魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第029話:計画発動……?

[エヴァンジェリン]

 

 ふう、このところ麻帆良から出る機会が多いな。まあ、あの街は呪いが解けて何時でも出られる前提であれば、そう悪くは無い。だがやはり魔力が抑制されて身体能力も何も10歳の子供並になってしまう事を思えば、やはり、な。

 まあだが、来年3月の卒業までは一応居る事にしておくつもりだ。まあネギの火星政府の仕事を手伝ってやらねばならんし、学校の出席は卒業に必要な最低限度になってしまうだろうが、な。

 に、しても。ネギが「夏休みですし、遠出の仕事になるんですが、手伝っていただけませんか?」と言うので、先払いで夏休みの宿題を手伝わせた。夏休みの宿題、読書感想文みたいな、わたし自身でなければいけない物以外が、半日経たずに全部終わったのは凄いと思ったが。

 で、その上でなんでも手伝ってやるぞと言ったのだがなあ……。

 

「遠いと言っても、火星まで来るとは思わなかった。」

「人生二回目の海外旅行が火星か……。」

「なんだ千雨、貴様一回目はどこだ。」

「ついしばらく前の、修学旅行のハワイだよ、エヴァンジェリン。あんときゃ、オマケで京都旅行まで付くとは思わなかったが。」

 

 こいつとも、名前で呼び合う様になってどれぐらいか。ずいぶん気安くなったものだ。こいつもネギに手伝ってもらって、夏休みの宿題を早期に終わらしてこの火星旅行についてきた。他に学生では、茶々丸、木乃香、刹那、楓、古菲、超、葉加瀬、龍宮、五月、愛衣と小太郎(イヌ)も付いて来ている。そう言えば、超と葉加瀬と龍宮はいまだに名字呼びだな。古菲などはフルネームだ。

 ちなみに夏休みの宿題を、幻想空間(ファンタズマゴリア)に持ち込めないのは(つら)いと思う。いや(つら)いよりは面倒くさい、だな。超たちも、手書きでやらねばならぬため、夢中学習装置(ドリームラーニングシステム)が使えないとぼやいていた。記録ディスクとやらだと、テキストデータやワープロ形式でしか情報を出し入れできぬそうだ。

 そう言えば葉加瀬と超が、「そうだ!手書き風フォントを新規に作れば!」「オオ!そのフォント、乱数デ微妙に崩せば手書きと見分けられぬヨ!」と騒いでいたな。そして「さっそくわたしたちの筆跡データを取って、それを元にプログラムを開発……。」とか言い始めたところで、その場に偶然いた瀬流彦が「君らならその労力で、普通に宿題やった方が早く無いかい?」と突っ込んだ。超と葉加瀬は肩を落として素直に夏休みの宿題を片付けていたな。天才とは馬鹿なのか。

 

「お茶の支度ができました。」

「ああ、ご苦労茶々妹壱号(ちゃちゃまいいちごう)。」

 

 うん、茶々丸の妹壱号から参号も、この旅に付いて来ている。いちいち「茶々丸妹壱号(ちゃちゃまるいもうといちごう)」とか呼ぶの面倒なので、とりあえずと言う事でこやつらは「茶々妹(ちゃちゃまい)」と呼んでいる。きちんとした名前を考えよう考えようと思いつつ、適当に呼んでいるのは若干の忸怩(じくじ)たる思いが無いわけでは無い。

 

 

 

 とりあえず宇宙港兼空港の一室で、茶と茶菓子で一服する。先ほど名を挙げた学生連中の他に、今回(ジジイ)の計らいで出張扱いと言う事で付いて来た教員どもも、茶をかっ喰らっていた。瀬流彦とガンドルフィーニ、弐集院の3人だ。葛葉、神多羅木、明石、それにタカミチは『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の連中が明日菜を奪取に来る可能性に備えて麻帆良に居残りだ。

 

「火星で食べる肉まんも、なかなか乙なものだねえ。」

 

 そう言っているのは弐集院だ。五月がたくさん作った肉まん、あんまん、ピザまん他諸々を次々に平らげ、満足気にしている。奴とガンドルフィーニは娘がいるからな。あまり長くこの仕事に拘束しておくわけにもいくまい。

 そこへネギが戻って来た。ちょっと難しい顔をしている。

 

