四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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気付けば一ヶ月以上毎日投稿続けてるんですね…。そろそろ途切れそうですけど、いや割りとマジで。

それと今回、完全にぶっ飛んだキャラが出ます。色々と怖いキャラかもしれません。
一応注意勧告をしておきます!


四宮総司は手を出さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっ!」

 

「会長ぶっちぎりじゃないですか」

 

 校舎内の廊下に貼られた一枚の学内新聞。そこに書かれていたのはとあるアンケートの結果だった。

 そこアンケートとは、生徒会選挙に出馬する三人の生徒の中で誰を支持しているかというもの。その三人の中には当然白銀もおり、白銀はアンケートに答えた生徒の過半数の票を獲得していた。

 

「これはもう勝ったも同然ですよ!」

 

「いや、予測の数字なんて当てにならん」

 

 手放しで喜ぶ千花と石上に対し、白銀は冷静なようだ。

 事前予想の結果に一喜一憂せず、飽くまで本番は選挙当日という姿勢を見せる。

 

「前期の活動で俺達の名前を記憶してる層が多いだけだ。他の候補者の活動次第でこの数字は変動しうる…」

 

「そう、ですね。油断は禁物です」

 

 白銀の態度に引っ張られ、石上と千花の緩んだ表情が引き締まる。

 しかし、その中で──────

 

(いやもう勝っただろ!強すぎでビビるわ!何もしなくても良くないか?選挙活動せずとも勝てるだろ!)

 

 白銀という男は外殻とは全く真逆の事を考えていた。アンケートの、事前予想の数字を鵜呑みにして完全に油断しきっていた。

 先程の台詞は一体どの口から出てきたのやら。

 

「なーに油断しきった顔してんだよ白銀」

 

「っ!?そ、総司か」

 

 内心を言い当てられた白銀は慌てて振り返る。そこに立っていたのは、にやにやと悪戯気な笑みを浮かべて白銀を見る総司。

 

「何言ってるんですか総司君?御行君は油断なんてないですよ」

 

「そうです。さっき僕らに注意してくれたばかりなんですから。ね」

 

「あ、あぁ勿論だ。油断なんてしてないぞ?」

 

「ふーん…」

 

 千花と石上が白銀を擁護し、白銀がそれに続くも総司の表情は変わらない。それどころか白銀を見る目が細まり、浮かべる笑みが更に深まった様にさえ見えた。

 

 白銀は悟る。これは完全にバレていると。色々とサボろうとしていた本心が悟られていると。

 

「あっ、次点に来てるのは一年の子なんですね。伊井野ミコちゃん」

 

「伊井野、ミコ…!?」

 

 千花が少し屈んで新聞を覗き、白銀の次に得票率の高い人物の名前を読み上げる。すると、その名前を聞いた石上の顔色が一変した。

 

「…うわ、マジか。あいつ、立候補してたのか…」

 

「知ってる奴なのか?」

 

「えぇ、まあ。僕でも知ってる、一年の間では有名人ですよ」

 

 伊井野ミコ。千花と白銀は知らない様子だが、総司はその名前を知っていた。

 高等裁判所裁判官を親に持ち、自身も風紀委員に属す。精励恪勤、品行方正を地でいく優等生。入学以来、学年一位をキープし続ける秀才だ。

 

「ほら、あそこでビラ配りしているのがそうですよ。何なら実際に話してみます?」

 

 石上が白銀の背後の窓を指差しながら言う。その指の先に視線を向けると、窓の外で女子生徒二人と男子生徒一人がビラ配りを行っていた。

 あの女子二人の内どちらかが伊井野ミコと見て間違いないだろう。

 

「ふむ…。石上、頼めるか」

 

「了解です」

 

 白銀は伊井野ミコと実際に話してみるという選択をする。

 四人は一階へと降りて外に出て、ビラ配りを続ける三人組に歩み寄る。

 

「…ちょっといい?」

 

 一瞬躊躇ってから、石上は三人の中で一番背が小さい女子生徒に話し掛けた。その女子生徒は一度石上の方に目を向け、冷めた視線となる。

 

「何の用?見ての通り私は忙しいの。不良に構ってる時間はないんだけど」

 

「不良…。いや、用があるのは僕じゃない。僕はただの顔繋ぎだ」

 

「君が伊井野ミコか?」

 

 ぞんざいにあしらっていた石上への態度はどこへやら。白銀が話しかけると、その女子生徒、伊井野ミコはスッ、と白銀の方へと向き、背筋を伸ばして白銀を見上げる。

 

