魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第031話:分裂する『完全なる世界(コズモエンテレケイア)

[ナギ]

 

 こいつら、何しに来たんだ。いや、こいつらの目を俺に向ける事ができているのは、ある意味理想的なんだ。だがこいつらは、こちらを攻撃しようともせずに睨みつけているだけだ。

 

「よう、ナギ。こいつら何しに来たんだ。」

「知らん。」

 

 俺の復活をアピールする……と言う建前で、メガロ連中やこいつら『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の目を引き付けるための宣伝旅行に付いて来てくれたジャックの問いに、しかし俺は答えられん。俺は馬鹿だからなあ。……馬鹿と言われて、素直に「おう、馬鹿だがそれがどうかしたか?」と返せる様になったのは何時の事だったかな。

 そう、こいつらは『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の連中だ。しばらく俺たちの後を尾行していたのは知ってた。が、放っておいたんだ。そしたら俺たちが森の中の小道に差し掛かったあたり、人目が無い場所で、こいつら俺たちを取り囲みやがった。ええと、1人はどっかで見覚えのある魔術師タイプ、残り3人は、初めて会う、しかし見覚えのある顔……「アーウェルンクス」の新型だろう。

 と、その魔術師タイプが口を開く。

 

「久しいな、ナギ・スプリングフィールド……。」

「だな。えっと……。」

「デュナミスだ。」

「おお、そうだデュナミス、デュナミス!覚えてる覚えてる!」

「……。」

 

 デュナミスの奴は、仮面を外して素顔を(あら)わにすると、懐から眼鏡を取り出す。そして自分の顔にかけた。

 

「ナギ・スプリングフィールドよ。取引がしたい。」

「あんだ?手前、頭腐ってんのか?」

「ジャック・ラカン。貴様……いや貴殿には聞いていない。黙っていてくれぬか?」

「おう、言うに事欠いて……。」

「頼む。」

「……。」

 

 ジャックの野郎、面食らって黙っちまった。デュナミスの奴、何を……。

 

「この眼鏡は、虚言を感知する物だ。だがしかし、沈黙による嘘や、こちらの拡大解釈などを正す力は無い。ナギ・スプリングフィールド、今この場においてだが、我々は真実が知りたいだけなのだ。お前だけが知り得る、真実を。」

「ふうん……。」

「ほおう……。」

 

 ……なるほどな。ついに知った、か。

 

「おう、だったら1,500万ドラクマはもらわねーとな。ちなみに俺の取り分1,000万。」

「な!?待て待て待てってジャック!こいつらそんな事言ったら……!」

「なるほど、1,500万ドラクマだな。「(クゥィントゥム)」……。」

「それなら手持ちがある。活動資金の残りだが。取引成立だ。」

 

 さしものジャックも愕然とする。

 

「なに!?」

「ホラみろ!」

「しまった……。もう少し吹っ掛けるんだったぜ……。」

「おまえな。」

 

 って言うか、こいつら本気で1,500万ドラクマ入ったトランクを寄越して来やがった。重えっつの。

 

「では問う。……貴様、いや貴殿の内に、我が主……造物主(ライフメーカー)は今もいるか?」

「否、だ。いねえ。」

「……真実。」

「「「な!?」」」

 

 おー、「アーウェルンクス」3人は愕然としてやがる。

 

「続けて問う。何故造物主(ライフメーカー)は、貴殿の内から消えた?」

「村が襲われた衝撃で、前世の記憶に目覚めたネギが、お(はら)いした。」

「……真実。まさか、な。あまりにおそるべき少年だ。……これが最後の問いだ。」

 

 デュナミスの野郎、悲壮感(あふ)れてやがる。

 

造物主(ライフメーカー)は、(はら)われて後、どうなった?」

「消滅した。成仏したんじゃねえの?」

「……。」

「デュナミス!どうなんだ!」

「デュナミス!」

「し……ん……じつ、だ。真実だ……。ナギ・スプリングフィールドは真実を語っている。我らが主(ライフメーカー)は、既にこの世界にはおられぬ……!!」

「「「!!」」」

 