「皆さん、2~3日は現実の火星に居る予定だったんですが……。少し予定を早めて、今すぐ独自ゲートで魔法世界(ムンドゥス・マギクス)へ移動します。」

「何があった?」

「向こうに送り込んでいた僕の分身が、急ぎ戻って来まして。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)を繋ぐゲートが、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)側で次々に破壊されています。まあ僕の独自ゲートは秘匿されているので破壊されていませんけれどね。

 まず間違いなく、『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』のテロですよ。奴ら、神楽坂明日菜さんの存在を掴んだ事で、乾坤一擲の作戦に出た様ですね。奴ら自身の計画を、一気に進めるつもりでしょう。」

 

 どういう事だ?奴らの計画には、神楽坂明日菜が必須だったはず。なのに現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)へ行くためのゲートを破壊してしまっては、神楽坂明日菜を捕らえに行く事も、連れて帰る事もできないではないか。

 

「麻帆良学園の図書館島地下と母の故郷旧オスティアを繋ぐ、20年以上前に封印・廃棄された『ハズ』のゲート……。ですが、それは破壊されたわけではありません。麻帆良に残っている面々からも連絡があり、確認が取れました。『今現在、麻帆良学園の世界樹が一瞬発光した』そうです。また、火星にある僕の独自ゲート周辺にも魔力溜まりが出来ています。

 まだ撤去していなかった僕の、魔力を抜いて電力に変換する装置を稼働させて、世界樹発光現象は食い止めたそうですが。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)側では世界間の魔力量の差による魔力圧の差で、旧オスティア側に大量の魔力が集まっています。旧大戦で崩落した旧オスティアは莫大な魔力により再度浮上し、その周辺には超大規模積層障壁、魔力バリアが編まれています。転移魔法も無理そうですね。

 『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』は、おそらく、と言うか間違いなく、再稼働させた麻帆良とのゲートで麻帆良へ向かい、明日菜さんを捕らえて取って返し、そのまま魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の人々を「完全なる世界(あちら)」へ送るつもりでしょうね。まさしく乾坤一擲です。」

「ネギさん、それでどうするつもりだ?」

「とりあえず、敵の計画は止めておかないといけないですね。こっちの儀式準備は、儀式場の建設がまだ終わってないんです。作業ロボットたちを送り込んで、人海戦術で造営してはいますが。」

 

 千雨の問いに答えたネギが、にやりと不敵に笑う。そこへ古菲が突っ込みを入れた。

 

「だけど転移魔法でも行けないアルね?どうやって行くつもりアル?」

「それは大丈夫。I have a plan.(わたしにいいかんがえがある)

 

 その返しに、全員がビミョー、と思ったのは間違いない。

 

 

 

(クゥィントゥム)

 

 僕と「(クゥアルトゥム)」、「(セクストゥム)」の3人は、旧オスティア空中王宮跡の再稼働させたゲートポートから、麻帆良学園図書館島地下へと転移した。今回の指揮は、好戦的な「(クゥアルトゥム)」よりも冷静な僕が適任だと、実働経験の差には目を(つむ)り、僕が執る事になった。

 

「さあ、ではまず3手に分かれて『目標』の捜索にあたる。「(セクストゥム)」は女性体だからね。最も確度の高い、麻帆良学園女子中等部の寮をあたってもら……散開!!」

「!」

「く!」

 

 ぎりぎりで感知できた、わずかな殺気。僕らはかろうじて攻撃を回避する。凄まじいまでの雷撃。

 

「躱されてしまいましたか……。神鳴流奥義、『真・雷光剣』。やはり技名を言葉に出さないと、気合いが乗りませんね。」

「いや葛葉、悪いが今一瞬だけ殺気が漏れていたぞ?」

「それは……。我が身の未熟でしたか。」

「貴様らは!」

 

 葛葉刀子と神多羅木、明石の3人の魔法先生が、ゲート前の物陰に待ち構えていたのだ。明石がため息混じりに言う。

 

「やれやれ、『アーウェルンクス』が3人も、かね。『ちょっと』骨だな。」

「ちょっと、だと?貴様ら3人ごとき……。」

「3人だけじゃないよ。」

「……!タカミチ・T・高畑!?」

 

