四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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 この小説は少なくても3000文字、多くても5000文字を目安に書いております。これから例外が出てくるかもしれませんが基本的にはその予定ですのでご了承ください。

 さてそんな事よりも皆さん。

 早坂って可愛いですよね?


早坂愛は認めない

「…どしたの、これ」

 

 呆然と、目の前の光景を見ながら総司は隣のかぐやに問い掛けた。

 

「どうも料理人の興が乗ってしまったようで」

 

「…」

 

「何ですか?」

 

「いや別に」

 

 今、総司とかぐやは学園の教室前の廊下に立っている。午前の授業が終わり、さて今日届く弁当は何だろな、と心なし楽しみにした所で総司の分と一緒に弁当を受け取ったかぐやが届けに来たのだが──────

 

「俺のは何でこんなにでかいの?」

 

 箱が異様にでかい。しかも何故か総司のだけ。なのでこれはどうしたのかとかぐやに問いかける。

 

「貴方はそれくらい食べるでしょう?」

 

「いや食べないから。こんなに食えないから。どうすんだよこれ…」

 

 いつも朝食と夕食は一緒に食べているのに、食べられる量を把握されてないとか。…実は家の料理人、雲鷹兄上の息が掛かってる奴だったりするのだろうか。だからこれは実は俺に対する嫌がらせだったり?

 

「それより早く受け取ってください。私はこれから生徒会室に行かなければならないのですから」

 

「へいへい」

 

 急かすかぐやから素直に弁当箱を受け取る。

 生徒会室、いつもかぐやはそこで昼食を摂っているが、やはり今回は白銀絡みでこの弁当になったのだろうか。

 

 立ち去るかぐやを見送ってから、いつの間にやら集まってきた野次馬を見もせず教室へと戻り、自分の席に腰を下ろす。

 机にかぐやから受け取った弁当を載せ、包みを開け、蓋を持ち上げる。

 

「…」

 

 いや、いくら何でも興が乗りすぎているのではないだろうかかぐやさん。あなたホントに一体何があったんですか?

 箱の中には美しいとすら思える料理の数々が並んでいた。伊勢海老に牡蠣、ホタテに鯛と見事なまでの魚介尽くしである。というか、これ──────

 

(やっぱ白銀絡みじゃねぇか)

 

 何という事でしょう。箱に並んだ料理はどれも、白銀御行の好物ではありませんか。

 うちの妹が生徒会長を好きすぎる件について。

 

「…」

 

 パタリ、と蓋を閉じる。再び包みを結び、それを持って席を立つ。不躾に見てくる生徒達の間を通り抜け、総司は教室を出た。

 

「かぐやには申し訳ないが、生徒会に助けを所望しよう」

 

 本当に、本当にかぐやには申し訳ないが。いや、そんな事これっぽっちも思っていないが、総司は生徒会に弁当消費の協力を仰ぐ事にした。

 かぐやからの施しは受けない白銀でも、総司からの施しは多分受ける。藤原は言わずもがな。完璧な作戦である。

 

「お?」

 

 だが、総司が生徒会に向かっている時だった。正面から明らかに校則違反の短いスカートにしたサイドポニーの金髪少女が歩いてきたのは。

 

「早坂、良いところに」

 

「総司様?」

 

 周囲に誰もいない事を確認してから、総司は早坂に声を掛ける。恐らく、生徒会室へ行くかぐやを見届けてから戻る途中だったのだろう。

 

「何故ここに?」

 

 目を丸くして、驚いた様子の早坂が問いかけてきた。その問いに、

 

「これ。生徒会で食うの協力してもらおうと思って」

 

 簡潔に答える総司。早坂は総司の手にある大きな包みを見る。

 

「…どうしたんですか、これ」

 

「知らん。スパイの嫌がらせかもしれん」

 

「その冗談、笑えませんよ」

 

「そうか。すまん」

 

 溜め息を吐く早坂。謝罪しながらも、全く反省する様子がない総司。

 

「それで、私に何か用ですか?」

 

「おぉそうだ。さっきまでは生徒会に行こうと思ってたんだけどさ、多分かぐやが何か企んでんだよな。邪魔するのも悪いし早坂。手伝ってくれ」

 

「私がですか。…別に構いませんが」

 

 了承は得た。もう逃がさんぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 秀知院学園の屋上は基本、常に解放されている。無論、放課後は鍵を掛けているが。

 そんな屋上に今、二人の男女の姿があった。総司と早坂である。二人は屋上で腰を下ろし、二人で同じ弁当をつついていた。

 

「本当に、何故総司様の分がこんなにも多いのでしょうね」

 

「知らん」

 

 むぐむぐと咀嚼しながら早坂の疑問に簡潔に答える。答えになっていないが。

 

「まあ、かぐやの分は白銀に分ける前提で作らせてるんだろうが」

 

「でしょうね。総司様のよりは小さいとはいえ、かぐや様のも少々おおき…すぎて…」

 

 早坂の返答に耳を傾けながら、牡蠣を堪能していたその時、早坂の様子がおかしい事に気付く。

 何やら俯いて、何かを考えている様子。少しその顔が赤く見えるのは気のせいだろうか。

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ。何も…」

 

 声を掛けると、早坂は慌てたように勢い良く顔を上げ、ブンブンと頭を振る。何を焦っているのか。

 

「そうか。それならいい」

 

