[千草]
チャンスは一度きり……。往路はダメや……。帰路の、お嬢様方が疲れてハワイから日本に帰って来た、そのときだけ……!その帰りの駅の混雑が、狙い目や!麻帆良に入る前に、全てを決めるんや!
「千草姉ちゃん、ほんまにやるんかー?」
「
「へーい。けどまあ、追手ちゅーても、西洋魔術師やろ?格闘戦できるやつ、おるやろか。あ、いや……。誘拐すんのは女やろ?護衛も女ちゃうんか?……女は殴りたくないんやけど。」
……このクソガキ。ふん、けどアンタ言いくるめるのなんか、簡単やわ!
「ほー、するってぇとアンタ敵と戦うの、女の月詠ハンにまかせっきりで、高見の見物かいな?そらたいした
「ぐ……!ちくしょ、わかっとるわ!やるときゃ、やるわい!」
「え~?別にウチに任せてくれても、よろしゅおすぇ~?」
「やるったら、やるわい!」
ハ!何が男のプライドや!んなもん、犬にでも食わせてしまえばよろしゅおす!って、小太郎は狗族のハーフやったわ……。
「……戻ったよ。」
「新入りか?日程は以前調べたとおりで、よろしゅおすか?」
「ああ。あと1週間後、来週の月曜日にハワイはホノルルに向けて出立。更に5日目の金曜日に帰国。金曜日の17時25分に羽田着だよ。」
「ククク、お嬢様にとっては最後のご友人達とのご旅行やわ。ゆっくり楽しんで来てもらいましょ。」
「……。」
この新入りも、よう分からんやっちゃ。何が目的で、ウチらに協力しとるんかいな。まあ、イスタンブールからの研修生らしいけど。西洋魔術師やし、心許したらあかんわな。そやけど逆に言えば、奴ら東の連中の手札に一番詳しいんは、こいつや。注意は怠れへんけど、でもたっぷり役立ってもらわなあかん。
まっとれや……。かならず東の西洋魔術師ども、けちょんけちょんにしたるさかいな……。
[タカミチ]
僕もエヴァも、唖然とした顔しかできない。僕らはエヴァの家で、ネギ君から彼の「
しかも必要な魔法式のプログラムも、エヴァが読んで見たところちゃんとコーディングできているそうだ。と言うかネギ君によれば、デバッグも既に終了してコンパイル中だとの事だ。なんでも速度が必要で容量を削らねばならない部分は、ニーモニック表記でガリガリ書いてアセンブルしたとか言っていたが、僕は呪文詠唱ができないからなあ……。呪文構築の理論はさっぱりだ。
ちなみに協力も邪魔もしないが聞くだけは聞く、と言っていたエヴァは、ネギ君が書いた魔法式のプログラムリストを必死になって読み込んでいる。
「……ネギ。お前はこの呪文を、本当に実行するつもりか?」
「ですね。」
「下手すると、大罪人扱いだぞ?」
「どうせ今のままでは、大罪人の母を持った息子ですから。それにもう、
「覚悟ダケハ、イッチョマエダナ。」
「姉さん、マスターとネギさんのお邪魔をなさっては……。」
まあ魔法式や呪文構築の事はわからなくても、おおまかな計画の流れは判った。この計画は、
「この計画が成功すれば、確かに
「ええ。そのつもりで計画の骨子を作りました。」
「しかしこれは……。「
僕は、血を吐くような思いで声を喉から絞り出した。あの世界が
「ネギ君、本当にこれしか道は無いのかい?
