今まで伝えていませんでしたが、誤字報告してくれた方々、本当にありがとうございます。物凄く感謝しています。書き上がったら即投稿してるのでまあ誤字が出てくる出てくる…。え?見直せよ?…めんどくs(誰かに殴られる音)
今回で選挙編は終わりです。そして明日は投稿お休みしまーす(事前通告)
生徒会選挙当日。選挙に立候補したのは三人。白銀御行、伊井野ミコ、本郷勇人。その内の本郷勇人だけ突如謎の辞退を公言したため、選挙は白銀と伊井野の直接対決という事になる。
直前予想ではやはり白銀有利との結果が出ていた。しかしその差は決して油断できるものではなく、伊井野陣営の努力がどれ程のものかが窺えた。
今、総司は同クラスの生徒達と列を組んで講堂へと移動中である。教室から講堂まではそれなりに遠く、一度吹き抜けとなった通路を通らなければならない。
「…」
その吹き抜けの通路を歩く途中だった。総司は視界の端であるものを捉えて足を止める。直後、背後で歩く生徒が総司の背中にぶつかってしまう。
「あぁ、すまん」
「いや、良いけど…。早く行けよ」
ぶつかった生徒に謝罪すると、その生徒は早く前に進むよう促す。
しかし総司はその場に立ち止まったまま、明後日の方向を見続ける。
「お、おい四宮?」
総司は歩き出す。しかし講堂の方にではなく、先程まで総司が視線を向けていた方へと。
背後から自身を呼び止める声には答えず、総司は建物の影へと踏み入れる。
講堂へと移動する生徒達の話し声が聞こえなくなる。だいぶ生徒の列から離れてしまったか。総司のクラスの生徒達は皆講堂に並べられたパイプ椅子に座っている頃だろう。そして担任が総司がいない事に気付き、探し始めただろうか。
「あああああああああっ!ふざけんなっ!糞がっ!!」
高等部の生徒は講堂に移動している。それを考えれば今、総司がいる場所に他の生徒などいるはずがない。
だが総司の耳は確かに他の人物の怒鳴り声と何かが弾き飛ばされた様な音を捉えた。総司は迷わず、その声と音が聞こえてきた方へと足を向ける。
「何が最後は私の声を届けたいだ!何がここまで協力してくれた事には感謝してるだ!調子に乗りやがって…、あそこまで白銀と競れたのが自分の力とでも思ってんのか!」
校舎の壁を何度も何度も蹴り付けながら、怒りに満ちた表情を浮かべた男子生徒がそこにはいた。
明らかに荒れ、普通の生徒なら近寄ろうともしないだろうその光景を見た総司は躊躇いなくその生徒に歩み寄る。
「随分荒れてるじゃないか。こんな所で何をしている?」
「あぁ!?…っ」
笑みを携えて総司は声を掛ける。その生徒は声に反応、総司の方へと振り向いて、目を見開いた。
「講堂に行かなくて良いのか?伊井野の応援はどうした、竹田?」
「…四宮先輩こそ、こんな所でどうしたんです?もしかして迷子ですか?講堂はあちらですよ?」
「なに、凄い形相でお前が講堂から離れていくからな。慰めてやろうと思ってたんだが」
「…」
苛立たしげに総司を睨み付ける生徒、竹田。竹田の視線を受け、総司はただ静かに笑みを浮かべる。
「伊井野にフラれでもしたか?」
「…解ってたんですか。最初から、こうなると」
総司の問いに問いで返す竹田。礼を欠いた返答だが総司は気にしない。むしろ、そう返してくるだろうと総司には解っていた。竹田は答えないだろうと踏んだ上で質問したのだから。
「あぁ。伊井野は悪意に敏感だって解ったからな。いずれお前とは決別するだろうと想像はついた」
「…」
総司の返答を聞いて小さく舌を打つ竹田。
「お前が失敗した原因は簡単だ。伊井野を見誤った事、ただそれだけだ」