 高畑が別の物陰から、ゆっくりと歩み出て来る。その両手はズボンのポケットに入っているが、油断はできない。あれは『無音拳』とも言う、拳による居合いの「型」なのだ。おそらく通常の『無音拳』ならば我々の障壁で防げるだろうが……。

 

「わたしも混ぜてくれませんか?」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。たまにはわしも、若い者に混ざって運動するのもいいじゃろうて。」

「アルビレオ・イマ!?近衛近右衛門まで!?」

「アル、きっちり頼むよ。」

 

 次の瞬間、アルビレオ・イマが鋭く叫ぶ。敵味方問わず、その場の全員に緊張が走った。

 

「みなさん!!」

「「「「「「!!」」」」」」

「わたしの事は、クウネル・サンダースと呼んでくださいと言ったはずです!」

「「「「「「……。」」」」」」

 

 空気が一瞬でぐだぐだになった。……チャンスだ。

 

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!契約により(ト・シュンポライオン)我に従え(ディアコネートー))……。」

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。契約により(ト・シュンポライオン)……。」

「え、あ、ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!!」

 

 やはり「(クゥアルトゥム)」が一瞬遅れた。彼は精神面の調整が甘めの様だ。「(セクストゥム)」はしっかり僕の詠唱と同時に詠唱を開始している。しかしその「(セクストゥム)」に、タカミチ・T・高畑の『豪殺・居合い拳』が決まった。

 

「君らが明日菜君を狙って来ているのはわかっているんだ。であるならば、容赦はできないな。」

 

 「(クゥアルトゥム)」が詠唱を中断して、詠唱が一番早かった僕を護ろうと間に割り込む。そして『豪殺・居合い拳』に吹き飛ばされた。だめだ、詠唱が間に合わない。詠唱を中断、葛葉、神多羅木、明石の間に割り込んで格闘戦を挑む。こいつらを盾にすれば、そうそう威力の大きな攻撃はできまい。

 

キュキュン!

 

 高畑の右腕から高い音が発する。「(テルティウム)」の報告にあった、呪文詠唱の代行アイテムか!?……!!障壁が中和された!?再展開を……。

 

パチン!

 

 神多羅木がフィンガー・スナップ。無詠唱で風の魔法が発動し、カマイタチが僕を襲う。切断はされなかったが、ダメージは大きい。そこへ葛葉が斬りかかって来る。障壁は既に再展開しているが、いつ再度の中和をされるかわからない。障壁は頼れない。

 

「作戦失敗だ!即座に撤退!」

 

 近衛とアルビレオが、大きな魔法の準備をしている。高畑は2人の「アーウェルンクス」を相手取って余裕がある。ここで『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の残り少ない戦力である僕らが倒されてしまうわけにはいかない。

 機会はまだある……。今は戦力の保全が優先目標だ。

 

 

 

 だが、逃げられるか?

 

 

 

[デュナミス]

 

 旧オスティア空中王宮跡の再稼働させたゲートポートより、3人の「アーウェルンクス」を麻帆良に送り込んだ。過剰戦力かとも思うが、万全を期さなくてはならん。『黄昏の姫御子』を手にしたなら、早急に造物主の掟(コード・オブ・ライフメーカー)、グレートグランドマスターキーを生み出し、コピーのグランドマスターキー、マスターキーを量産しなくてはならん。

 今、旧オスティアの周辺にはクルト・ゲーデルらの率いるメガロメセンブリア艦隊やヘラス及びアリアドネーなど各国艦隊が集結している。しかし超大規模積層障壁に阻まれ、こちらへの手出しは出来ないでいる。今に見ておれ。なんとしても(ライフメーカー)の宿願を果たし……そしてクルト・ゲーデルやタカミチ・T・高畑に一泡吹かせてくれるわ!!

 しかし、妙だな?旧オスティア周辺への、魔力の集まりが微妙に弱い。まるで何処か1ヶ所ほど、ゲートポートを破壊し損ねた様な……?いや、それであれば魔力の集まりは半減するはず。そこまでは行っていない。いや、もっと小規模な……小さなゲートであればどうだ?何処かに違法の未確認ゲートでもあったとすれば?