「……万が一、億が一、残せたとしても。将来的に火星は地球人類によって開拓されます。それは
そして火星は環境が厳しい。エネルギーに乏しい。そんな火星に進出した「火星人」たちが、新たな理想的エネルギーとして「魔力」を発見する可能性……。そして火星において、位相を異にする別空間内に、その理想的エネルギーが大量に埋蔵されている事に気付く可能性……。
新「火星人」達は、間違いなくそのエネルギーに飛びつくでしょうよ。その中で、旧「火星人」とでも言うべき
ネギ君は、複雑な数式が幾つも書かれた書類と、多数の折れ線グラフが描かれた方眼紙を指差しながら説明する。数字の意味は分からないが、彼の声音は真面目で、その目に嘘は感じなかった。相変わらず、どんよりと濁って疲れ果て、ハイライトの無い目。けれどそんな中にも、強い意志を感じさせる目。
「それも
「残念ながら。
「……この注釈を読むと、千年後にはほぼ100%で、
だからと言って、その魔力の塊の中に
「……。」
ネギ君は、黙って僕を見つめる。僕は瞑目し、天井を仰いだ。
「小手先で防いでも、将来の破滅は免れない、か。僕らは、『
「タカミチ……。今、茶々丸に検算させた。結果はやはり、冷たい方程式、だった。「数学的に」この結果は動かない。」
「エヴァ……。」
「どうする?なんなら悪の誘惑の手を伸ばしてやってもいいぞ?タカミチが望むなら、記憶を消してやろう。そして必死になって計画を遂行する子供の手を振り払い、全て忘れて「ただの正義の味方」として悪と戦う日々に戻ればいい。」
[ネギ]
タカミチは、マクダウェルさんの提案に凍り付いた。マクダウェルさんの声も、顔も、視線すらも優しい。まったく悪意を感じさせない、しかし悪の誘いだった。
悪をもって、悪から人を救う、か。記憶を消してもらえば、タカミチは綺麗なままでいられるだろう。だがその行いは、やはり悪だと言わざるを得ない。タカミチは、どの道を……。
「それはできないよ。この計画に手を貸せば、僕は二度と正義を名乗る事はできなくなるかも知れない。でも逃げ出せば、「逃げ出した僕自身がそれを忘れてしまっても」、僕はただのクズだ。善だ悪だとか言っている場合じゃない。それ以前のところで、間違えた存在になってしまう。」
「タカミチ、いいのかい?僕と来る道は、茨の道だよ?いや、実行過程の苦労の話じゃない。精神的な話とか、道義的な話とかだよ。」
僕の言葉に、しかしタカミチは笑った。ニヤリとした、男臭い笑いだった。
「だったらせめて、その中で少しでも善に至る道を追い求めるさ。」
そう言って、タカミチは右手を差し出して来た。僕も右手を差し出す。僕は、なんとなく泣きそうになったが、無理に笑った。
「……さて。それじゃあ事を進めるか!タカミチ、タカミチには僕にできない事をお願いしたい。」
「ネギ君にできない事?たとえば?」
「僕には人脈が無い。秘密を守れて、なおかつ優秀な人材のスカウトを。」
「……了解だよ、ネギ君。」
僕らは、固い握手を交わした。
そこへマクダウェルさんが、ツッコミを入れる。
「だがな?タカミチは来週修学旅行の引率で、ハワイだぞ?」
「実際の行動開始は、その後になりますね。」
「エヴァ、絡繰君……。」
「もう少し言い様が……。」
ニヤリと笑う、マクダウェルさん。
「わたしは「呪いがかかっている」から、修学旅行に参加できんのだよな。」
「わたしもマスターの付き添いですので、不参加です。」
「わかった……。お土産は期待していてくれ。」
「オレハ酒ガイイナ。」
ケラケラ笑うマクダウェルさん、鉄面皮だがどことなしに楽しそうな絡繰さん、マスコット人形に見える絡繰さんの姉のチャチャゼロ、そして背中が煤けたタカミチ。僕は何となく、少し嬉しさを感じていた。
[鈴音]
「なんじゃこりゃあああぁぁぁ!?ネ!!」
「超さん、無理に語尾に「ネ」を付けなくても……。」
「ハカセ、コレを見るネ!」
「ああ、はいはい……。え。えええええええええええええ!?」
ハカセも硬直したカ。流石に。
「ちょ、超さん、これはいったい!」
「解らないヨ。でも火星にナニカ起こっているのは確かネ!」
「とりあえず、写真を撮って映像解析します!」
私は今、ちょっとばかり郷愁にかられテ望遠鏡を覗いて見てたネ。火星人嘘ツカナイ。いや今回はホント。ちょっと火星が良く見えると言うハナシだたからネ。研究も一段落したし少しヒマになたのヨ。
そしたら……火星、エラい事なてたヨ!
「どうネ?」
「超さん。この白く見えるのは、金属性の物質では無いかと。」
「ヤハリか……。」
いたい何が起こったネ!?火星表面の金属物質ハ、かなりトンデモなく大きいヨ!生半可な基地トカじゃないヨ!明らかに広域の開発ネ!
「ハカセ、何処かの国ガ、火星開発に乗り出したトカ言う情報はあるカネ?」
「無いです。わたしたちの情報網に引っ掛からずに、そんな大事業を……。これは挑戦ですね!わたしたちの科学力に対する!」
「イヤ、待つネ。頼むから。」
イヤな予感するヨ。コレが私たちの計画に、どんな影響を与えるのカ……。私がタイムトラベルして来たコトでの、バタフライ現象なのカ?ご先祖のネギ・スプリングフィールドも、先生とシテ、3-A……旧2-Aに来なかったシ……。あー、もう!どうなってるネ!!
ネギが先生じゃないので、3-Aの修学旅行はハワイ行きです。当然千草たちの攻撃も内容が変わります。まあ、麻帆良から木乃香お嬢様がせっかく出て来るんですし、襲撃のチャンスですけどね。個人で買い物とかで麻帆良から出て来る事もあるんですが、ちゃんと襲撃予定とか立てられませんからね。そう言うときって。
でもって、超鈴音。何と言うべきか……。ネギ君のおかげで右往左往、そして火星の異変でびっくり仰天。かわいそうに(笑)。