四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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 記念すべき10話目!あの不遇すぎて泣けてくるあの子が出てきます!台詞はありませんが…。


四宮総司は気付きたくない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四条帝。海外を拠点とした大規模な多国籍企業を経営する四条グループの跡取りである。四宮と四条の仲は過去のある出来事によって冷え切っており、四宮は四条を見下し、四条は四宮を憎むという形になっている。

 

 そして現在、たった今。四宮総司はそんな四条帝からある相談を受けていた。

 

「眞妃さんが情緒不安定?」

 

 この日、平均よりも少なかった雁庵からの仕事を終え、余った時間を勉強に充てていた総司だったが、帝から通話が掛かってきた。

 すぐに赤木を呼び、部屋の前を見張らせてから途切れた通話を総司から掛け直した。帝はすぐに通話に出て、総司と挨拶を交わしてから単刀直入に通話を掛けた用件を口にした。

 

「…いつもの事じゃないのか?」

 

『失礼だなお前!…いやまあその通りではあるんだけどさ』

 

 四条眞妃。今、総司と通話をしている帝の双子の姉。総司とは社交界で何度か会っているし、話した事もある。

 秀知院学園の二年であり、総司とかぐやとは同級生。総司と帝曰く──────

 

「眞妃さんはかぐやと似てるからな」

 

『…まあ、そうだな』

 

 かぐやと眞妃は似ている。本人達の前では口が裂けても言えないが。

 

『ていうかそうじゃない。そうじゃないんだよ。確かに姉貴の情緒があれなのはいつもの事なんだけどさ、今回は様子が違うんだよ』

 

「というと?」

 

『ベッドで尋常じゃないくらいえづいてた』

 

「…いつもの事じゃないのか?かぐやもたまにあるぞ?」

 

『あんの!?え!?…あ、何か考えてみれば前にも同じ事があったような』

 

 どっちなんだ。

 

『でもさ、やっぱいつもとは様子が違うんだよなぁ』

 

「そんな漠然と言ったって解んねぇぞ」

 

 帝にしては珍しく漠然としている。いつもならずばっと物事をこうだと、こう思うと言い切っているのだが。

 

『何か人間関係で悩んでるみたいなんだよな。“どうして友情ってこんなに苦しいものなの…?”とか言ってたし』

 

「何それ重い」

 

 適当に聞き流していた総司の表情が一変する。何だそれは、一大事じゃないか。

 

「え、眞妃さん苛められてたりしてんの?俺が知る限りじゃそんな風には見えないし、聞いた事もないけど」

 

『いやー、仮に姉貴が苛められてたら今頃秀知院の生徒誰か消えてるぞ』

 

「…だよな」

 

 苛めの線は無し、と。

 

「後、人間関係で苦しむ事といえば…。恋愛とか?」

 

『はぁ~?恋愛ぃ~?あっはっはっは!ないない!姉貴に恋とか!あり得ねぇって!』

 

「だよなぁ。俺も自分で言いながら無いなって思った」

 

「『あっはっはっはっはっはっはっはっはっは」』

 

 結局二人で話続けても結論は出なかったため、眞妃の悩みの詳細が解り、それがすぐに解決しなければならない問題且つ、互いの協力が必要だと判断した場合また連絡するというオチで話は終わった。

 

 その、翌日──────

 

「恋愛相談…ですか?」

 

「はい!私、もうどうしたら良いか解らなくて…。かぐや様だけが頼りなんです!」

 

 かぐやに頼まれて生徒会の手伝いに来ていた総司だったが、その人はやって来た。

 柏木渚。大手造船会社“柏木造船”の会長令嬢であり、経団連理事の孫。成績は優秀で、前回の学園内テストでは5位だった。

 かぐやや、学園四大美女に隠れているが、柏木も男子に人気があり、最近彼氏が出来たという噂が流れている。もしや、恋愛相談とはその彼氏絡みの事だろうか。

 

「俺は外した方が良いか?」

 

「あ、いえ…。その、男子目線の話も聞きたいので、総司様も残って貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「ん、了解」

 

 残ってても良いらしい。というより、総司にも相談に乗ってほしいらしい。恋愛経験なんてゼロなのだが、まあ同じく恋愛経験ゼロのかぐやが変な事を言い出さないか見張らなければいけないため、お言葉に甘えて残らせてもらう。

 

「して、どういった内容の相談なのでしょう」

 

 かぐやが柏木にどんな相談なのかを問う。すると──────

 

「円満に彼氏と別れる方法が知りたいんです」

 

 総司が想像していたものより二、三段階上の内容が飛び出してきた。何かこう、良さそうなデートスポットとか、ルートとか、そんな事を考えていたのだが。

 

「お二人は凄くモテますし、恋愛においての知識は半端ないとか!そんなお二人なら凄く良いアイディアをお持ちなのでしょう!」

 

 何か期待が重い。それと誰がモテるって?

