四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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ゼノブレイドにハマってしまいました。
3が出る事を知り、買ってみようかと思い立ち、ならちょっと前作やってみようと軽い気持ちでとりあえず明るい雰囲気そうな2を買ってプレイ。
のめり込んでしまいました。3も本日購入。まだ2が途中なので開封してませんが。

何を言いたいのかというと…。
ゼノブレイドのせいで投稿が遅れました申し訳ありませんでした。


四宮総司の奉心祭6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模擬店を見て回る大勢の生徒や一般客が行き交う中庭でクレープをあーんで食べさせ合うという公開処刑に等しい恥辱を乗り切った総司は、すり減らした精神を必死に立て直しながら千花に手を引かれて校舎へと戻る。

 

 そう、千花に手を引かれているのだ。今、総司と千花の手は繋がっている。結果、どうなるか。

 

 ─────なんで視線が集まる…?可笑しな事はしていない筈だ。

 

 先程のあーんのせいで総司の感覚は狂っていた。

 千花が総司の手首を掴んでいるだけで、総司は手を握り返していないからというのもあるせいか、千花と手が繋がっている自覚が今の総司にはなかった。故に、中庭での一時とほぼ変わらない視線の集中に総司は内心首を傾げる。

 

 が、それは鈍感スキル持ちの総司だからこうなるだけなのであって、他の者は別だ。

 例えば、総司と手を繋いでいる張本人である藤原千花等。

 

 ─────私、なんて大胆な事を…っ!

 

 現在のこの状況に加えて、千花は先程の中庭でのやり取りを思い出し、自分がしでかした行動を自覚して恥ずかしさのあまり顔から火が噴き出そうになっていた。

 

 昨日の総司への熱烈な告白に文化祭デートへの誘い。そしてデート中の大胆な千花の行動の数々を支えたのは、好きな人とデートできるという喜びによって高まりまくった謎のテンション。

 常にテンションが振り切れているといっていい千花であるが、それを考慮しても現在のテンションは異常であった。

 

 そして今この瞬間、千花は我に返りかけていた。

 

 総司の手を握っているこの瞬間の幸せに浸っていた千花だったが、ふと周囲の視線を集めている事に気が付く。

 それは奇跡にも等しい偶然。だがその偶然が千花のテンションを一瞬にして叩き落すのだ。

 

 ただ手を繋いでいるだけなのに。

 そう思った千花は直後、悟る。()()()なのだと。総司と手を繋いでいるから視線を集めているのだと。

 

 同時に千花は思い出す。中庭での一時も自分達は周囲の視線を集めていた事を。その理由は、クレープをあーんで食べさせ合っていたからのだとすぐに察した。

 

 そして状況は戻る。自分がしでかした行動を自覚した千花はこれまで生きてきた十六年と八か月の人生の中で最も強く羞恥の念を胸に抱いた。あの藤原千花が。

 かの石上から実際に言われた訳ではないが、恥が欠落していると評されたあの藤原千花が、恥ずかしいと感じたのだ。

 

 何故、なんて言うまでもない。総司(好きな人)と一緒に居る所を見られているからだ。

 何も思わない第三者は勿論、友人相手とでもこんな気持ちにはならない。どうしても意識してしまう相手とだからこそ、こんな気持ちになってしまう。

 しかし同時に千花は幸せでもあった。総司(好きな人)と一緒に居られて、またこうして、まだ恋人としてではないが、たとえ友人としてだとしても千花は幸せだったのだ。

 

「つばめ先輩…。なんで避け…僕何か悪い事…」

 

 が、そんな幸せな一時はそう長くは続かなかった。

 この世全ての絶望を背負っているかの如き黒いオーラを纏って何やら呟きながらふらふらと歩く石上が現れたから。

 

「い、石上?どうした?」

 

「そ、総司君っ!今は─────」

 

