皆、早坂好きすぎか!
かくいう私も好きですが。一番ではないですが。ていうか一番が決められないくらいキャラ皆好きなんですがね…。
「それでは、その様に」
「あぁ、頼む」
総司の自室にて。総司が紙の束を差し出し、赤木がそれを受け取る。
それは朝の総司の日課と同じ光景だが、現在は夜。
総司は学校が終わり帰宅してからも、総司が登校してから帰ってくるまでに何が起きたかの報告を受けるのである。
更に帰宅してからは平行して雁庵から受け取った仕事の依頼も熟さなくてはならない。
総司の毎日はこうしたハードスケジュールで満たされているのである。勿論、定期的な休日等はない。さすが四宮、ブラック極まれりである。
「んー…っ、はぁっ。で?明日か、相馬グループの会長が家に来るのは」
「左様でございます」
「…さてさて、何の用で来るのやら」
体を伸ばして力を抜いてから、背後の赤木に振り返り問いかける。赤木の返答を聞いてから、総司は机に頬杖を突き、どこか呆れた様子で呟いた。
相馬グループ。多くの子会社を抱える有名な団体。四宮含む四大財閥程の規模はないが、大きな影響力を持っている。
そしてこの相馬グループは、四宮と深い関係を持っており、特に黄光の派閥と親しくしているという。
「めんどくさいなぁ…。明確に攻めてきてくれれば潰して終わりなのになぁ…。どうせ牽制してくるだけなんだろうなぁ…」
「総司様。いつかの様に、『こいつには話をする価値もない』等と言ってサボらないでくださいね」
「しねぇよ。…したいけど」
明日の会談でどんな話をするか手に取るように解る。
どうせこちらに敵意はない事をアピールしつつ、遠回しに次期後継者を辞退するよう薦めてくるのだ。
総司様はまだ若い、ご成長なさるまでは黄光様に家をお任せになられては如何でしょう、なんて言って。
バカか。次期後継者の座をあの兄貴に渡してみろ。しがみついてでもその座を守ろうとするに決まってる。別に再び奪い返すのは不可能ではないが、このまま次期後継者の座に居座った方が使う労力は少ない。
「…かぐやからだ」
長い溜め息を吐いていると、スマホがメールの着信音を鳴らす。画面を見るまでもない。総司と連絡先を交換している者は大抵スマホを持っている。メッセージのやり取りをする際はアプリを使うのだ。
つまり、今のようにメールを送ってくるのはかぐやのみとなる。
届いたメールを見れば、やはり送り主はかぐやだった。文面には簡潔に、『今すぐ私の部屋に来なさい』とだけ書かれていた。
「下がっていいぞ。俺もかぐやの部屋に行かなきゃだし」
「承知しました」
先に総司が扉の前で立ち止まる。すぐさま赤木が扉を開けて総司を通す。
そのまま総司はかぐやの部屋に、赤木は別邸にて宛がわれた自室に別れて歩き出した。
「おーい、来たぞー」
かぐやの部屋の扉をノックする。数秒後、早坂が扉を開け、総司はかぐやの部屋へと入室。
かぐやはいつもと同じ様に、ベッドに腰掛けて総司を待っていた。
「待っていたわ、総司」
「…」
やって来た総司を見上げるかぐやの目は何やら真剣な様子。その空気につられて総司も表情を引き締める。
「何かあったのか」
「えぇ。とても重大な事が」
重大な事。果たして一体何があったというのだ。まさか、学園の他の生徒に何か弱味でも握られたか。それとももしや、此方側絡みで何か巻き込まれでもしたか。
かぐやの口が開かれる。総司はかぐやの口から出る次の言葉を待つ。
「会長が、スマホを購入したわ」
「…」
目が点になった。
「…それだけ?」
「それだけって何よ。会長がスマホを購入したのよ?何ヵ月も前から早坂や他の使用人にも頼んで会長にそれとなくスマホの便利さを植え付けてきた成果がやっと出たのよ!?」
「お前そんな事してたの?」
総司が知らない間にいつの間にか白銀に洗脳を施していたらしい。まあ一番の決め手は、近頃の通信料の低価格化だろうが。
「で?それが俺を呼び出した理由とどう繋がるんだ」
「良く聞いてくれたわ…。貴方には、会長に私の連絡先を聞かせる策を考えるのに協力してほしいの」
「…」
流れる沈黙。何というか、うん。
「帰る」
「どうして!?」
一言残して立ち去ろうとする総司。慌ててベッドから降りて総司にしがみつくかぐや。
「いやだって、そんなの自分で考えろとしか言えないし。早坂だっているし、大丈夫だって」
「私に押し付けないでください」
かぐやの傍らに戻ってからその場から一歩も動かず、一言も喋らなかった早坂が総司に言い返す。
「早坂とも考えたわよ!でも早坂も総司と同じ事言い続けて話が進まなかったの!」