 

「俺は別にモテてないぞ」

 

「え?そんなっ。女子の間では総司様は物凄く人気なんですよ?」

 

「…そうなの?」

 

 そんな事ないと思うのだが。告白とかされた事ないし。

 その事を柏木に告げると、こう返ってきた。

 

「それは、総司様が尊すぎるからだとファンクラブの会員の方が言ってました」

 

「何だそりゃ。てかファンクラブって」

 

 訳の解らない理由と訳の解らない団体の存在を知らされた総司。ファンクラブについては後日、使用人に調べさせよう。必要だと判断すれば、容赦なく潰そう、うん。

 

「それで柏木さん。どうして別れようと?」

 

 かなり話が脱線したが、かぐやが話の軌道を戻す。

 そして、かぐやの問い掛けに対して柏木がポツポツと話し出す。

 

 何でも、彼氏から告白してきたそうなのだが、その告白の仕方が唐突且つ衝撃的すぎて、勢いでオーケーしてしまったらしい。それから付き合い始めたのは良いのだが、柏木はその彼氏についてよく知らず、接し方も解らず、恋人らしい事も未だに出来ていないという。

 その彼氏とは気まずくなり、距離ができた。別れようとする理由は、彼に申し訳がないから、というのが柏木の話だ。

 

「そうですね…。付き合ったとはいえ、こないだまで他人同士だった訳ですから、そういう気持ちになるのは解らなくもありません」

 

「でもさ、告白は受けたんだから嫌いな訳じゃないんだろ?」

 

「はい。でも、これが恋愛感情と言われると解らなくて…。嫌いじゃないからこそ、私のせいで気まずくなった事に申し訳なくて…」

 

 如何ともし難い問題である。相手を嫌いでないから、円満に別れたいとは。だが──────

 

「嫌いでないのなら、別れるのは早計なのではないでしょうか?ただ自分が本当に彼を好きなのか不安なだけでは?」

 

「そう言われれば…、そうかもしれません…」

 

「それなら、まずは相手の良い所を探してみるのはどうでしょう?」

 

(か、かぐやがまともな恋愛アドバイスを送っている…。ちょっと感動…)

 

 かぐやが柏木に示す一つの解決案。まだ別れる事はせず、付き合っていきながら相手の良い所を探す。

 これは中々に良いアイディアなのではないだろうか。柏木の反応も悪くない。

 

「例えば真面目な所だとか、勉強が出来る所だとか」

 

(うんうん。良いぞかぐや)

 

「努力家な所とか、実はすっごく優しくて、困ってる人を放っておけない所とか…」

 

(…あれ、かぐやさん?)

 

 何やら雲行きが怪しくなってきた。ちらりと横目でかぐやの様子を見遣る。

 満ち足りた表情をしていた。

 

「目付きが悪い所とか…」

 

「目付きが悪いのは短所では?」

 

「違うの!目付きが悪い事を気にしているのが可愛いの!」

 

「…」

 

 出ました。出てしまいました、ポンコツかぐやちゃまが。

 ほら、柏木が目を丸くして「目付きが悪い人が好きなんですか?」とか言ってる。「かぐや様の周りで目付きが悪い人は…」なんて考え出してる。知ーらねっと。

 

(それにしても…)

 

 総司はかぐやと柏木の顔を見回す。完全に二人の世界に入って議論している。議論というより、かぐやが墓穴を掘りまくってるだけなのだが。

 総司の事など忘れているのではなかろうか?これ、出ていった方が良いのではなかろうか?

 

「話は聞かせてもらいました!」

 

 なんて考えていると、勢いよく生徒会室の扉が開かれる。そこから現れたのは、赤い帽子を被った藤原だった。

 

「藤原さん!?」

 

「…あ、その帽子って「総司君?」ナンデモアリマセン」

 

 生徒会室に来た藤原が被った赤い帽子に既視感を覚えた総司はすぐに思い出す。以前、藤原が生徒会室で踊っていた謎ダンスを。

 

 それを口にする前に、藤原に封殺されたが。

 何やらその帽子は演劇部から借りてきたらしい。あの時も借りていたのだろうか。あの帽子投げだけのために?

