皆さんご存知かもしれませんが、実はこの小説が週間ランキングに載っちゃってます。初めての事で滅茶苦茶嬉しいです。
それと加点式の日刊ランキングにも載ってます。いや、本当にありがとうございます。
ですが、普通(?)の日刊ランキングには載ってません。…何故に?いや計算方法が違うからそうなる事もあるんでしょうが、何か悔しい…。(^ω^♯)
とにかく言いたいのは、たくさん読んでくださり、登録してくださり、ありがとうございますという事です。
これからもお付き合いのほど、よろしくお願いします。m(_ _)m
四宮総司の一日は朝6時から始まる。決してそれで固定されている訳ではないが、6時以前に起きた事はあっても6時以降に起きた事はない。
理由は簡単、起きるのが遅れれば一日の内に終わらせなければならない事が終わらないからである。
まず、目を覚ました総司は顔を洗い、身支度を整え近侍を呼ぶ。そして前日の報告からこれまでに起きた事柄を纏めた資料を受け取る。
受け取った資料を朝食の時間まで目を通し、使用人に呼ばれると食堂でかぐやと共に朝食を摂る。
広い空間の中、その場にいるのは総司とかぐやのみ。初めはどこか寂しげに感じたこの時間も今ではすっかり馴れたものだ。むしろ、一人じゃなくて良かった、とお互い思える様になった。
朝食が終わるとすぐに部屋に戻り、再び資料に目を通す。そんな短い時間で読み切れる程の量ではない。日によっては、学園に向かう車の中で、授業の合間の休み時間に身を隠して、この資料を読む事だってある。
だが昨日はどうやら他派閥は大人しかった様で、報告書の量はいつもより少なかった。お陰で登校の時間までに全ての報告書に目を通す事が出来た。
全ての報告書の内容を頭に叩き込んだら、受け取った報告書を近侍に返し、破棄させる。仮にこの報告書の内容が他に漏れれば惨事である。万が一にも、それを漏らしてはならないのだ。
今日はゆっくりと出来そうだ、と思いながら、総司は欠伸を漏らしながら鞄を手に外に出る。
すでに屋敷の前では総司とかぐやが乗る車が止まっており、かぐやと早坂がその車の前に立っていた。
しかし、何やら様子がおかしい。
もうすぐ車を出す時間のはずなのだが、何故かボンネットが開いている。
「どうかしたのか?」
「総司様!申し訳ありません、エンジンルームに猫が入り込んでしまって…」
やって来た総司に振り向くかぐや達。総司の問いに答えたのは、車の前で困った様子であたふたしていた運転手だった。
「猫?」
総司は車の前に出て、エンジンルームの奥を覗く。
そこには、毛を逆立てこちらを威嚇する猫が確かにいた。
「あらら。この様子じゃしばらくこの車は出せないな」
「はい。代わりの車を手配致しますので、しばしお待ち頂けませんでしょうか」
まあこれは仕方ないだろう。運転手のミスという訳でもないし、咎める理由は何もない。
総司は頷いて答えようとしたその時、かぐやが口を開いた。
「私は結構です。今日は歩いて向かう事にします」
「え!?」
戸惑いの声を上げる運転手。
「そ、それは如何なものかと…。せめて早坂と一緒に!」
当然の台詞だ。四宮の長女を学校まで歩かせる事自体割りと大きめな問題だというのに、それを一人で行かせるなどもっての外だ。
これでかぐやの身に何かが起これば、この運転手の首が飛ぶ。
「まぁ私は別に…」
運転手の言葉に早坂が構わないと賛同しようとする。
「…」
「…」
(お前…)
かぐやと早坂の一瞬のアイコンタクト。かぐやがパチパチと早坂に向けてウィンクをして、何かの意図を伝える。
そのメッセージは早坂に伝わり、ついでに総司にも読み取られた。
「…いやー、私の着替えを待っていたら遅刻ギリギリになってしまいますし、お一人で向かった方が宜しいかと」
「ほら早坂もこう言ってるし、大丈夫よ。総司はどうする?」
「俺は車にするわ。学校に着くまで寝たいし」
「そう。それじゃあ行ってきます!」
「あぁ、かぐや様!」
足取り軽く、かぐやが門を潜る。自分の足であの門を潜るのは、初めてだったはずだ。
「…赤木」
「ここに」
「っ!?」
かぐやの背中が見えなくなった所で、総司がある者の名を口にする。直後、総司の背後から呼び掛けに応える男の声がした。
「悟られないようにな。それと、なるべくかぐやの好きなようにやらせてやれ」
「承知しました」
早坂が振り返ったその視線の先にいたのは、総司の近侍の男。男、赤木は総司の命を受けると姿を消す。
「え、どこに…。というより、いつから…」
「どこにって、かぐやを追ってったに決まってるだろ。それと、初めからいたぞ」
「えぇ~…」
さも当然の様に言う総司に、戸惑いを隠せない早坂。
赤木家。代々四宮のお付きとして尽くしてきた家系で、早坂家と似ているが、歴史は赤木家の方が長い。