 うん。「アーウェルンクス」新人3人は、心底愕然としているな。悲嘆に暮れるデュナミスは、だが(きびす)を返す。女型の「アーウェルンクス」が、デュナミスを呼び止めた。

 

「デュナミス……。どこへ。」

「まだだ……。(ライフメーカー)はおられずとも、その計画(かんぜんなるせかい)(つい)えたわけでは無い。あと9年と半年、まだ時間はわずかなりと残されている。貴様らは自由にするがいい。」

「わ、わたし、は……。」

「少し考えたい……。僕はデュナミス、貴方によって目覚めさせられた。だから、(ライフメーカー)にはお会いした事がない。(ライフメーカー)計画(かんぜんなるせかい)に対する忠誠は設定されてはいる。故に、たしかに衝撃ではあったが……。デュナミス、僕は貴方とは行かない。少なくとも、結論が出るまで。」

「お、おい「(クゥィントゥム)」……。」

「わたしはとりあえず、デュナミスに付いて行く。付いて行かせてもらうかわりに、計画の推進には協力する。けれどわたしなりの結論が出たら、もしかしたら離脱するかも知れない。」

「あ、「(セクストゥム)」、え……。」

 

 ふうん。って事は残る1人が「(クゥアルトゥム)」あたりか?おろおろしている間に、別方向に歩き出したデュナミスと「(クゥィントゥム)」に置いてかれて、あわててデュナミスたちの方を追っかけてったよ。

 さあて、事は動き始めてやがる。『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』は分裂したっぽいから、脅威度は下がったろ。そんじゃメガロの連中の目を、できるだけ引き付けねえとな。

 

 

 

[フェイト]

 

 僕は今、魔力が再び消失して大地に落ちた旧オスティアに隠れ潜んでいる。いや、ネギ君やる事が豪快だね。(コヨミ)(タマキ)から聞いたけど、旧オスティア空中王宮跡のゲートポートを……その要石を破壊してしまうとは。なるほど、僕ら(コズモエンテレケイア)の計画を阻止するならば、それが手っ取り早い。

 そして『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』が自滅したと見た各国艦隊は、最低限の監視部隊を置いて帰還した。って言うか、本気で油断しているね。まあ、その方が動きやすくていいんだけれど。

 今ここには、僕と僕の従者5人、そして墓所の主の7人が揃っている。彼女らには今しがた、『心理歴史学(サイコヒストリー)』で計算した結果、「完全なる世界」が成功したとしても近い未来に、地球から進出してきた火星移住者によって破壊されるであろう事がわかったと、伝えてある。

 

「しかし、な。その『心理歴史学(サイコヒストリー)』技術、じゃが。ネギ・スプリングフィールドから贈られたものであるのじゃろう?あ奴にとって有利な結果になる様に仕込みがしてある可能性は?」

「過去のデータを元に、現在の社会情勢を『未来予測』できるか試してみたんだよ。結果は完璧に近かった。この結果を僕に導き出させるのがネギ君の狙いではあっただろうけれど。僕を誘導するのに、虚言は用いていない。事実のみを言っている。

 僕はこれからネギ君と話す。そして彼の真意を確かめなくてはならない。」

 

 そして僕は、ネギ君から貰った腕時計型通信機で、ネギ君を呼び出し(コール)した。……少々驚いた。通信機の上の空間に、立体映像でネギ君の姿が映し出されている。てっきり音声のみの通信だと思っていたからね。

 ちなみにネギ君は、以前見た戦闘装備ではなく、ラフな普段着を着用している。まあそれはそうだよね。いつもあの格好をしていたら、息が詰まるだろう。しかし仮面をしていない彼の目は、なんと言うか死人の目の様だね。言い換えれば、疲れ果てた老人の目の様でもある。

 

『こちらネギ・スプリングフィールド。フェイトかい?』

「こちらフェイト、感度良好。……凄い性能の通信機だね。」

『僕の自信作だよ。褒めてくれてありがとう。他人に見られたくないときは、SOUND-ONLYのモードにすれば良いよ。

 ……で、通信をくれたと言う事は、君らの計画(プラン)が一時的には成功しても将来的には破滅への道を辿る事を理解した、で良いのかな?』

「ああ。もっともどちらにせよ、君の活躍で旧オスティアのゲートの要石が破壊された以上、僕らの計画(プラン)は風前の灯だけどね。」

 