「いや、あのさ、まずさ。かぐやから聞けば良い話だろ」
「私から…、きく…?」
しがみついたまま嫌々していたかぐやの動きが止まった。そしてゆっくりと総司から離れ、唇を震わせながら話し出す。
「そんな事…、そんな事したら…」
震える声で話すかぐや。黙って耳を傾ける総司と早坂。
かぐやは頬を染め、目に一滴の涙を溜めながら言い放つ。
「そんな事したら!私が会長といつでもお話がしたいって…、寝る前にちょっとしたメッセージのやり取りしたいとか、テスト前の深夜に通話を繋いだままにしてずっと無駄話したいとか、そんな事を思ってるみたいじゃないっ!」
「違うのか?」
「違うわよっ!」
違うらしい。なら無理して白銀と連絡先を交換しなくて良いのでは?と言ってしまいたくなるがそれを言うとまた話が変な方向に行きそうなので止めておく。
「…待つしかないんじゃね?」
「やっぱり、そうなのかしら…」
少しの間考えてみるが、何も思い付かない。というより多分、白銀もまた、かぐやに自分の連絡先を聞かせようとしてくるはずだ。
…本当にこの二人は。ほんの少しでもプライドを捨てられたら、すぐにでもくっ付きそうなものを。
「後はまあ、あれだ。かぐやと連絡先を交換するメリットを白銀に思い知らせるとか」
「メリット…メリットですか…」
とりあえず適当にそれっぽい事をもう一つ言っておく。そんな大それたメリット、あるのかも解らないが。
「私といつでもメールができる。これ以上のメリットがありますか?」
「その自分への自信はどこから湧いてくるんだ」
本当に不思議だ。あれだけポンコツを晒しておいて何故そこまで自分に自信が持てる。外見が良く、家柄が良く、能力も申し分なし。自信を持って当然なのかもしれないが、少なくとも総司はかぐや程自分に自信は持てない。
「早坂、何とかしてくれ。お前の主だろ」
「かぐや様は総司様をご指名されましたので。私は捨てられましたので」
「そんな事ないって。かぐやはお前が大好きだって。だからさ、な?」
「私の押し付け合いをしないでください」
どうぞ、どうぞどうぞと譲り合う総司と早坂。だがその実は、かぐやの押し付け合いである。
即座にかぐやがその実態を悟り、真顔で二人を睨みながらツッコミを入れる。
総司と早坂が横目でチラリとかぐやを見遣った。
「いえいえ。かぐや様は何だかんだブラコンですから。総司様と一緒に話し合われた方が良いに決まってます」
「いやいや。かぐやはシスコンの気もある。姉妹の様に過ごしてきたお前と話してたいに決まってる」
「無視しないで!それと私の事をそんな風に思ってたの!?」
先程よりも更に激しいツッコミ。
総司と早坂は視線を合わせ、頷き合う。
やはり、かぐやをからかうのは楽しい。
「何二人で見つめ合っているのかしら…。そうね、それなら私はもう眠ります。会長の件は二人に任せましょう。早坂もその方g「かぐや様?」…ご、ごめんなさい」
黒い。黒いよ早坂。かぐやが何を言おうとしたのかは解らないけど、そんな目をしないでほしい。
(まあ、俺と二人なんて嫌なんだろうな。…待てよ。前にいきなり逃げるように去っていったのももしや?)
黒いオーラを揺らしながらかぐやに歩み寄り、至近距離で睨みながら小声で何か言っている早坂と涙目で震えながらごめんなさいと繰り返してるかぐやを眺めながら、何やら勘違いを加速させている総司。
誰だ、四宮総司は鈍感系主人公とは違うとか言ってた奴は。
「おーい早坂。泣いてる。かぐやが泣いてるからそろそろ止めてやれ。何でそんなに怒ってるのか知らんけど」
「…仕方ありません。この辺で勘弁してあげます」
どちらが主人でどちらが従者なのか。少なくとも、胸の前で両手を握り、涙目でプルプル震えて「怖かった…」なんて言ってる今のかぐやは主人には見えない。
「で、だいぶ脱線したけどどうすんだ。このまま話し合ってても多分碌な案が出てこないぞ?」
「…し、仕方ありません。この件は私一人で何とかします。二人はもう部屋に戻って大丈夫です」
この時、最初からそうして欲しかった、と総司と早坂の思考が重なったのは言うまでもない。
その後、かぐやの部屋を出た後に早坂と別れて自室へと戻った総司は後少し残っていた雁庵からの仕事を終わらせて就寝。
次の日はいつも通りの朝を過ごし、学校に行き、授業を熟してその日は真っ直ぐ家に帰った。
そしてかぐやから白銀と色々計算違いはあったがメアドの交換が出来たと報告を受けたのは夕食の時間直前の事だったという。
もう何も辛くないは泣き出したいpart2(アニメ泣けましたね…藤原…)(´;ω;`)