「はい。初めまして、でしょうか。白銀前会長」

 

「前…」

 

 礼儀はしっかりしている様だが、言いたい事はばっさりと言い切る性格らしい。白銀の顔がやや引き攣っている。

 

「…?」

 

 白銀と伊井野が舌戦を繰り広げる中、総司はふとその二人から視線を外す。

 視線を向けたのは、二人の舌戦を他所にビラ配りを続ける男子生徒だった。

 

 彼も伊井野を応援する一人なのだろうか。懸命にビラ配りを続けるその姿はそうとしか見えないのだが。

 

「…」

 

 ビラ配りを続ける男子生徒が総司に気付く。そして一度手を止め、体を総司の方に向けると人の良さそうな笑みを浮かべてお辞儀をした。

 数秒下げ続けた頭を上げ、再び男子生徒はビラ配りを再開する。

 

(あいつ…、どこかで…)

 

 その姿を総司は未だに見続けていた。どうもどこかで会った気がしてならないのだ。しかし考えてもそれがどこなのか、そして本当に会った事があるのかも思い出せない。

 

 仕方なくその場で思い出すのは諦めて、総司は白銀達の方に意識を戻した。

 

「くっくっ、なかなか弁の立つ小娘だ…。だがどんなに立派な理想を抱いていようと所詮は理想!」

 

「投票日が楽しみですねぇ…。現実の厳しさを思い知る事になるでしょう」

 

「…なあなあ、何でこいつら三流悪役みたいな台詞吐いてんの?」

 

「理想なき思想に、意味なんてないのに…」

 

「こっちの方が完全に良い事言ってる!」

 

 知らない間に白銀と石上が三流悪人に成り果てていた。伊井野がとても主人公っぽくなっていた。そしていつもはボケ役の千花がツッコミ役と化していた。

 

「ごめんね~?御行君、伊井野さんの事をだいぶ意識してるみたいで…」

 

「藤原先輩…!それに…」

 

 二人の前に出て、申し訳なさそうに伊井野に謝罪する千花。いつもは逆の立場なのに、今は二人より常識人に見える。

 

 千花からの謝罪を受けた伊井野は千花の顔を見上げ、そして総司の方を見た。

 

「あの…、藤原先輩と四宮先輩にお願いがあります!」

 

「?」

 

「へ?」

 

 緊張した面持ちで口を開いた伊井野は、こう続けた。

 

「私が生徒会長になった暁には、二人に生徒会に入ってほしいんです!特に藤原先輩には、副会長にっ!」

 

「え?ええええええええええええ!!?」

 

「「なにぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!!?」」

 

 お願いを受けた総司や千花よりも、白銀と石上の方が驚いていた。

 

「待て待て待て!総司はともかく、よりにもよって何で藤原なんだ!?」

 

「そうですよ!この人の事知ってたら絶対出てこない台詞ですから!」

 

「二人ともー、ぶっとばしますよー?」

 

 遠慮なしに伊井野目掛けて千花へ失礼極まりない台詞を吐く二人に、千花が額に青筋を立てながら問い掛ける。

 

「ちょっとそこのマトモそうな人!これは止めた方が良いんじゃないか!?」

 

「いえ。藤原先輩が副会長に相応しいのは論理的に見て当然でしょう?」

 

「え、え!?論理的って何だっけ!」

 

 千花の怒りの台詞も何のその、白銀は伊井野の傍らに立つメガネを掛けた女子生徒に伊井野を止めるよう促す。

 が、ダメ。伊井野と同じくこの女子生徒も論理的とは何なのかを解っていなかった。

 

「総司、頼む!お前も協力してくれ!このままじゃ学校がダメになる!」

 

「え、めんどいんだけど」

 

「総司先輩!良いんですか!?藤原先輩が副会長になったらどうなるか、総司先輩だって想像つくでしょう!?」

 

「…まあ、それは確かに」

 

「あの、二人とも?失礼って言葉を知ってますか?」

 

「「常識を知らない藤原(先輩)には聞かれたくない!」」

 

「…うわああああああん!そうじくううううううん!」

 

「あー、よしよし」

 

 白銀と石上の容赦ない口撃を喰らい、HPがゼロとなった千花は総司に泣きつく。これを千花にされるのは二度目。

 慣れた様子で千花の頭を撫でる総司は、千花を泣かした事への説教を伊井野から受ける二人の姿を眺める。

 