 そうだよね。『完全なる世界(ぼくら)』は各地のゲートポートを破壊したけれど、それは彼らにもできないわけじゃない。ネギ君は話を続けた。

 

『ところでフェイト。本題に入る前に。君に伝えておかないといけない事がある。デュナミスたちに教えて、君に伝えておかないのはフェアじゃないからね。』

「なんだい?」

『6年前、僕の育った村が悪魔の集団に襲われた。そのとき僕が前世の記憶に目覚めたのは知っているよね。そのとき、僕を助けるために村に父さん……ナギ・スプリングフィールドがやってきたんだ。

 父さんは、だが突然苦しみ出した。僕が前世の知識で父さんを調べたら、なんか他人を乗っ取るような(たち)の良くない霊に()かれてたんでね。御祓(おはら)いした。』

「!」

 

 それは……。

 

『うん、君たちの言う造物主(ライフメーカー)の霊体だったよ。そして彼?たぶん彼は成仏して消滅した。君らの創り主は、もう居ない。僕の手によって、ね。』

「そう。」

『反応薄いね?』

 

 僕はその造物主(ライフメーカー)自身によって、彼や計画への忠誠心を「あえて設定されないで」創られた、らしいからね。さすがに(ライフメーカー)の消失には色々と感じる物は無いとは言わない。でも、もっと大事な物がある。そう思う。思ってしまう。

 

「教えてくれた事には感謝する。けれど、今大事なのはそれじゃない。『心理歴史学(サイコヒストリー)』による未来予測、あれは()ける事はできないのかい?」

『できるよ。前提条件をひっくり返せばいい。それ以外の小手先の方法……。計画(プラン)を多少修正する事でどうにかしよう、って言うのは無理だけれどね。つまり……。』

「つまり僕ら(コズモエンテレケイア)計画(プラン)を破棄して、根底から変えなければ駄目、なんだね?」

『うん。それで僕は、別計画(プラン)を数年前から『既に』実施している。もう大詰めだったんだけど、君ら(コズモエンテレケイア)計画(プラン)が実行されちゃうと、計画(プラン)第一段階の最終過程が実行不能になるんでね。邪魔させてもらった。』

「そうか……。」

 

 驚いたね。僕の声は、あきらかに動揺が表に出ていた。まるで人間みたいだよね。僕はネギ君に問う。

 

「聞かせてくれないかな。君が今実施中だと言う、君の計画(プラン)を。」

『そのつもりだよ。』

 

 そして聞かされた彼の計画(プラン)。驚かされたね。僕らの計画(プラン)と重なるところが無くも無い。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の破壊を前提とする点。全魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を取りこぼしせずに救うと言う点。だがそのために、現実の火星そのものの機械惑星化(サイバーフォーミング)までするとはね。

 

「つまり最悪でも、今この瞬間魔法世界(ムンドゥス・マギクス)が崩壊しても、6,700万人は救われるわけか。」

『6,700万人で済ますつもりは無いよ。この世界12億人は、せっかく父と母が護った人たちだ。……そうでなければ、僕が滅ぼしてやりたい人たちでもあるけれどね。母を生贄(スケープゴート)にして繁栄を謳歌していた連中なんだ。』

 

 ネギ君は、不安定だね。骨子はしっかりしているけれど、その周辺を支える血肉の部分が揺れ動いている。少し不安になるね。けれど、事ここに至っては彼の計画しか道はない。他に方法があるとしても、時間が足りない。

 ただ、どうしても気になる点がある。これだけは……。譲れない。

 

「ネギ君。僕ら造物主(ライフメーカー)の使徒は、これまで幾人もの人達を、既に「完全なる世界」へと送っている。本来の計画(プラン)実施の前準備としてね。その人たちは、どうなる?」

 

 その答え次第では……。

 

