魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第032話:艦隊の来襲

(クゥィントゥム)

 

 デュナミス達と別れて、僕は一人荒野を彷徨っていた。(ライフメーカー)は、既に喪われた。そして「完全なる世界」計画(プラン)も、破綻している。デュナミスはまだやれるつもりの様だが、僕はそこまで楽観はできない。

 あと残り時間は9年半。しかしネギ・スプリングフィールドに旧オスティアのゲートを破壊され、あそこに溜まっていた魔力は雲散霧消した。計画を再始動させるためには……。

 どこかのゲートが復旧するのを待ってそこを占拠し、他のゲートの復旧を阻止して魔力溜まりを発生させる。そのエリア内に、『墓守り人の宮殿』に匹敵する儀式場を建設する。現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)に赴き、タカミチ・T・高畑を始めとする強敵をどうにか蹴散らして神楽坂明日菜を手に入れる。

 ……どう考えても無理だ。いいや無茶だ。無理が通れば道理引っ込むと言う言葉があるが、僕らには無理を超越した無茶を通せるほどの力は無い。以前は僕も、自分の力量に……造物主(ライフメーカー)に与えられた能力に自信を持っていた。しかしタカミチ・T・高畑の、あの化け物じみた戦闘力。周囲の魔法先生たちも決して(あなど)れはしない。アルビレオ・イマは当然として。

 更にネギ・スプリングフィールドが率いていた奴ら。僕らが消耗していたとは言え、僕ら3人にデュナミス、そしてオマケ程度ではあったが月詠とか言う傭兵とその召喚魔……妖怪だったか?まあ、そいつらも含めた全員を、負傷の1つもせずに追い詰めてしまった。

 あげくに総大将のネギ・スプリングフィールドは、僕らの魔法抵抗力を物ともせずに、強制的な空間転移魔法で、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の各国軍、その包囲のはるか外へと飛ばして見せた。あれが……あの化け物がその気になりさえすれば、まず間違いなく僕らは鎧袖一触で滅ぼされていただろう。

 

「……詰み(チェックメイト)、だ。」

 

 ぽつりと言葉が漏れた。もう居ない(ライフメーカー)には申し訳無く思う。けれど、物理的に無理な物は無理だ。自分の不甲斐なさが、悔しい。……『悔しい』?まるで人間の様だな。思わず『笑え』てしまう。

 

「ふふふ……。ははは……。」

「ここに居たのか、「(クゥィントゥム)」。探したよ。」

「!?」

 

 気付かなかった。そこまで『腑抜け』ていたのか、僕は。これが彼でなかったら、やられていたかもしれない。……その方が良かったかもな。

 

「……「(テルティウム)」、か。」

「時間が無い。いっしょに来てくれ。」

「行って、どうなる?」

「え?」

 

 僕は『投げやり』に言った。

 

「我々『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の計画(プラン)は、もはや崩壊したも同じ……いや、デュナミスが認めていないだけで、完全に崩壊した。おじゃんだよ。

 この『僕ら』が『生まれ』てきた理由は、もはや無い。『生きる』意味もまた然り。……もう、何をする『気力』も無いんだ。放っておいてくれないかな。」

「……いいや、ある。」

「?」

「僕らが『生まれ』てきた理由は(つい)えたかも知れない。だが『生きる』意味はまだあるんだ。」

 

 何を……言っているんだ、「(テルティウム)」は。

 

「何を……。」

「移動しながら話す。急いでくれ。」

「わ、わかった。」

 

 そして「(テルティウム)」は語りだした。あの、我々『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の計画(プラン)における欠陥と、ネギ・スプリングフィールドが今実行中の計画(プラン)について。

 

「だがネギ君の計画(プラン)で、足りない物がある。何だかわかるかい?」

「……それは。救われるのが『命』だけだと言う事、ではないか?」

「そうだ。僕らの創造主、造物主(ライフメーカー)は残念ながら欠陥のある計画を残し、お隠れになられた。だが、その望んだ物は何だ?魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人の幸せだ。だからこそ無駄な殺戮を禁じ、全ての人に最善の幸せを与える様に計画(プランニング)した。

 もはや(ライフメーカー)の命に従う事も、その計画を実行する事もできない。けれどまだ出来る事はある。(ライフメーカー)の御心を(おもんぱか)り、それに沿える様に働く事だ。無論僕らは造物主(ライフメーカー)ではないから、不完全な程度にしかできないだろう。

