戦国小町苦労譚ショートショート詰め合わせ   作:0003

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戦国小町苦労譚ショートショート詰め合わせ(その6)

『雉も鳴かずば…っていうか…目の前で率先して撃って撃って?な案件』

 

 

 

「はっはっは、これは私に徹底的に打ち壊してくれ、とでも言っているのかな?」

 

基本、温厚な静子のこめかみのあたりに青筋がぴくぴくと浮かぶ。

その日の彼女はいつになく不機嫌な気分へ誘われた。

 

これまで近衛前久の絡みで、それほど得意でもないのに歌会に参加することになったことに端を発し、更にはイエズス会のルイス・フロイスらとの会談、かつて依頼していたアガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバー(中央・南アメリカ原産リュウゼツランの一種)の引き渡しがあったのである。

 

過密な予定が立て込んでいた最中に、やっとの思いですべての案件に目鼻をつけてからの尾張への帰路の真っただ中に余計な問題が起きたのである。

 

浅井家のお家騒動にて北近江を牛耳った浅井左兵衛尉久政の手の者たちが性懲りもなく京と美濃をつなぐ街道に嫌がらせの関所を作ろうとしているところに遭遇してしまったのである。

 

もちろん、静かなる怒りを滾らせた静子の声に静子軍の面々は恐れ戦いた。

普段温厚な人物の怒りというものは周囲を凍らせる。

結果、作りかけの関所と浅井軍は速やかに殲滅・解体されたことは言うまでもない。

 

後に長可は顔を蒼褪めさせながらこう言ったという。

「アレはいけない。まじ、空気やばかった……」

 

ちなみに、このときに移送されたアガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバーは、多肉植物で一見サボテンの仲間のように見えるが別種であり、蒸留酒のテキーラの原料になる。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『カクテル・マルガリータ』

 

 

 

静子の運営している街の一つにある醸造街。

いつのころからか、そこで手に入らない酒はないと言われるほどに様々な酒が造られていた。

 

日本酒(清酒・濁り酒)、焼酎(芋・そば)、ビール、ワイン(赤・ロゼ・白)、ラム酒(赤・白)、梅酒など盛沢山というか百花繚乱であった。

 

当初、この地では盛んでもなかった酒造りだったが、静子が事業を起こしてから、本人が飲酒を禁じられていることの反動であるかのように種類は増え続けていた。

 

そして、他に原材料という部分から言うならば、ウォッカ(大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモなど穀物)、モルトウィスキー(大麦麦芽)、グレーンウイスキー(トウモロコシや小麦などの穀物)、ブランデー(ブドウ)あたりは完成までの時間はともかく、今後、作り始めることができそうであった。

 

ギリシアのウーゾやトルコのラクに代表されるウーゾ効果を持つ酒(ブドウ、アニス、各種ハーブ)、歴史的に製造・販売禁止の歴史のあるスイス発祥のアブサン(ニガヨモギ、アニス、各種ハーブ)や中央・南アメリカの蒸留酒テキーラ(ブルーアガベ)、ヤシ酒(原材料が樹液の物とココナッツミルクを使ったものがある)あたりにまで手を伸ばすかは静子のみが知るというところであろうか。

 

「静っち、こないだ手に入れたあがーぺだっけ、アレも酒の材料なんっだっけ?」

新たな未知の酒の原材料と小耳にはさんだ慶次が興味津々と目を輝かせながら口を開いた。

 

「ん? ブルーアガべは、テキーラっていう蒸留酒の材料だよ。でも、原材料として使えるまで五~十年ほど育てるのにかかるよ」

こともなげに彼女が答える。

 

「けっこう時間かかるんだな」

少し眉間に皺を寄せながら長可が口を挟む。

 

「結局のところ、何でも始めなければ完成はしないんだからね。それにアガベの仲間は環境に強いから栽培は楽な方だよ。私の手をすぐに離れると思うからつまらないけどね」

 

