四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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 今更ですが、この小説は単行本派の方にとってのネタバレが混じっています。といっても、まだ単行本に出てきてないある登場人物の名前が出てきてるだけなのですが。後はまあ、ヤ○ジャン読んでる人なら「あ、ここってそういう事なのか?」と気付くくらいです。あまり気にしなくても良いと思います。多分。

 さてそんな事よりも皆さん。

 藤原って可愛いですよね?


藤原千花は恥ずかしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日の授業を全て熟して放課後。総司は今、生徒会室に向かっていた。目的はあれである。昼に残った弁当の処理である。生徒会室で食べさせてもらおうと考えたのである。

 突然早坂が立ち去ってから何とか魚介類を使った料理だけは食べ切ったため、他の料理ならばまだ食べられるはずだ。

 時刻は所謂おやつの時間と呼ばれる時間帯であり、総司も小腹が空いている。残った量的にも丁度…良いんだろうか。夕食に影響出ないだろうか。

 

(まあ、不安だったら藤原にでもくれてやればいいか)

 

 多分藤原なら喜んで飛び付いてくる。はず。メイビー。

 

「…?」

 

 生徒会室の前まで来た総司だが、扉を開けようとした所で中から声がして動きを止める。

 

 誰かが先に来ていたとしても不思議ではない。ないのだが、その先に来ていた誰かが学校のチャイムの声真似をしていたら動きが止まるのも仕方ないのではなかろうか。

 

(何だ…、いやホントに何だ!?)

 

 総司が動きを止める中、中から聞こえるチャイムの声真似はまるで壊れたラジオの様に繰り返され、かと思えば突然聞いた事のない歌が始まった。

 

 ここで総司は限界を迎えた。悪いとは思いつつ、静かに扉を小さく開けて中を覗き見る。

 

(藤原…?)

 

 中にいたのは、歌を続けながら桃色の髪を揺らして踊る少女の姿。

 生徒会書記、藤原千花である。その彼女が今、何故か踊っている。元から色々と突飛な行動をする少女だったがこれは一体。

 

(何だその帽子…。あ、投げた)

 

 物は大切にしなさい、と心の中でツッコミを入れる。そんな中でも藤原の歌と踊りは続く。

 

(…あ、終わったか?ならちょっと時間置いてから入る…、何をぶつぶつ言って…え、それ間奏だったのか?うわっ、二番始まった!?)

 

 一旦歌に区切りがつき、これで終わったと思いきや間奏へと入り、そのまま歌は二番へと突入する。勿論、踊りも継続中である。

 

(俺、何見せられてんだろ)

 

 藤原は誰かに見せるために歌って踊ってる訳ではない。誰もいない生徒会室で退屈を紛らわせてるだけなのだろう。総司はただそれを覗き見してるだけ。

 

 だが、想像してほしい。知り合いの女の子が、オリジナルの曲を作って、それを一人で歌いながら踊ってる所に出会した自分の姿を。

 

 そして一つだけ言わせてほしい。

 

「もう昼下がりじゃないぞ…。バリバリ夕方に突入してるぞ…」

 

「何をしているのですか?」

 

「うぉっ!?」

 

 突如背後から聞こえる声。驚いて振り返る総司。その際に手が離れた事で、音を立てて閉まる扉。

 

「あ」

 

「総司?生徒会に何か用か?なら中に入るといい」

 

 総司の背後に立っていたのはかぐや、そしてその隣には白銀の姿も。

 白銀は総司に中に入るよう促す。だが、総司は手を右往左往させるだけで何もできない。

 

 もし、中でまだ藤原が踊ってたら。音を立てて扉が閉まったものの、もし歌声に混じって藤原が気付いてなかったら。

 ここで中に入れば、総司だけでなく二人もあの踊りを目の当たりにする事となる。藤原の黒歴史が、更に大きくなるのだ。

 

(…守らなきゃいけないものが、ここにはある)

 

