[フェイト]
「フェイト様!こちらです!」
「今行く。なんとしても保たせて。」
僕は今、魔力を限界まで絞り尽して、繰り返し石化魔法を行使している。石になった人たちは、衝撃吸収材で
よし、これでこの地域の負傷者、ことに致命傷を負った、「
僕は従者の皆と共に、救急用ロボットエアカー……無論、人型ロボットに
そして僕は、わずかでも疲労を回復するため目を閉じた。
「……あ。」
「黙って。気休めは言わない。君の傷は重い。
……だけど助かる。助けてみせる。君を魔法でいったん石化させて、医者のところへ送る。だから気を楽にして、僕の魔法を受け入れるんだ。いいね?」
「待っ……。」
「……何?」
「夢を……。見ていました。妹がいて……。あなたがいて……。
「……。」
「でも、本当のあなたの笑顔の方が、綺麗ですね……。」
「……もう石化させるよ。」
「はい……。」
「……イト様!フェイト様!」
「大丈夫。聞こえてる、
僕は目を開けて、救急用ロボットエアカーを降りる。続いて降りて来た
「フェイト様、お眠りになってらっしゃるのかと。」
「いいや。」
「あ、はい。ですが……その……。」
「?」
そしてそれに続く
「とっても、とてもお綺麗な笑顔をしてらしたので。」
「そうか……。」
僕は
「お姉さんのところに行ってあげても、構わないよ。」
「いえ、姉は大丈夫です。先ほど連絡も来ました。石化も解除、容体も持ち直したそうです。」
「そう。……行くよ、
「はい!」
後ろから、
[ブレイン4-1]
映像回線を、火星政府軍は軍警察庁舎の中ホールへと繋ぐ。そこには我が主の仇敵たる、メガロメセンブリア元老院の者たちと、そしてそれに近しい多数の富裕層……いや、こ奴らの財産は
わたしは彼らに自己紹介をする。
『ようこそ諸君。わたしは火星政府評議会議長、大規模量子コンピューターであるブレイン4-1だ。』
「量子……?」
「コンピューター???」
彼らは量子コンピューターを知らぬらしい。無知なのは彼らの責任ではない。もっとも、彼らには別件で重い罪があるがな。
『量子コンピューターとは、諸君らの知識で言えば超強力な計算機だ。自我意識と知性を持っている。火星全土は、わたしブレイン4-1からブレイン4-12までの12基のブレインにより、代行統治されている。我らの使命は、火星と火星住人を、よりよく導く事だ。』
……将来的な、民主的政府樹立に至るまで、な。正直、さっさと引退して宇宙開発の最前線に立ちたいものだ。
「な!?計算機、だと!?絡繰り仕掛けごときに呼び出されて我々はここに居ると言うのか!?」
「話にならん!」
「我々を誰だと思っている!メガロメセンブリア元老院議員たるこのわたしを……!」
「帰らせてもら……。」
バン!バン!バン!バン!バン!
数発の軽い発砲音がした。立ち上がり、部屋を出て行こうとした者たちを、現場に配備していた軍警察のロボットたちが撃ったのだ。弾丸は非殺傷の放電弾。放電弾だけあり、受けたときの苦痛はかなりの物だとデータバンクにはある。まあ自分で受けた事があるわけでもないし、わたしには痛覚は無いので、結局はわからんのだがね。想像する事はできても。
「「「「「「……。」」」」」」
『こちらの用事は終わっていない。出て行きたいなら、そうしようとしても良いが。だが次は命を懸ける覚悟をする事だ。』
「「「「「「…………。」」」」」」
理解したか。と、1人がおずおずと手を挙げる。
『何かね?コーニーリアス・シャフツベリー『元』メガロメセンブリア元老院議員。』
「ま、待て!わたしは『現』元老院議員……。」
『メガロメセンブリアと言う国家は、
何かね?『一般人にして犯罪容疑者』たるコーニーリアス・シャフツベリー。』
「な、は、犯罪容疑者だと!?ブレインとやら、それこそ撤回し……。」
わたしは聞く者の意識に直接介入する、『
『
「「「「「「!!」」」」」」
硬直した。ざまを見ろ。しばらく経ってから、コーニーリアス容疑者は必死で口を開く。
「み、ミスター・ブレイン……。わ、れ、われが犯ざ、い容疑者、と言うのは……。」
