な、なんだこれ!?めっちゃお気に入り伸びてんじゃん!これもうあれだろ!ランキングに載って…ない(´・ω・`)
でもあの伸び方は多分載ってたんですよねきっと…。一瞬で消えちゃったのかな…?
「四宮君、丁度良いところに」
総司が呼び止められたのは放課後、鞄を持って玄関がある一階へと向かっている時だった。
今日は特に生徒会にヘルプを頼まれる事なく、何ならヘルプを頼まれる前に帰ってやろうとすらしていた。
何故なら今日は、久し振りに休みの日だからである。雁庵からの仕事が来ない日だからである。そのため、早く帰ろうとしていたのだが。
「校長先生…。何ですか?」
振り返った先にいたのは、長い髭を携えた白髪の男。この男こそ今代の秀知院学園の校長、アドルフ・ペスカロロである。
校長は総司の前で立ち止まると、一冊の本を差し出した。総司はその本を受け取り、表紙に視線を降ろす。
「…これは?」
「先程、中庭で女子生徒から没収したものデス。生徒会に届けて処分するよう伝えてくだサイ」
『ティーンの恋☆バイブル』と、言い方は悪いが頭の悪そうなタイトルの本を生徒の誰かが読んでいたらしい。
だがそれを没収するのは良いが、何故その処分を生徒会に任せるのか。そして何故、生徒会に届けるのを総司に任せるのか。
「御自分で行かれては…?」
「私はこれから探し物をしなくてはなりませんカラ」
「…」
スマホを片手にキリッ、とした顔になる校長。まさかとは思うがこいつ、ピカ○ュウでも探しているのではあるまいな。
校長が学園の敷地内でポ○モン○Oをしているのは教師と生徒の間で衆知の事実になっている。
大丈夫なんだろうかこの学園、これが校長で。
「それでは頼みましたヨ!私はこれから忙しいのデス!」
「…」
そして校長は走り去っていった。スマホを片手に。
「…あいつ、島流しした方が良いんじゃなかろうか」
割りと本気で悩む総司だった。
結局校長の頼みは断れず、まあ何の憂いもなく生徒会に遊びにいくのも良いだろうとポジティブに考える事にした総司は、校長から受け取った本を手に生徒会室へと向かう。
「しーろがーねくーん、あーそびーましょー」
そして生徒会室の扉を少しふざけながらノックする。すると中から女の声でどうぞ、という声がする。
ま、まさか白銀が女体化した!?なんて下らない冗談を内心で呟きながら遠慮なしに生徒会の扉を開ける。
「おーっす、来たぞ~」
「総司…。今日は手伝いは頼んでないはずだが?」
「頼まれてなかったら来ちゃダメなのか?」
「いえ、そんな事は無いです!総司君ならいつでも大歓迎ですよ!」
「おー、藤原は優しいな~。そこの会長と違って」
「勝手に言ってろ」
容赦のないやり取り。だが気心の知れた者同士だからこそ、笑ってそのやり取りが出来るのである。
「さてと、冗談はこの辺にして校長先生からの伝言だ。これを処分してくれ、だと」
「?それは本、か?」
ひらひらと手に持つ本を揺らすと、他の三人の視線が本に集まる。総司は本をソファに座るかぐやの前のテーブルに置いてから、かぐやの対面のソファに腰を降ろす。
「そのためにわざわざここまで?貴方、確か今日は…」
「ん、何だ?何か用事があるのか?」
紅茶を飲んで寛ぐかぐやが総司の顔を覗きながら問い掛ける。その声が聞こえた白銀と藤原もまた、本から総司へと視線を移す。
「別に何もないぞ。俺はただ来たいからここに来ただけ」
「…そうですか」
「…なに?」
「いえ、別に」
自分の気持ちを偽りなく、素直に話しただけなのだが何故かかぐやが微笑んでいる。その微笑みがどこか子供の成長を喜ぶ母親の様に見えて、一瞬寒気が奔った。