 総司は扉に背を向け、かぐやと白銀に向き直る。

 そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「悪いけど二人にはついてきてもらいたい所が…」

 

「何をしてるんですか。早く入りなさい」

 

 かぐやが扉を開けていた。かぐやが総司の熱い決意を粉々に踏み躙った。

 

「おいいいいいい!かぐやお前ええええええ!」

 

「な、何ですか!?急に大声を出して…」

 

 叫び声を上げながら、戸惑うかぐやを押し退けて中の様子を見る。

 

「かぐやさん!会長!総司君も来たんですか?」

 

 藤原がいた。いや、いるのは当然なのだが、ソファに座っていたのだ。つい先程まで、部屋の中央で踊り回っていたはずなのに。

 

 藤原は普段の明るく柔らかな笑顔を浮かべて総司達を出迎えた。

 

「えぇ。一体何をしに来たの?」

 

 藤原の疑問符を含んだ台詞にかぐやが反応する。

 

「これだよ。結局食べ切れなかったからここで食べようと思って」

 

「お弁当ですか?凄く大きいですけど…」

 

 総司は藤原の対面のソファに座り、鞄の中から包みを取り出す。まだ包みの中は露になってないが、総司の台詞から予想できたらしい。藤原は総司が取り出した包みの中身を見事に当てた。

 

「あら。残してしまったの?」

 

 総司の返答を聞いたかぐやが目を丸くして驚いた様子を見せる。

 

「いや、無理だろこれを一人で食べるのは。…まさか白銀なら出来るとかいうんじゃないだろうな」

 

「いやいや、俺だってそれは食い切れん」

 

 驚くかぐやをジト目で睨みながら言う総司。そして巻き込まれた白銀が苦笑を浮かべながら総司の疑問を否定した。

 

「まあ、最初は助っ人と二人で食べてたんだけどな」

 

「その助っ人は?」

 

「用事思い出したって途中で戻ってった」

 

「…」

 

 何故かかぐやが苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「どうしたんですかかぐやさん?」

 

「いえ、何でもありませんよ」

 

 だがすぐに取り繕った。かぐやは藤原の問い掛けに笑顔で答える。

 そこまで気にはしていなかったのか、藤原はかぐやのその一言で引き下がり、かと思えば不意に体を乗り出して顔を総司の方へと寄せてきた。

 

「総司君…」

 

「ん?どうした?」

 

「さっきの、見ました?」

 

「…」

 

 さて、これは正直に答えるか否か。鬼才、麒麟児等と呼ばれる総司でさえその答は解らない。

 

 藤原の事を思うなら、やはり見てないと嘘をつくべきか。しかし生徒会室の前で何かをしていた事はかぐやと白銀に知られている。

 それに、藤原も半分察しているだろう。そのはず、多分。

 

「…あれだ。なかなか可愛い踊りだったぞ、うん」

 

「うわあああああああん!やっぱり見てたんですね!信じてたのに!」

 

 総司の返答に絶望し、泣き叫ぶ藤原。

 慌てる総司。何事かと振り向くかぐやと白銀。

 

「ど、どうした藤原書記?」

 

「総司君に私の恥ずかしい所を見られたんですぅ!もう責任とってもらうしかないですようわあああああああん!」

 

「総司?」

 

「ち、違う!いや、違わないけど違うんだ!あれはただの事故っていうか…、それに藤原の言い方には若干どころかかなりの語弊がある!」

 

 白銀の問い掛けに泣きながら答える藤原。にっこりと笑顔を浮かべるかぐや、そして狼狽しながらかぐやの問いに答える総司。

 生徒会室はかなりカオスな事になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…疲れた」

 

「何というか…、御愁傷様だ」

 

 場が収まり、静かになったのはあれから20分も経ってからだった。何とかかぐやを納得させた総司は藤原を泣き止ませにかかり、苦労した結果、総司が食べ残した弁当を全てあげるという条件の下、許しをもらえたのだ。

