魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第035話:魔法世界(ムンドゥス・マギクス)にとどめを

[ネギ]

 

 父さんがクルトさんに手錠と足枷、そして『気』を封じる首輪を着けて、儀式場まで連れてきた。クルトさんはこの場に「(クゥィントゥム)」が居るのを見て、唇を噛む。おおかた、「やはり……。」とでも思っているんだろうね。この人は、僕が復讐のために『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』と手を組んだと、本気で信じ込まされているからね。

 

「貴方がクルトさん、ですか。メガロメセンブリア元老院議員。元『紅き翼(アラルブラ)』No.8。」

 

 僕はそう言って仮面を外す。

 

「!!……たしかに、ナギそっくりですね。目、以外は。」

 

 ほっといて。わかってるさ、そんな事。皆から「目が死んでる」「疲れ果てた老人の様な目」「腐った魚の様な目」「ハイライトの無い目」って言われ続けてるからね。

 

「君は……。わかっているのか!?『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』と手を組んでこの世界を滅ぼすと言う事は……。」

「そこからですか。僕は『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』と手なんか組んでませんよ。それどころか、つい先ほどその最後の生き残りたちを、僕の仲間が殲滅したところです。ああ、捕虜は1人取りましたが。その捕虜も、収監してます。」

「えっ……。だ、だが……。そこに居る、『アーウェルンクス』は……。」

 

 クルトさんの視線は、「(クゥィントゥム)」と僕の間を行ったり来たりする。

 

「ああ、「(クゥィントゥム)」ですか。彼は離反者をスカウトしただけです。彼のおかげで、『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』残党が複数のルートから流した情報に騙されて襲って来た各国軍を双方死者なしで撃退できて、凄く助かりました。まあ怪我人程度は、命には別状ないのでソレでなんとか。」

「!!」

 

 ああ、クルトさんショックを受けている。

 

「で、ではこの要塞はなんのためなのです!?あの大戦力は!?そしてこの儀式場!君は何を考えているのです!」

「……騙されて襲って来た人が、えらく勝手ですね。まあいいでしょう。『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』とは全く関係なく、僕は僕個人で魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を滅ぼす計画を立てています。奴らの協力などはいらないんですよ。むしろ僕の計画の邪魔になります。」

「!!」

 

 ちょっと意地悪をした。いいだろう、別に?この人たちが襲って来なければ、労力を計画実施に注ぎ込めて、昨晩には儀式を始められたんだ。周囲の事情を知ってる面々は、苦笑いを浮かべているね。僕は失笑を隠すため、仮面を被り直した。ちなみに嘘は1つも言っていない。

 

「正直なところを言わせてもらえれば、母を生贄(スケープゴート)にして繁栄を謳歌していたこの世界の人間ども、僕のこの手で全員なぶり殺しにしてやりたい気持ちもあります。でも、できませんからね。現実的じゃないですし、心情的にも。

 だけど、せめて。特に、母に汚名を着せ、父さんを反逆者扱いしたくせにその名声は利用して、僕の育った村にテロリストを送り込んだメガロメセンブリアの元老院連中。奴らには思い知らせてやる……。」

「……!!」

 

 あ、いけない。ちょっと怒気が漏れた。皆が少しビクついた。悪い事したなあ。マクダウェルさんと千雨は、苦笑で済ませてるね。600余歳で色々慣れているマクダウェルさんはともかくとして、千雨は随分と肝が据わってるね。

 あ。クルトさん、ついに父さんに助けを求め始めた。

 

「ナギ!わかっているんですか!?アリカ様が自分の国を滅ぼしてまで護ろうとした、護った、この世界を!ネギ君を制止()めてください!」

「クルト。この魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の寿命は、もう尽きているんだぜ。あと最短で9年と半年も経てば、崩壊が始まる。」

「!!だ、だったら安楽死させてもいいと言うのですか!ジャック!貴方も何か言ってください!」

「あー、なんだ。このままだと、俺も魔法世界(ムンドゥス・マギクス)崩壊と一緒に消える身だしなー。あと10年弱かどうかってだけの話だしな。ネギの坊主がやる事を見てみたいね、俺ぁ。」

「!!ね、ネギ君!」

 

 あ、父さんもラカンさんも頼りにならないと見たクルトさんの矛先が、再度こっちを向いた。

 

