魔法のじゅうたんに乗りメザレの村へと駆け戻る。じゅうたんを全速で飛ばし、来た時以上の速度でメザレの村を目指す。
「って、なんで僕はこうも焦ってるんだろうな」
じゅうたんの制御をミクワに任せ、片手を剣の柄に置きながらザジはふと思ったことを呟く。
このメザレの一件、本来ザジは関わるはずのなかったことだ。ただ流れでフォロッドにやってきて、偶々腕を買われてメザレの異変を解決することを頼まれた。しかし、同行するはずだったフォロッド兵団とは離れ、当初は一触即発だった魔法少女と一緒にメザレの封印解放に奔走している。
思えば、ザジはただ流されるままに動いていただけだ。そこにザジの意志はなく、であればメザレの人々のために必死になる意味もない。なのに、なぜ自分はこうして急いでいるのだろう。
「そんなの決まってるでしょ」
ぽつりと呟いた言葉にミクワが答えを返す。
「魔物たちがメザレの人たちを苦しめてる。そんなの許せるわけない。だからあたしたちは戦うの。違う?」
ミクワの答えに、ザジは強く影響を受けたお人好しな旅人たちを思い出す。けれど、ザジと彼らの考え方はまるで違う。
アルスたちは――予測だが魔物に苦しめられる人々を救う、まさにミクワが言ったとおりのことを目的に旅をしているんだろう。
それに対しザジは、これといった目的のある旅をしてはいない。ただ、居場所を無くして、漠然と旅に出たに過ぎない。ならばアルスたちのように、ミクワの言った目的のための旅にするかとも思ったが、それもどこか違う気がする。
ザジはお人好しじゃない。ふきだまりの町で培われた、他人の益よりも自分の得になることを優先する思考が構築されてしまっている。姉のためというのも、それが自分の
「ザジ?」
「目的がないんだ。僕には」
抽象的な言葉だった。ミクワはそれに言葉を返さない。返す言葉が見つからないのではなく、続きを促しているようにザジは感じる。だから、先ほどまで考えていたことを話した。
ダーマで、それまで人生の意味のように感じていたことを失ったこと。それから流れるままにメザレまで来て、結局生きる意味を見いだせていないこと。一通り話した後、ミクワはメザレの方角をぼうっと見つめながら、呟いた。
「いいんじゃない、それで」
「え?」
「あんたは今、なりたい自分ってのを模索してるんでしょ。ダーマを救った旅の人や、その短足の騎士さん? あんたに影響を与えた人の生き方を考えてみて、それで自分はどうしたいのかじっくり考えればいい。望んで努力すれば、人はどんな人にだってなれる。あたしだって、あんな風になりたいって人はいるわ」
「君の師匠?」
「ううん。あたしがずっと幼いころ、住んでた国を魔物の計略から助けてくれた旅の人の仲間。
憧れの人。その話をしたミクワは、どこか遠くを見るように目を細めた。きっと、すごく立派な人なのだろう。けれど、なぜだろうか。ザジはその女性を知っている気がした。
「あたしはもうあの人みたいになるって決めたけど、あんたはこれから。人生は一度きりなんだから、なりたい自分をよく考えればいい。それまでは、流されたままでもいいと思うわ」
そう告げたミクワも、ザジの中では影響を与えてくる一人なのだ。彼らの、そして彼女の生き方を見つめて、自分のこれからを探せばいい。
「……望んで努力すれば、どんな人にだってなれる、か」
ミクワに言われたことをもう一度復唱して、ザジは剣に置いた拳に力を籠める。少し、疑問に納得がいった。
「もう、大丈夫?」