 今の石上に関わってはこのデートは終わりを告げてしまう。そう予感した千花は何とか石上をスルーしようと思考を働かせた、が、その前に総司が石上に声を掛けてしまった。

 

「…総司先輩?藤原先輩も…え、二人…?」

 

 俯いていた石上の顔が上がり、闇が渦巻く瞳が総司と千花の姿を映すと、石上の体を包む黒いオーラが更に規模を増した。

 

「そうですか、お二人は文化祭デートですか、幸せそうでいいですね、僕なんてつばめ先輩に避けられてこんなにカナシイキモチニナッテイルノニ」

 

「石上…?」

 

「い、石上君…」

 

 石上の様子に総司は戸惑い、石上の()()を聴いていた千花は目に同情の色を浮かべた。

 

「なんですか藤原先輩、その目は。そんなに僕が哀れですか」

 

「…その、石上君。どんまいっ」

 

「ちくしょぉーーー!せいぜい末永く爆発してやがって下さいよ、ばかぁーーー!!!」

 

 まるで捨て台詞を残して逃げ去る三下モブキャラのようだった。泣きながら去っていく石上を、千花と総司は追わず離れていく悲しい背中を眺めるだけだった。

 

「…なんだったんだ?」

 

「石上君にも色々あるんです。今は放っておくのが一番だと思いますよ」

 

 首を傾げる総司と頷きながら総司を諭す千花。

 

 千花は石上が何故あんな状態になっていたのかに心当たりがあった。

 それは昨日、文化祭一日目が終わって家に帰ろうとした時に耳に入った『石上優が子安つばめに公開告白をした』という噂話だった。

 噂はそれなりに広まっていたのだが総司の耳には入っていなかったらしい。

 

 総司が知らないのならそのままでいい。千花は総司に教えない事にした。流石に可愛い後輩に追い打ちをかけるような真似はしたくなかった。

 それにもし教えたら総司は石上を慰めに行こうとするだろう。それは恐らく逆効果になるだろし、何より総司と二人きりになれる時間を減らしたくはなかった。

 

「それより総司君。総司君は何か見に行きたいものはないんですか?もしあるなら付き合いますよ」

 

 石上についてはもう気にしない事にして、千花は次に行く場所を総司に尋ねた。

 もし総司に行きたい場所があるのならそこに行こう、と誘いの手を伸ばす。

 

「…あるにはある。ただ…、これに千花を付き合わせていいものか」

 

 千花の問い掛けに総司は苦笑いを浮かべて言葉を濁しながら答えた。

 そんな総司の反応に内心で首を傾げつつ、千花は笑顔を総司に向けて口を開く。

 

「それならそこに行きましょう!」

 

「…いや、でもなぁ」

 

「遠慮なんてしなくてもいいんです。総司君が見たいものを私も見てみたいです」

 

「…分かった。それなら、そろそろ時間だし行くか」

 

 行きたい場所があるというのに、何故かそこに行くのを渋っている様子の総司を千花は何ら不思議に思う事もなく、総司の足取りが微かに重い事に気付かないまま、二人の足は体育館へと辿り着く。

 

 体育館では事前に生徒達が有志で申し込んだ出し物が行われていた。

 ある団体は劇を、またある団体はダンスを、そして今、体育館で行われていたのはライブだった。

 

「…総司君」

 

「待て、そんな目で見るな。分かってる。でも見に行きたいものはないのか聞いてきたのはそっちだろ」

 

「でも今、これを見に行く選択は最悪だと思います!」

 

 ステージの上で可憐にステップを取りながら可愛らしい声で歌う少女がいた。

 総司と千花が体育館に着いたのは、今行われているライブが始まる直前だった。その時はまだ、千花は何が始まるのかと楽しみな様子で笑顔だった。

 

 が、ステージに現在歓声を浴びている少女が現れた瞬間千花は真顔になった。

 

「そんなに()()()()()()()()が見たかったんですか…?」

 

「まあ、そこら辺でやってる出し物よりは」

 

「…」

 