「ネギ君!メガロメセンブリアに生きる6,700万人の『現実の』人間たち!彼らを旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)へ脱出させる計画が進んでいるのです!どうか彼らに慈悲をかけてやってください!」

 

 ……本当はちょっと攻めてこられた意趣返しをしたいだけだったんだけど。なんか本気で腹が立って来たな。

 

「そして僕の宿敵たる、メガロメセンブリアの元老院連中を逃がせと言っているんですか、貴方は?ねえメガロメセンブリア元老院クルト・ゲーデル議員。」

「!!」

「第1に、もう既に彼らに対する慈悲は、充分に与えたつもりですよ、僕は。第2に、今の『現実の地球』に、6,700万人の難民を受け入れる余裕が何処にあるのです。その計画は、最初から破綻しています。第3に……。その計画を実施すると言う事は、結局貴方も、『母の救ったこの世界を見捨てている』事に他ならないじゃないですか。」

「く……それでも!」

「……動かないでください。ゲーデル元老院議員。」

「は、放せ!放せ、後生だ放してくれ……!!」

 

 一瞬僕に突っ込んで来ようかと言う様子を見せたクルトさんだったが、彼を絡繰さんが制し、その部下の守護機械兵(ロボットマン)ACE(エース)BARON(バロン)が取り押さえた。

 父さんが、流石に憐れに思ったのか、僕に話しかけて来る。

 

「なあネギ……。これでもコイツ、俺らの後輩なんだよ。あんまりいじめてくれるな。」

「と言ってもですね。正直本気で腹が立って来たんですよ。話しているうちに。……まあいいです。父さんがそう言うなら、父さんにお任せしますよ。」

「ネタばらししてもいいか?」

「構いませんよ。僕はこれから儀式を発動します。」

「ああ……。」

 

 背後で絶望のうめき声を上げるクルトさんを父さんに任せ、僕は儀式場の中央に歩み出た。その傍らには、僕同様の完全装備を(まと)った千雨と、呪紋を織り込んだ特製のゴスロリ服を着用したマクダウェルさんが。そして瀬流彦先生、弐集院先生、木乃香さん、愛衣さん、墓所の主がその周囲に円陣を描く様に位置取りする。

 ちなみに「(クゥィントゥム)」とザジ(姉)さんは儀式の計算には入っていなかったので、離れた場所で儀式を眺めているね。……ザジ(姉)さんは、なんか凹んでると言うか、疲れてる。この計画(プラン)最大の山場である、第一段階の大詰めたる『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を破壊し、その構成魔力をもって魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人を受肉させる』と言う過程に、なんら自分たち魔族が力になるどころか何もできない事で、精神的にダメージを受けたのだろう。『力ある者の責務が云々』とか言っていたしな。

 まあ、金星の魔族たちには地球と火星とのバランス取りの手伝いをしてもらおう。はっきり言おう。山場と言えるのは計画(プラン)第一段階のこの工程だけれども、難しいのはその後数十年、下手をすると数百年から千年近くにわたっての地球、火星間のバランス取りの方なんだ。戦争を防ぐのは、不可能じゃないけれど難しいのは分かり切っているんだ。

 制御盤(コンソール)に取り付いて儀式の過程を監督している超さんと葉加瀬さんが、声を上げる。

 

「準備完了です!収監している捕虜たちの独房や監房には、催眠ガスを流して眠らせたあと、『反魔法場(アンチ・マジック・フィールド)』や『現実補強(リアリティ・リインフォースメント)』をカットしました!」

補助(サポート)人員ハ、自分の割り当ての呪文(スペル)詠唱(キャスト)開始するヨ!そして儀式場上の赤ランプが青ランプに切り替わったラ、エヴァンジェリンが詠唱(キャスト)開始ネ!その後、千雨サンとネギさんは、自分のタイミングで高速詠唱(クイッククライ)ヨ!』

 

 円陣を組んだ人たちが、呪文詠唱(スペルキャスト)を開始する。周辺の魔力が渦を巻き、それが空間に影響して空気を振動させ、音楽にも聞こえる様な耳障りの良い音響を奏で始めた。と、ラカンさんが素っ頓狂な声を上げる。

 