「ああ。今は、頼まれごとを片付けよう」
ザジ自身の目的は結局分からない。けれど、現状を打破する魔物の退治は最優先事項だ。曖昧な未来のことよりも、今は目先のことを終わらせるべきである。
ザジは破邪の剣を引き抜くと同時に飛び降りる。遅れてミクワがじゅうたんを素早くたたみながら同じく降り、二人はメザレの村に駆け込んだ。
村の惨状は、予想よりも遥かに悪かった。
倒れ伏した村人の姿があり、それをはるかに上回る数の魔物がたむろしている。漆黒の薄っぺらい影の魔物だ。騎士らしい剣や盾、兜を備えているが、それらも含めて影が立ち上がったような一枚の紙きれよりも薄い体だった。
影から生まれた騎士の魔物、シャドーナイトだ。
「おや、戻ってきたみてぇだなぁ。やとわれの人間が」
「遅かったなぁ、もう村の連中の魂は全部奪っちまったぜ」
そうゲラゲラ笑うシャドーナイトたちの足元に、まだ無事な者がいた。魔法のじゅうたんを貸してくれたニコロだ。
「い、いったいなぜ急に……」
息も絶え絶えにニコロが言葉を紡ぐ。そんなニコロの腹に、シャドーナイトは薄っぺらい刃を突き刺した。その傷口からほのかに青い光が明滅し、やがてそれはニコロの身体を離れる。
「がっ……」
「そりゃ、外部からの侵入者があったからな。もう少しお前たちの絶望心を高めてやりたかったが、頃合いだ。おまえたちの命は【
「ニンゲンの絶望が強いほど負の力は増す。それこそがお前らをわざわざ飼い殺しにした理由さ。死ぬまでの時間が長引いたんだ、感謝しろよ」
青い光はゆっくり天へと昇ると、それは島の中心に引き寄せられるように飛んでいく。光を失ったニコロは、絶望の表情のまま、血しぶきの一つも上げず、ころりと地面に横たわった。
人間の命を弄ぶ魔物。以前、ザジは魔物に操られ、カシムに剣を向けたことがある。言葉巧みに唆し、人間同士での争い、裏切りを誘発させる。魔物のやることは反吐が出そうなほどに下劣だ。
ダーマを支配した魔物たちによって生まれたふきだまりの町でもそうだった。魔物たちは直接手出しはせず、人と人が互いに疑い、敵視し、見にくい争いを生み出すのだ。そして、他人を蹴落とし這いあがった者に手を下し、全てを奪っていくのである。
今回の魔物のやり方はそれよりはマシかもしれない。ただ、生き地獄で飼い殺しにし、用済みとなれば惨たらしく殺す。どちらにせよ、ザジたちからすれば残酷この上ないやり方だ。
そんな魔物のやり口をさんざん見てきたザジは、無言で剣を握る力を強めた。そして、「ミクワ」と傍らの少女に声をかける。
「考えなしに呪文使わないでよ。僕が巻き込まれる」
「……分かって、るわよ。そんなこと」
口ではそう言っているが、彼女の周囲には風が起こり始めていた。ぴりぴりと、肌を叩くような痛い風――魔力が渦を巻いている。
初めて会って、偶然にも彼女の逆鱗に触れてしまった時もそうだった。ミクワは感情が高ぶると、普段以上に強い魔力を発する。人間が放つとは思えないほど濃密で、人に制御できる枠を超えているほどのものが。
「なら冷静になって、村にいる魔物を効率よく全滅させる方法を考えて」
デッドセーラーとの戦いも、先ほどのくびかりぞくとの戦いもそうだ。指針になったのはミクワの指示だった。彼女はザジよりも魔物との戦いに慣れて、観察眼も鋭い。ザジがするよりも彼女の方が適任だろう。だから、その間の時間稼ぎの口喧嘩はザジの役目だ。
「外部からの侵入者って僕らのことだよね。その僕らが来たから計画を早めたってことは、僕らが怖いのかい? 魔物にも、恐怖って感情はあるんだね」