 だかそこは四宮総司。総司はここで体調でも悪いのか?と女の子の額に手で触れたり、自分の額と触れ合わせたりするような鈍感系主人公ではない。きっと、何か他人に触れられたくない事でも考えているのだろう。早坂が携わっている仕事はそういった事が満載だ。

 

 立場が上の者は、下の者を気遣い、扱わなければならないのである。

 

「…っ!」

 

 それは、突然の事だった。総司は牡蠣を飲み込み、屋上の入り口へと視線を向ける。

 総司の目が、ドアノブが捻られる所を捉えた。

 

(まずい)

 

 心の中でそう呟く。扉の奥から誰かの話し声が聞こえた気がして振り向けば、案の定である。

 現在、空は今にも雨が降り出しそうな曇り模様なため、今日は屋上に来る者はいないだろうという考えは早計だったか。

 

(どうするどうするどうする)

 

 総司の脳内で様々な考えが巡る。この危機を乗り切るにはどうすれば良いか。

 

 すぐに物陰に隠れる──────時間が足りない。

 柵から飛び降り、捕まってぶら下がって自分だけ姿を隠す──────弁当を片付ける時間がない。この量の弁当を早坂が持っているのは余りに不自然。

 それを早坂にやってもらう──────仮に、屋上に来た生徒が休み時間ギリギリまで居座る場合、早坂の体力が足りない。

 

 その他にもおよそ30通りの作戦が総司の頭の中を過るがどれも不安要素があり、確実に乗り切れる保証がない。

 

(仕方ない、か)

 

 やむを得ず、総司は最初にボツにしたはずのとある策を採用する事にした。これなら確実にこの場は乗り切れる。だが、この場を乗り切った後、どうなるかが不安だった。

 しかし、この場を乗り切れなければ明日がない。早坂の。とにかく、何としても明日を守ってやらねば。早坂の。

 

 ちなみに、この思考時間はコンマ5秒程である。

 

「すまん。文句なら後で聞く」

 

「え…、総司さま…っ」

 

 一言断ってから、返事を待たずに腕を掴み早坂を立ち上がらせる。

 その際、今自分達がいる位置と屋上入り口との位置関係を確かめるのを忘れない。

 そして早坂を柵側に立たせ、自分の方へと向かせる。総司は背中を入り口の方へと向けてから、顔を早坂の顔の至近距離まで近付けた。

 

「っ!?っっっっ!!!?」

 

「すまん。マジですまん。今は我慢してくれ」

 

 背後で扉が開いた音と、数人の足音、男子生徒達の話し声が聞こえてくる。

 だがすぐ後、話し声が止み、静寂が流れる。かと思えば──────

 

「「「「も、申し訳御座いませんでしたああああああああああ!!!」」」」

 

 なんて叫び声を上げながら全員引き返して行ったのだった。どうやら作戦は成功したようである。

 

「ふぅ…。何とか誤魔化せたか」

 

「…」

 

 総司がした事を簡潔に説明するなら、キスをしているフリである。扉の傍に立つ生徒達からは総司の顔は見えない。早坂の顔も、総司の頭に隠れて見えないはずだ。強いて言うなら、早坂のサイドポニーまでは隠せなかったため、そこから特定されればもうお手上げなのだが…、そこまで詳しく見ている余裕は彼らにはなかったはずだ。

 

 出来る限りの事はした。後は祈るだけ。

 

(もし失敗してたら、かぐやに全力で謝り倒さないとな…)

 

 早坂から一歩離れ、扉の方へ注意を向ける。どうやら本当に逃げていったらしい。とりあえず、一息吐いても良さそうだ。

 

「…早坂?」

 

 だがどうにもおかしい。別におかしな事はないはずなのだが、おかしい。早坂がピクリとも動かない。呼び掛けても何の反応も示さない。

 

「おーい早坂ー?早坂愛さーん?」

 

 早坂の顔の前で手を振ってみる。すると、

 

「総司様」

 

「おっ?お、う。どうした」

 

 急に口を開く早坂。いきなりの事に驚きながらも、総司は早坂に返事をする。

 

「用事を思い出しました。申し訳ないのですが、失礼させて頂きます」

 

「え?あ、え?ちょっと?」

 

 言うや否や、早足で歩き出して屋上から去っていく早坂。バタン、と扉が開く音が響き渡る。

 

「まだ弁当、残ってるんだけどなー…」

 

 総司は昼食を食べ切る事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 少女の脳裏で、至近距離から見た男の顔が過る。

 

「っ~~~~~!」

 

 立ち止まり、腕で顔を覆う。

 

 熱い。どうしようもなく顔が熱い。

 

「違う…」

 

 少女は呟く。

 

「違うったら違う…!」

 

 少女は認めない。

 

「かぐや様もかぐや様だ…。変な気を回さないで会長の事だけ考えてれば良いのに…!」

 

 矛先が少女の主人に向けられる。

 

 本当に最初は何も気付かなかった。だが、総司の弁当がいつもより大きかった事。そして、今日のかぐやの弁当が白銀に分ける事前提で多目に作られている事を思い出し、かぐやのもう一つの狙いに気付く事が出来たのだ。

 

「私は何も思ってない…」

 

 少女は何度も、何度も、自分に言い聞かせるように繰り返す。

 

「違う…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早坂愛は認めない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう何も辛くないは殴りたい(四宮総司(鈍感系主人公)を)
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