 

(あんだけ泣き叫んで、なのに弁当で許すとか藤原ってやっぱ解んねぇな。しかも食べ残しだぞそれ)

 

 藤原ならリスのように頬を膨らませて舌鼓を打っている。いや、藤原自身が満足ならそれで良いのだが、何かちょっと複雑な総司だった。

 

(しかもそれ、俺の箸だし。洗ってたけど)

 

 更に藤原が使っている箸は総司が昼食を摂った際に使用していたものだ。勿論洗いはしたのだが、何となくむず痒く感じる。

 

「総司、折角来たんだ。手伝ってけ」

 

「お前…。この疲労困憊の俺を見て容赦なく仕事させるとか鬼か。後、これ言うのもう何度目か知らんが俺は生徒会役員じゃないぞ」

 

「もう今更だろ」

 

「…そうだけどさ」

 

 白銀が紙の束を差し出し、総司が受け取る。

 

 こうやって生徒会の仕事を手伝うのは初めてではない。

 学園内で初めて首位の座を譲ったあのテストで白銀と交友関係を持ってから、何度も白銀、或いはかぐや、またある時は藤原から、はたまたある時はもう一人の生徒会メンバーからまで助けを請われて助っ人に来た事がある。

 

 その度に先程のように自分は生徒会役員ではないと教えてあげているのだが、効果を見た事がない。

 それどころか、校長にすら名前が載ってない5人目の生徒会役員として見られる始末。

 

 おい誰だ、こいつに票を入れたのは。

 

(あっはっは。俺じゃん)

 

 A.四宮総司

 これが答である。現実である。

 

「ごちそうさまでした~。美味しかったですよ、総司君」

 

 白銀から受け取った資料に目を通していると、横合いから布の塊が視界に飛び込んできた。

 改めて見ると、それは総司の今日の弁当、そしてそれを覆う包みだった。

 

「あぁ、そうか。なら良かった」

 

 藤原から包みを受け取り、ソファに寄り掛からせていた鞄のファスナーを開けて中に突っ込む。

 そして再びファスナーを締めようとしたその時、藤原が総司の耳元に顔を寄せてきた。

 

「さっきの埋め合わせ。私の方で考えておきますね?」

 

「え」

 

 藤原の口から思わぬ言葉が聞こえてきた。戸惑い、顔を上げる。

 

「あの…、許してくれたんじゃなかったんですかね…?」

 

「当たり前です。総司君は乙女の秘密を覗き見したんですよ?弁当の残りをくれた程度で許してもらえるなんて思わないでください」

 

 総司の質問に答えてから、頬を膨らませる藤原。

 許してくれたというのはどうやら勘違いだったらしい。さすがの藤原とはいえ、そこまでチョロくなかったという事か。

 

「ですから…、覚悟していてくださいね?」

 

「…」

 

 総司の耳元から顔を離した藤原は、人差し指を唇に付け、総司にウインクをしながらそう言い残してかぐやの元へと歩み寄っていった。

 

 先程の藤原の台詞が聞こえていたらしく、かぐやが藤原に「どうかしたのですか?」と問い掛ける声が聞こえる。その問いに藤原が「何でもないですよー」と、ほわほわと答える声も。

 

「…何てこったい」

 

 埋め合わせ、一体何をやらされるのか。心優しい藤原の事だ。そう無理な事を命じたりはしないだろうが、読めない藤原だからこそ何を言われるか怖いという思いもある。

 

「…しゃーないか」

 

 しかし悪いのは総司だ。少し理不尽な気もするが、藤原の踊りをずっと覗いていたのは総司なのだから。本当に、少しだけ、理不尽な気もするが。

 

 藤原が埋め合わせに何を要求するのか、今から覚悟しておくとしよう。

 総司はかぐやと楽しげに話す藤原から視線を外し、手元の資料に目を通し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




もう何も辛くないは野球が見たい(涙)
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