 けれど少しでも世の中の不公正、不公平を減らし、不義を討ち、無辜(むこ)の人々の助けとなる事はできるはずだ。それが万民の幸せを望んだ(ライフメーカー)の御心に叶う事であり、僕らの生きる意味だ。命令に、ただ従うのではなく。」

 

 命令に……ただ従うのではなく。その言葉は、僕の中の『何か』に、深く染み渡った。

 

「皆の『命』は、ネギ君が救ってくれる。僕らはまずそれを手伝い、そしてその後は皆の幸せのために働く。そのために、「(きみ)」の力が必要だ。」

「そうか……。それが僕の中に刻まれ(せっていされ)た、(ライフメーカー)への忠誠を果たす道か……。『生きる』道……か。了解だ、「(テルティウム)」。何から始めればいい?」

「僕は現実の火星に赴いて、仕事をしなければならない。だから君に、ネギ君の儀式場を各国軍隊から……メガロメセンブリアを始めとしたメセンブリーナ連合や、ヘラス帝国他の各国軍隊から護る戦いに、参陣して欲しい。ただし……。」

「可能な限り……いや、絶対に犠牲者を出さずに、だろう?」

 

 僕の言葉に、「(テルティウム)」は頷いた。

 

「ああ、あと1つ。」

「なんだい?」

「僕の事はフェイトって呼んでくれないかな。番号で呼ばれるのは嫌いなんだよ。」

「了解だ、『フェイト』。」

 

 細かい事に拘る奴だ。だけど、今の『僕』には、なんとなくそれが『理解』できる『気がした』。

 

 

 

[フェイト]

 

 いや、なんとなく『悪い気がする』ね。僕は従者の皆が『受肉処置』を受けている時間を使って、他の『アーウェルンクス』シリーズを探しに来たんだ。ネギ君が転移させる前に、発信器を「(クゥィントゥム)」の靴底に貼り付けていたそうなんだよね。全員に仕掛けるヒマは無かったらしいから、彼だけなんだが。でも、僕の口車にまんまと乗せられた彼には、本当に『悪い気がする』よ。……人間みたいな感慨を抱くんだな、僕は。

 僕は(ライフメーカー)に強い思い入れがあるわけじゃない。今回の説得内容も、理詰めで考えただけの話だ。しかし「(クゥィントゥム)」は、ネギ君みたいに死んだ目だったのが僕の説得で生き生きとした目になった。と言うか、かつてデュナミスの下で働いていたときよりも輝いた瞳になっている。

 うん、嘘八百では無いにせよ、僕がこんな事を考えていたと言うのは秘密にしよう。本当は僕は、あの女性(ヒト)とか従者の皆、そして少数の人達をどうにか助けて幸せになってもらいたいだけなんだからね。僕の動機が、極めて『個人的』な物であって、『利己的』である事を忘れてはいけないね。秘密にはするけれど。

 

「急ごう、『フェイト』。」

「待ってくれ。僕は『地のアーウェルンクス』だ。『風のアーウェルンクス』である君ほど、機動力には優れていない。」

 

 やれやれ。

 

 

 

[クルト]

 

 まさか、と思いました。あの行方不明だったネギ・スプリングフィールドが……。『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』と手を組んで、この魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を滅ぼそうと画策しているなど……。その計画が、もはや完遂直前まで来ているなど……。しかし複数のルートで確認が取れました。取れてしまいました……。

 動機は、母であるアリカ王女を生贄(スケープ・ゴート)にして繁栄を謳歌しているメガロメセンブリアを始めとする、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)への復讐……。そのために、そのためだけにダイオラマ魔法球に何年も(こも)って修行をし、力を蓄えた。本当であれば10歳ほどのはずが、今の彼は16歳になってしまっている。

 そしてその復讐の引き金を引いたのは、3歳の頃のメガロメセンブリア元老院による、彼の暗殺未遂……。何故だ!何故わたしはアレを止めさせられなかった!?何故制止できなかった!?