(気持ち悪)
「気持ち悪」
「なっ…。気持ち悪いとは何ですか、気持ち悪いとは!」
「あ、口に出てた?」
心の中だけで納めていたはずが、しっかり口に出ていたらしい。そしてしっかりその呟きを耳にしたかぐやが憤慨する。
「いやでも、さっきの笑顔キモかったし」
「何ですってぇ!?」
「そんな顔で俺を見ないでくれ」
「…そぉぉぉぅぅぅぅじぃぃぃ?」
「お、おい、落ち着け四宮…」
地の底から湧くかのごとき声を出すかぐやに堪らず止めに入る白銀。
「っ…ごほん。申し訳ありません会長。お騒がせしました」
「猫被ったな」
「…」
ぴきっ、と体を震わせたかぐや。一方の総司は知らん顔で棚からカップを取り出し、ポットからかぐやが淹れたと思われる紅茶を注ぐ。
「お、おい藤原書記…。何とかしてくれ」
「あー、大丈夫ですよ会長。いつもの事ですし、会長だって初めてじゃないですよね?」
「まあ、そうだけど…。何度経験しても慣れん」
黒いオーラを纏うかぐやに、素知らぬ顔の総司。こうした二人の兄妹喧嘩を白銀が見るのは初めてではない。総司が白銀と交遊を持ち、生徒会を手伝うようになってからすでに何度か目にしていた。
初めの頃よりはマシにはなってきたが、やはりこの空気は慣れない。藤原はすっかり慣れ切っているようだが。総司の対面に腰を下ろして、総司が持ってきた本を読んでいる。
「ひゃああああああっ!!」
藤原が叫び声を上げたのはその直後だった。総司と白銀、オーラを霧散させたかぐやが藤原の方へと振り向く。
「乱れ…いや淫れてます!この国は淫れてます!」
叫んだかと思えば顔を赤くして慌て出す藤原。果たして、藤原が見たページには何が書かれていたのか。
「初体験はいつだったかアンケート…?高校生までに、が34%ですか」
藤原が落とした本をかぐやが拾い上げ、藤原が見ていたと思われるページを読み上げる。
「嘘です!皆そんなにしてるはずありません!」
34%、つまり三人に一人はしているという割合。この室内にいる四人の中でまず一人はいるだろうという確率である。
「こ…こういうのはこういう本を読んでいる人がアンケートに答えてるからこういう結果になってるだけですよね…?」
「あぁ。サンプルセレクションバイアスというやつだ。実際そんなに多くないはずだぞ」
サンプルとは例、セレクションとは選択、バイアスとは偏り。つまり、回答者を選んでアンケートを行った末にこの結果になったのだと白銀と藤原は結論付けた。
二人は笑い合っている。どこか苦笑じみてる気がするが。
(いや、割と的を射てる結果な気がするが…。まあ、言ったら面倒臭くなりそうだから止めとこ)
「そうですか?私は適切な割合だと思います。むしろ少ないんじゃ?」
「「「!?」」」
かぐやがそう口にしたのは、総司が内心で呟いた直後だった。総司を含めた全員が驚愕の表情を浮かべてかぐやの方へと振り向く。
「し、四宮…。もしかして、お前は…」
「えぇ、もう体験してますよ?大分前に」
恐る恐る問い掛ける白銀。即答するかぐや。目を見開く藤原。白目になる総司。
「か、かぐや?何を仰っているのでせうか?」
「おい総司!どうなってるんだ四宮家の教育は!」
「ま、待ってください!かぐやさんが経験済みという事はまさ、ま、まさか…総司君も!?」
「えぇ、勿論。総司もですけど?」
「なにぃぃぃいいいいいいいいいい!!?」
「ええええぇぇぇぇえええぇぇええ!!?」
何が起きたんだこれは。何を言っているんだかぐやは。というよりどうしてこうなった。
まずい。これはまずい。ここでこの件について追求される訳にはいかない。