ミクワが黙って周囲の敵に意識を割き始めたのを確認すると、ザジは瞳を鋭くし、魔物たちに毒を投げつける。
「オレタチが、ニンゲンを怖がる? ひゃっはっは、なわけねぇだろ」
「そう? ダーマで僕らの反乱を受けた魔物は無様に命乞いをしてきたよ。君らだって、それと同じだろう?」
「そんな魔族の面汚しと一緒にすんな、ジェネラル様のお達しよ」
「ジェネラル?」
新たに出てきた名前は、おそらくメザレを支配した親玉のことだろう。ザジはさらに話を続けるべく言葉を告げようとする。だが、その前にミクワの表情がこわばった。同時に、村の奥から一体の魔物が歩みでてくる。
マントを羽織り、立派な口ひげを蓄えた緑肌の魔人だ。青い鱗を重ねた甲冑を纏い、腰には見るからに業物と思しき曲刀を提げている。
魔人はシャドーナイトたちの前まで進み出ると、立派な口髭の下からよく通る声音で名乗る。
「吾輩はジェネラルダンテ。我が主、ボトク様より命を受け、英雄の里、メザレを墜としに来た」
「ボトク……!」
それまであえて無言を貫いていたミクワが表情に怒りを表しながら吐き捨てるように名を呟く。
見聞きした名前、それも浅からぬ縁の魔物なのだとザジは察する。
「それで、わざわざ僕たちを遠ざけた理由は?」
「貴様らがこの島に流れ着いたのは、すぐに分かった」
やはりか、とザジは思う。
ジェネラルダンテの力は、その風格に似合うだけのものだ。そんな魔物がいれば、無防備に浜に打ち上げられた外部からの侵入者を始末するなど簡単なことだ。ミクワのトヘロスは確かに強力だったが、それでも、支配者クラスの魔物を退けるには力不足だ。
「始末するのは容易い。だが、貴様らの力は、戦える者のほとんどを狩りつくしたこのメザレにおいても高いだろう。【四元柱】の方々の復活に必要な魂は、その持ち主が強ければ強いほど重宝する。ゆえに、この場でその力を見定め、確実に狩るため、お前たちの逃げ場を失くした。メザレを潰したのは、用済みだからだ。メザレの村の者どもにお前たち二人の魂があれば、復活に必要な魂は十分よ」
そこまで言い切ると、ジェネラルダンテは曲刀を鞘から抜いた。つい先ほどまでメザレの人々に向けて振るっていたのだろうが、刃に血の跡はなく、夜闇の中で鋼色に瞬く。
「ニンゲンよ、貴様らの力は確かなものだと吾輩は思っている。見せてみよ、【四元柱】にささげる魂の質を。さぁ、存分に死合おうぞ!」
来る。そう感じたザジはすぐさま破邪の剣を引き抜き――眼前に構えて防御の構えをとった。十分な勢いをつけて叩き込まれた刃を破邪の剣の刃で受け、激しい金属音を響かせる。
「スカラ!」
一手遅れたが、ミクワからの防御呪文の効果を受け剣を受ける手が軽くなる。そのまま小さく身を引いて刃を押し込んでくるジェネラルの体勢を崩そうとするが、魔人はスカラの効果を見るや自らも一歩引き、ためを作って横薙ぎの強靭な一撃を叩きこんできた。
スカラの守備力増強をもってしても受けきれない痛恨の一撃になる。そう判断したザジはとっさに身を屈めて刃を躱すと、身体を伸び上がらせる勢いのままに突きを放つ。
しかし魔人はステップを踏むように、薙いだ勢いも利用して身を逃がし、体勢を戻すとさらに踏み込みながら曲刀を振るってくる。
突き出した勢いで攻勢に転じる構えだったザジはやむなく回避に徹する。防御の姿勢に回るが、そのままではこの魔物を倒すことはできない。
――くそ、強い! デッドセーラーよりも、ずっと!
