もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
グランドールから北上したり西に行ったりまた南下したりして、数分……緑が見えてきて、そこからもうしばらく歩いたら、マギステア村に着いた。
「やっとマギステア村に着いたわね……」
一番に口を開いたのは、サラだった。グランドールで色々あったせいか、とんでもなく長い旅路に感じた……それは、ルカ達も同じであった。
「とりあえず、領主のリリィに……」
そう言いかけた時に、早速第一村人が目の前に歩いてきた。女の魔導師のようだ。
「ん、オッス!」
「サバサ本国から、サラ様自らおいでとは……」
ヴィクトリーの挨拶をシカトして、魔導師はサラの前に来る。
「しかし中央の方々は、我々を誤解されているようです」
「誤解……?」
「我々が旧弊的で、人民を抑圧している……そして、村ぐるみでいかがわしい魔導を研究している……それこそ、我々への偏見にすぎません。中央の人間は、我々を閉鎖的で旧弊的な存在と見ているのでしょう? 我々を偏見の目で見ているからこそ、そうした悪意ある解釈が生まれる……違いますか?」
「偏見かどうかは、しょせん水掛け論だわ。ゆえに本国は、信仰や思想、因習の領域は問題にしない。こちらは、法に基づいて厳正に対処するのみ。問題点は、市民の弾圧や武力衝突があった点よ」
サラが至って冷静な声でそう言う。すると、魔導師は不敵な笑みを浮かべた。
「ならば、厳正な調査が必要でしょう。あなた達の目で、この村を見回ってください。そして領民の声を、偏見なく聞いてください。そうすれば、リリィ様は間違っていないと理解される筈です」
「……それでは、村内を視察するわ。それからリリィに面会するけど、それでいいわね」
「こちらも全面的に協力致します。どうか、公正なるご判断を……」
魔導師の方はそう言って、壁に寄りかかった。
「おいルカ、なんかいきなり喧嘩腰だぜ」
「よっぽど深い確執があったんだろうね……よそ者である僕達には想像もつかないけど……」
「やれやれ、面倒そうな話になりそうだな……悪党を叩きのめして解決、という訳にはいかんようだ」
今の三分弱のやり取りで、これからの数時間がかなり面倒な事になるのを確信する。正直、ここにいるだけでも場違いな感じがしてならないのだ。
「今の魔導師の話は、どこまで信用できるか分からないけど……旧弊的領主と反対派の対立っていう、単純な構図じゃないわ。彼女の支持層は、予想以上に厚い……そうなると、領主を排除しただけじゃ問題は解決しないかも」
「また新たな後継者が出て、問題の繰り返しになっちゃう……根元からどうにかしなきゃいけないって事ね」
サラとソニアが話した通り……ここで起きていることは、勢力対勢力。しかも両陣営とも
「こういう問題は、結局は住民の心から生じたもの。特定の個人より、彼女らが共有する根の部分を探らねば。しかし、心の問題ゆえ……解決には時間を要する。中央政府側も、忍耐と根気をもって臨まねばなるまい」
アリスがそう言うと、サラは彼女に向く。
「やけに
「当然だ、余は魔王だぞ。どこぞの毛玉に心得ぐらい叩き込まれたわ」
そんな会話をしてから、ルカ達は村を歩く。歩きながら、ヴィクトリーとルカが話し合っていた。
「俺たちみてぇなポッと出の冒険者が分かったような口を効くべきじゃねぇと思うが……それでも、まずは両陣営の言い分から聞きてぇところだな」
「しっかりと状況と背景を理解する所から始めないと……まだ、どっちが正しいかも分からないからね」
そんな会話をしていると、村人が歩いてきた。
「おや、旅の方ですか……」
「オッス……って、何だ……!?」
その村人を見て、ヴィクトリーは絶句した。
普通の村娘なのだが、その右腕が無数の触手に成り代わっているのだ。だが彼女は苦しむ様子も無く、むしろ朗らかな笑顔を向けていた。
「何も無い村ですが、ゆっくりしていって下さい」
「お、おめぇ、その腕……」
「うふふっ……リリィ様にお力を頂いた証です。リリィ様には感謝していますわ……」
リリィから『力』を受け取る……すると、この異形の体になる。それを踏まえて、ヴィクトリーは村全体に気を張りめぐらせた。
「……ヴィクトリー?」
「おっそろしい気が……あっちにも、こっちにも……なんだ、『力』ってのは、一体なんなんだよ……!?」
村娘と同じような気が、村のあちこちにある。ヴィクトリーの気の探知にも引っかかったようだが……何か、様子が変だ。
「ヴィクトリー、どうしたの……? そんなに強大な気なの……?」
「きゅ……」
様子がおかしいヴィクトリーを見かねたソニアが、ヌルコと一緒になって声をかける。それに対して彼は首を振った。
「違う……大きさも強さも普通だけど……普通の気に、呪詛が刻まれたような……おっそろしい気だ……!!!」
「……確かに、風が少し震えてる……普通じゃないんだな」
「そんな怖い表現しないでよ……」
「でも、言い得て妙ではあります」
会話するヴィクトリー達に話しかけてきたのは、魔導師だった。
「少し前まで、この村は魔女が弾圧されてきたわ。事実上、女への迫害ね……男達は因習やら何やらで女への暴力や凌辱を正当化し……長年に渡り、虐待を繰り返してきた……」
「それを救ってくれたのが、リリィって人なのか?」
怪訝な顔をしてそう言うルカに、彼女は頷く。
「ええ、その通り……リリィ様は皆に蝕魔導の力を与え、現状を打破する力を授けて下さったのよ」
「……」
話を聞いていたサラは、複雑な表情をしていた。
この蝕魔導のお陰で、助かったという人間がいるのも事実。だが、これは普通では無い。そんな都合のいい力が、存在するはずも無い。
「女の人が蔑まれ、虐待されてた村か……」
「
この村にも、一応男がいる。それは、虐げられた彼女らにも同情的な男だけだとか。他の男がどうなったかは、言うまでもない。
善良な彼らもまた、この村が抱える問題に苦難しているようだった。
「どうにもならなかったのを、リリィが打開したみてぇだな……」
「村人……特に虐待されてた女達からしたら、リリィは英雄って訳だね。そのままスライドするように領主に……って感じなのかな。信頼が厚いのも、頷けるよ」
ヴィクトリーとルカの会話に、サラは頷く。
「力による救済……聞こえはいいけど、やってることは市民への私刑よ。法治国家に住む者として看過は出来ないわ……」
「ここではリリィがその『法』になっちゃってる……サバサは長い事放置してたんでしょ? 切り込んでどうこうするのは、かなり難しいわよ……」
ソニアが言う横で、プロメスティンが村の様子を見回す。
「……村全体が、どうにも妄信的ですね。既存の
「閉鎖的な村だからな。孤立した土地の集落や村では、領主の発言権が強く、また集団意識も独自なものとなって排他的になりやすい。ラダイト村でもそうだったはずだ」
そう言うアリスの言葉を聞いたルカ達は、村の奥にある大きな建造物に目を向ける。
「じゃあ……何があったかはだいたい把握出来たし、ここらでリリィ本人に話を聞いてみようか」
「こんなやべぇ力使うような奴だろ?話通じっかなぁ」
「分からないわ……それを確かめる為にも、直接交渉しないと」
ルカとヴィクトリーとサラはそう話し合いながら、先頭を歩く。そして領主の館に来て、その扉を叩いたのだった。