『6年前の、ネギ・スプリングフィールド暗殺未遂事件と言えば分かるかね?』
「「「「「「!!」」」」」」
コーニーリアス容疑者と他何名もの容疑者が、顔色を変える。
『更に、だ。ネギ・スプリングフィールドの母親であるアリカ王女……当時女王であったな。それに対する
「な、何を言う!事実無根だ!我々がネギ・スプリングフィールドの暗殺未遂に関わったなど!」
「そうだ!それにアリカ王女は歴とした犯罪者、テロ組織『
「ナギ・スプリングフィールドは英雄の身でありながら、アリカ王女に与した反逆者だ!」
しばらくわたしは、この者達にいい様に喋らせておいた。そしてその内容を克明に記録しておいたのだ。そしてこの者達が喋り疲れた頃合いに、再度声を出した。
『だから、それを確認しようと言うのだよ。幸い、我々には『
「ぶれ、いん……。」
「すきゃなー……でっ、き?」
『簡単に言えば、諸君らの脳の中にある情報を、洗い浚い引き出す事ができる機械だ。これにかけられれば、嘘をつく事は『絶対に』不可能だ。理論的には抵抗する事も可能だがね?だが抵抗すれば酷い苦痛を味わう事になる。最悪の場合は、脳細胞そのものが痛めつけられて、そうだな。まあ、
「「「「「「!!」」」」」」
この場の全員が立ち上がり、出口の方に駆け出し、そして軍警察のロボットたちに撃たれて床に転がった。
「ぐ、が……。こ、こんな事が許されるはず、が……。」
『ああ、1つ言い忘れていた。我々ブレインは、あくまで火星の統治を代行している身でね。本来の統治者は別にいるのだよ。火星政府は厳密には、火星機械化軍事政権『ボルト』と言ってね。軍事政権なんだ。民主政体では無いから、好き放題できてね。』
将来的には民主政体に移行する予定だがね。けれどこいつらには教えてやらん。
『そして火星機械化軍事政権『ボルト』は、月面機械評議国『ダーク』の評議長にして、木星圏機械帝国『ギア』総統にして、土星圏機械化国『ゾーン』大統領にして、小惑星帯改造研究機械国家『ジャーク』主席名誉博士たる……。』
そしてわたしは決定的な言葉を言い放つ。
『ネギ・スプリングフィールド閣下を総帥として国家主席の座に就いていただいているのだ。』
「「「「「「!!」」」」」」
『そうだ。これは犯罪捜査の形を借りた、ネギ・スプリングフィールド閣下の復讐なのだよ。閣下ご本人に言わせれば、あくまで個人的な、ね。ああ、諸君らが特に選ばれてこの場に来たのはだね。ここには来ていないクルト・ゲーデル元メガロメセンブリア元老院議員が、『
いや、これは本当の話だ。クルト・ゲーデルは自ら志願して『
この者達は、必死に哀願し、必死に絶叫し、必死に這いずって1cmでも逃げようとした。だが全員が軍警察ロボットたちの手で、目の前で『
しかし残りの大半は、やはり真っ黒であった。ネギ閣下3歳時の暗殺未遂だけではなく、お母上アリカ王女の犯罪捏造や、お父上ナギ氏の反逆者指定などに、しっかり関わっていた。それだけではなく、大戦中には自らが『
おまけと言っては何だが、こ奴らの記憶から、今現在軍警察庁舎に呼び出されていない犯罪者についても情報が得られたりしている。わたしは至急、そ奴らをマークし、偵察プローブを貼り付けさせて行動を監視させる事にした。
まあ今はこ奴らの事だ。こ奴らは、その所業を火星全土にニュースネットワークで発表するのは当然として、同時にアリカ王女、ナギ氏が不当に
その上でこ奴らは、罪状の軽い……それでも重罪だが、その手の者は
罪状の重い者は、
第1条:
第2条:
受刑者は、同刑受刑者を除く人間やロボットにあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第3条:
受刑者は、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
この様に、これを掛けられた受刑者は生きたまま、下位の知性無き作業ロボットなどと同等の扱いに甘んじなければならない。しかも第3条により、自殺すら禁じられているのだ。おそるべき刑罰である。
