あれから6年、私達は平和な島で順調に育っていった。
グランは
もし、ここがゲームと同じ世界だとして、主人公がどちらか、という問題はすでに問題ではない。だって、私は転生者だし、グランはグランなのだ。
だから私はグランが旅立った時を想定して一人でもこの島で暮らせるよう心の準備をしている。
自衛ができるようにグランの剣の稽古に付き合ってるし、家事全般もしっかり覚えた。
ご近所付き合いも順調なので問題ない。唯一心配なのはちゃんとグラン達に笑顔でいってらっしゃいを言えるかどうかだ。
なんだかんだ言って二人きりの家族である。ビィも入れれば二人と一匹。そうやって仲良く喧嘩して、ぶつかり合って、わかり合ってきた家族である。
突然一人になるところを想像して、寂しさで泣いてしまう事もある。
それに……。
私は蒼の少女を思い出す。
もし、本当に起こる事なのだとしたら、私の半分は半分でなくなり、彼女の半分になってしまうのだ。
そう思うだけでも泣けてくる。
最近、涙腺が緩くて仕方がない。
グランやビィのいる所ではそうでもないのだが、一人、部屋にいる時などは特に寂しさが襲ってくる。
外に目をやればとても良い天気だ。そろそろグランとビィが家に戻ってくる頃合いだ。
顔を両手で叩き、気合を入れる。
「よし!」
私は袖をまくり、昼食の準備に取り掛かった。
▼▼▼
「なあ、グラン、最近ジータの様子がおかしくねえか?」
素振りがひと段落ついたころ、ビィが僕の顔を覗き込んできた。
その様子はどこか落ち着かないのが見てとれる。
「うん、そうだね……」
正確には『最近特に酷い』だ。
僕は言葉に出さずに心の中で訂正を入れる。
ジータは平静を装っているけれど、年々よそよそしさが増してきている。
僕らは生まれた時から肩を寄せ合い、お互い支え合って生きてきた。いつも一緒で、離れて行動する方が少ないくらいだった。
最初は小さな違和感だったのが、今でははっきりとわかるくらいよそよそしい。
僕に頼っていた事を自分でこなすようになった。一緒に行く買い物だって行かなくなった。
剣の稽古には言えば付き合ってくれる。でも、前ほど長くは付き合ってくれなくなった。
近所のおばさんは女の子だから、とか年頃だから、とか言うけど絶対違う。
ジータに聞いても効率とか、役割分担とかいうけれど、それともやっぱり違うと思う。
「オイラ、最近お前とばっかり一緒でよう、ジータはあんまり一緒にいてくれねえ気がするんだ」
「うん、そうだね。僕もジータと一緒にいる時間は減ったかな」
「オイラ、ジータの気に障るようなこと、やっちまったかなぁ」
しょんぼりと項垂れ、こちらを見るビィの目は不安げだ。ビィには効率も役割分担も関係ない。なのにジータはいつも僕とビィを一緒に送り出す。
「そんなことはないと思う。むしろ、あれは……」
以前にも似た感覚を感じた気がして記憶を探る。
そう、小さい頃にジータの様子が突然おかしくなって、何を言っても僕の事を見てくれなくて、僕の言葉を聞いてくれなくて、たくさん泣いてたくさん心配した事があった。
あの時の僕にはジータが突然どこかにいなくなってしまうような気がして怖くて不安になって、そのあとジータがちゃんと僕を見て、一生懸命謝って、慰めてくれたんだ。
そこまで思い出した時、何故か今の状況と重なって自然と言葉が出た。
「ジータは、一人になろうとしてる……?」
「本当かよ!」
「……多分」
曖昧な言葉とは裏腹に心の中では確信に変わる。
「でも……何故?」
そこだけがわからない。
多分ジータに見えてて僕に見えない何かがあるのだけはわかる。
「とにかく家に帰ってジータに……」
言いかけて止まる。今朝のジータのいってらっしゃいの様子を思い出す。
普通に問いただしても教えてくれそうにない。
伊達に生まれる前から双子はやってない。
「グラン?」
「しばらく様子をみよう?ひょっとしたら、時期か来たらジータが教えてくれる……と思う」
「……本当かよ」
「……多分」
だんだん弱くなっていく言葉尻にビィの目が据わってくる。そんな目で見ないでほしい。
そんな時、タイミング良く腹が鳴る。
「そろそろ帰ろう、ジータが待ってる」
「まあ、しかたねえなぁ」
ビィが溜息をつき、僕は小さく笑う。
ジータが何を悩んでいるかはしれないけれど、一つだけはっきりしてる。
僕はジータを一人にしない。
それだけわかっていれば十分だ。