魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第003話:戦場での出会いと

[タカミチ]

 

 まずい……と思った。僕は今、中東はイラン、アフガニスタンの境界上にアジトを構える、魔法を使うテロ組織の殲滅作戦に参加している。だが捕らえた敵のうちの幹部級を尋問した結果、判明したんだ。……奴らは、極東アジア某国から流出した「核弾頭」を手に入れ、自分らで建造したミサイルに搭載しているんだ!ミサイルは間もなく発射される……!

 仲間達が敵の大多数を引き付けている間に、最大の戦闘力を持つ僕がミサイルを破壊するため、敵アジトの奥へと単独で進む。

 

「〇〇××凸凹!」

「……くっ!まだいたのか!」

 

 銃を連射して来る敵兵士を無音拳と豪殺居合い拳の併用でなぎ倒し、先へ進む。中には〈魔法の矢〉や〈眠りの霧〉の魔法を撃って来るやつも居たが、鎧袖一触で叩き潰す。僕は可能な限りの速度で施設の奥へ奥へと突き進んだ。この先が、ミサイルのサイロだ!

 

「……ここか!」

 

 僕はミサイルのサイロへと踊り込む。弾頭部には打撃を与えない様に、胴体だけを叩き壊さないと……。けれど、そこには……。

 

「え。」

 

 ミサイルは無かった。

 

「ど、どう言う事だ。まさか騙された?」

 

 いや、騙されたとは考えにくい。捕らえた幹部級の尋問には、魔法を併用した。核ミサイルの件は、その結果得られた情報だ。まさか、もう発射された後?いや……ミサイルの噴射炎による焼け焦げや熱などは残っていない。まだ発射されたわけでは無い。

 ……いや、ミサイルはここだけじゃない。まだあるはずだ。合計で4つのミサイルのサイロが並んでいて、ここはその最初の1つだ。僕は隣のサイロへと移動する。2つ目、ミサイルは無い。3つ目、ミサイルは無い……。そして最後のミサイルのサイロへ僕は突入した。

 

「……えっと。」

「あ。早かったですね。」

 

 呆然としつつ、意味の無い言葉を口から漏らしてしまった僕に語り掛けて来たのは、10代前半か、と思える赤毛の少年らしき人物であった。正確に判らないのは、彼が顔全体を覆う、のっぺりした黒い仮面を被っていたためだ。その他にも、黒い制帽、黒い皮ジャンに黒い皮ズボン、黒い装甲ブーツに黒い籠手、黒い皮コートを身に纏い、完全武装だ。

 そしてその少年らしき人物が何をやっていたかと言うと……。念動か何かの魔法を使い、核ミサイルを解体してはその部品を、自分の影の中にポイポイと放り込んでいたのだ。

 

「……君は、何をしているのかな?」

「ちょっと事情がありましてね。核物質が欲しかったんですよ。ちょうどテロ組織が某国から核弾頭を買ってミサイルに仕立てたって情報を入手したんで。それを丸ごと頂こうと。ついでにミサイル関連の資材も貰えれば、余計に有難い。」

「済まないが、核ミサイルは引き渡してもらえないかね。重要な証拠なんだ。」

「申し訳ないですが……。もう完全に解体して、核物質も抜き出しちゃってるんです。この核物質が無いと、僕の計画が遅れてしまうんですよ。……魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の住人達を、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の崩壊から救うための計画が、ね。」

「!?」

 

 僕は瞬時に気を引き締める。いや、今までも油断していたわけではないんだが。けれど魔法世界(ムンドゥス・マギクス)が崩壊の瀬戸際にあると知っているとは、この少年はいったい……。まさか、『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の残党と関係が!?

 

「ああ、僕は『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』とは関係ない、と言うか敵対してますから。殺気を収めてくれませんか?」

「……いや、口で言われてもね。証拠はあるのかい?それと、仮面で顔を隠しているって言うのもマイナス点だよ。」

「この仮面は、呪具と防具を兼ねた物なんですけどね。顔を隠すための意図は、全く無いとは言いませんけれど、主要目的じゃないです。」

 

 そう言って、少年は仮面を外した。その顔は……!