ザジは内心で苦虫をかみつぶす。デッドセーラーの時は、受けきれないまでも、まだどうにか余裕があった。けれど、ジェネラルダンテに対してはそれがまるでない。全身全霊で回避に徹し、それでどうにかいなせている。
反応は間に合っている。けれど、一撃一撃に籠められる力。撃ち合うたびに衝撃を逃がしにくい箇所に叩きこまれる剣戟。
この魔物は剣戟に長けていた。それだけでなく、身体能力でも完全にアドバンテージを奪われている。
魔法の援護を期待したいが、ジェネラルもそれは把握しているのだろう。密接した距離を維持し続けられる。このままでは、ミクワからの攻撃呪文による援護を期待できない。
と、ほんの僅か周囲に意識を割いた隙をついて、ジェネラルの剣が止まった。いや、大上段で振りかぶり、一気に切り込んできたのだ。慌てて防御の構えをとるが、構えた刃ごと剣圧で吹き飛ばされる。
「ザジ!」
それを見てか、耐えかねたようにミクワが割って入ってくる。いかずちの杖にヒャドの冷気を纏わせ、即席の細剣を作り上げると必殺の一撃を放ったジェネラルの隙間を突くように氷の刃を叩きこんだ。
しかし、ジェネラルはそれに素早く反応する。ザジに向かう追撃を止め、身体をひねって氷の刃による突きをいなす。
「目の付け所がいいな小娘。だが、本職でない者がどこまでもつか」
「メディル様の一番弟子を、嘗めないでよね!」
ミクワは引き戻した腕を再び伸ばし、突きの姿勢に入ると連続で刃を突き出した。いかずちの杖の石突を先端とした刃は魔法使いの少女が繰り出しているとは思えないほど鋭く魔人を穿ちに行く。
二度目の突きでジェネンラルダンテの目つきが変わる。キッと半眼鋭くし、繰り出される刃を冷静にいなし、劣勢に回っていると見るや大地を強く蹴って後退する。
「ベギラマ!」
その隙にさらに踏み込むのではなく、ミクワは杖を戻すと得意の呪文に切り替えた。ジェネラルの周囲をベギラマの火炎で囲い、さらに続けざまにメラミの火球を叩きこんでいく。
強い。
ザジに代わってジェネラルダンテと刃を交わしたミクワを見て、ザジは改めて彼女の強さに目を見張ることになった。立った一、二度刃を交えたのみだが、並の戦士以上に洗練された構えと鋭い突きだった。さらに距離が離れたと見るや攻め手の切り替え。自身の本質を見誤らず、それを活かすように立ち回る戦い方。それをなしているのは、ザジと同い年くらいの魔法使いの少女だ。
――ああもう、見惚れてる場合じゃない!
火炎に塗れた状況を打開するためだろう。魔人は一旦剣を鞘に納めると居合の構えをとる。最初の剣戟の際に出した、痛恨の一撃になりかねない居合斬りだ。多少の火傷は覚悟の上で、それを上回る強力な一撃でミクワを切り伏せるつもりだ。
それを妨げるべく、ミクワはベギラマの炎が勢いを強める。しかしジェネラルダンテは自慢の白髭が焦げるのも構わず意識を集中する。ミクワは確かに強者だが、ジェネラルダンテも魔物の将だけはある。
その隙を黙って見ているつもりはない。
ザジはミクワが善戦している間に体勢を立て直し、低い呼気を発しながら気合を溜めていた。それを吐き出すのは、今この時だ。
ザジが駆けだすのと同じく、示し合わせたようにミクワはベギラマの火炎をジェネラルダンテの正面から避ける。言葉を交わしたわけではないのに、よく見ているものだとザジは改めてミクワの視野に感心する。
「ぬっ!?」
「はぁあああああああっ!!!!」
先ほどまでのお返しとばかりに、ザジの大きく振りかぶった全力の一撃が魔人を襲う。さらに、体勢を崩した魔人に向かって、ザジは力強く地を蹴って跳躍、竜の鱗を断ち切る力強い【ドラゴン斬り】を叩きこんだ。
「ぬっ、がぁ……」
今度の一撃は、入った。
