『多目的軍用シャベル』
多目的軍用シャベル、よく軍事マニアなどの間で話題になるのは、中国人民解放軍の軍用シャベルのことである。
しかも、コレ、簡単にネット通販で普通に購入可能だったりする。
恐らく人民解放軍そのものの収益に充てるために製造・販売しているということだと思われる。
もちろん、この「多目的軍用シャベル」というカテゴリーで各国の軍でそれぞれの国で製造・採用された多彩な品々がある。
どんなものかイメージしづらいので簡単に言ってしまうと十徳ナイフのシャベル版とでも表現すれば良いのだろうか。
とにかく、これさえあれば軍事行動どころか、アウトドアでもとっても便利! という素敵アイテムなのである。
主な機能としては、スコップとして当然の「掘る」、直角に曲げる蝶番部分があり折って鍬として「耕す」、綺麗に洗えば片面が鋭利な刃になっていて鉈や包丁として「切る・断つ」、ほかの部分(刃の部分の反対側など)に鋸刃が施されていて「鋸引きで木を切る」、蝶番の一部がテコの原理を利用できるようになっていてペンチ・ニッパーのように「摘まんで捩じる、挟み切る」、またハンマー替わりに「たたく」などと多機能すぎて乾いた笑いがでてくるほどなのである(モノによってもっと多く機能を持つものもある)。
そんな携帯用多目的軍用シャベルをこの時代で再現し黒鍬衆に装備することを静子は目論んでいたのであった。
「…ちょっと欲張りすぎかな?」
お世辞にもあまり上手とは言えないが、自分で描いた設計・図解を眺めながら彩に見せた。
しかしながら実物の知識が彼女にはない。
どんなものであるのか一向に頭の中で、その完成形を形作ることができなかったので無表情な応えしかできなかった。
「静子様、私には何のことを仰っているのか分かりませんので、ちゃんと説明していただいてよろしいですか?」
そっけない返事に静子は憮然としながら設計図から顔をあげた。
「彩ちゃん、何かやっぱり最近当たりつよくない!?」
『大神社碑~おおかみのやしろのひ~』
今は昔の物語。
尾張の地に大間口神を御使いにする女神ありし。
かの女神、日ノ本に吹き荒れた乱世を打ち払うがために織田上総之介信長の元に綾小路静子なる名を名乗り娘の姿で顕現せし。
大地の女神は山女でもあり醜女なり。
言わずもがな、いと聡明なる才媛なり。
数多の地の恵みを齎し尾張の民らの飢えを掃き清め。
数多の海の恵みをも引き込み民らを栄えさせ。
数多の英知の恵みで照らし新たな世の礎を作りし。
数多の商いを築き拓き国を富ませむ。
ひとたび戦になれば石火矢の雨を降らし仇なすものを打倒すなり。
信長公は世に第六天魔と囁かれん。
第六天魔は他化自在天なり。
仏法を修めるものの学びを深化させ欲界より解脱させるための門番なり。
仁比女に化身せし天女は「魔」を「天」に昇華させ政道に正道を打ち立てん。
戦国時代に来た当初より愛していた優しい狼たちを偲び建立した社。
もしも後の世に、このような文面が刻まれている碑が作られたことを静子が知ってしまったならば、「……これって……もしかして……変な神格化されてる…………」と、頭を抱えて布団の上をゴロゴロ転げまわりそうであった。
『猫喫茶美濃舎』
基本、織田信長という人物は、かなり凝り性である。
また、後世の彼を誹謗中傷する文物から窺い知ることが難しい部分はあるのだが、意外に情緒豊かで身内に対して情愛に満ちた甘いところがあった。
同じ人物に二回以上裏切られる。
裏切られても翻意を促す。
こういう記録がしっかり残っているだけでも充分お人よしに見える。
一度なり逆らい弟を推戴しようとしながらも軍門に下って以来重用された柴田、二回反逆し三度目の説得を試みられた松永弾正久秀などはその最たるものかもしれない。
大きく取り扱われないが、他の戦国大名らの血生臭い非道な行いを問うべきなのではと言えそうな話の方が多いのではなかろうか。
やはり天下に手をかけながらも舞台から降りたことが一番起因しているのであろう。
歴史は結局のところ勝者の歴史でしかなく、彼よりも後の天下人が良いように見せるための宣伝工作が織り込まれていると見ることも必要なのだから。
閑話休題、静子の元からターキッシュアンゴラを譲られてからのネコへの愛玩度合いの募らせ方は中々のものであった。
虎次郎と名付けられたこの雄猫も信長によく懐き、彼の肩に登って甘えている姿をもって、正室の濃姫からは「妾を差し置いて愛の語らいをいしている」、と軽く弄られる程であった。
ただ、猫を戯れるだけの存在として飼うという行為は非常に贅沢なことでもある。
京でのターキッシュアンゴラの脱走騒動などから、その姿の愛くるしさにより都のネコとして「お白さま」と京の民たちに愛される一頭が飼われることになったが、一層の事、より気軽に猫とのんびり戯れることができる茶店でも作るか!という話がどこからともなく立ち上がった。
そう所謂現代における「猫カフェ」である。
京の都大路の一角に作られた「猫喫茶美濃舎」は、都の人々に絶大な人気を寄せられた。
その熱狂はほどなくして大店と言われる商人たちまでも巻き込み、新たな嗜みの一つに挙げられるほどにまでになる。
完全予約制で実験的に南蛮猫の販路も兼ねたこの店の運営を行っているのは、もちろん織田家であり、その収益は充分に見合うものかは南蛮猫の仕入れにかかった莫大な費用をも遠くないうちに賄えると予想される成長を示していた。
その繁盛ぶりよりも稀に貸し切りにして悦に入っている某貴人や某天下人がいたとか、いないとか、は別の話。
今回も捏造てんこ盛りかも…。
一話目:多目的軍用シャベルって、私、あんまり知らなかったんですが、ググってみたら、けっこう欲しいかも、と思っちゃいました(^^)
二話目:原作でも触れられていましたが、何となくビットマンたちを祭る神社でイロイロと妙なお話がマシマシになって言い伝えになっていそうだな~と、悪ノリで更にのっけてみました。
三話目:静子が意図しなくても、この世界線では、きっとこうなってしまうというフラグを何となく感知した気がしました(^^;