もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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救いを求める声

 ルカ達は、再びリリィの屋敷に来た。荒事をする為ではなく、あくまで話し合いの為だ。

 

「すみませーん」

「ここよ」

 

 ルカが声を出すと、応接室から返事が来る。どうやら、ずっとそこで待っていてくれるらしい。とりあえずそこに向かい、再びリリィと向き合った。

 

「あら、まだルシアを倒していないようね。それとも……何か心変わりでもあったのかしら?」

 

 やってきたルカ達……その中にはサラの姿もあるが、リリィは穏やかな表情を崩さない。

 

「……なぁリリィ、もう一度話し合ってくれねぇか?」

「……?」

 

 ヴィクトリーの言葉に、疑問の表情を浮かべるリリィ。その横でサラが、リリィに向き直した。

 

「お願い……分かったことがあったの。あなた達を罪には問えないこと……それよりも、蝕魔導があなた達が思うより余程危険な代物だって言うこと……」

「おや、元・女王様……あなたも懲りないのね」

 

 リリィは、サラを失笑する。

 

「その蝕魔導でこの村の女達は救われた、という話は何度も聞いてるはずよ」

「そうね、それは認めるべきだけど……その力は、世界中に拡散するべきではないわ。副作用の精神汚染や、何より弱者が過剰な力を手にした事による新たな弾圧を生むだけになってしまう……」

「副作用の精神汚染ならば、時間によって本人次第で解決するわ……それに、弱者に与えられる力なんて過剰なぐらいが丁度いいのよ」

「……過剰な力で人道を外れた残虐行為をしてもいいと言うのか?」

 

 リリィの発言に、アリスがそう言う。だが、彼女はそれすら失笑した。

 

「発想の飛躍ね……何も殺戮兵器になってもいいなんて誰も言ってないわ。何より、先に人道を外れた残虐行為をしていたのはこの村の男達……私達は身を守っただけって、説明したはずよ。この村の男達はね……最初から私達にそんな事をしなければ相応の返しを食らわずに済んだのよ」

「そうだな……虐待に加担しなかった者やあくまで司法に従っていた者が生き残ってるのを見るに、その辺の節度は守っているように見える」

 

 アリスがそこまで言うと、キリが良いと見たヴィクトリーが手を上げた。

 

「でもよ、この村では何とかなったけど他の所じゃそうはいかねぇ可能性があるんじゃねぇか?」

「……私が間違ってるとでも言いたいの?」

 

 リリィの声が、冷たくなる。重圧が屋敷を席巻し、空気が凍りつくが……サラ達は、挫けなかった。

 

「貴女たちには同情します。目を逸らしてきたサバサも、過去の事を問い質す事は出来ない。けど……この村で蝕魔導を管理出来ないまま世界に拡散したら、もっと酷い事が起きるわ」

「何それ……ロクに知りもしない事をたらればで語るなんて、サバサも地に堕ちたものね」

 

 サラの必死の訴えにも関わらず、リリィは一笑に付す。顔では笑っているが、目の奥は笑っていない。

 

「蝕魔導によってこの村は救われた……それが実績としてある以上、この力は救済の力なの。それが分からないの?」

「……分かりませんね」

 

 そう言ったのはサラではなく……彼女の後ろから出てきた、プロメスティンだった。

 

「実績があるとは言ってましたが、その実績を再現出来るまでに蝕魔導の実用と制御が完璧なのですか? 各地で起こる悲劇なんてケースバイケースです。その状況の違いに柔軟に対応でき、完璧に救済出来るという確証があるとは思えません」

「いや、出来るわよ……この蝕魔導の特徴は、ただの凡夫の村娘でさえも容易に強力な戦闘力を得る事が出来るのよ。例え因習で虐げられ、心身も弱りきった女の子でさえ……ね」

「それじゃあ、マジで悪い奴がその魔導利用して更に弾圧が加速しちまうじゃねぇか」

 

 口を挟んできたのは、なんとまたヴィクトリー。彼は注目を浴びながら、続ける。

 