魔人の蒼い鱗の甲冑の上からだからか肉を切ることはできない。しかし、固い鎧の上から叩き込まれたドラゴン斬りは、魔人に十分な打撃を与えることができた。魔人の鎧は何らかの竜の鱗だろうという見立ては正解だったようだ。続けざまにミクワからメラミが撃ち込まれ、魔人はたまらず膝をつく。
「いいところで会ったわ。あなたはボトクに繋がる魔物でしょう。教えなさい。あいつは今どこにいるの!」
メラミを叩きこみ、その上メラストームの火球を周囲に浮かべたミクワは射抜く瞳でジェネラルに言葉を投げた。
「はっ、吾輩に応える義務はないな」
「そう、それなら――」
ミクワの周囲を旋回するメラの火球が勢いを増す、そのまま嵐のように叩き込まれるだろう火球は――一瞬にしてすべて消え失せる。
「ミクワ!?」
「しまっ……これ……」
遅れてザジは気づく。
魔人の身体から薄青色の煙が漏れ出し、それがミクワの身体にまとわりついている。呪文の行使を阻害する魔法――マホトーンだ。
ジェネラルダンテが次の手に出る前にとザジは止めの一撃にを仕掛けようとするが、その背後でミクワが激しく咳き込んだ。その様子は。どう見ても尋常じゃない。
「あたしはいいから、早く――けほっ、あいつを……!」
「でも、くそっ」
魔人はマホトーンを使った後は動いていない、その場で目を閉じ、意識を深く落としているようだ。少しなら余裕があるとザジは考え、ひとまずミクワにベホイミを施す。
「無駄よ、体質みたいなもんだから……」
「体質って、魔法を暴走させるっていうあれか。でもそんな状態になるなんて……」
「呪いの所為でマホトーンに弱いの! あたしはいいから早く、でないとあいつ――」
「もう遅い」
ザジが顔を上げたのは、ジェネラルダンテが悠然と立ち上がった時だ。その体からは傷が失せ、半割れの鎧以外の痛痒は痕跡すら消えていた。自慢の白髭も、焦げ目が一切ない。
「なんで……さっきまであんなに。魔法使った風でもなかったのに!?」
「はっ、わざわざ手の内を晒す訳なかろう」
慌てて剣を構えるが、あっさりと弾かれてしまう。先ほどまでザジと刃を交えていた時をはるかに上回る力だった。魔人は、まだ本気ではなかったのだ。それを理解した瞬間、ザジの身体は恐怖を思い出してしまう。
そんなザジの様子にジェネラルダンテは笑みを深めた。さっと片手をあげ、油断なく後退する。下がる
「なかなか楽しめたが、遊びはここまでとしよう。さぁ、貴様らの魂を奪ってくれん!」
高笑いしながら斬りかかるシャドーナイトの大軍。その前にザジは立ち、続けざまにイオを放った。しかし、爆発呪文の初歩であるイオでは大した痛手を与えることは叶わず、肉薄してきた彼らの剣を躱す。
ミクワもどうにか立ち上がって応戦するが、呪文の使えない魔法使いなど非力なものだ。ふきだまりの町で、痛いほど身に染みた経験である。
剣を弾かれたザジに彼らを凌ぐ術はない。なけなしの魔力でイオを放つも、ロクに考えもしない爆発ではどうにもならなかった。数匹がザジを通り過ぎ、ミクワに向かう。ザジよりも彼女を優先した動きだ。
「待てよ、このっ……ミクワ――!?」
慌てて彼女の援護に向かおうと振り返ったザジの背中から、何かが突っ込まれる。それはザジの身体を貫通し、淡い小さな光を引っかけていた。シャドーナイトの剣だ。そして、切っ先に引っかかっていたそれは……
「なんでぇ、ずいぶんと小さい魂だな」
そのあまりの小ささに、ザジは疑問を浮かべる。が、それよりも先に少女の悲鳴が響いた。
何かなど考えるまでもない。この戦いを共にした、強気で頼りになる魔法使いの身体も、シャドーナイトの剣が貫いていたのだ。ひときわ強く、ザジの数倍はあろうかという輝きが、抜き取られている。
「ザジ……ごめ…………」
少女の小さな唇が言葉を零し、やがて力なくその瞳から光が失われる。
「ミクワ――」
そして、ザジの意識も闇に消えた。