「…良く言う。僕を挑発して怒らせて、伊井野に悟らせやすくしたのはどこの誰ですか」
「挑発?いつ俺がそんな事をした?」
竹田の皮肉を演技じみた素振りで聞き流す。まあ、実際竹田の言う通りではあるのだが。あの階段での会話でさりげなく竹田を挑発したのは竹田のカモフラージュに穴を開けるため。
あの段階で竹田の腹の内をすでに伊井野が感じ取っていた可能性もあったが、そうでない可能性も十分にあった。だからプライドの高い竹田を挑発し、次の日以降のカモフラージュに影響が出る様にした。
先程竹田には言わなかったが、これもまた竹田の敗因である。自身の感情を制御できない。だから、伊井野に悪意を読まれ、決別された。
ただこれでは総司が介入したかどうか、微妙なラインである。それでも竹田の言葉には根拠がない。あの時の会話も、総司が挑発してないと言い張ればそこまでという程度のレベルである。
「…初めから、貴方の掌の上だったという事ですか」
「さてな、俺にはさっぱりだ」
自嘲の笑みを浮かべながら言う竹田に簡単に返事を返した総司は直後、竹田を真顔で見据えて口を開いた。
「一つ聞かせろ。こんな事をした理由は何だ?」
「…どういう事です?」
「あの時お前は僕
『えぇ、このまま貴方が介入しなければ我々の勝利は大きく近付くでしょう。でも、それじゃあ面白くない!つまらない!そんなんじゃ
あの時の会話の中で竹田は確かにそう言った。僕、ではなく僕達、と。ならば今回の策謀は竹田個人の意思だけではなく他の誰かの意思も混ざっているという事になる。
それが誰なのか、総司は竹田に問い掛けたのだが。
「さて、何の事やら」
先程の総司への意趣返しのつもりなのか、演技じみた素振りで竹田はそう言い返した。
「確かに僕達は選挙に勝とうとしましたが、それ以外には特に何も思っていませんよ?まあ、僕は四宮先輩に恥をかかせたいという内心がありましたが」
「竹田」
「そんな目で見られてもお答えできる事は何もありませんよ?だって、本当に何もないんですから」
これは先程の竹田と同じ、根拠のない問い掛けである。答え手が違うと言い張ればもうどうしようもない。
総司に出来る事は、この場ではもうなかった。
「それでは四宮先輩、僕はこれで」
「…」
「次は、貴方と直接対峙したいものです。今回の様な代理戦争の形ではなく、ね」
総司に出来る事はないと解っていたのだろう、竹田は笑みを浮かべて総司にそう言い残し、去っていった。講堂とは逆の方向へ。
演説はもう見る気もないのだろう。竹田の姿は見えなくなり、その場に総司だけが残される。
「…竹田晴敏、ね」
最後に一度、竹田の名前を頭に刻む様に口にしてから、総司も竹田が去っていった方とは逆、講堂の方へと歩き出す。
先程まで総司と竹田がいたこの場には二人が醸し出した冷たい空気だけが残され、やがて吹いた風に流されていった。
演説は予定時間を三十分以上オーバーしてようやく終了した。それ程までに二人の立候補者による討論は白熱したのだ。
途中、伊井野が坊主フェチを暴走させるというツッコミ所を残したが、中々に投票結果が楽しみに思わせる素晴らしい討論を二人は見せてくれた。
そして、選挙の結果が掲示板に張り出された。並んだ二つの名前。当選を表す赤い花が飾られていたのは──────白銀御行の名前の上だった。
「…僅差やん」
総司は演説の途中からしか見ていなかったため、討論の全貌は聞いていなかった。だからそこで何が起こっていたのかもその途中からしか知らないのだが、直前予想の結果よりも明らかに両者の票の差は縮まっていた。
まさか竹田が何かしたのか?いや、それもあるだろうが一番は伊井野の公約が多くの生徒に響いたという事なのだろう。