 

「ナギ!?い、いや若すぎる、と言う事は……。ナギの息子の、ネギ君か!?あ、いやネギ君は生きているとすれば、まだ満年齢で7歳のはずだ、どちらにしても年齢が……。」

「いえ、ネギで間違ってませんよ。年齢が合わないのは、僕がダイオラマ魔法球にずっと籠って修行と研究に明け暮れていたせいです。」

「な……。」

 

 少年の顔は、ナギ……ナギ・スプリングフィールドに瓜二つだった。ただ気になるのは、その目が死んでいる事か。疲れ果てた老人の様な目だった。いや、彼の言う事が本当ならば、長い間……人格形成に重要な子供時代をほぼ全て、ダイオラマ魔法球の中で修行と研究に費やしていた事になる。こんな疲れ果てた目になってしまうのも無理は無いだろう。

 

「……君がネギ……君?いや、嘘だとは思えない、な。目を見ればわかる。嘘をついている目じゃない。」

「ありがとうございます。」

 

 ボロボロに疲れ果てた老人の様な目ではあるが、嘘はついていないと思う。少なくとも、本人が自分でそう思っている事は間違いない。洗脳されて、そう思わされている、と言う可能性はまだ残るが……。いくらなんでも、そこまで疑う必要性や意味は薄いだろう。

 ……むっ!?

 

「っと。」

 

キュキュキュン!!

 

「ぐはぁっ!?」

 

 僕が後ろに気配を感じ、向き直って無音拳を放とうとした時には既に全部終わっていた。ネギ君が自分の影の中から巨大な機械を束ねた様な黒い2m半はある大型杖を引っ張り出し、その機械杖が「キュン」と言う音を連続で立てたのだ。そしてその機械杖の先端から凄まじい放電が迸る。放電は僕を避けて、僕の後ろで息を殺して僕とネギ君を突撃銃で狙っていた、テロリストに直撃。

 

「いちおう手加減はしました。しばらく麻痺はしているでしょうけどね。さすがに貴方の前で、殺しはまずいですから。」

「僕が居なかったら、殺していた?」

「ええ。僕の出身村の話は知っておいでで?その事もあって、僕はテロリストの類には、どうしても情けをかけられないんですよ。苦しめば苦しむだけ、いいとさえ思ってます。自分が結果的にとは言え、テロリストじみた事をしているクセにね……。」

 

 こんな子供が……。しかもこの子は、ナギとアリカ王女の子供なのだ。あの大戦で、大きな犠牲を払い、しかもそれが報われたとは言えない2人……。その子供が、この様な……。僕は、僕は何をしてきた?もっと何か、できた事があるんじゃないのか?あったんじゃないのか?僕はネギ君の、その一瞬だけ草臥れて濁り曇った瞳に、怒りの火が灯って燃え盛るのを見つつ、そう思った。思ってしまった。

 

「ああ、核ミサイルは返してあげられませんが、テロリストどもが某国と繋がっていた証拠書類なら、大量に確保してありますよ。たぶん貴方は外見からの憶測ですが、『悠久の風(AAA)』所属、タカミチ・T・高畑さんですよね?」

「こりゃ失礼、言って無かったか。うん、そうだよ。僕の事はタカミチでいいよ。さん、も要らない。」

「了解、タカミチ。これを持って、お仲間さんのところへ戻ってください。証拠書類です。……っと、監視プローブからの連絡で、お仲間さんが少々まずい状況です。」

「!?」

 

 なんだって!?いかん、急いで戻らなければ!

 

「ああ、いえ。そっちは僕がなんとかしましょう。それよりタカミチ、組織のボスがSTOVL機で脱出を図ってます。貴方はそっちを捕らえた方がいいでしょう。」

「なんとかするって言っても……。」

 

キュキュンキュンキュン!

