四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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この話を読んだ後、藤原あああああああああ!
と、貴方は叫ぶ。


早坂愛は誘いたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏休み。それは総司にとって地獄を意味する。

 学校の授業がある日はそれを考慮し、抑えられた量の仕事が降りてくるのだが夏休みは違う。授業がない分、情け容赦なく四宮当主様は総司に仕事を寄越してくる。

 

 夏休みといえば海?山?花火?祭り?違う。夏休みといえば、仕事である。

 総司はかなり歪んだ夏休みを去年から過ごす事になったのだ。

 

「マジめんどい…」

 

 夏休み前最後に行われる生徒総会が終わり、早い生徒はすでに下校を開始している。

 そう、明日から夏休みが始まるのだ。そして明日から、総司の繁忙期が始まるのだ。

 

 明日から始まるであろう社畜生活を思い浮かべてげんなりする総司。只でさえ他にも考えなければならない事があるというのに、それと同時に大量の仕事を熟さなくてはならなくなる。

 

「…もっと。もっと部下が欲しい」

 

 せめて赤木の他に三人。三人でも総司直轄の部下が傍に居れば。総司の父親は本当に最低限、赤木一人しか寄越してくれなかった。しかもその赤木は雁庵の命令で総司の仕事に手を貸せないという始末。

 

「随分と酷い顔をしてらっしゃいますね。明日から夏休みなんですよ?」

 

「…早坂」

 

 ふーらふらと歩く総司に話しかける人物、早坂愛は総司の萎えた感情を隠さず浮かべる表情を無表情で見つめていた。

 

「早坂も知ってるだろ。俺の夏休みは休みじゃないって…」

 

「まあ、知ってますけど。知ってて言ったんですけど」

 

「…」

 

 無表情なままの早坂。何か最近早坂の当たりが強い気がする。最近同じ事を考えたが、レベルが違う。あの時は遠慮がなくなったというのがぴったり当て嵌まったが、今回は本当に不機嫌そうなのだ。

 

 早坂はあまり感情の起伏で表情が変わらないが、長年一緒に居ればある程度感情を読み取れる。

 最近の早坂は、不機嫌である。正確に言えば、日曜日の夜からずっとである。

 

「なあ早坂。前から思ってたけどさ…、何でそんな不機嫌なの?」

 

 ずっと不思議に思っていた。総司には何か早坂に悪い事をしたという自覚はない。それでも早坂は事実機嫌が悪いのだから、何かしたのだろうが。

 正直総司には全く覚えがない。

 

「…別に、不機嫌なんかじゃないです」

 

「いやでも俺への当たり強いじゃん」

 

「強くないです」

 

「…」

 

 総司から視線を外してそっぽを向くと、ぷくっ、と頬を膨らませる早坂。

 …その顔は無意識でやってるのだろうか。そんな顔をして不機嫌じゃないと言うのは無理がある気がするが。

 

「…総司様のバカ」

 

「何でだよ」

 

 訳が解らない。何故バカとまで言われなければならないのか。これは早急に早坂の機嫌を直さなければ。そのためにもまず、自分が早坂にした悪い行為について思い出さなければ。

 

「…別に、総司様は悪くないですよ。私が勝手に機嫌を悪くしてるだけです」

 

 総司が考えている事を読み取った早坂がそう言った。というか、やっぱり機嫌が悪いんじゃないか。

 とは口に出して言えず、総司はもう一つ頭に浮かんだ疑問を投げ掛ける事にする。

 

「俺は悪くないって、じゃあ何で機嫌が悪いんだ?俺が早坂に何かしたんじゃないのか?」

 

「さっきも言いましたが、総司様が悪い訳じゃありません。総司様が私に何かをした訳でもありません」

 

「じゃあ、何故?」

 

「…」

 

 総司は悪くないと繰り返す早坂だが、それでは何も解らない。それに、理由が何であれ早坂は総司に対して機嫌を悪くしているのだから、原因は総司にあるのは間違いない。

 だというのに、悪くないと言われても総司は納得できなかった。

 早坂に続けざまに理由を聞くが、早坂は黙り込んでしまう。

 

「…言える訳ないじゃないですか。ただの嫉妬だなんて…」

 

「は?嫉妬?何に?」

 

「っ!わ、忘れてください!」

 

 俯いた早坂の呟きが聞こえた。だがその意味が解らず、総司は聞き返してしまった。

 直後、早坂が顔を真っ赤にして総司を見上げて詰め寄った。

 

「いや、忘れろったってな」

 

 常人とは比べ物にならないほど出来の良い頭をしている総司である。忘れられる筈がない。

 

(嫉妬って…、何に?俺は何か早坂に嫉妬される様な事したか?)

