠とか言った小娘、「
そう思った時だ。ゲートポートの向こうから、3つの人影が湧いて出た。おお、戻ったか「
「デュナミス、失敗だ。待ち伏せに……!?これは!?」
「お前たち!こやつらを倒せ!ただし気を付けろ、強敵だ!あの『ネギ・スプリングフィールド』が率いている!」
「「「!!」」」
そしてネギ・スプリングフィールドが徐に言った。
「……君らを潰しても潰さなくてもいいんだけど、ね。せっかくだから、潰しておこうか。」
ぞっとするような、冷たい響きの言葉。このわたしが思わずゾッとして、次の瞬間苛立ちがこみ上げる。……まあいい。あのナギ・スプリングフィールドの息子で、アリカ王女の息子。こやつをナントカしてしまえば、クルトやタカミチにこれ以上無い嫌がらせになるだろう。
いや、待て。こやつを上手く捕らえて、
「いい度胸だな、
わたしは堂々と叫んだ。さあ戦闘だあ!
とうとう『
そして我らが
これから