[小太郎]
強い……。だけど、そこまでや。『強い』だけやな。悪いけど神鳴流の相手は、刹那姉ちゃん相手に文字通り泣くほどやっとるんや。いや、ほんとどれだけ悔し涙流したか……。刹那姉ちゃんですら使った事の無い技もときどき出て来るけど、そんでもこれまでの技の延長上か、あるいは複合した技やしな。
こっちの大量の分身での一斉攻撃を、『斬魔剣・弐の太刀・百花繚乱』で斬り払われたのは一瞬驚いたんやが、良く考えるとこれもやっぱ合わせ技やったしな。それに素の実力では伯仲しとっても、おっさんは神鳴流剣士の悪い癖がしっかり根付いとる。技名叫ぶんや。攻撃タイミング、完全に分かるで?
いや、神鳴流剣士は妖退治が本業やもんな。大概の妖は、んなこと気にせんもんな。それに技名とか叫んだりすれば、気合い入るもんな。わかる、わかるで。俺も昔は、敵に攻撃タイミングとかバレても、関係ない圧倒的な攻撃で叩き潰せばいい思うとった。実際、神鳴流剣士の対人戦闘は、そんなもんらしいしな。でもな?
そしてそれだけや無い。
「ぐおっ!」
うん、周囲のロボット兵士からの支援射撃や。相手殺せんさかい、単なる麻痺光線やけどな。要所要所では、俺も加速装置とか使うし。フェアやない?うん、フェアやない。そやけど、戦争の場に正々堂々のスポーツマンシップみたいなもん持ち込んだら逆にあかん、ってネギさん言うとったしな。これが一対一の決闘やったら、話はまた変わる。俺かてそんな場で、所謂『卑怯』なマネはせえへんし、相手がやったりしたら怒る。
今回相手殺さんのも、それが作戦目標やからや。それよりデカい、いわゆる戦略目標は、「12億人の魔法世界人を救う」事やしな。それに反する作戦や戦闘て、何や違うやろ?そやさかい殺してないんや。
……って、麻痺光線受けてまだ立ち上がるんか。凄い根性、凄い使命感や。見習わな、あかんな。けど、こっちにも……。
「こっちにも、使命はあるんや!12億人を余さず救うっちゅうな!」
「な!?」
あ。口に出てしもた。反省や。
「ぐお……。」
「……わるいな、おっさん。」
鳩尾に入った一撃。念には念を入れて、俺はおっさんの首筋にも追い打ち入れて、意識を完全に刈り取ったんや。そこへ腕時計型通信機から、通信が入る。
「はい、こっちゃ小太郎。」
『小太郎君、ネギだよ。カメラで最後の1人を君が倒したのを見たから通信入れたんだけど。』
「あ、ネギさん。いやー、ちょっと反省点多い戦いやったわ。」
『ははは。勝ったんだし、次に活かせばいいよ。それより君が戦ってた人だけど。クルト・ゲーデルさんって人なんだよ。僕は会った事なかったけど、父さんの友人のラカンさんが証言してくれた。京都の関西呪術協会の長、近衛詠春……旧姓青山詠春さんのお弟子さんらしい。
もう他の敵兵は大方倒して、残敵掃討に入ってるから。だから君はその人を確保して、連れて来てくれないかい?』
「了解や。」
見ると、敵艦もボロボロのが数隻、這う這うの体で逃げていくのが見える。周りを見回せば、ロボット兵たちが捕虜を集めて、怪我人には応急処置をしとった。俺はリーダーロボを呼んで話を伝えると、クルトとか言うおっさんを担いで要塞内へと歩き出した。
[茶々丸]
センサーに感あり。隠密系の魔法の様ですが、機械的なセンサー系を騙せるようなタイプでは無かった様ですね。ちなみにネギさんや千雨さんは、機械的センサーを騙せる隠密呪文や幻覚・幻影呪文を百科事典の索引がごとくに大量に揃えております。
とりあえずわたしは肩からチャチャゼロ姉さんを降ろすと、『超小型噴射推進弾』を無警告で撃ち込みました。相手は此度の事を企んだ、明らかな敵です。ネギさんも、不快感を顕になされておりました。結論、容赦の必要なし、です。
「うわあああっ!?」
「……!!」
「ぐあっ!?き、貴様!口上も無くいきなり先制攻撃とは……。」
不愉快……そう、これが『不愉快』と言う『感情』なのですね。陰謀で魔法世界の軍をわたし達に……ネギさんに差し向けておきながら。その事はネギさんはそこまでは怒ってはいませんでした。ただしこの者たちに対する認識を、『造物主の妄言に踊らされる憐憫の対象』から、『純然たるテロリスト』へと変えた様でしたが。