 悔しい、と千花は思った。

 昨日、総司は圭と一緒に千花のクラスの出し物を見に来ていた。だがもし、早坂のライブが今日ではなく昨日だったら。

 総司は千花のクラスの出し物と早坂のライブのどちらを優先しただろう。

 

 話を聞く限り、総司はまだ石上と伊井野のクラスの出し物を見に行っていない。それでも早坂のライブを選んだという事は、総司にとって後輩二人の出し物よりも早坂のライブの方が大事だったという事だ。

 なら─────自分は?もし千花のクラスの出し物をまだ見に行ってなかったとしたら?総司はどうしていただろう。

 

 勿論、タイムテーブルで決まっているのだからライブを見逃せば一大事だ。普通なら、ライブを見る事を優先し、その後で千花のクラスの出し物を見に行くと予定を立てるのが自然だろう。

 しかし今の状況なら─────総司一人ではなく、千花と一緒に居る今の状況なら、どうしたのだろう。

 

 千花を選ぶのか。早坂を選ぶのか。

 

「…あ」

 

「あ」

 

 千花が深く意識を思考に埋めかけたその時、総司の間の抜けた声が耳朶を打った。

 その声に顔を上げたと同時、今度は総司がいる方とは逆の方から可愛らしい少女の間の抜けた声が聞こえてきた。

 

 総司の顔を見上げる。先程上げた声と同じ、間の抜けた表情で千花が立つ方の更に向こう側を見ている。

 千花もそちらの方に振り向くと、そこにはこちらを呆然と見てくる二人の男女が立っていた。

 

「総司…、藤原さんも…」

 

「かぐや?…白銀」

 

 二人の男女、白銀とかぐや。そして総司と千花、四人の視線が交わる。

 

 その直後、総司の目が鋭くなる。鋭い視線はかぐや─────ではなく白銀に向けられ、白銀がぴくりと僅かに震えながら体を硬く強張らせる。

 

「総司…。こ、これは…」

 

「…俺も昨日は圭さんと一緒に回ったからな。何も言うつもりはない」

 

 言外にとっとと行けと、そう言ってから総司は視線を前へ、ステージの方へ戻した。

 

「…総司。俺は─────」

 

「白銀。()()()()()()()()()?」

 

「っ…」

 

「お前の自由だ。好きにしろ」

 

 白銀が何かを言い掛けた瞬間、その言葉を遮って総司は横目で白銀を見ながら釘を刺す。

 

 小さく息を吐いてから総司は再度視線をステージの方へ戻す。白銀とかぐやの方には見向きもしない。

 今度こそもう何も用はない、と。ここから早く消えろと、総司から漂う雰囲気が語っていた。

 

「四宮、行こう」

 

「…会長。すみません、私も言いたい事が一つあるんです」

 

 目を瞑り、開いた時には白銀の瞳には迷いはなかった。総司達から離れようとかぐやを促す。

 

 しかしかぐやはそれを断り、その場に居続けた。そして、彼女が言いたいその一言を口にする。

 

「藤原さん。貴女の好きなようにしなさい」

 

 かぐやはその一言を残して、今度こそ白銀と一緒に去っていった。出口の方には向かっていないから、体育館のどこかで早坂のライブを見ているのだろうが。

 

「…かぐやさん」

 

 かぐやはとっくに千花の気持ちを知っている。千花が明かすよりも早く、総司に対して抱いていた気持ちを見抜いていた。

 かぐやは知っている。千花の他にも総司に想いを抱いている人がいる事を。

 

 先程のかぐやの宣言は、千花に対するエール─────ではないのだろう。

 

 千花も分かっている。きっと、今の自分では─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 華やかなライブは幕を閉じ、奉心祭は最後の宴へと時を進めていく。

 

「ごめんなさい、藤原さん。少しの間で良いから─────総司を貸してちょうだい」

 

 総司と千花の二人の時間は、突如現れたかぐやによって終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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