 もう、完全に混沌(カオス)な状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、場が落ち着いてから白銀と伊井野は選挙で文句なしの決着をつけようと言い合いその場はお開きとなった。彼らの言い合いに付き合わされた結果、すっかり日も暮れてしまった。

 

「四宮先輩」

 

 玄関へ行くのに一番近い階段を降りている時だった。背後から話し掛けられたのは。

 

「お前…、さっきの」

 

「竹田晴敏といいます。以後お見知り置きを」

 

 振り返った先、階段の上に立っていたのは先程伊井野達が掲げる公約が書かれたビラを配っていた男子生徒だった。

 竹田、と名乗ったその男子生徒の顔を見上げ、顔と名前を照合して再びどこかで会った事がないか思い返す。

 

 しかし、いくら考えても同じだった。総司は竹田という男と会ったという記憶を思い出せなかった。

 

「そうか。それで、竹田君。俺に何の用かな?」

 

「いえ、用という程では。ただ、ご忠告をと思いまして」

 

「忠告?」

 

 竹田の言っている言葉の意味が図りきれず、聞き返すと竹田は笑顔のまま頷いた。

 

「どういう事だ」

 

「おや。まさかまだ見られていませんか?マスメディア部が掲載したアンケート結果を」

 

 当然それは総司も見た。白銀がぶっちぎりでトップだった、そのアンケート結果を。

 

「…なるほど、それで忠告、か」

 

「やはりお気付きになられてましたか。さすが四宮次期当主、その慧眼は見事なものだ」

 

 竹田の返答で、総司は竹田が口にした忠告の意味を悟る。

 

 マスメディア部が行ったアンケート、確かに白銀がぶっちぎりで他の候補者を差し置きトップに立っていた。

 しかし、その詳細に目を向ければ、白銀に僅かな暗雲が立ち込めているという事が確かにそこには書かれていた。

 

 アンケート結果は得票率だけでなく、得た票の学年別割合もグラフで掲載されていた。白銀は特に二年生からの得票が多く、同学年からの人望の厚さが窺える結果となった。

 だが一方で、他学年、一年と三年の得票率が次点である伊井野よりも劣っていたのだ。

 

 今回行われたアンケートに答えたのは高等部の全生徒の中でたった11%。これが更に人数が膨れ上がる選挙本番だったらどうなっていたか。

 

「白銀前会長、随分余裕そうに見えましたね」

 

 人の良さそうな笑顔が僅かに黒く歪む。

 一度顔を合わせた時から引っ掛かってはいた。どうやら、こっちがこの男の本性らしい。

 

 しかし竹田の言う通りである。アンケートでは白銀と伊井野の間に大きく差が出来たが、これからの活動次第でどうなるかは解らない。

 まして、白銀には混院という一つの不安要素がある。あの伊井野の性格上、そこを利用するという事はあまり好みそうではないが、この男なら平然とそこを突いてくるだろう。

 

「それで?何故それを俺に言う?」

 

 ここで一つ気になる事が出てくる。この話を何故総司にするかという事だ。

 伊井野を裏切り、白銀陣営に塩を送りたいのなら総司にではなく直接白銀に、またはすでに白銀の応援演説を務めると公言しているかぐやや白銀の選挙活動に協力している千花や石上にすべきだ。

 

 それを、何故総司にこの話をしたのか。

 

「おや、白銀先輩は四宮先輩の派閥とお聞きしましたが?」

 

「…何の話だ?」

 

「違うのですか?」

 

「初耳だ」

 

「そうですか。なら噂はデマだったという事ですね。ですが…、この噂は僕だけでなく、広く伝わってますよ?」

 

「…」

 

「もし白銀先輩が敗北すれば、それは四宮先輩が敗北したと噂を信じる方達は見なすでしょう。そして、その出来事は大きな衝撃となり、一気に周囲へ知れ渡る」

 

 かなり無理矢理な理論ではあるが、あり得ないと笑い飛ばす事も出来ない。事実、総司は嘘が真実として周囲に知れ渡り、傷付いた人物を知っている。

 もし白銀が選挙に敗北すれば、その再現となる可能性は確かにあるだろう。

 

「それで?まだ俺に忠告する理由を聞いてないが?」

 

「あぁ、すみません…。では、単刀直入に。…つまらないんですよ」

 

 色々と話してくれたが、結局総司に忠告をしに来たその理由に触れていない。何故、白銀達にではなく総司の所に来たのか。

 その返答は、全く予想外なものだった。総司は目を見開き、珍しく驚きを露にする。

 