『君たち『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の計画や、それに使われる儀式に関しての情報は、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)各地に送り込んでいた僕の分身が、『過去知(パストセンシング)』魔法を用いてきっちり集めている。既にあちら(かんぜんなるせかい)へ送られてしまった人たちも、再生して受肉させられるよ。』

「そうか。」

『ただし、重傷や致命傷を負った状態で送られてしまった人も多いみたいだね。そう言った人たちは、『重傷や致命傷を負った状態』で再生、受肉される。それに備えて現実の火星では、多数の救急隊と病院のベッドを用意しているけれど……。100%助けられるかは、わからないとしか言いようが無い。』

「!!」

 

 僕の脳裏には、そのとき1人の女性の面影が浮かぶ。珈琲(コーヒー)の香りが鼻腔を()ぎる。そして……赤い、紅い、血の色が。

 

「助けるんだ。」

『え?』

「1人も余さず、1人も残さず。全員を。そうでなければ、僕は。そうしなければ、僕は。……そうあるためならば、僕は君になんだって協力しよう。」

『……ブレイン0-0に計算させる。最悪に備え、僕の『死者蘇生(レイズデッド)呪文(スペル)まで駆使して、どれだけ救えるか。

 君が協力してくれるなら、本当なら儀式場の防衛戦力として欲しかったんだけどね。君を現実の火星に戻して、そこで救急隊に配属する。処置が間に合いそうにない怪我人を君の魔法で石化させて、病院に送り込んでくれ。』

「……わかった。了解だ。」

 

 僕は深く頷く。と、(ホムラ)(コヨミ)(タマキ)調(シラベ)(シオリ)が口々に言った。

 

「ふぇ、フェイト様!」

「わたし達もご一緒にお連れください!」

「必ずお力になってみせます!」

「必ずや!」

「お願いします!」

『……。』

 

 今の台詞が聞こえたのだろう。ネギ君が凄く嫌そうな顔をした。そう言えば、ネギ君は彼女らを嫌っていたね。

 

『う……ん。まあ。彼女らも救急隊に配属して、君の配下に置くから。しっかりと手綱取ってね。絶対に勝手な事させない様に。』

「「「「「ええーーーっ!?信じられてない!?」」」」」

『これまでの経緯で、信じられるとでも?』

 

 ネギ君は、嫌そうな表情を崩さないまま言葉を続けた。

 

『ああ、それと。彼女らは計画(プラン)最終段階に先んじて、受肉処置させるからさ。人形に入らないでも、現実の火星に行ける様に。できるだけ急いで、皆でフォエニクスとタンタルスの間、海辺にある僕らの基地に来てくれるかい?』

「わかったよ。魔力は?」

『5人程度なら、僕の魔力だけで余裕。』

 

 ここで墓所の主が口を開く。ああ、そう言えば居たね。

 

「……『墓守り人の宮殿』が無くなってしまうのは、残念じゃの。まあ、仕方あるまい。12億人の命と引き換えだと思えばな。なれど……。

 我が末裔(ネギ・スプリングフィールド)よ。今さっきお前は『儀式場の防衛戦力』と言っておったな?」

『……あなたは『墓守り人の宮殿』の、『墓所の主』と呼ばれている方ですね。僕からすれば母方の祖先、と言う事ですか。

 ええ、『防衛戦力』です。旧オスティアのゲートを破壊した事で、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に最後に残ったゲート……。現実の火星へ繋がる、僕独自の秘匿ゲート周辺に、莫大な魔力溜まりが形成されているんですよ。前まではそちらの規模が大きかったので、こちらの魔力溜まりは小さかったのですがね。

 それで『ここ』に何かが存在する事を、メガロメセンブリア、ヘラス、その他各国に気付かれました。防衛戦力は現実の火星から、今も現在進行形でずんどこ送り込んでもらってますが。』

 

 防衛戦力か。ネギ君お得意の、巨大ロボットかな?




失意のデュナミス、必死で崖っぷちに指一本でぶら下がります。でも、それでも無理ゲーですがね。
一方フェイトたちは、ネギとの協力体制を取りました。ネギはフェイトガールズは欲しく無かったんですがね(笑)。
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