「まさかお二人はまだなのですか?高校生にもなれば経験済みだと思っていたのですが…。随分愛のない環境で育ってきたのですね」
息を呑む白銀と藤原。
しかし総司はそれどころではなかった。
(う、嘘だろ…。かぐやが経験済み?は?相手はどこの誰だ?何だかんだかぐやはチョロいからその相手に騙されたんだろうが…、よし。帰ったらまずは父上に報告だ。そんで許可貰って、総力を上げてかぐやの過去の行動を洗い出す。そのためにはまず──────)
「会長には妹がいるんですから、妹とガンガンしてると思ってました」
「ははっ、それな!………ってしねぇよ!!バカじゃねぇの!!?何言ってんだ四宮!!?」
「家族ですもの、変な事じゃないですよ?現に私は生まれたばかりの甥っ子としましたよ?ビデオで撮られながら」
「狂気!!」
総司が殺意の波動に目覚めている間に会話は混迷を極めていた。
(は?甥っ子と?何だあいつ、まだ小学生の餓鬼の癖にませて…いや待て。生まれたばかり?ビデオで撮られながら?…おいまさか)
誰にも気付かれないまま揺らめいていた総司の殺意が収まっていく。そして同時に、とある可能性が総司の頭の中に浮かぶ。
「藤原さんだって、
「してんの!!?」
「してませんよ!巻き込まないでください!!」
「…」
かぐやは生まれたばかりの甥っ子としていて、藤原が
…これはもう、あれではないか?
「…四宮。一応聞いておくが、初体験って何の事か解るか?」
どうやら白銀も同じ可能性に至ったらしい。総司よりも先に、総司が口にしようとしていた問いをかぐやに投げ掛けた。
かぐやは白銀に視線を向け、溜め息を吐いてから答えた。
「バカにしないでください。淑女としてそれくらいの知識はあります」
「キッスの事でしょう?」
「「「…」」」
あぁ良かった。
(四宮の教育はどうなってるんだ)
性教育に関しては、総司とかぐやは別々で受けていたため、総司はかぐやがどういった内容の教育を受けていたか知らなかった。
だが今日、総司は知る。かぐやは、碌な教育を受けていないのだと。
「四宮…」
「会長。ここは私から…」
ここで言う初体験が何なのか、白銀は言おうとしたのだろうか。しかし藤原がそれを遮り、自分がと名乗り出る。
藤原はかぐやの耳元に口を寄せ、かぐやに説明を始める。
5分、10分、15分。…いや、長くない?どんだけ詳しく説明してんの?
かぐやが聞き返してない所を見ると、しっかり理解はしているようだ。そして──────
「」
真っ赤に茹で上がったかぐやが出来上がった。
「だ…だって!そういう事は結婚してからって法律で…!」
言い訳を始めるかぐや。だがどれだけ言っても過去は消えないのである。
『会長には妹がいるんですから、妹とガンガンしてると思ってました』
『現に私は生まれたばかりの甥っ子としましたよ?ビデオで撮られながら』
『藤原さんだって、
これらの台詞は決して消えないのである。
後々にかぐやをからかうネタにさせてもらおう。
「という事は、総司君の経験というのもキスの事だったんですね?」
総司がそんな事を考えていると、こちらに歩み寄ってきた藤原が問い掛けてきた。総司は藤原の顔を見上げる。
「…うん、そうだぞ」
「…はぁ~、良かったぁ~。本当に驚きましたよ…」
胸に手を当てて撫で下ろす藤原。先程までの衝撃が凄すぎたせいで、総司の返答が僅かにおかしかった事に気が付いていなかった。
だが、まだ気が付かなくて良かったのだ。
(これにて一件落着、と)
この騒動にて、犠牲者が出る事はなかった。
もう何も辛くないは無くしたい(誤字を)