静子は自嘲気味に苦笑いを浮かべた。

慶次は朗らかに「まぁ、静っちがこうやってイロイロ作ってくれるから俺たちも新しい酒を楽しめるんだから良いことっちゃあ良いことだろ」と受け流す。

 

「テキーラできたら私も飲んでみたいカクテルがあるんだよね……禁酒はずしてもらえないかな……」

昔、静子は映画に登場し憧れたテキーラ・ベースのカクテル「マルガリータ」を思い浮かべ小さく呟いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

『濃姫の影?』

 

 

 

お市の方は良くも悪くも遠慮のない人物である。

静子は思う。

やっぱり上様(信長)の妹なんだなぁ、と。

現在、茶々と初、江らまだ幼い娘たちを連れて静子の屋敷に滞在している。

 

武家らしいと言えば武家らしいのだが、いとも簡単に食事のときには子供たちを乳母任せにしてしまう。

そして当人は、悠々と一人で静子らと膳を並べる。

 

元々は、彼女らは自身の部屋に食事が運ばれていたはずなのだが、今ではすっかり彩や長可、慶次、才蔵ら静子ファミリーと一緒に食事をすることに馴染んでいた。

 

「義姉上も食事は皆で食べるのが一番美味しい、と言っている」

「なのじゃー」

「のじゃー」

 

お市の方の言葉に茶々と初が当たり前のことと言うように大きく頷きながら後に続く。

眉間を人差し指で押さえながら頭痛をそこはかとなく感じ始めた静子の目には、すまし顔でいう彼女の背後にドヤ顔の濃姫が幻視された。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『華嶺なる天狗の転身』

 

 

 

怪しげな男であった。

赤ら顔の天狗面に一本歯下駄の山伏の装い、身の丈六尺を超える無駄な肉のない筋肉の鎧に包まれた巨体は見るからに妖しい。

ちなみに山伏などが使ったとされる一本歯下駄は、山の中を移動するときは意外と歩きやすい

とされる。

実際に使ってみた人物の感想は「かなり疲れる」であるのだが。

恐らく使用時に求められている平衡感覚、運動神経の難易度に使用者が到達できていなかったということだけなのかもしれない。

 

現在、彼は静子に仕える外交僧で華嶺と名乗っている。

名乗っているというのは、実のところ伊勢の山間での修行に長らく勤しみ過ぎて己の名すら忘れてしまって幽鬼の如く放浪していたからであった。

 

元々、伊勢神宮へ山路で時に糊口をしのぐために旅人の荷物を失敬したり、獣から助けて米やらを無心・所望する天狗として噂されていた怪人物である。

伊勢参りへの参拝者の間から訴えがあり、このまま見過ごし続けることはできないと信孝が派遣した者たちは悉く翻弄され追い返された。

このままでは、治安を預かる身としては是非もなしと信孝からの依頼が静子に入る。

 

これを受けた静子は、静子謹製の配合の結果生まれた精神攻撃(カレー鍋)によって調伏されて仕えたという経緯があった。

このときの「カレー」のスパイスの香りに感動した当人は、天啓を受けたと自らを「華嶺」と号した。

 

食事なくして人は正しく人たり得ない事例は数多ある。

結局のところ、美味いものは須らく物事を解決するべき正義なのであった。




今回も捏造マシマシでございます(^^;)
また、原作を少し別の角度から見てみるのもオモシロイかな~と。

一話目:いつもニコニコ茫洋としている静子が静子軍で恐れられている理由ってコトをピックアップで強調ネタ

二話目:酒絡み、原作では本人禁酒を命じられていますし、それほど好きではないみたいな表現がなされていますが、増殖していく酒の種類を見ていると心の奥底では欲している部分があるのかも…というイメージの作品

三話目:茶々と初の「のだー」を書きたかっただけデス(素直w

四話目:華嶺行者は、思いっきり不審人物な天狗さんですが、きっとインドの山奥で修業した某特撮ヒーローのモデルに違いない(棒:すっとぼけ~)
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