似たもの同士なワケがない   作:石ノ音

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救い

痛みより先に衝撃が身体を襲う。

 

「っ—————……」

 

息が止まり、視界が赤く染まった。

ビィが、普段しないような必死な顔をしているのが目に映った。

 

「なッ!?おい!?し、しっかりしろよ、おい!」

 

耳鳴りがだんだんと大きくなり、ビィの声がだんだんとそれに紛れていく。

意識が視界が徐々に赤から黒に、黒から深い深い闇に変わり、身体の感覚が遠ざかっていく。

最後に視界を掠めたのは生まれた時から一緒にいたもう一人の自分。

 

ああ、

 

最後に思ったのはたった一つ。

 

そんな顔させて、ごめん。

 

 

▼▼▼▼

 

「ククククッ!なんとあっけないィィ……!!」

「み、民間人、それも子供を……

ポンメルン!貴様、どこまで腐った!?」

「なぁ、!う、嘘だろ?冗談だよな?返事しろよ、なあ!おい!!」

 

たった今起こった事が信じられず、状況を整理しようにも頭が働かない。

周りで交わされる言葉がただの羅列のように耳を通り抜ける。

 

咄嗟に身体が動かなかった自分の代わりにヒドラの爪に切り裂かれ、吹っ飛ばされ、力なく身体を投げ出された大事な半身。

地面に広がる血だまりの量に冷静な部分が傷の深さを判断する。

 

「……ジータ……?」

 

声が、身体が震える。

取り落としそうになる剣を辛うじて握り締める。戦いは終わってない。

それとは別にジータの無事を確認したいのに身体が動かない。

僕にはわかってしまった。

 

ジータはもう、助からない。

 

どんなに離れていても感じていたジータの存在が、たった今、消えた。

 

「嘘だ……」

 

遅れて足がジータに向かおうとするが、ヒドラのせいで動けない。

今日はこんな事ばかりだ。すぐにジータの側に駆け付けたいのに兵隊が、ヒドラが、エルステが邪魔をする。

 

「邪魔だ!」

 

ビィがジータにしがみつき、ルリアがジータの側に膝をつく。なのに、僕だけが、一番近くにいた僕だけがジータの側にいてやれない。

それでも、ジータに近づけさせない為に僕はヒドラの前に立った。

その時、星晶の祠が光り、背後でルリアの声が聞こえた。

 

 

▼▼▼▼

 

……だい……じょうぶ、だから

 

それは澄んだ声だった。どこかで、聞いたことのある気がした。

 

大丈夫……

ジータ……私の力……あなたに預けます……!

 

湧き上がってくる何か。それを受け入れようとする自分の中に、ほんの少しだけそれを躊躇する意志が顔を出す。

それでも、この澄んだ声と力に抗いようもなく、私の中に流れ込んでくる。

闇の色がどんどん薄れてそれが青に変わる。

 

「この光は……!?」

「村の祠の星晶が……反応してやがる。この嬢ちゃん……!」

「ほう……!これが例の祠だったわけですネェ……、し、しかし……これはいったいィィ……!?」

 

意識が浮上するにつれて周囲の音が、声が鮮明になってくる。

蒼い光だと思っていたものが徐々に輪郭をはっきりさせ、少女の姿になる。

 

彼女は、そう、ルリアだ。

 

起き上がり、重低音の唸り声と地響きに目を向ければ、ヒドラと戦うグランの背中が見えた。

 

「グラン?」

 

そんな大きな声を出してないのにグランがこっちを見て、びっくりした顔してる。

うん、私もびっくりした。

 

「ジータ!」

 

私の名前を呼んだグランの顔は、泣きそうな、変な笑顔だった。

うん、ごめんね。

 

ルリアがヒドラを見る。ルリアがこれから何をするのかがわかった。

グランも何か感じたのか、ヒドラをけん制しながらこちらに移動する。私が一撃でやられちゃった相手にグランはやっぱりすごいね。

 

「始原の竜……」

 

ルリアが言葉を紡ぐ。

 

「闇の炎の子……」

 

星晶の祠から光が集まって来る。

 

「汝の名は―——」

 

ルリアは腕を天に掲げ、叫ぶ。

 

「——―バハムート!!」

 

光が集まり、ヒドラなんて目じゃない重低音が森に、大地に響き渡り、巨大な竜が顕現した。

 

オオオォォォ!!!

 

バハムートから放たれたブレスがヒドラを一瞬で灼き尽くした。

 

「なァァッ!?ば、馬鹿な!ヒドラが一撃でやられてしまっただとォォ!?

馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿なァ!そんな馬鹿な!ですネェーーーッ!!」

 

取り乱すポンメルンに警戒を緩めないで剣を構えているとビィが私とグランに声をかける

 

「お、おい!今だ!グラン、ジータ!ここを離れるぞ!」

「こっちだ!意識ははっきりしているようだが、早く傷の手当をしないと……!」

 

帝国兵がうろたえている隙を突いてカタリナさんに言われるまま私達は森の外へと逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

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