赤木家は現在、本家の雁庵の傍で働いているのだが、あの男は雁庵から総司の元に送り出され、今は総司の傍で働いている。
「嬉しそうだったな、かぐや」
「そうですね。…総司様はよろしかったのですか?」
「さっきも言ったけど眠いんだよ。昨日は遅くまで掛かってな…」
欠伸をしながら早坂と会話する総司。早坂はそんな総司をじっと見つめている。
「…なに?」
「いえ。いつも御忙しそうで、お疲れなのではないかと」
「もう馴れたよ」
心配してくれているのだろうか。表情からは全く読み取れない早坂の言動にふと思うが、まあ勘違いだろう。
今でこそマシになったが、数年前の早坂の総司に対する態度はそれは酷いものだった。
かぐやを冷遇する父親、雁庵。だがそんな雁庵はかぐやとは変わって総司にはあれやこれやと手を尽くしていた。そして今や、雁庵の後継者として大切にされている。
何だかんだでかぐやが大好きな早坂には面白くなかったのだろう。かぐやは父親との交流は碌にないのに、双子の兄である総司は違うという事が。
まあ総司が一つだけ言っておきたいのは、総司にも父との碌な思い出なんてないという事。仕事を押し付けられたり仕事を押し付けられたり仕事を押し付けられたり、そのくらいの事しか覚えがない。
「どうかしましたか?」
「ん?何が?」
「いえ。何やら笑っていらしたので」
昔の早坂を思い出している内に、無意識に笑っていた。最後に本当に碌でもない事を思い出していたのだが、それについてはすぐに忘却する事にする。
「いや、別に。さっきの早坂が俺を心配してる言葉を聞いて、昔の事を思い出してただけだよ」
「なっ…」
絶句する早坂。口をパクパクと開閉させ、目を見開いて信じられないと言わんばかりに総司を見つめる。
「いやぁ~、ホントあの時の早坂はツンツンしてたよな。俺には」
「…忘れてください」
「かぐやの前だと普通なのに、いなくなると敵意剥き出しにしてさぁ」
「忘れてください!」
怒られた。でも、照れる早坂という珍しい姿を見れただけで良しとしよう。
もう少し追撃したかったが、それはただ早坂を傷付けるだけだ。そんな事はしてはいけないし、したくもない。
そうして早坂と話している内に、黒塗りの車が門から敷地内に入ってくる。手配した代わりの車が来たようだ。
「ほら、見送りは良いから着替えてこい。このままじゃ間に合わないぞ」
「いえ、それは…解りました。お言葉に甘えさせて頂きます」
早坂が一礼してから屋敷の方へと歩いていく。そして代わりの車が屋敷の前に止まり、運転席から出てきた運転手が総司が座る側の扉を開ける。
総司は早坂が屋敷へと入ったのを見届けてから、車に乗り込むのだった。
四宮別邸から学校まで車で15分の時間、総司はずっと眠っていた。
校門前に着き、運転手に呼び起こされ、意識を切り替えてから車を降りて周囲の視線を浴びながら校舎へと入る。
車のトラブルのせいでいつもより遅い到着だが、まだ始業時間までには余裕がある。急ぐ事なく靴を履きかえ、階段を上がり、二年の教室が並ぶ三階の奥、E組の教室に入っていく。
総司の席は窓際にある。先日の席替えで勝ち取った中々の良ポジションである。
鞄を机に置き、椅子を引いて腰を下ろす。
鞄から教科書やノートを出し、机の中に入れる。
「ん?」
その際、鞄の中に入れていたスマホがちかちか光っているのを見た。この光り方は、アプリでメッセージが来ているのだろう。
スマホを操作してアプリを起動。メッセージは赤木からのものだった。
「何々…。『かぐや様にトラブル発生、監視を近くからに変更』…っ」
かぐやにトラブル。切羽詰まっていたのか、そのトラブルの詳細が書かれていない。
だが、メッセージには続きがあった。
「『トラブルは無事解決、ですが始業には間に合わないと思われます。どうしますか』…すまん赤木、寝てて気付かなかった」
車でグースカ寝ている間に赤木からの応援をスルーしてしまっていた。帰ってから謝罪しておく事にする。
しかしどうやらかぐやは無事らしい。もう一つ赤木からのメッセージがあるが、文字はなく画像だけだ。恐らく、かぐやが無事であるという証明の写真だと──────
「──────」
画像の表示欄をタップし、赤木が総司に送った画像が表示される。
それは、少し遠く荒くなっているが、確かにかぐやの写真だった。かぐやは自転車の荷台に座り、笑顔を浮かべて空を見上げていた。
そして、かぐやを乗せた自転車を運転していたのは──────
「…急げよ。三年間皆勤を狙ってんだろ?」
総司が見下ろす先。窓の外、駐輪場から急いで校舎に向かって走る二人の男女。
総司は堪らず、小さく呟いてから笑みを溢すのだった。
もう何も辛くないは泣き出したい(今週のヤン○ャン読んだ方なら解るはず…!)