「うぉ!?なんだこの魔法陣は!」

「ああジャック。お前は儀式場に最も『近い』場所にいる魔法世界(ムンドゥス・マギクス)人だからな。最初に影響が出たんだろ。うかつにソレを吹っ飛ばすなよ?って言うか、手前(てめー)なら可能だし、やりかねねえ。」

「く、うっく、なんかこそばゆいぜ。」

 

 そして赤ランプが青ランプに切り替わる。マクダウェルさんが僕にウィンクを送り、呪文詠唱(スペルキャスト)を開始した。僕の内に、マクダウェルさんの魔力が流れ込んで、『目標』に至る『道』を指し示す。千雨も同じ感覚を感じているだろう事は間違いない。あらかじめ長い長い時間をかけて構築し、呪文編纂機(スペルコンパイラ)編纂(コンパイル)しておいた大呪文(スペル)を脳裏に呼出(コール)する。その言霊を呪力増幅杖(ブースターロッド)が読み取り、高速詠唱(クイッククライ)。隣で千雨も補助のための、それでも大呪文(スペル)圧唱(クライ)している。

 

 

 

 そして僕らは、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)王手をかけ(チェックメイトし)た。

 

 

 

[テオドラ]

 

「急ぎなさい!市民の退避を!魔術師部隊は集団気象制御魔法(ウェザー・コントロール)で、あれを食い止められるか試みるのです!」

 

 なんと言う事じゃ……!!妾の(けんりょく)が足りておれば……っ!!確かにテロリストとの交渉など本来であらば論外。なれど此度のネギ・スプリングフィールドの動機は、アリカの復讐であった……。妾は交渉による『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』陣営よりのネギ一党の切り崩しと、その前提条件としてアリカの濡れ衣を晴らし名誉を回復する事を説いたが、一笑に付されたんじゃ……。

 その結果が、これじゃ。あれほどの大艦隊を派兵し、生き残ったのはボロボロで中身兵士を置き去りにしてきた強襲揚陸艦1隻と、後方におって難を逃れた輸送艦、補給艦が2隻の計3隻のみ。聞くところによると、主力戦艦の主砲をはじく強烈な耐魔能力を持つ数千の巨大ゴーレムにより、艦隊は殲滅されたそうじゃ。話半分としても、1,500は巨大ゴーレムが居た事になるの。

 そしてその報が届くや対策会議が開かれ、しかして内容は誰に艦隊壊滅の責任があるかを押し付け合う(ののし)り合いでしか無かったわ。呆れたもんじゃ。そして深夜……。戦場となったフォエニクスとタンタルスの中間点では、午前中やや早い時刻と言ったところじゃの。空にオーロラの様な光のカーテンが現れたんじゃ。ヘラス帝国気象庁が調査のために無人機を飛ばして、その光のカーテンへ突入させてみたのは英断じゃったな。先んじて、その性質が判明したんじゃから。

 

 

 

 光のカーテンに突入した無人機は、瞬時に消滅してしもうたんじゃ。

 

 

 

 妾は理解した。これが、これが……!!ネギの復讐なんじゃと……!!オーロラの様な光のカーテンは、地上にまで降りて来ると、静々(しずしず)と、しかしその実急速に向かって来る……。光のカーテンが過ぎ去った大地は、暗くて見えぬが……。どうやら山も谷も、森も湖も消滅している様じゃった。

 

「テオドラ殿下!お逃げください!」

「妾に民人を置いて逃げ出せと、そう言うのですか!それに……世界が滅ぶ時、どこへ逃げ出せば良いのです。」

「そ、それは……。」

「それに……。もう間に合いません。」

 

 光のカーテンは、もうあと数分でこの場に到達する。消える。建物も、乗り物も、皆消えていく。逃げ惑う人も。これが、これが報いじゃと言うのかネギよ!このほとんど全ては、何の咎も無い無辜(むこ)の人々じゃぞ!?復讐をするならば、妾たち指導者、皇族、政治家どもだけでよかろう!?

