四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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反抗期圭ちゃんかわゆい


白銀圭は見られたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、帰ろうとした総司のスマホにとあるメッセージが届いた。

 そこメッセージの送り主は圭で、簡潔に今すぐ会えませんか?と書かれていた。

 

 総司はすぐに今日の予定を見て急ぎの用、仕事はないと確認してから了承の返事を返す。圭からの返信はすぐに来て、高等部の校門前で待っててください、と書かれていた。

 

 一体何の用なのか、いつも圭と二人で会う時は勉強を見てあげているだけだったが、今回は何か様子が違う。

 そんな事を考えながら校門にて総司が待ち初めてからすでに二十分は経っている。すぐに向かう、と圭はメッセージで言っていたのだが、全く来る気配はない。

 

「…」

 

 校門で立ち尽くす総司は注目の的だった。校門を潜る生徒達が一様に総司に好奇の視線を向ける。

 それに対して総司は視線を向け返したり、何か言葉を掛けたりという反応は一切しない。全無視である。こんな視線は受け慣れている。とはいえ、鬱陶しいという不快さまでは消えないが。

 

「総司さん!」

 

 総司の左側、つまり中等部の校門がある方から呼ばれる。視線を向ければ、笑顔でこちらに駆け寄ってくる圭がいた。

 

「お待たせしてすいません…」

 

「いや、それは良いけどさ」

 

 総司の傍で立ち止まった圭は、頭を下げながら総司を待たせてしまった事を謝罪する。

 いや、総司としてはそれに関して気にしていない。圭とて何らかの事情があるだろう。それに何時に会おうという時間の約束まではしていない。そこを咎めるつもりは全くない。

 

 しかし、だ。総司はそれ以外に一つ、気になる事があった。

 

「誰?その人」

 

「…」

 

 圭の後ろにはもう一人、中等部の制服を着た男子生徒がいた。その男子生徒は総司を鋭く睨んでいる。

 

「あ、忘れてた。あのさ、さっきも言ったけど今日この人と約束があるから。帰ってくれない?」

 

「お、おい白銀!俺はずっと前から遊びにいこうって誘ってるよな!?本当にそいつと、俺に誘われる前から約束してたのか!?」

 

「いや、私とあんた、何も約束なんてしてないでしょ?確かに誘われたけど、それはずっと断ってきたじゃん」

 

「…」

 

 あぁ、この短い会話だけで何となく察してしまった。

 つまり、この男子生徒は…そういう事なのだろう。しかし、圭には全く相手にされないらしい。

 

「何で…、何で俺の誘いは断ってこいつと…!」

 

「私が誰と約束しようと勝手でしょ?」

 

「くっ…!」

 

 睨まれた。とはいえ、総司にとっては小さな子供が精一杯背伸びしようとしている様にしか感じられないのだが。

 

「おい」

 

「ん?」

 

「あんた、名前は?」

 

「…四宮総司」

 

「四宮、総司…。…っ!!!?」

 

 名前を聞かれ、一瞬答えようか迷ったが素直に教えてやる事にした。

 総司の名前を聞いた男子生徒は総司の名前を復唱。そして圭の方を向いたかと思えば、思い切り目を見開いてもう一度総司の顔を見た。

 

「しのみや…そうじ…?」

 

「あぁ」

 

「あの、四宮総司…?」

 

「どの四宮総司かは知らんが、俺の名前は四宮総司だ」

 

「…」

 

 顔が真っ青になっていく男子生徒は一歩後退りしてから、回れ右してしまう。

 

「すいませんでしたああああああああああああ!!!」

 

 そして大声をあげながら走って逃げてしまった。

 

「えぇ~…」

 

 少し絡まれそうだと思っていたのに、蓋を開ければ名前を教えただけで逃げられてしまった。正直、拍子抜けである。

 

「なに、あれ…」

 

「私にしつこく言い寄ってきてたんです。だから、ちょっと総司さんの力をお借りしたくて…」

 

「あぁ、だからいきなり会いたいなんてメッセージで送ってきたのか」

 