…信じられないが。強制坊主が何で響いたのかさっぱり解らないが。
しかし何はともあれ選挙は白銀の勝利で終わった。これで二期連続で白銀が生徒会長を勤めるという事になる。
それはそれとして、総司にはこれからやらなければならない事があった。掲示板の前に集う生徒の輪から離れ、総司は辺りを歩き回る。
夕焼けの日差しに照らされる外を歩き回りながら、キョロキョロと視線を巡らせる。
そして総司が探していた人物は、保健室の窓の前で何故か身を潜めて室内を窺っていた。
総司は足音を殺して静かに近付き、その人物の背後にまで来てからそっと声を掛ける。
「何してんだ?」
「っ!!!?そ、総司様でしたか。驚かさないでください」
意識が室内に向いていたその人は突然総司に声を掛けられ相当驚いたのだろう、勢い良く振り向いたその顔は驚きましたと思い切り書かれていた。
「…くくっ」
「何が可笑しいんですか」
「く、く…いや、早坂のあんな驚き方は久し振りに見たな、と」
笑みを漏らす総司を不満ありげな顔で睨む早坂。そんな早坂を見て総司は更に笑みを漏らした。そしてそんな総司を見て更に早坂が苛立つという小さなループ。
「悪い悪い、怒るなよ」
「…」
全く悪びれてない様子で謝る総司を睨み続ける早坂。
総司はそんな早坂に先程とは違う穏やかな笑みを浮かべてから、口を開いた。
「勝ったな、白銀」
「…はい」
「悪かったな、何も言えないでいて」
「…本当、ですよ」
早坂の声が一瞬震えたのを総司は聞き逃さなかった。早坂の方へと振り向き、総司を見上げる視線と対面する。
「ずっと、不安だったんですからね。信じて待とうにも、総司様が何を考えてるのかさっぱり解らないし…」
「…あぁ」
「ずっと…、不安、だったんですから」
早坂の瞳が揺れた。外に零れる事はなかったが、そこに見えたのは涙だと悟るのは難しくなかった。
「総司様は何も言ってくれない。でも私はその事を誰にも話せない。本当、総司様は最低です」
「…悪い」
「少しは言い返してくださいよ、バカ」
言いながら、総司の胸を軽く拳で叩く早坂。それに続いてもう一発、二発と、力こそ弱いものの総司の中に響く早坂の拳は何度も、何度も胸に打ち付けられた。
「…埋め合わせはしてもらいますからね」
「…えっと、さ。これで埋め合わせ何回しなきゃいけないんだっけ?」
「大丈夫です。一度で良いですよ?その一度でこれまでに貯まった埋め合わせカウンター分の埋め合わせをしてもらいますから」
「埋め合わせカウンターって何だよ…」
訳の解らない単語が早坂の口から出て苦笑いを浮かべる総司。一方の早坂は先程までの苦い表情はどこへやら、満面の笑顔を浮かべて総司を見上げていた。
(これまで全部の埋め合わせ、ね)
正直覚えてないが、多分荷物持ち程度では早坂の気が収まらないくらいにはその埋め合わせカウンターとやらは貯まっているのだろう。「さて、何をしてもらいましょうか」なんて楽しげに考えている早坂を見ればそんな事は簡単に想像つく。
「…まあ、いいか」
「何か言いましたか?」
「いや、何も」
かなり苦労する未来が見えるが、総司の中でそれに対する不満という感情は特になかった。
これまで早坂には相当迷惑を掛けてきた。早坂の気が済むまで、自分が出来る範囲の事なら何でもするつもりだ。
それに──────早坂の笑顔を見るのは、嫌いじゃない。
前書きにある通り明日は投稿お休みします。毎日投稿きついっす。とか何とか言いながら、仕事以外は基本家にいるんで明後日からまたほぼ毎日投稿が始まりそうな気はしてますが(笑)