魔法転生・ネギ?ま   作:雑草弁士

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第007話:事態急変

[近右衛門]

 

 唐突に、ネギ君がやって来た。エヴァと茶々丸君と一緒に。事実上ネギ君の担当になっておるタカミチ君は今、修学旅行の引率でハワイなんじゃがの。

 

「今日はどうしたのかね?ネギ君。」

「いや、ちょっとマクダウェルさんから話を聞きまして。それで外堀を埋めに来ました。」

「……外堀?」

「いえ、少し学園に貸しを作っておこうかと。そうすれば、以後僕からの要請を僅かでも断りにくくなるでしょう?」

 

 むむむ。いったい何をもって学園への貸しとするつもりなのかの。

 

(ジジイ)、たしか今年の学園祭では本来22年周期の世界樹大発光が異常気象のせいで1年早まるという予測が出ていたな。」

「うむ。」

「で、昔の記録によれば、世界樹大発光によってマズい事態が発生するはずだったろう。ネギは、それを解決してやろうと言っている。」

 

 ……正直、驚いた。ネギ君は、あの事態を回避する方法がある、と言うのかの?

 

「確かに世界樹の大発光の年には、世界樹……神木蟠桃の魔力が充溢し、それによる副作用が起きるが……。世界樹の周囲では、溢れ出した魔力が周囲に6つの魔力溜まりを形成する。その場で何かしら願い事とか言ったりすれば……それに世界樹の魔力が反応し、叶ってしまう。

 金が欲しいとか、世界征服とか、即物的な願いは叶わんがの。だが、「誰か」に恋人になって欲しいとか言う精神に影響する願いじゃったら、その「誰か」の精神に魔力が干渉する事で、強制的に叶ってしまう。そんなもの、洗脳と同じじゃて。

 悪い事に、世界樹伝説などと言う物がある。おそらくは過去の現象で起きた事が、影響しておるんじゃろうのう。世界樹の周辺で愛の告白をすれば、想いが叶う、と言う世界樹伝説……。そのために、生徒他の告白行為を阻止する目的で魔法先生や魔法生徒を動員する予定じゃったが。」

「ですね。けれどその現象が発生するには、周辺の魔力溜まりが存在する事や、世界樹自体の魔力が充溢している事が必要ですよね?」

「む?まあそうかの……。まさか!?」

 

 ネギ君は、ハイライトの無いどんよりした目で、にやりと笑う。

 

「ちょっとした装置があるんですよ。それを神木蟠桃の幹と、周辺魔力溜まり6か所の中心に据え付けます。その装置は、周辺魔力を吸収、収奪して電力に変換する機能を持ってましてね。

 それで魔力溜まりの魔力全てと、世界樹の魔力の大半を、電力にしてしまいます。その電力は、必要経費分として僕が貰って行きますけど。そうすれば、世界樹による洗脳効果は発動しません。……まあ、発光現象がちょっとショボくなっちゃうかも知れませんが。」

「無論、装置自体の警備に人を出さねばならんのは変わらんだろうがな。しかし愛の告白を邪魔するなどの無粋な行いに多数の人を出すよりは、随分と楽になるぞ、(ジジイ)?」

「むむむ、確かにの。ただその装置、世界樹に取り付けて世界樹が枯れる、などと言う事は無いんじゃろうの?」

「ありません。装置を取り付けた件については、麻帆良学園都市のシンボルたる世界樹維持のため、万が一を考えて樹医を呼んだって事にすればいいかと思います。世界樹の健康診断のための装置って事で。」

 

 確かに有難い申し出じゃ。有難いんじゃが……。

 

「何か企んどらんかね?」

「企んでますよ。最初に言ったじゃないですか。学園に貸しを作って、外堀を埋めに来たって。」

「そうじゃったの。」

「ああ(ジジイ)、あらかじめ言って置くが、ネギに借りを作ると物凄く高くつくぞ?ククク。だがまあ、悪い事にはなるまいさ。」

「エヴァ……。ふむ、まあ有難い申し出ではあるし、のう……。」

 

 なーんか、後が怖そうなんじゃがの。しかし話を聞いてしまった以上、これを断るのは悪手じゃな。この話、学園に損は無いしのう。ネギ君はあくまで個人。借りが出来た事で、そこまで派手な事にはなるまいて。

 それとネギ君は、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の住人を救済する計画を立てていると言う。それへの協力を求められるのかも知れんな。実際の話、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の崩壊を解決する術は、今のところ目途すら立っておらん。たぶんじゃが、あと数十年も経てば色々な影響が出始めるじゃろうのう。深刻な事態になる前に、ネギ君に協力するかどうかを決めねばならんかもな。