そしてわたしが引き連れた戦闘ロボットたち、守護機械兵ACE、BARON、CROSS、DEEN、ENDEAVOURが、わたしを庇う様に前に出ます。そして男性型の「アーウェルンクス」、「4」が言葉を吐きました。
「フン、人形が人形を連れて人形ごっこか?ネギ・スプリングフィールドもタカミチ・T・高畑もおらねば、貴様らガラクタごとき……。
え?」
わたしの腕部内装式の、光線銃レーザーが火を噴きます。「4」は左腕を焼き落とされ、唖然としていますね。焦点温度は理論上6000億度まで上げられますが、流石にそこまで上げると数瞬でこちらの光線銃レーザーが焼き切れてしまいます。
「そ、そんな……。わたしは『火のアーウェルンクス』だぞ!?その腕が焼き斬られた、だと!?」
火の温度は、せいぜいが数千度から数万度。数億度のレーザーからすれば、たいした事はありません。
「おのれ、おのれ!人形ども、焼き尽くしてくれる!ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!契約により我に従え・炎の精霊・集い来たりて……。紅蓮蜂《アペス・イグニフェラエ》!!どうだ……な、なにっ!?」
いえ、その程度の魔法では。わたしの人工皮膚表面の、耐魔処理すら破れませんよ。勿論、部下としてネギさんが就けてくれた5体の守護機械兵たちの耐魔呪紋処理済み積層装甲は、それ以上の対魔強度を持っています。あ、チャチャゼロ姉さんは危険ですね。でもこそこそと障害物の影に隠れて、武器を用意していますね。あの調子なら、大丈夫でしょう。
と、その瞬間です。チャチャゼロ姉さん以外のわたしたちは、突然氷の塊に閉じ込められました。「4」が高笑いします。
「は、ハハハハハハ!!よくやったぞ「6」!!これならば……。ハハハハハ!!」
「駄目。逃げた方がいい。」
「ハハ、は?「6」、何を……。」
「いかん、避けろ「4」!!」
変態が叫びますが、もう手遅れですね。氷に閉じ込めたところで、所詮強度的には氷はたいした事はないです。わたしや守護機械兵たちのパワーならば容易に内から砕く事ができます。それにわたしや守護機械兵たちの外装から中の内部構造は、耐魔処理によりこの程度の魔法では凍りさえしません。
そしてわたしは加速装置を使いました。わたしの身体は人工物です。ですから仲間の皆さんが使っている加速装置よりも大型の物を、余裕で体内に組み込む事が可能なのです。瞬間、周囲の音が消えました。同時にサウンドバリアー突破。
超音速に達したわたしと、同様に加速装置を使ったACE、BARON、CROSSの3体の守護機械兵は、「4」の傍らを疾走り抜けます。そして「4」は、粉々に吹き飛びました。大気のハンマー……超音速による衝撃波の一撃です。それがわたしを含め4体分。相手は跡形もありません。
同時に守護機械兵DEENとENDEAVOURは、その持てる大火力で変態を砲撃。DEEN、ENDEAVOURはかなりの大型で、その胸郭内に他の人間か、わたしが乗り込む事でその本領を発揮するのですが、この様に単体であっても力を発揮します。
変態は脱ぎ掛けていましたが、わたしと同様に加速装置を使っているDEENとENDEAVOURには反応できず、左腕と下半身を喪失しました。
「ぐお……。ぐがっ!!」
「ケケケ、タマニハ働カネエト、ナ。」
そこへ背後から、チャチャゼロ姉さんがその『核』を大剣で刺し貫きます。美味しいところを持っていかれましたね。障壁がDEENとENDEAVOURの攻撃で破れたところを狙った様です。
「な……。馬鹿な……。前回の戦いでは貴様は……ぐふっ。」
変態は絶命します。と言いますか、旧オスティアのゲートポートでの戦闘で、わたしがほとんど活躍していなかったのが不思議だった様ですが。それは当然でしょう。あの場において、ネギさんは皆に実戦経験を積ませるべく、ほぼ手出しをしませんでした。それなのにわたしとマスターが本気を出しては、意味が無いではありませんか。
チャチャゼロ姉さんは、その勢いで武器を大鉈に持ち替え、「6」に斬りかかります。チャチャゼロ姉さん、それはまずいです。「6」の曼陀羅障壁は破れていないです。……え?