 いや、今となってはそれを確認してはおれん。これだけの魔力が集まれば、余裕で魔法世界(ムンドゥス・マギクス)再編は成る。なんとしても、なんとしても(ライフメーカー)よりの使命、果たさねばならん!

 

「『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』に、栄光あれえええぇぇぇ!……と。さて『墓守り人の宮殿』へと戻るか。」

 

 わたしは(きびす)を返そうとした。その時だ。

 

ブウウウゥゥゥン……。

 

 無線機のハム音の様な、低い音が響いた。そして円錐形の光のカーテンが幾つもその場に出現する!……なんだ、これは?魔力は感じぬ。なんなのだ、コレは!?

 

「転移魔法が働かないなら、科学の力で空間転移すればいいじゃないか。」

「無茶苦茶アル。」

「いや、正しいは正しいけどよ。もうちょっと何かこう……。」

「さすがご先祖様(ネギ・スプリングフィールド)、わかってるネ!」

 

 こやつは……!黒い制帽、黒い革ジャン、黒い皮ズボン、黒い装甲ブーツ、黒い籠手、黒い皮コート、そして黒い仮面!右手には巨大な、機械を束ねたかの様な杖!間違いない、こいつは「(テルティウム)」の報告にあった……。

 

「ネギ・スプリングフィールド!!」

「やれやれ。僕の様な立場で有名になっちゃうのは、あまり有益では無いんだけどな。いや、害があると言ってもいい。」

「なら、さくっと潰すか?」

「エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルまでもが!?な、何故だ!麻帆良に封じられていると聞いた……そうか!ここは今、麻帆良と繋がっている!

 だ、だが貴様が何故、そいつに味方しているのだ!?」

「なんか見当違いな事を言っているな。」

 

 まずい!このままでは……。右腕を復元したばかりだからと、「(テルティウム)」とその手下の小娘どもを、『墓守り人の宮殿』の護りに置いてきた事が仇となったか!だが、只ではやられんぞ!まずは戦闘形態に……む!?

 

「デュナミスはん?お困りの様ですなあ。」

「き、貴様は月詠!?そうか、そいつらに与していたのか!」

「あーん、センパイ。覚えていてくだはったんやねえ。うち、うれしおすわぁ……。」

「わたしは嬉しくもなんとも無いがな。」

「ああん、いけずやなあ。」

 

 む、あの月詠とか言った小娘、「(テルティウム)」が雇った傭兵であったな。あの向こう側の剣士と何らかの因縁がある様だ。1人でもなんとかしてくれるなら、僅かでもやり易い……!

 そう思った時だ。ゲートポートの向こうから、3つの人影が湧いて出た。おお、戻ったか「(クゥアルトゥム)」、「(クゥィントゥム)」、「(セクストゥム)」!……なんでボロボロなのだ?

 

「デュナミス、失敗だ。待ち伏せに……!?これは!?」

「お前たち!こやつらを倒せ!ただし気を付けろ、強敵だ!あの『ネギ・スプリングフィールド』が率いている!」

「「「!!」」」

 

 そしてネギ・スプリングフィールドが徐に言った。

 

「……君らを潰しても潰さなくてもいいんだけど、ね。せっかくだから、潰しておこうか。」

 

 ぞっとするような、冷たい響きの言葉。このわたしが思わずゾッとして、次の瞬間苛立ちがこみ上げる。……まあいい。あのナギ・スプリングフィールドの息子で、アリカ王女の息子。こやつをナントカしてしまえば、クルトやタカミチにこれ以上無い嫌がらせになるだろう。

 いや、待て。こやつを上手く捕らえて、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)各地を回って自分の復活をアピールしているナギ・スプリングフィールドへの人質に使えば!奴の中に封じられていると予想できる我が(ライフメーカー)を復活させる手段にも!

 

「いい度胸だな、英雄(ナギ・スプリングフィールド)の息子よ!このデュナミスを、殺れるものならば殺ってみるがいい!」

 

 わたしは堂々と叫んだ。さあ戦闘だあ!




とうとう『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の計画が発動いたしました。でも、明日菜奪取はタカミチの奮戦で、だいしっぱい。
そして我らがラスボス(ネギ・スプリングフィールド)の出現!
これから彼ら(コズモエンテレケイア)は、どう動くんでしょうか!って言うか、ほんとにどうなることやら。
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