 

 僕の言葉が終わらないうちに、ネギ君は例の機械杖を高く掲げた。そして機械杖が先程よりも若干長く異音を発する。と、機械杖の先端から再度凄まじい雷が迸り、しかしそれは中空にぽっかりと開いた空間の穴に吸い込まれて行く。

 

「……よし、命中。」

「……何をしたんだい?」

「貴方のお仲間さんを襲っていた敵に、雷撃を落としたんです。あと、逃げようとしたボスが乗り込もうとしたSTOVL機にも雷撃落としたから、電装系が全部イカれて飛べなくなってるはずですね。

 タカミチ、ボスを捕まえるのはお任せします。さっき渡した書類の一番最初の方に、このアジトの図面ありますから。その第3層にあるボス部屋から、非常脱出口が繋がってますから、そこを辿って行けば滑走路に出ます。そこでボスが、脱出用機体がガラクタになって困ってますから。」

「あ、ああ。わかったよ。」

 

 僕は慌てて踵を返し、貰った書類を捲りつつボス部屋に向かおうとした。だがどうしても気になった事があり、足を止める。

 

「そうだ。ネギ君、君はこれからどうするんだ?良かったら、僕らと一緒に来ないかい?」

「いえ、僕は次の場所へ向かいます。核物質は、まだ足りないので、他のテロリストのアジトを襲撃予定なんです。」

「な……!?まだ核を持ってるテロリストが!?」

「いますよ。まあ、僕からすれば然程危険な連中じゃ、ありません。ああ、僕が核物質パチった後で、『悠久の風(AAA)』にも情報は流すので。」

 

 そう言って、ネギ君は自らの影に身体を沈めて行く。僕は慌てて言った。

 

「ネギ君、君の方が一段落したら、よかったら日本の麻帆良学園に訪ねて来てくれないか!?君とは、色々話がしたい!!君は魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を救おうとしているんだろう!?」

「麻帆良、ですか……。あそこはトップはともかくとして、下の連中が正義バカって聞きますが……。あんまり行きたくないなあ……。下手すると、僕も「悪」と見なされて集中攻撃くらうんじゃないかな。」

「そんな事はさせない!なんなら君の事は秘密にする!」

「……うん。わかりました。でもしばらくは無理です。1~2年は待ってください。」

 

 それを最後に、ネギ君は影の中に沈んで消えてしまう。影のゲートによる転移魔法を使えるのか……。いや、遠隔で詠唱なしで雷撃をあちこちに落とせるなんて。その凄まじい強さが、逆に哀しい。本来の年齢との差の分だけ、ダイオラマ魔法球の中で孤独に修行を積んだんだろう。

 僕が知る話では、故郷の村が悪魔に……メガロメセンブリア元老院に雇われたらしい暗殺者に召喚された悪魔に滅ぼされて、村人は皆石化させられた。幸いと言っては何だが、村人たちはアーティファクトとも言えるほどの魔道具を多数使い捨てにして、なんとか石化解除されたらしいが……。

 ネギ君は、村の全滅から行方不明だった。当時秘密裏に麻帆良に来た、生きていたナギが、ボロボロに憔悴していたのが思い出される。当時の僕はまだ頼りなかったんだろうな。僕には何も話してはくれなかったが……。

 いや、今ももしかしてまだ頼りないって思われてる?い、いや、そうかも知れないけど、そうかも知れないけど!でも、それでもナギは自分が生きてる事を教えてくれた……。その信頼に応えないと!