「…ごめんなさい、こんな事で呼び出してしまって」

 

「いや、気にするなよ。むしろ役に立った様で良かったよ」

 

 先程の圭と男子生徒の会話からして想像ついていたが、大分前から圭はあの男子生徒に言い寄られていたらしい。どれだけ断っても引き下がらない様子に嫌気が差して、総司を呼んだ、そういう事だろう。

 

 まるで利用、そう思われても仕方ない扱いをしてしまった事を謝罪する圭。しかし総司は全く気にしておらず、それどころか先程台詞の通り自分の名前が役に立ったのならそれで良いと本気で思っていた。

 

「…えっと、用事はさっきの彼を追い払うだけ、か?」

 

「い、いえ!その…、確かにあの人を追い払ってほしいのもありましたけど…」

 

 さて、何はともあれ意図せず総司は圭の望みを叶えた事になるが、これで圭の用事は終わりなのか。

 総司が圭に問いかけると、圭は慌てたように両手を振る。

 

「…また、あのファミレスで勉強を見てもらえますか?」

 

 それは恐らく、今とっさに出てきた考えだろう。圭自身、総司への明確な用事というのは先程の件で終わったのだろう。

 しかし何度もいうが、総司は気にしない。というより、気になる要素がなかった。

 

 何故なら、慌てる圭の様子が可愛らしく、微笑ましかったから。

 こんな事、本人には口が裂けても言えないが。

 

 総司は隠しきれなかった微笑みを浮かべながら圭の提案を受け入れる。

 直後、圭は輝くような笑みを浮かべた。二人は並んで以前に圭と入ったファミレスがある方へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントにお兄ぃは!いつも私を子供扱いするんですよ!?」

 

「そうか、それは酷いな」

 

 勉強を見ていた筈だった。校門から約十分、ファミレスに着き、店員に案内された席に座ってすぐはまだ勉強を見ていた筈だった。

 

 それは、圭が古文についての質問をしてきた所から始まった。

 圭が聞いてきたのはとある短歌の読解についてで、その短歌は筆者の女性が月を見ながら愛する男に想いを馳せるというものだった。

 しかしその筆者が想いを寄せているのは実の兄というのが圭に何かを思い出させたらしい。その問題についての解説が終わると、圭は総司に聞いてきた。

 

『総司さんは、兄の好きな人を知りませんか?』

 

 聞けば、昨日の白銀はやけに落ち込んでいたという。それどころか、花占いまでしていたという。途中で止めていた事から結果は…白銀のために言わないでおこう。

 

 それで圭は兄は恋をしていると察したらしいのだが、直接聞くのは気が引けたらしい。

 しかし白銀家の父によって、白銀が好きな人から…つまりかぐやから避けられているという話が聞けたとの事。

 圭は一言、白銀にそれは好き避けかもしれないからもう少し待った方が良いとアドバイスしたという。

 

 うん、それ多分正解、と総司は心の中で呟いた。それと同時に一昨日、何か早坂とやってたなぁと先日の出来事を思い出す。

 

『やっぱ兄の恋の相手は気になるか』

 

 またまた圭の微笑ましい一面を目の当たりにし、総司の口は軽くなってしまった。

 この一言が、圭をヒートアップさせてしまう。

 

 初めはただ、妹として兄の恋の相手は将来の義姉になるかもしれないから、と言い訳染みた返事をしていたのだが、それが段々と小言が多い兄への愚痴へと変わっていき、そして──────

 

「総司さん!聞いてますか!?」

 

「うん、聞いてるよ」

 

 こうなった。

 怒り心頭といった圭の様子だが、これもこれで総司にとっては微笑ましいものであった。

 

 子供扱いされて怒る。何という反抗期特有の子の微笑ましさか。

 総司も圭と三つしか歳は変わらないが、色々と達観してしまった総司は爺むさかった。

 

「一々言う事が小さい子向きなんですよ!私が間違ってる時もあるからそれは受け入れてますけど、解ってる事まで何度も何度も…、あの母親気取り!」

 

「…」

 

