月日は着々と過ぎていく。
私は今か今かとその時を待つ。
さあ来いルリア!
そして私は大事な家族のグランとビィを笑顔で送り出し、グランたちはたくさんの仲間を集めてイスタルシアを目指す。
「……」
イスタルシア
そのワードに父さんから手紙が届いた日を思い出す。
何年かぶりの父さんからの手紙に二人と一匹で喜び、なんとも表現豊かな文面に困惑し、最後の一文に吸い込まれた。
その時のグランの目に決意が宿ったのを私は見逃さなかった。
「行きたかったなあ……、イスタルシア」
宙を眺めたつぶやきは、誰に拾われる事もなく消える。
空への旅立ちに未練がないとは言わない。むしろ未練だらけだし、できればグランと一緒に行きたいと思う。
グランサイファーに乗ってみたいし、星晶獣も生で見たい。けれど、空の旅は危険で、ゲームだったら何回でもやり直しはきくけれど、現実ではそうもいかない。
足手まといにはなりたくない。
だから私はこの島に残ると決めた。
送り出すときの笑顔の練習はばっちりだ。
時々ビィの視線が何かを訴えるようなものに見えるのも絶対気のせいだ。
笑蛾の練習とか、こっそり見られてたり、してないよね?
そんな事を思いながら、部屋を出たら笑顔のグランが真正面に立ちはだかっててすごくびっくりした。
「えっと、グラン?」
グランはすっごいいい笑顔で私とビィを外に追い出した。
送り出したってよりも追い出したよ。「しばらく帰ってくるな」って何?
状況がわからす振り返ってみたら、ビィとその辺散歩してこいってワケがわからない。
なんでも、最近私がほとんどビィにかまってないからビィが寂しがってるんだって。あの視線の理由がわかって安心した。
けれどこれから先、グランと二人で旅に出るのにそんな調子で大丈夫かな?ってちょっと心配になった。
「えっと、どこ行く?」
横を見るとビィと目が合う。
「ええっと、その辺ぶらぶらしようぜ」
よく考えると、一緒に散歩とか、結構久しぶりな気がする。
ちょっと前までグランとビィと一緒によく出かけていたのに私が抜けた状態だったらそりゃ寂しいよね、と少し反省する。
「じゃあ、その辺をぶらぶらすることに決定!」
にっこり笑いかければビィが安心したのがわかった。
▼▼▼▼
「やれやれ、世話のやける」
思わず漏れた言葉はビィに向けたものではない。もちろんジータだ。
最初は決まず気だった雰囲気が、ジータの一言で一気に柔らかになる。
ジータの明るい笑顔と声は僕らに元気をくれる。
決して身内びいきではない。男友達の中にもジータの笑顔に釘付けになる奴が何人がいたりする。
根が真っすぐだから尚更かもしれない。
ジータは器用に隠しているように見えて、その実は不器用だ。
最近は浮き沈みが激しい上に妙にそわそわしている。
原因は未だにわからないし、本人は言う気はさらさらないらしい。意を決してジータの部屋の前まで行ったはいいが、やっぱり決心がつかず、扉の前でしばらく悩む事になったのは内緒だ。
そんなときに部屋の中から聞こえたジータの独り言。
『行きたかったなあ……、イスタルシア』
決して聞き耳をたてていたわけではない。勝手に聞こえたのだ。
何をどう考えたのかはわからないけれど、どうやらジータはイスタルシアへは行かず、この島に残ると決めたらしい。
その一言でジータの行動に納得がいった。
けれど、ジータの行動に納得がいくのと、イスタルシアへ旅立つまで、ジータのよそよそしい態度が続く事に納得が行くかは別問題だ。
とりあえずは出てきたジータに元気のないビィを押し付けてしばらく帰るなと追い出した。
二人には話し合いが必要だと思う。もちろん、帰ってきたら家族会議だ。
そうして会議の議題や内容について考えをまとめながら空を見る。
今日も快晴だ。
そう思うった途端に空に黒い影を見た。戦艦だ。
爆音と黒い煙が見えたかと思うと戦艦が傾き、光った何かが森の方角へ、ジータとビィが向かった方角へと落ちていく。
「ジータ、ビィ……!」
居ても立っても居られず、僕は剣を掴むと家を飛び出した。