 タカミチ君はおそらく計画について、何か聞かされておる様じゃ。その彼が動じていないならば、ネギ君の計画はそう悪い物では無さそうじゃな。

 

 

 

[エヴァンジェリン]

 

 ……などと言う事を考えていそうだが。ククク、ネギがそんなに甘いわけがあるまい。この貸しを突破口にして、色々と働かされるのは間違いないからな。まあしかし、だからと言ってそこまで無理は言わんだろう。例の計画は、数年前の段階で既に発動しているからな。計画実行それ自体には、もはやそこまで大きく麻帆良の助力はいらんのだ。

 しかし、ネギの組織……その大半と言うか、ネギ自身とタカミチ以外は全部ロボットだと言うが。更に言えばそのほとんどは、簡易人工知能とやらを搭載した下働きで、高位の知能型ロボットは少ないとか言っていたな。今も宇宙鉱山を兼ねた小惑星ジュノーの宇宙基地で、ずんどこ大量生産中らしいが。

 何にせよ、ネギの組織は高知能型だけ数えても、今現在も爆発的な勢いでその規模を拡大しているのだ。(ジジイ)はネギが個人だから影響力が小さいと考えてるんだろうが、個人どころか一大組織のトップだからな。しかも両属状態とは言え、その比重と言うか主体は明らかにネギ側に置いている、タカミチという存在もある。

 ククク、この貸しは本当に高くつくぞ、(ジジイ)……。

 

 

 

[ネギ]

 

「ところでそう言えばの、ネギ君や。メルディアナ魔法学校の校長から伝言があるんじゃがの。」

 

 近衛学園長がその台詞を言った瞬間、部屋の空気が凍った。いや、凍らせてしまったのは僕のせいだけど。メルディアナって言葉についつい動揺して、押さえ込んで隠してた魔力を一瞬だけ解き放っちゃったんだよね。それでも僕の力量の全てを察知する事はできないとは思うけど。以前、マクダウェルさんとタカミチには気配を完全に解放して見せたけどね。

 でも、メルディアナ魔法学校の校長先生か……。聞くのが怖い。正直な話。

 

「学園長、内容は……?」

「う、うむ!おほん!い、いや、伝言じゃったな!

 ……スタンと言う老人は知っておるね?」

「……はい。」

「向こうの学校長によると、そのスタン老人がネギ君に伝わる事を願って、あちらの校長に伝言を託したんだそうじゃ。君の行方が判明したら、伝えてもらいたい、とな。だから正確には、向こうの学校長からの伝言と言うより、スタン老人の伝言じゃの。

 それで伝言なのじゃがの。読み上げるぞい。」

 

 近衛学園長が、伝言を読み上げる。

 

「村人は皆、もとよりナギの敵が襲って来る可能性は重々承知の上じゃったんじゃ、わしも含めての。だから村の者も、わしも、誰一人お前やナギを責めてはおらんわい。とは言うても、お前の心が傷を負ったのはわからんでもない。……いつか気が晴れたら、ちょっとだけでもいい、再建なった村に顔を出してくれ。それまでわしが、村を守っておくからの。ではな、ぼーず。……これが全文じゃの。む?」

「ネギ……。」

「ネギさん、これをどうぞ。」

 

 絡繰さんがハンカチを貸してくれる。え?あ……。いつの間にか、僕は泣いていた。ありがとうございます、絡繰さん。

 スタンお爺さん……。ごめんなさい、まだ僕は村に顔を出す事はできそうにありません。まだ、「敵」を片付けていないんです。やつらに報いをくれてやらないと、心の整理がつきそうにありません。

 ……僕は弱い人間です。戦闘力とか、魔力とか、武力とか、そう言った問題じゃなく……。心が弱い人間です。ですので、まだ会いに行けそうにありません。でも、何時かかならず……。

 ありがとう、スタンお爺さん……。

 

「……ネギ君。では話を詰めようかの。世界樹とその周辺に、装置を置くと言っていたが……。どの程度の大きさの、どんな装置じゃね?」

「ああ、それは……。」

 

 近衛学園長は、事務的な内容に移る事で、話を逸らしてくれた。面々の前で涙してしまい、少々気恥ずかしかったが……。おかげで助かった。やはり年の功だな。……この人の全面協力でも得られれば、計画を実行した上で後日の対人交渉とかがやり易くなるんだけれどな。なんとか取り込めないかな?