「……ケ。」
チャチャゼロ姉さんの大鉈は、その刃が「6」の額ぎりぎりで、チャチャゼロ姉さん自身の手で止められていました。曼陀羅障壁は、発生していません。チャチャゼロ姉さんがつまらなそうに言います。
「アキラメチマッタ奴ヲ殺シテモ、面白カ無エ……。フン。」
「……。」
「目ヲ見リャ、ワカンダヨ。テメエゼンブ、アキラメチマッテル。」
「……殺さないなら、それでもいい。殺すなら、それでもいい。」
……「6」は、無気力です。どうしたんでしょうね。
「どうせデュナミスの作戦は、成功の目は無かった。メガロメセンブリア他の軍隊を嗾けてネギ・スプリングフィールドを消耗させ、そこで討って出て要塞を占拠予定だった。けれど幾分消耗しても、あの化け物に勝利できるわけが無い。」
そして「6」は、訥々と語ります。ネギさんを化け物扱いは『腹が立ち』ますが、まあ聞いてあげるぐらいは良いでしょう。
「『完全なる世界』の計画……。主の遺した計画は結局、旧オスティアのゲートポートをそちらに陥とされた時点で潰えていた。そして主も喪われた。『造物主の使徒』が『生まれて来た』意味ももはや無いし、『生きる』意味も無い。
だからどうでも良い。デュナミスへの『義理』で協力はしたけれど。」
なるほど、フェイトの説得で持ち直す前の「5」とほぼ同じですね。ただ単に惰性で変態に付き合っていた、と。しかしこれはどうしましょう。『なんとなく』『気分的に』始末し辛くなってしまいました。もしこれを計算でやっていたのなら、たいした物だと思いますけれども。
「グガアアアァァァッ!!」
女性型としてはちょっと何かな、と思わなくも無い悲鳴を上げて、「6」は昏倒します。わたしが両の拳から、最大10万キロワットの電撃を放射したので。あくまで最大で、です。今回は気絶させる程度に手加減しました。
「ACE、申し訳ありませんが彼女を担いでください。」
「ピピューピピィ、ビビビ……。」
「いえ、ありがとうございます。」
とりあえず、「反魔法場」で魔法が使えなくなっている牢屋に、放り込んでおきましょう。わたしは守護機械兵たちを引き連れて、帰還の途に就きました。
[クルト]
……う、こ、ここは。小さな部屋で、わたしは目覚めました。身体があちこち痛みます。そうか、あの少年にわたしは敗北……!!世界は、魔法世界はまだ無事か!?
「……いえ、魔法世界が破壊されたのであれば、わたしは「完全なる世界」へ逝っているか、そうでなくば不毛の火星の大地に放り出されているはずです。まだ儀式は行われていないか、完了していないと見るべきでしょう。
なんとか脱出して……。」
わたしは部屋の中を調べます。……どうやら、えらく清潔で整ってはいますが、ここは牢屋の一種、独房の様ですね。そのまま粗末なフラットとしても使えそうなぐらい、独房にしては立派ですが。扉には覗き窓がついていて、それには強化ガラスと鉄格子がはまっています。
ちなみに『気』を練って脱出してみようとしましたが、『気』は封じられている模様でした。それがこの場所的な物なのか、気を失っている間にわたしが何か処置をされたのか、それは分かりません。
その時、わたしに声が掛けられます。
「お。起きてやがったか。」
その声は……!!
「ナギ!」
「クルト、元気そうだな。小太郎にさんざんやられたみてえだが。」
わたしに声を掛けて来たのは……廊下から、わたしの独房を覗き込んでいるのは、かつて袂を別った『紅き翼』、そのリーダーであるナギ・スプリングフィールドでした。