 って、あら?何か光のカーテンが通り過ぎた場所に残されておる物が?あれは人じゃろうか?と思った矢先、妾は光のカーテンに取り込まれて……。

 

 

 

 そして、何か粗末な貫頭衣を着せられて、妾は暗いところに突っ立っておった。腰に佩いておった儀礼用の剣も無くなっておる。周囲には、妾の侍従や近衛が、同じく完全に武装解除されて粗末な貫頭衣を着て、突っ立って居る。

 そして灯りが……。もの凄く明るい光が、辺りを照らし出した。幾つもある、魔力を感じぬ街灯が灯ったのじゃ。そして妾の眼前には、金属製の……どんな金属で出来ておるのかまったくわからぬ建物が列をなしておる。ヘラスの帝都に負けぬどころか、勝ってすらおると思える街並みじゃ。

 そこへ何かの手段で拡大されておると思われる、少々(ひず)んだ声が響く。

 

『こちら、火星政府広報です。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の皆様に告知いたします。皆様がいらっしゃる場所は、現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)の火星の大地です。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)はその構造的欠陥により、消滅いたしました。それを知った我々火星政府は、それに先んじて皆様の救出計画を立案し、実行いたしました。

 我々火星政府は、皆さまを難民認定し、受け入れます。とりあえずの仮の住居と支援食糧他の物資は、充分に用意してあります。我々火星政府の派遣軍の指示に従い、秩序をもって行動してください。繰り返します。住居や支援物資は、充分に用意してあります。火星政府派遣軍の指示に従い……。』

 

 頭が真っ白になった。呆然としておったら、道の向こうから何か集団が歩いて来る。……全員瓜二つの、グラサンをかけたムキムキマッチョ男。いや、人形かの?だが人形使いらしき者の姿は見えぬ。あ、いや。人形の着衣の胸に、何やら書いてあるのじゃ。妾はかろうじて読めなくも無い。(たしな)みで習うた旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)の言葉じゃ。

 ええと……。『火星政府軍・軍警察』と書いてあるの。

 

 

 

 え。ええーーー!?

 

 

 

[ジャック]

 

 たいしたもんだぜ、ナギの息子はよ。けどなあ……。俺が今まで貯めた金とかなんとか、そう言ったもんが全部消えちまった。仕方ねえとは思うぜ?けどよ、ちょっと何かしら、寂しい気がすんぜ。

 

「ラカンさんのお宅付近に居た部隊によれば、幾ばくかの物資が消えずに残ったみたいですね。現実世界(ムンドゥス・ウェトゥス)から持ち込まれた物品の様です。さほど量は無いみたいですが、一応確保しておきますか?」

「何っ!?頼む!……あー、いや。お前らの仕事にサワリがあるんなら気にせんでいいぜ?また何かやって稼ぐからよ。」

「了解です。他の事を優先して、可能な範囲で集めさせておきますね。」

「サンキュ。」

 

 まあ、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)が消えて無くなったんだ。命があっただけ、めっけもんだ。おいクルト、あんぐり口開けて呆然としてねえで、そろそろ現実直視しろい。

 

「なあネギの坊主。この貫頭衣、なんとかなんねえか?てか、何で貫頭衣なんだよ。」

「一番簡単な衣類ですからね。受肉させる際に、『鋳型』があるのは基本的に、魂と対になる肉体のみですし。でも、現実の火星に人々を裸で放り出すわけにもいきません。なのでかなり呪文(スペル)の容量使いましたけど、なんとか貫頭衣だけでも着せたんですよ。

 よかったら、適当な衣類を用意しますよ。マクダウェルさん、茶々妹(ちゃちゃまい)さんたちにお願いできませんか?他の面々は、これから大忙しになりますし。」

「わかった。茶々妹(ちゃちゃまい)ども、その筋肉バカのサイズ計って、ヒラッヒラの愛らしい衣装を用意してやれ。」

「ちょ。」

「冗談だ。撤回する茶々妹(ちゃちゃまい)ども。お前らの感性で、そいつに似合う衣服を用意しろ。」

 

 茶々妹(ちゃちゃまい)とか言う機械人形の娘っ子どもが、一斉に会釈をする。しかし俺は見逃さねえ。こいつら会釈する前に、一瞬目が泳いでやがった。たぶん、『自分らの感性で』ってのが引っ掛かったんだろな。

 はてさて、どんな服が用意されるやら、だな。




ごめんクルト、書いているうちになんか、ここのネギ君だと性格ちょっと歪んでるから、こうなるだろうなーって……。
ホントごめんクルト……orz。
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