 

 

 

[千雨]

 

 なんなんだよ、これはよ。マントと覆面の怪しい巨漢が、駅のトイレから出て来た近衛を気絶させて、連れ去って行く。あからさまな誘拐だ。なのに、周囲のやつらは何も気にしちゃいねえ。って言うか、気付いてるそぶりすら無い。あげくにマント野郎が何やらお(フダ)を取り出すと、そのお(フダ)がむくむくと大きさと形を変えて、近衛そっくりの姿になりやがった!偽の近衛は、クラスの連中の方へ歩いて行く。

 わたしは泡を食って周囲を見回す。誰か、誰かに伝えないと!でも……信じてもらえるか?

 

「……くそっ!」

 

 わたしは近衛を(さら)った巨漢マント野郎を、できるかぎりこっそり追う。駅中の鉄道警察隊の派出所前を通るが、立哨の警官すらもマント野郎に気付かない。なんでだよ!あんなあからさまに怪しいのが、気絶した女の娘かかえて堂々と歩いてるってのに!

 ……これは、駄目だ。信じてもらえねえパターンだ。ネット連中みたいな麻帆良以外の土地の連中だと、「またそんな、ご冗談を。」的な反応して信じてくれねえ。麻帆良の連中だと、「なんでそんな事気にするの?変な千雨ちゃん。」パターンだ。くそ、でもわたし1人でどうしろってんだよ!

 マント野郎は新幹線の改札へと歩いて行く。わたしは修学旅行のお小遣いの残りで、急いで新幹線の普通車キップを自動券売機で最低料金だけ買って、後を追った。

 

「くそ、後で学園長に弁償してもらうからな……。」

 

 マント野郎は、東海道新幹線に乗り込む。わたしはそれを追った。だけど、どうしたらいいんだろう……。警察の連中も気づかない。駅員も頼りにならない。誰か、誰か頼りになる奴は……。

 新幹線が発車するまでは、まだ時間がある。わたしは新幹線のデッキで、携帯電話の連絡先を……。いや、携帯番号とか交換してる奴は、わたしほとんど居ねえんだ……。わたしは自分の社交性の無さを後悔する。いや、だがどうせ信じてもらえねえか、こっちが変人扱いされるかだろ?どうせ……。い、いや。そんな事言ってる場合じゃ……。

 その時、わたしの眼に1つの番号が留まった。タカミチ・T・タカハタ……。頼りにならねえ担任教師……。修学旅行出発前に、万が一のために番号教えられたっけ……。奴なら、きちんと説明さえすれば、真正面から嘘だって切り捨てるわけにはいかないハズ……。

 わたしは必死の思いで、その番号に電話した。

 

「早く……。早く出てくれ……。」

『……はい、こちら高畑です。』

「せ、先生!?」

『その声は長谷川君?どうしたんだい?』

「こ、近衛が!近衛が変なやつ、コート着て覆面したうすらでかい奴に攫われて!クラスの方に偽物が行って!周囲のやつらは、真ん前で誘拐が行われてるってのに、全然気づいて無くて!それで後を追って、それで!それで!」

 

 電話の向こうの気配が変わる。

 

『今、どこだい!?』

「先生、信じて……くれるんですか!?」

『あたりまえじゃないか!今すぐ行く、何処だい!?』

「東海道新幹線です!もうすぐ発車の時間……。あっ!」

 

 携帯電話を持つ腕が、ひねり上げられた。そうしているのは、白髪のガキ。その虚ろな瞳が、わたしの眼を射抜く。カラン、と音を立てて携帯電話がデッキに落ちた。

 

『長谷川君!?どうした、長谷が……。』

 

バキッ!

 

 白髪のガキの足が、携帯電話を踏み潰し、破壊する。何しやがる!弁償もんだぞコラ……と言いたかったが、わたしはガキの瞳に射すくめられ、何も言えなかった。なんだこのガキは……?なんて迫力だよ……。絶対に、カタギの人間じゃない。

 

「認識阻害が効いてない?学園の制服も着ているし、麻帆良側の人員かな?けど、戦闘訓練は受けていないみたいだね、連絡員かな。こんなのまで駆り出すとは、向こうも人手不足?」

「な……。認識……阻害……?」

「とりあえず眠ってもらおうか。だけど置いて行くわけにもいかない、か。」

「ぐっ!」

 

 腹に一撃。鈍痛が走り、わたしの意識は遠くなって行った。




前半から中盤はのんびりと。と言うか、超鈴音、乙(笑)。

後半はちうたんの1人舞台。さくっとあっさり木乃香サン攫われました。ついでにちうたんも。ピンチだ、ピンチだ!ピンチの連続だ!高畑先生は間に合うのか!?
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