 でもまずは、ネギ君が足止めしてくれた、ここのテロリストのボスを捕縛しないと、な。

 

 

 

[ネギ]

 

 あれから2年、か。タカミチの誘いに従って、僕は麻帆良学園都市にやって来ていた。転移術の類でこの学園都市に入ると、麻帆良結界に引っ掛かってヤバい事になる。なので、普通にパスポートとビザ取って普通に英国から航空機乗って普通に日本に入国して普通に電車に乗って普通に埼玉県の麻帆良にやって来た。

 タカミチには既に連絡してある。と言うか、あの後もタカミチの仕事場であるテロリスト相手の戦場で、出くわした事があったのだ。その時に、携帯電話の電話番号は交換してある。ようやくヒマが出来たので、麻帆良を訪ねると連絡したときには、タカミチが大喜びしていた。あんまり連絡しなかったのが、申し訳なく思ったほどだ。タカミチとは麻帆良駅で待ち合わせをしている。

 本当は空港まで迎えに出ると言ったタカミチを制し、自分で麻帆良まで行くからと断ったのは、かつての自分の半分である、前世の僕である「わたし」が日本人であった事が理由の根底にある。久しぶりの日本を、自分の眼で見てみたかったのだ。まあ、「わたし」が生きていた日本には麻帆良も魔法使いも存在していなかったが。並行異世界とは言え、日本は日本。けっこう楽しみだったりする。

 果たして、日本は懐かしかった。多少は記憶と変わっていたが。おなじみのコーヒーチェーン店やファーストフード店が、名前が変わっていたりしたが。けれど、やっぱり日本だった。細かい所は違うが、雰囲気はまさに日本であった。

 そんなこんなで、麻帆良駅までやって来る。駅前ロータリーで待っていると、クラクションが鳴った。

 

パッパーーー!

 

「おーい、ネギ君―。」

「やあタカミチ。」

 

 タカミチは、2シーターのオープンカーでやって来ていた。僕はタカミチが開けてくれた車のトランクに、荷物を詰め込むと助手席に乗り込む。いや、ほんとは荷物は影の中の空間歪曲庫に入れて置けばいいんだけどね。普通の旅行者に見せないといけないし。

 

「いい車だね。」

「ありがとう。趣味でねえ。ネギ君はどんな車が好みなんだい?」

「軍用ジープかな。何やっても壊れないあの無駄な頑丈さとか。日本の法律じゃ駄目だけど、実際戦地とかでは乗り回したからね。」

「ははは。」

 

 笑いながら運転を始めたタカミチに、ちょっと気になる事を聞いて見た。

 

「ところでタカミチ。タカミチは普段は教員だって聞いたけれど。今日はいいのかな?」

「午後は僕の授業が入ってないからね。半休を貰って来たんだよ。とりあえず中央ホテルin麻帆良、だったかい?部屋を長期で取ってあるんだよね。」

「うん、1ヶ月ね。でもいい環境だね、麻帆良は。ちょっとマズい所もあるけれど。」

「マズい所?」

「アレだよ。」

 

 僕が指差した先では、何mも人が吹っ飛ばされていた。なんかストリートファイトもどきをやっているみたいだね。

 

「あー……。」

「ちょっと来る前に麻帆良の事調べて来たんだけれどね。ここの土地には異常を異常と認識させない効果があるみたいだね。でも、それに頼り過ぎてる。ごく稀に、その効果に抵抗力を持つ人間が居たらどうするんだい?と言うか、確率上は麻帆良に2~3人ぐらいは居てもおかしくない。」

「返す言葉も無い……。あー、ちょっと行ってくるよ。あくまで武術で誤魔化せる範囲の技で、鎮圧してくるから。」

 

 タカミチは車を停めると、しょぼくれた背中を見せて騒ぎの中心へと歩いて行った。そして、ズッギャーンとかドガガンとか轟音が響いて、周囲は静かになる。タカミチは帰って来た。

 

「おまたせ。」

「早かったね……。」

「さて、じゃあまずホテルだね。その後、一応学園長に会ってもらうよ。その更に後で、麻帆良を時間の許す範囲で案内するから。どこか要望はあるかい?」

「それじゃ……。」

 

 そして僕はタカミチに言った。

 

「麻帆良に封じられていると言う、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルに会見したい。」

 

 タカミチの顔は、引き攣った。

 




がんばれ高畑先生。このネギに付き合うのは、けっこうな苦労だぞ。
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