似たもの同士なワケがない   作:石ノ音

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今後の方針

無事、森から脱出した私達はひとまず村に戻り、我が家に直行した。

このままどこか別の場所に逃げるにしてもあまりにも体裁が悪すぎる格好だったりする。

ヒドラが突進してきた時、反応しきれなかったグランの前に身体をねじ込み、本来死ぬ筈だったグランの代わりに私が一度死んでルリアのおかげで生き返ったワケだが、ヒドラの攻撃による出血でほぼ全身血まみれ、服はぼろぼろ、カタリナさんからマントを借りている時点で察してほしい。

 

で、家に帰って身体を水で清めた訳だが、びっくりする事に痛みどころか傷跡らしきものが何処にもない。いや、多分そうだろうなとは思っていたけど。

新しい服に着替えて装備を整えて身支度が整い、鏡で確認。

 

「よし」

 

その直後に項垂れる。

今、私の頭の中をぐるぐるしているのはどうしよう、という言葉ばかりだ。

 

「グランを送り出す覚悟はしてたけど、私が送り出される覚悟はできてなかった」

 

まだ帝国兵があの森にいるのだから、ここでの時間もそれほど残されてないだろう。

グランの事だから、私が旅立つとなると、お目付けにビィをつけてくるに違いない。

そうなると、グランを一人にしてしまう。それは、とても嫌だ。

 

コン、コン、

 

そんな時響いたノックの音に顔をあげる。

ドアを開ければ、グランがいた。

 

「ごめんね、またせちゃって」

「……身体は、なんともないか?」

「うん、大丈夫。すごいね、傷跡ひとつ残ってないの」

 

後で見る?と尋ねかけ、グランにギュッと抱きしめられた。

 

「グラン……」

「……あの時、もう、駄目だってわかった」

 

グランの抱きしめる腕に力がこもる。

 

「……うん、ごめんね」

「この馬鹿、僕の方がお前より強いんだぞ」

「うん、知ってる」

 

私もぎゅっとグランを抱きしめ返す。

しばらく無言でだきしめられてたら、

 

「……とても、……怖かったんだ」

 

それは、とても小さな声なのに、身体の奥から絞り出された悲鳴のようだった。

首筋に、熱い雫が落ちて流れた。

私は精いっぱいの思いを言葉に込めた。

 

「……ごめんね」

 

あなたの立場を奪ってしまって。

あなたにあんな顔をさせてしまって。

本当なら、立場が逆だった。

本来なら、あんな表情(かお)をするのは私だった。

 

 

半身を失う絶望を身を以て知るのは私だった。

 

 

—————でも、

 

「それでも、グランが無事で、良かった」

 

こんな事をしている場合じゃない。けれど、もしこの先に別れが待っているならこんな事ができるのは今しかない。

私はグランの身体を力いっぱい抱きしめて、ちょっとだけ泣いた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

ジータの無事を確認して、お互い少しだけ泣いて落ち着いて、二人で居間に戻ると、ビィがジータに抱き付き、カタリナさんとルリアはとても神妙な、申し訳なさそうな様子で椅子に座っていた。

カタリナさんとルリアの話によると、あの時、確かにジータは一度死んで、ルリアと命を共有することで息を吹き返したということ、なので、ルリアとジータが離れ離れになった場合、ジータがどうなるか分からないらしいという事を説明された。あと、あのバハムートとか言う星晶獣がルリアだけの力じゃなく、僕たちの為に力を貸してくれたらしい事も。

それはもう、カタリナさん達と一緒にジータも帝国から逃げなければならないという事で、僕は頭を抱える羽目になった。

 

「あのね」

 

おずおずとジータが声をかけてくるのに合わせて顔を上げる。

 

「私、ルリア達と一緒に行くよ、だからね、グラン、ビィ」

 

ジータの目に迷いはない。あるのは僕に対する申し訳なさ。これはもう、覚悟を決めるしかない。

 

「どんなに離れても、私達は家族だから、無事に帰って来るって約束するから安心して」

 

ジータの大変頼もしい言葉に僕はテーブルに突っ伏し、ビィは失速した。

 

「……ジータ……」

「あのよぅ……ジータ……」

 

僕とビィの声が重なった。

 

「さっきの今で、何をどう安心できるんだ」

「相棒の言う通りだぜ」

「え?」

 

地を這う僕とビィの言葉にジータが心底不思議そうな顔で返してくる。

 

「一緒に行くに決まってるだろう、そんなの。なぁ、ビィ?」

「おうともよっ!」

 

ぽかん、と口をあけてこちらを見つめるジータ。

そんな表情がおかしくて、つい笑ってしまう。

思ってもみなかった。そんな顔だ。イスタルシアの件でも思ったけど、なんでどっちかが残る前提なんだよ。

状況がおちついたら今度こそ家族会議だ。

 

今後の方針が決まり、僕たちは慌ただしく動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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