 

 …やはり、藤原は解らない。

 

 藤原が来てからは迅速に事は進んだ。

 藤原はまず、柏木に今の彼氏が他の女子とイチャイチャしている所を想像してみようと提案した。何故かかぐやも一緒になって、恐らく相手は違うだろうが想像していた。

 

 結果、柏木は嫌な気持ちになり、かぐやは女子二人には悟られていなかったが、かなりムカムカしていた。

 そしてそれは嫉妬だと、相手の事が好きだからこそ嫌な気持ちになるのだと藤原は言った。

 

 うむ、まさにその通りである。好きでもない相手が自分以外の異性とイチャイチャしてようと、別にどうも思わないはずなのだから。

 だからかぐやよ、ショックを受けるな。いい加減認めるといい。自分の気持ちを。

 

 そうして柏木は自分にも相手を好きな気持ちがある事を自覚し、これにて一件落着…かと思えば、柏木は続いて相手ともっと自然に話せるようになるにはどうすれば良いのかという質問をした。

 

 その結果──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、総司は募金活動の手伝いをさせられていた。

 

 あの質問の後、まずかぐやが二人の共通の敵を持つのはどうだろうかというアドバイスを送った。人ではなくとも仮想敵でも、二人で共有すれば愛情は深まるのではないかと。

 確かにそうかもしれないが、その敵を探すのは難しいのではないか。と思われたその時、藤原が動き出した。

 

 藤原は言った。二人が戦わなければいけないのは社会だと。終わらない戦争、無くならない貧富の差、これほど強大な敵はいない、と。

 その時、総司もかぐやも思った。何を言ってるんだこいつ、と。だが柏木は違ったようで、藤原の熱に感化されたのか、燃え出した。すぐに彼氏の元へと駆け出していった。

 

 そして今日、この光景に繋がるのである。白銀が学校外で募金活動の要請を受け、その手続きを白銀の手解きを受けながら柏木とその彼氏(翼くんというらしい)が行い、生徒会+総司と一緒に募金活動を行っている。

 

「やれやれ…?」

 

 白銀と一緒に荷物の整理を行っていると、総司は視線の端で気になるものを捉えた。電柱の影に隠れてこちらを覗く人影。

 総司は振り向き、その人影を注視する。

 

(あれは…、眞妃さんか?)

 

 その人影の正体は、四条眞妃だった。眞妃は目に涙を浮かべながらこちらを、というより募金活動をする柏木達を見ていた。

 

(…ん?)

 

 そう。泣きながら彼等を見ているのだ。

 その事に気付くと同時、総司は一昨日のある会話を思い出す。

 

『姉貴が情緒不安定なんだよ』

 

(…んんん?)

 

 次々に脳裏に過る総司と会話の相手だった帝の言葉達。

 

『今回は様子が違うんだよな』

 

『何か人間関係で悩んでるみたいなんだよな。“どうして友情ってこんなに苦しいものなの…?”とか言ってたし』

 

(んんんんん?)

 

 総司の額から冷たい汗が流れ出す。

 

『後、人間関係で苦しむ事といえば…。恋愛とか?』

 

『はぁ~?恋愛ぃ~?あっはっはっは!ないない!姉貴に恋とか!あり得ねぇって!』

 

『だよなぁ。俺も自分で言いながら無いなって思った』

 

『『あっはっはっはっはっはっはっはっはっは』』

 

(ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?)

 

 自分達の言葉の数々を完全に思い出した総司。

 

 まさか…、まさか…。

 

「…気付かなかった事にしよう」

 

「何がですかぁ?」

 

「いや、何でもないよ」

 

 さすがの総司でも何も思い付かなかった。いや、本当にどうすればいいんだこれ。帝に報告するべきか?いや、それは流石に眞妃が可哀想だ。自分の失恋を弟に知られるとか、あのかぐやと同じプライドの塊が耐えられる筈がない。

 

 よって、ここでの最善策は何も知らなかった。何も見てなかったと自分に言い聞かせる事なのだ。

 

「よし。それじゃあ、俺達も行くか」

 

「はい!行きましょう!」

 

 荷物の整理を終えた総司は藤原と並んで、すでに柏木達に加わっていたかぐやと白銀の隣に募金箱を持って並ぶ。

 

「募金活動にご協力お願いしまーす」

 

「しまーす!」

 

 そして、道行く人達に向けて声を張り上げるのだった。

 

 悲しい視線に気付かぬ振りを続けながら。




もう何も辛くないは聞きたい(すの歌のフルを)

 ちなみに“す”って解ります?歌のタイトルやフルネームで出すとヤバそうなのでこの言い方にしたんですが。(笑)
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