 本当であれば、麻帆良にいるタカミチにも連絡し、何か旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)に情報が無いか訊きたかったですが……。『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』のテロで全てのゲートが使用不能になっている以上、それは不可能です。

 赦してください、アリカ様……。わたしは貴女の息子を討たねばなりません。貴女が護ったこの魔法世界(せかい)を救うために……。

 そして今、わたしはメガロメセンブリア艦隊の提督席に座っています。ヘラス艦隊、その他の国々の艦隊もやって来てはいますが、事実上の主力はこの艦隊でしょう。目的地は、フォエニクスとタンタルスのほぼ中間点。海岸線上に何者か……『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の手によって建設されたらしき、何らかの実験施設と思われる建造物。そこには今、先日の旧オスティアの様に、魔力溜まりが……。

 

「ゲーデル議員!あれを!」

「何です!今は……!?あ、あれは……。」

 

 そこにあったのは、報告された様な実験施設程度の建造物ではありませんでした。それは巨大な要塞でした。

 

「い、何時の間に……。」

「へ、ヘラス艦隊発砲!」

「馬鹿、まだ早い!」

 

 早いも何もありませんでした。ヘラスの主力戦艦から放たれた魔力光は、あっさりとはじき飛ばされます。わたしは指示を叫びます。

 

「今のヘラス艦隊よりの攻撃データを元に、敵要塞の障壁強度を割りだせ!」

「了解!」

「げ、ゲーデル議員!」

「今度は何です!」

 

 いえ、スクリーンを見れば分かる事でした。要塞から、巨大な……ゴーレムでしょうか?それが1、2、3、4……10、20、30……100、200……1000、2000、いったい幾つ出撃して来るんですか!?

 

 

 

[デュナミス]

 

 上手く行った。複数のルートより情報を流し、ネギ・スプリングフィールドが『完全なる世界(われわれ)』と手を組み、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を復讐のため滅ぼさんとしていると信じ込ませた。メガロメセンブリア元老院は、全世界に向け檄を発した。後ろ暗い所がある奴らだからな。簡単に信じ込みおった。

 ネギ・スプリングフィールド一党は、おそらく負ける事は無いであろう。最悪は、ネギ・スプリングフィールドが小娘ども(テルティウムのじゅうしゃ)の報告にあった、マイクロブラックホール魔法でもブチかませば事は終わる。しかし流石に消耗はするであろうよ。

 そこを『完全なる世界(われわれ)』が突き、あの要塞兼研究施設を奪う!あの魔力溜まりの規模から言って、あそこには秘匿された現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)への違法ゲートがあるはずなのだ!更に構造から言って、あの建物を改修すれば容易……とまでは行かんでも、我々の計画(プラン)を実施する儀式場に造り変えられる!

 後は神楽坂明日菜……アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアを奪取すればいい!『黄昏の姫御子』を!……タカミチ・T・高畑、アレどうしよう。い、いや置いといて!踊れ踊れ、クルト・ゲーデル!『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』に栄光あれえええぇぇぇ!!

 

 

 

[ナギ]

 

「おう、どうすんでぇ。お前の息子、ピンチなんじゃね?」

「大丈夫だ。ネギに聞かされた計画(プラン)の中の、想定の1つにあった。アイツは俺よかずっと頭いいからな。なんとかするさ。」

「お前より頭いいって言われても、ちょっとな。お前ちょー馬鹿だし。」

「ほっとけ。そう言うのを、目くそ鼻くそを笑う、っつーんだ。」

 

 ネギとの以前の話合いで、こうなった時の事は決めてある。って言うか、巻き込まれない様に、ネギが貯め込んだ戦力を縦横に使える様に、現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)に避難しててくれって事だったんだが。ゲート使えなくて、帰れねえからな。

 そんときは出来れば合流しようって話で、ネギから預かったビーコンとやらのスイッチ入れれば、ネギんとこの誰かが迎えに来てくれるらしいんだが。戦況を見て、あっちが少し余裕ある時にしないとな。

 

「おう、あれが噂の巨大ロボってやつか?」

「ええっと、冊子、冊子……。ありゃ、地上戦主体のG-1タイプだな。空も飛べるが、空中じゃあ空戦用のG-3タイプにゃ及ばん。って、G-3タイプも出たな。海には水陸両用型のG-2タイプも出てるなあ。」

 

 しかしクルトの奴、あっさり騙されやがって……。って言うか、デュナミス潰しといた方、良かったか?明らかに、アイツのしわざだろコリャ。何にせよ、死ぬなよクルト。なんつーかアイツには、憐れみしか浮かばねーよ。




今回の被害者枠は、クルト・ゲーデル(笑)。次点で(クゥィントゥム)ですかね。まあ(クゥィントゥム)は、詐欺に引っ掛かった気もしますが救われてもいますし。クルトは完全被害者(笑)。
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