そしてただ2名だけ、死刑に処せられなければならなかった者もいた。この者達は、どの様な形であれ社会に戻す事は危険と判断される人格の持ち主であったのだ。ネギ・スプリングフィールド閣下も、可能な限り死刑は避けたがっていたが、最後には頷いた。
そして即日、この者達の刑は執行された。
[ネギ]
スタンお爺さんが泣いている。僕に抱き付いて、おいおいと泣いている。……スタンお爺さんは、小さくなった。僕が成長しただけではない。老いて、小さくなったのだ。
「スタン爺さん、年とると涙もろくなっていけねえな。あいてっ!」
「こんの馬鹿ナギ!年寄りを茶化すでないわ!」
「へへ、それでこそスタン爺さんだ!」
「まったく……。」
父さんとスタンお爺さんが、漫才の様な掛け合いをする。そしてスタンお爺さんは顔をくしゃくしゃに歪めて、僕に言った。
「ネギ……。ぼーず……。本当にでかくなったな……。」
「いえ、身体だけ大きくなって、中身は薄っぺらいままですよ。」
「薄っぺらい奴が、あんな物の司令官やっとるもんか。」
そう言って、スタンお爺さんは天を指差した。そこには巨大な飛行物体が。うん、懸念や存念を一通り終わらせた僕は、心残りを片付けんと火星から超光速航法でイギリスのウェールズは、再建された故郷の村へやって来たのだ。そう、宇宙船で。
……空いてる宇宙船が一番小さいので、小型戦艦しか無かったんだよね。何故か。2,000m級の『これでも小型』の戦艦が村の上空に浮いてるんだよ。ふわふわと。電波的には完全ステルスだから、たぶん見つかってないと思うんだけど、見つかってないといいなあ。え?これもロボットに?変形するに決まってるじゃないか。
「それで、一晩くらいは泊まっていけるのか?」
「それが……。ぎりぎり今日いっぱい休暇をひねり出すのが精一杯で。でも、次も来ます。約束しますよ。」
「そうか……。ネカネも会いたがっておった。今度はネカネの休暇と日程を合わせて来い。」
スタンお爺さんは、寂し気な顔を一瞬したけれど、ニカっと笑って言ってくれた。
「ああ、僕に直通で話ができる通信機を置いていきますよ。充電は、普通のコンセントで出来ますから。ただ、仕事での通話も僕のこれに掛かってきますので、話し中だったら時間を置いてください。」
「それは嬉しいの。ありがたく貰うぞい。それで気になっておったんじゃが……。どっちの娘がぼーずの本命なんじゃ?」
「「「え゛。」」」
え。僕だけじゃ無く、なんで2人とも「え゛。」なんですか?千雨にマクダウェルさん。顔、赤いです。……いや、
僕は僕で、どちらを好いているのか。どっちも好きなのか。どっちも本当の恋慕じゃないのか。それが自分の中で判っていない。だけど、2人のどちらかを誰か他の男に取られてしまうのは、どちらも
「ネギぼーず。2人を紹介してくれんか?いや、どっちが本命とかは言わんでいい。年寄りの冗談と流してくれてかまわん。」
「そ、そうですか。じゃ、こっちの僕と同じ装備をしているのが、長谷川千雨。日本人は東洋式の名前なのに何故か英語だと名字と名前をひっくり返すから、チサメ・ハセガワになるのかな。僕の魔法と格闘の弟子であり、優秀な助手だよ。」
「は、長谷川です。よろしく。」
「おお、そうかそうか。ネギの事を、これからもよろしく頼むぞ。」
そして僕は、マクダウェルさんも紹介する。
「そしてこちらが、僕の協力者。古式魔法なら、まだまだ僕も届かない強者だよ。」
「お前は〈ケイオス・ヘキサ式プログラム魔法〉なら誰にも負けぬではないか。」
「おお、まだ
「エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルさん。『闇の福音』とか異名を持つヒトだよ。」
「え゛……。」
「「「「「「え゛……。」」」」」」
スタンお爺さん、そして物陰や建物の陰でそっと話を聞いていた村人たち含め、大騒ぎになった(笑)。
上げて↑(フェイト話)
落として↓(メガロ元老院関係話)
最後にまた上げる↑(ネギ話)
たぶん次話がエピローグになりますね。その後、上手くいけば何話か追加エピソード入ります。入らないかもしれません。