「えぇ、このまま貴方が介入しなければ我々の勝利は大きく近付くでしょう。でも、それじゃあ面白くない!つまらない!そんなんじゃ()()()満足出来ないんですよ!」

 

「…」

 

「貴方のプライドを粉々にしたい!伸びた鼻をへし折ってやりたい!このまま勝ってはそれが成し得ないでしょう!?」

 

 何とも歪んだ笑みだった。あの伊井野がこの男を味方として見ている事が信じられないほどに。

 だが伊井野達の前では上手く隠しているのだろう。彼女も、悪意にはかなり敏感な方だろうに。それを誤魔化しきる事が出来るとは。

 

「…楽しそうな所悪いが、お前らじゃ白銀には勝てないよ」

 

「…確かに伊井野の公約は少々強引な所があります。人前に立つのが苦手なのも弱点だ。ですが「そうじゃない」」

 

 だが、それでも、総司は自分が手を出すまでもないと判断する。大体これで選挙に手を出せば、竹田に踊らされたようで癪だ。

 

 総司は竹田の台詞を遮って続ける。

 

「お前じゃ白銀達の前に立ち塞がるのは荷が重い」

 

「──────」

 

 白けた総司の視線が、初めて竹田が笑顔以外で浮かべた表情を捉える。

 

「…ほう、楽しみですよ。いや、感謝します。もしこれで僕達が勝てば…、貴方はさぞ屈辱でしょうねぇ…?」

 

「安心しろ。そんな未来はない」

 

 総司は憤怒にまみれる竹田の顔を一瞥してから、そう言い残して歩き出す。

 

「本当に楽しみですよ…。選挙後の貴方の顔が…」

 

 総司はその言葉に返事も返さない。ただ黙ったまま、階段を降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…プライドが高そうな奴だ」

 

 玄関へと降り、靴を履き替える最中、総司は呟いた。

 あの竹田という生徒の事だ。一体何の恨みを買ったのかは知らないが、かなり総司を敵視しているようだった。

 

(いや、あれは敵視というより愉悦、というべきか。気に入らねぇ)

 

 まるでその視線は、新しいおもちゃを見るようだった。気持ち悪い、不快な視線だった。あんな目を見るのは総司でも初めてだった。

 

 そして、かなりプライドが高そうにも見えた。あの程度の挑発で簡単に激昂した。能力自体は高そうだが、欲望に忠実で自分を抑制する事が出来ない。

 あれでは、白銀との対決の前に──────

 

「総司様」

 

「…早坂」

 

 校門前で総司は背後から呼び止められた。今日は随分背後から呼び止められる日だ、と思いつつ振り返る。

 

 そこに立っていたのは早坂だった。早坂が何故か不安げに、総司をじっと見つめていた。

 

「…聞いてたのか」

 

「…」

 

 総司はすぐに悟る。聞けば、早坂はすぐに頷いた。

 先程の竹田との会話を早坂は聞いていたらしい。

 

「かぐや様に報せましょう。そしてすぐに対策を」

 

「いや、必要ない。それにそれでかぐやに変に負担がかかったらどうする」

 

「しかし…!」

 

「安心しろ、早坂」

 

 正直、早坂がここまで焦っている事がちょっぴり嬉しかったりもする。何故なら、総司の事を思って焦ってくれているのだから。

 

 しかし、早坂の心配は全くの杞憂だ。

 

「あれにそんな大それた対策はいらない。むしろ、その方が良いとすら俺は思ってる」

 

「…どういう意味ですか?」

 

「それは言えない」

 

 早坂の頬が僅かにムッ、と膨れる。

 

「総司様。貴方の口の固い所は美点と思ってますが、行き過ぎると欠点になりますよ?」

 

「良く言うだろ?敵を騙すにはまず味方からって。だから早坂でも言えない」

 

「…総司様」

 

「言えない」

 

 食い下がり続ける早坂に、あしらい続ける総司。このままでは早坂との会話を誰かに聞かれてしまうと考え、総司は校門へと歩き出す。

 

「総司様」

 

「何回聞かれたって答えは変わらんぞ」

 

「…総司様のアホ」

 

「あ?今何て言った?」

 

 突如総司への口撃にシフトした早坂に反応する総司。

 

 端から見れば二人の痴話喧嘩にしか見えないやり取りは、外で待たせている迎えの車に乗ってからも続き、数十分後にかぐやがやって来るまで続いたのだった。




あー、俺も早坂と痴話喧嘩してぇ~
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