注;あくまでもネタとしてお読みください。
ノリと勢いで書きました。
時系列は考えない方向で。
「う~ん」
ジータは朝も早い内から騎空挺の甲板を難しい顔をして歩いていた。
「ジータ、どうしたんだ?そんな難しい顔してよう」
顔を上げれば見慣れた赤い小さな竜。
「ビィ、あのね……」
言いかけて、ジータは何かを言いあぐねるように口を閉じる。
そして周囲に人がいないかを確認し、再び口を開き、閉じた。
「ここでは何だし、グランともちょっと相談したい事なんだ。ねえ、グランが今どこにいるか知ってる?」
「グランなら、あっちでお前みたいに歩き回っててよう、オイラが声を掛けたら考え事したいって自分の部屋に戻っていったぜ?」
「……」
「ジータ?」
「そこまで経験あるワケじゃないし、双子って初めてなんだけど、ここまで通じ合うものなのかな?」
「……お前が何言ってんのかわかんねえけど、初めても何もお前ら双子だろ? 考えてる事はだいたいいつもおんなじだと思うぜ」
「うん、そうよね。ちょっとグランのとこに行ってくる」
「お、おう」
ビィに見送られる中、ジータはグランの元へ向かって行った。
★
ジータはグランの部屋の前までくると、ノックをしようと腕を上げる。
ガチャリ
そのとき、おもむろに部屋のドアが開き、なんとも言えない表情のグランと目が合った。
その瞬間にお互いの言わんとすることを察してしまったのは、生まれた時から片時も離れる事なく育った双子故なのだろう。
「グラン……」
「ジータ……」
「とりあえず、入れ」
「わかった」
簡潔なやり取りの後に二人は部屋へと入り、ドアは静かに閉められた。この間10秒足らずの出来事だった。
部屋に入った二人は互いに正面向き合う形でグランは椅子に、ジータはベッドに腰を下ろす。おもむろに口を開いたのはグランだった。
「ジータ、お前の言いたい事はわかる」
「グラン」
「今日は僕たちの誕生日だ」
「うん」
二人は神妙に頷き合った。
「僕はナルメアさんを引き受ける」
「うん?」
「だから、ジークフリートさんはお前に任せる」
「グラン、ずるい!!」
ジータが勢いよく立ち上がって抗議した。
「なんでだよ、僕がナルメアさん、お前がジークフリートさんで公平だろ!?」
「どこが公平なの、公平だって言うなら、二人一緒でしょ? 悪気0なんだよ、善意100%なんだよ!? 一人でジークフリートさんの善意を受け取れって言うの?」
「わかった。じゃあ、こうしよう。ジータ、お前にルリアとビィをつける。これでお前一人じゃない。いや、待て。やっぱりルリアかビィのどちらかにしてくれ。万が一、ナルメアさんが個人で祝ってくれるつもりだったら一人じゃキツい」
「じゃあ、私がビィとルリアをもらってナルメアさんにお世話されに行くからグランが一人でジークフリートさんのところに行けばいいじゃない!」
「バカ野郎!ジークフリートさんは悪気0なんだぞ、善意100%なんだぞ!? 一人でジークフリートさんの善意を受け取れって言うのか?」
勢いよく立ち上がったグランはジータと睨み合い、互いに一歩たりとも譲る気配がない。
「あのよう、ふたりとも」
「「!!」」
突然かけられた声に二人同時に声の方に振り返れば、呆れた様子のビィと引きつった笑顔のルリアがいた。
「ビィ」
「ルリア」
「「いつの間に?」」
ジータとグランの声がぴったりと重なった。
「あはは……ほんのついさっきです」
ルリアの控えめな笑顔に二人は同時に腰を下ろし、床に向かって溜息をついた。
★
「あの……」
溜息をついてから、声を発しない二人にルリアが恐る恐る声をかける。
「ジークフリートさんとは、普段は仲がいいように見えましたが、違いましたか?」
「違わない」
「むしろ、大好き」
グランとジータが間髪入れずに答える。
ジークフリートは単独行動で艇から離れる事はしばしばあるものの、関係性自体悪くない。むしろ、頼れる大人であり、落ち着いた物腰やいざという時に見せる行動力など、教わるべきことも多い。二人にとっても尊敬に値する人物でもある。
しかし、である。全てにおいてそつなくこなす元騎士団長にも欠点がある。
どこをどう、という経緯は省く。諸国を巡って見識を広めている筈なのに何故、とも思うが、彼は一部、大きく世間ずれを起こしているのである。
「贈り物」という点において、センスは壊滅的。「年頃の少年少女に贈るものではない」という以前に、人として、その贈り物はどうなのか、というレベルである。
「誕生日を祝ってくれる、その気持ちはありがたいんだ……」
グランに同意を示し、ジータも無言でうなずく。
「魔除けシリーズが斜め上すぎて覚悟が追いつかないの……」
毎年自分達がどんな顔でそれを受け取っているのか記憶がない。
とにかく、嬉しいな、という態度を崩さないよう、いっぱいいっぱいなのだ。
フェザーやランドル相手であれば、いくらでも堂々と抗議はできる。
だが、ジークフリートはダメだ。あの人の善意には抗えない。
唯一頼りになるおかん、もとい、パーシヴァルはこの日に限っては何も言わない。
ひょっとしたら、自分達の目の届かないところで注意してくれているかもしれないが、残念ながらプレゼントのチョイスにブレが一切見られない。
「ナルメアさんとは」
「別の意味で」
「「キツい」」
部屋に重たい空気が立ち込めた。
ビィの同情のこもった眼差しが痛い。
「あのよう、お前ら、忘れてるかもしれねえけどよ、誕生日は今日だけど、
ふたりは同時にはっとしたように顔を上げた。
当初、団員が少ない内は1日で盛大に祝っていた二人の誕生日だが、団員が増えるにつれて、個人的に祝いたいと誘う者がちらほらと出始めた。
スケジュールが合わず、早い者勝ちとなり、最終的に誕生日期間なるものが暗黙の了解として設けられることになった。
プレゼントのみの者は当日中に受取り、夜は騎空挺に居る団員達含めて盛大に祝い、残り六日の内にそれぞれの団員たちと過ごす期間になった。
「そういえば、さっき、ヴェインさんから『ヴェインカフェ』の招待状貰ったんだった」
「もう、いっそのこと、ランスロットさんとヴェインさんも巻き込んじゃう?」
「それもひとつの手だが、万が一にもひよこ組の二人がいたらどうする?可哀そうだろ」
グランは最近騎空団に入団した少年二人のキラキラした顔を思い浮かべた。
ジークフリートは騎士団に入って間もない二人にとっても憧れの存在である。夢を壊すのは忍びない。
とはいえ、この騎空団に入団したからにはそれも時間の問題だろう。
コンコン
「「!!」」
突然響いたノックの音に二人の肩が跳ねた。
非常に嫌な予感がした。
「団長、いるだろうか」
いません、と言いたいところだが、残念ながら、居る。起きてる事すら気配でわかるだろう。
ルリアがおろおろと二人を見比べているなか、グランとジータは覚悟を決めた。
「ああ、ジータも一緒にいたのか、ちょうど良かった」
いつになく、嬉しそうなジークフリートに二人は精いっぱいの笑顔を向けた。
その日、朝からお揃いの怪しげな文様のマントを装備したグランとジータ、ジークフリートの姿が団員たちによって目撃される事になる。
今年もまた、忘れられない誕生日となった。