 

 試験の結果?これはあまりに前過ぎるし、それに早坂が嫉妬するのならもうとっくにされている。

 なら他の何か…、と考えるが全く思い当たるものはない。

 

 この時、総司は勘違いをしていた。早坂の嫉妬の対象は総司ではなく、別の人物だという事を。

 

「…総司様。藤原さんとのお出掛けは楽しかったですか?」

 

「え?」

 

 早坂が不意にそんな事を問い掛けてきた。早坂は総司の方を見ず、俯いていた。

 

「…楽しかったぞ。ちょっと疲れたけどな」

 

「…そう、ですか」

 

 総司は早坂の問いに本心で答えた。あれから五日が経ったが、あの時の光景は鮮明に思い出せる。藤原とラーメンを食べて、買い物をして、水着を──────おっといけない。こんな事は早坂の傍で…いや、たとえ一人ででも考えてはいけないものだ。

 

「早坂?」

 

「…総司様」

 

 しかし、何故いきなりそんな事を聞くのだろう。総司が早坂に聞こうとした時、早坂が体を総司の方を向け、真っ直ぐに総司の顔を見上げた。

 

「総司様。今度は…」

 

「…」

 

「今度は、私とも…」

 

 早坂は勇気を振り絞る。今すぐ逃げ出そうとする足をその場に留まらせる。緊張で乾いた唇を動かす。

 

 頬を染め、両目を潤ませ、早坂は固い決意と共に、その言葉を──────

 

「総司くぅぅぅぅうううううんんんんんん!!!」

 

 口にする事は出来なかった。

 

「──────」

 

「藤原?」

 

 ぎしり、と体を震わせる早坂。

 早坂の背後に視線を向けて目を丸くする総司。

 

 総司の視線の先。総司の名を叫び、駆け寄ってくるのは両目に大粒の涙を浮かべる藤原だった。

 藤原はわあああああああん、と泣き叫びながら総司に抱き付くと、総司の胸に顔を埋めた。

 

「聞いてくださいよ総司君!石上君が…、石上君がぁ…!」

 

 ぐすぐすと鼻を鳴らし、ひっくひっくと喉を震わせながら何かを総司に伝えようとする藤原。

 

「…」

 

「あー、落ち着け藤原。何を言いたいのか解らんぞ。石上がどうしたんだ。後制服で鼻水を拭くな」

 

 総司が泣いている藤原を宥めながら、ポケットティッシュを藤原の鼻に当てて鼻をかませている。

 その二人を傍で眺める早坂。

 

「藤原さん…」

 

「…あ、早坂さん!早坂さんも聞いてくださいよ!石上君が酷いんですよ!?」

 

「…」

 

 鼻をかみ終わった藤原がバッ、と早坂の方へと向く。そして藤原は総司と一緒に早坂にも自分の話を聞かせようとする。

 早坂の瞳からハイライトが消えていく。本当に、本当にこの子は何でこう素晴らしいタイミングで乱入してくるのだろうか。

 このマジ泣きの様子から意図的ではない様だが、この空気ブレイカーっぷりは正に対象F(藤原千花)の本領発揮というべきか。

 

「はぁ…。何があったんですか藤原さん」

 

「それがですね!?夏休み中にある夏祭りの事なんですけど…」

 

 早坂は総司に話を切り出せないまま終わってしまった。

 振り絞った勇気は藤原の乱入で霧散し、藤原の乱入によって湧いてきた苛立ちは藤原のマジ泣きっぷりによって鎮火した。

 結局総司と早坂はそのまま藤原の愚痴を聞く羽目になったのだった。

 

「藤原、それはお前が悪い」

 

「はい。私も藤原さんが悪いと思います」

 

「うわあああああああああああん!!!二人とも酷い!!!」

 

 その後、藤原の話を聞いた二人は藤原が悪いという結論を出した。

 それを聞いた藤原が更に号泣する事となったのは言うまでもない。そして号泣する藤原を二人で宥める羽目になったのも言うまでもない。




多分解ってると思いますが、藤原が号泣してる理由は原作四巻第四十話にて描かれています。
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