ひとりぼっちの音。   作:miyashiro

1 / 1
ぼくのかこ。

『お前の名前は澪音だ。綺麗な響きだろ?』

僕の名前は奏 澪音。パパがつけてくれた名前。

明日の生活も、行く宛もなかった僕を助けてくれた、パパがつけてくれた。

でも、最期にその名前で呼ばれたのは、5年も前だ。

僕のパパは空爆で死んでしまった。

僕はセントレベリア連邦軍第67陸戦部隊の兵士だ。

いや、兵士というより……奴隷、か。

『おいガキッ!酒が切れたぞッ!』

隊長の怒鳴り声がテント内に響く。

僕は背中を蹴られるように、キャンプ地の食料庫まで走った。

さらに後ろから空き瓶を投げつけられ、捨ててこいと指示が出された。

『で俺よぉ、この前の作戦で捕まえた女とヤッちまってよぉ______』

 

 

「はぁ…はぁ……えっと…6番…6番のお酒………な、無い………!?」

真っ暗闇の食料庫まで来たのに…隊長がいつも好んでいるお酒がない。このまま帰ってしまったら……僕はまた酷い目にあってしまうだろう。

「と、とりあえず……隣の5番を……!」

僕は重い瓶を両手で抱え、テントまで走った。

 

「遅せぇぞガキがよぉ……6番の酒は持ってきたんだろなぁ?」

……僕は、抱えている瓶を差し出した。

「……おいガキ、この酒……5番じゃねぇかッ!?」

隊長は声を荒らげた。

「お前、俺が飲みてぇっつーのを持ってくるのが普通だろうがよォッ!!あぁ!?数字も読めねぇのかこの…ガキィッ!!」

隊長は手に握る瓶で僕の頭を激しく殴った。

その衝撃で瓶は割れ、僕の顔は血まみれになった。

「も、もうしわけ、ございま、せんっ……6番が…切らしててっ……」

僕は必死に頭を下げて釈明した。でも、隊長は聞き入れてくれなかった。

「あ?切らしてたら買ってくるのがフツーじゃねぇのかよぉ……!」

地面に頭を擦り付ける僕を踏みつけ、最後に蹴飛ばした。

「あぐぁっ!!……」

蹴られた反動で僕は後ろの木に頭をぶつけてしまった。

「……まったく拾ってやったのにこのザマかよ…」

隊長は捨て台詞を残し、またタバコに火をつけた。

 

 

「…明日の作戦、お前囮な。」

隊長は非常な宣告をした。

僕を囮にして敵の拠点を爆破するらしい。

「ったく……てめぇのせいでなぁ、要らねぇメシ代掛かってっからなぁ…てめぇのが1人浮けば俺らのメシは少しグレード上がるしよぉ、酒だって切らすことねぇだろうなぁ!っはははははは!!」

僕は何も言えない。反抗もしない。隊長の言う通りに……明日僕は死ぬんだ。

「ぱぱ!みてみてっ!ぼくじてんしゃのれた!」

「流石だぞ!また1つできるようになったな!」

「今日はパパ特製のオムライスだぞー!自転車に乗れるようになったご褒美だ!」

僕は、薄暗い貯蓄庫の中で目を覚ました。

毛布1枚だけが寒さを凌ぐものだ。

「おいガキ、ちょっと来い。」

「は…はいっ……」

隊長の声が暗闇に響いた。僕は毛布を投げ捨て、急いで隊長の元へと走った。

「…今日のお前の任務だ。」

隊長が僕に差し出したのは、ベルトに巻かれた爆弾だ。

「………はい。」

僕は震える手でそれを受け取る。

そして僕は頭を深く下げた。

「……今まで…ありがとうございました。」

隊長は何も言わず、僕の前から去った。

「へっ、今日でこの作戦ともおさらばだ……ったくよぉ、こんなさみぃ辺境の地まで派遣しやがって……何考えてんだよ上層部は……」

「そうか?敵のオンナは締め付け良かったぜぇ?」

「得体の知れねぇオンナとよくヤれるなぁ……」

「しゃーねぇだろうがよぉ、溜まってんだから……」

「戦果上げて中央帰ったら極上のオンナが待ってんだろうがよ……俺は溜めてるぜぇ?っはははははは!!」

 

「……?おい、なんだありゃ?」

「あ?スコープ貸せ___ッ!?ありゃ航空機だ!!拠点潰しにきやがっ___」

その日、第67部隊は壊滅した。

「……ん…ッ……痛た……」

僕が目を覚ましたのは拠点から離れた所だった。

確か、僕は進軍していて廃墟の町の、建物の中に紛れ込んで…そこで機銃掃射に巻き込まれて……

 

遠くに見えるはずだった拠点がない。そこを覆い尽くしていたのは一面の炎。

「そ、そうだ…みんなは…!?」

ズキッとした痛みが足に響いた。

どうやらガレキで右脚を切ってしまったようだ。

僕は右足を押さえながらゆっくりと立ち上がる。

建物の外に出ると、いたずらに太陽は光を出していた。

______また、1人になっちゃった。

でも、僕はあの軍から抜け出すことができたんだ。

僕は自由だ。僕は1人だ。僕は1人だ。僕は___

 

僕はまた、一人ぼっちだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。