『お前の名前は澪音だ。綺麗な響きだろ?』
僕の名前は奏 澪音。パパがつけてくれた名前。
明日の生活も、行く宛もなかった僕を助けてくれた、パパがつけてくれた。
でも、最期にその名前で呼ばれたのは、5年も前だ。
僕のパパは空爆で死んでしまった。
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僕はセントレベリア連邦軍第67陸戦部隊の兵士だ。
いや、兵士というより……奴隷、か。
『おいガキッ!酒が切れたぞッ!』
隊長の怒鳴り声がテント内に響く。
僕は背中を蹴られるように、キャンプ地の食料庫まで走った。
さらに後ろから空き瓶を投げつけられ、捨ててこいと指示が出された。
『で俺よぉ、この前の作戦で捕まえた女とヤッちまってよぉ______』
「はぁ…はぁ……えっと…6番…6番のお酒………な、無い………!?」
真っ暗闇の食料庫まで来たのに…隊長がいつも好んでいるお酒がない。このまま帰ってしまったら……僕はまた酷い目にあってしまうだろう。
「と、とりあえず……隣の5番を……!」
僕は重い瓶を両手で抱え、テントまで走った。
「遅せぇぞガキがよぉ……6番の酒は持ってきたんだろなぁ?」
……僕は、抱えている瓶を差し出した。
「……おいガキ、この酒……5番じゃねぇかッ!?」
隊長は声を荒らげた。
「お前、俺が飲みてぇっつーのを持ってくるのが普通だろうがよォッ!!あぁ!?数字も読めねぇのかこの…ガキィッ!!」
隊長は手に握る瓶で僕の頭を激しく殴った。
その衝撃で瓶は割れ、僕の顔は血まみれになった。
「も、もうしわけ、ございま、せんっ……6番が…切らしててっ……」
僕は必死に頭を下げて釈明した。でも、隊長は聞き入れてくれなかった。
「あ?切らしてたら買ってくるのがフツーじゃねぇのかよぉ……!」
地面に頭を擦り付ける僕を踏みつけ、最後に蹴飛ばした。
「あぐぁっ!!……」
蹴られた反動で僕は後ろの木に頭をぶつけてしまった。
「……まったく拾ってやったのにこのザマかよ…」
隊長は捨て台詞を残し、またタバコに火をつけた。
「…明日の作戦、お前囮な。」
隊長は非常な宣告をした。
僕を囮にして敵の拠点を爆破するらしい。
「ったく……てめぇのせいでなぁ、要らねぇメシ代掛かってっからなぁ…てめぇのが1人浮けば俺らのメシは少しグレード上がるしよぉ、酒だって切らすことねぇだろうなぁ!っはははははは!!」
僕は何も言えない。反抗もしない。隊長の言う通りに……明日僕は死ぬんだ。
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「ぱぱ!みてみてっ!ぼくじてんしゃのれた!」
「流石だぞ!また1つできるようになったな!」
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「今日はパパ特製のオムライスだぞー!自転車に乗れるようになったご褒美だ!」
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僕は、薄暗い貯蓄庫の中で目を覚ました。
毛布1枚だけが寒さを凌ぐものだ。
「おいガキ、ちょっと来い。」
「は…はいっ……」
隊長の声が暗闇に響いた。僕は毛布を投げ捨て、急いで隊長の元へと走った。
「…今日のお前の任務だ。」
隊長が僕に差し出したのは、ベルトに巻かれた爆弾だ。
「………はい。」
僕は震える手でそれを受け取る。
そして僕は頭を深く下げた。
「……今まで…ありがとうございました。」
隊長は何も言わず、僕の前から去った。
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「へっ、今日でこの作戦ともおさらばだ……ったくよぉ、こんなさみぃ辺境の地まで派遣しやがって……何考えてんだよ上層部は……」
「そうか?敵のオンナは締め付け良かったぜぇ?」
「得体の知れねぇオンナとよくヤれるなぁ……」
「しゃーねぇだろうがよぉ、溜まってんだから……」
「戦果上げて中央帰ったら極上のオンナが待ってんだろうがよ……俺は溜めてるぜぇ?っはははははは!!」
「……?おい、なんだありゃ?」
「あ?スコープ貸せ___ッ!?ありゃ航空機だ!!拠点潰しにきやがっ___」
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その日、第67部隊は壊滅した。
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「……ん…ッ……痛た……」
僕が目を覚ましたのは拠点から離れた所だった。
確か、僕は進軍していて廃墟の町の、建物の中に紛れ込んで…そこで機銃掃射に巻き込まれて……
遠くに見えるはずだった拠点がない。そこを覆い尽くしていたのは一面の炎。
「そ、そうだ…みんなは…!?」
ズキッとした痛みが足に響いた。
どうやらガレキで右脚を切ってしまったようだ。
僕は右足を押さえながらゆっくりと立ち上がる。
建物の外に出ると、いたずらに太陽は光を出していた。
______また、1人になっちゃった。
でも、僕はあの軍から抜け出すことができたんだ。
僕は自由だ。僕は1人だ。僕は1人だ。僕は___
僕はまた、一人ぼっちだ。