 なるほど、反抗期になるとこうなるのか、と総司は荒れる圭を見ながら染々思う。

 総司もかぐやも、反抗期というものを経験した事がないから、今の圭の様子は新鮮に思えた。

 

「総司さん」

 

 しかし、総司の内心は思い切り圭に読まれていた。

 

「何で笑ってるんですか?」

 

 というか、思い切り顔に出ていた。

 

「…総司さんも、私の事子供だって思ってるんですか?」

 

「え?いや、そんな事は…」

 

 圭にじと目で睨まれる。

 

「…まあ、高校生から見れば中学生は子供に見えるもんだよ」

 

「…」

 

 圭の視線を前にして、総司は誤魔化す事を諦めぶっちゃける。圭の視線が更に強くなった気がするのは断じて気のせいではないのだろう。

 

「圭さんも白銀の態度に一々ムキになってるようじゃ、な」

 

「むっ…。どういう事ですか」

 

 ここで総司は少し話の方向性を変える。

 

「白銀も言い方はともあれ、圭さんの事を思って言ってるのは間違いないんだ。それに、白銀の言ってる事は丸々間違ってたりしてるか?」

 

「…いえ。兄は正しい事を言ってると思います」

 

「なら、ちょっとイラッと来ても我慢しないとな。大丈夫だ、慣れれば気にならなくなるって」

 

「…」

 

 総司に窘められて少し落ち込んだ風の圭の頭に手を乗せる。それは無意識の行動で、何となく圭を宥める今の行為がかぐやを宥める普段の行為と重なってしまった。

 

 総司に撫でられる圭はきょとんと目を丸くして総司を見上げる。その視線を受けて、総司はようやく今自分がしている行為を自覚し、すぐに手を引っ込める。

 

「すまん。かぐやと話してる調子になってた」

 

「…かぐやさんにも、こんな風に?」

 

「…まあ、あいつもガキだからな」

 

 かぐやに憧れているという圭にこんな事を言うのもあれだが、かぐやは今、遅れてきた反抗期の真っ最中みたいなものだ。

 あーだこーだと不満を漏らし、総司と早坂がそれを宥める。ほぼ毎日繰り返される光景の一つだ。

 

「つまり、総司さんにとっての私は妹みたいなものなんですか?」

 

「え?…まあ、そんな感じかもしれん」

 

 かぐやとのやり取りについての話が続くと総司は思っていた。しかし、圭は総司に思わぬ問いかけをした。

 一瞬戸惑い、目を丸くした総司だがすぐにその問いかけに頷く。

 

 圭は不快に思うかもしれないが、総司にとって圭はもう一人の妹みたいなものである。

 勉強を見てあげたり、こうして愚痴を聞かされたり、前者はともかく後者はそれこそかぐやとのやり取りそのままである。

 圭の年の頃の総司とかぐやよりも兄妹らしいやり取りをしている。

 

「…」

 

「あー…、やっぱ気持ち悪いよな。すまん、今後は気を付ける」

 

 やはり圭にとっては不快だったらしい。圭は頬を膨らませて総司を睨んでいた。明らかに怒った様子である。

 

「そうじゃないですけど…、むぅ」

 

 今度はそっぽを向く。完全に機嫌を損ねてしまったらしい。

 原因は、総司が考えているものとは違っているが。

 

「…まあ、仕方ないよね。総司さんの言う通り、まだ子供なんだから」

 

「?何が仕方ないんだ?」

 

「何でもありません」

 

 総司は疑問符を浮かべる。

 機嫌を損ねていたはずの圭が突然笑顔を浮かべたのだから。それも、どこか期限良さそうに、悪戯気な笑みを。

 

「総司さん。私、すぐに総司さんに大人だって思われるようになりますから」

 

「え?」

 

「覚悟していてくださいね?」

 

「…はい?」

 

 全く訳が解らなかった。どういう意味か聞いても、「今は解らなくていいんです」なんて言い返される始末。

 

 しかし、圭の顔は楽しそうに笑いながらも、その目だけは決意に満ちていた様に、総司は見えた気がした。




白銀圭は大人に見られたい←タイトルの完成形
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