「その力は1の力を11にする力だろ? それで元々の弾圧者側……仮に5だとして、この村では11の力で5を駆逐しちまった訳だ」

「ええ、そうね……何が問題なの?」

「元々5の奴がその力得たら15になって、更に弾圧が加速するに決まってんじゃねぇか」

「い、言われた……」

 

 プロメスティンが気付いてヴィクトリーに言われた、蝕魔導の最大の強みにして弱点……『扱いが容易である』という事。どんな者でも扱えるという事は、弾圧者側がこの力を手にする事もできるという事だ。

 

「っ……蝕魔導の力は私が直接授けるつもりなのよ。絶対に弾圧者側に渡さないわ」

「弾圧者側に魔術の心得がある者が居ないという保証もありません。その蝕魔導は素人の時に魔術の書物を参考に独学で会得したのですよね? もし心得がある者に渡れば会得から実用まで時間が掛からないことが予想されます」

「魔導の会得には、その書物が必要よ……」

「書物として出版されてる以上は同じ本がこの世に無いという保証もありません」

 

 冷静に返すプロメスティンに、リリィは表情に影を落とす。

 

 サラが、改めて彼女に向き直した。

 

「……何も、永遠にこの村に引きこもってろなんて言わないわ。蝕魔導の管理と制御の研究を進めて、完璧な力になるまではこの村にいて欲しい。村を救ったあなたが、この村の人間の心の拠り所である事は変わらない。だから……」

「ダメなのよ……!!」

 

 リリィは、おもむろに自らの髪を掻き掴む。上げた顔は、色々な感情でぐしゃぐしゃだった。

 

「消えないのよ、今すぐ私がこの村から出ないと……!! 助けを求める声が、弱き者の泣き声が、悲劇に苦しむ人々の声が……!! 私が行かないと、私が行かないと、私が行かないと!!!」

 

 グシャグシャと髪を掻き潰してから、叫びながら掴み伸ばす。ブチブチと音を鳴らし、綺麗な緑髪が彼女の指の間から落ちた。

 

「お、おい……! お前、平気か……!?」

「お願い、ルシアを倒して、私を外に連れ出して!! もうこれ以上は待てないの!!」

 

 ボサボサになった髪を振り回しながら、人目もはばからずにリリィはルカに縋る。

 

「……」

 

 ルカは考え……リリィを、振り払った。彼女は、何が起きたか分からない様子で尻もちをついた。

 

「……は?」

「助けを求める声が、僕にも聞こえた。他ならない、今のあなたから」

 

 ルカは、これまで仲間に聞かせた事も無いほどにシリアスな声で言う。

 

「今のあなたは、心を病んでいる。それが過去のトラウマによるものなのか、蝕魔導によるものなのかは分からない……でも確かな事は、このまま蝕魔導を扱い続けたら普通じゃいられなくなる」

 

 ルカの言葉を、リリィは光のない目で受け止める。

 

「リリィ……君が間違ってるなんて部外者の僕には言えない。だけど、蝕魔導が人を救うことに向いてるとは思えない。過剰な力は、人の人として生きる為に大切なものを蝕んでしまう……だから」

「そう、もういいわ」

 

 ルカの言葉の途中、リリィが言う。そして、無表情になって冷たい眼光を向けた。

 

「あくまで敵対するというのね。ならば、ここから出ていきなさい……」

 

 次の瞬間……リリィの魔力で、ルカ達は外へと放り出された。瞬間移動でもしたかのように、屋敷の前に来てしまったのだ。

 

「……あらららら……」

「言ってる途中だったのに……」

「ま、まさかそんな返しをするとは……」

「論破なんてするものではないですね」

 

 ルカ達も予想外な様子で、ぽかーんとしてしまう。だが、呆けている場合では無い。

 

「リリィ、ぶっとばしに行くの?」

「きゅー?」

 

 ヒルデとヌルコが、ルカに聞く。

 

「……まだ話してる途中だった。だから、ぶっとばしに行くなんて訳じゃないよ」

「でも、交渉は決裂したっぽいぜ」

「リリィの心の闇は想像以上よ……」

「ああ……既に普通では無かった。余も、あの手の者の与し方までは分からん……」

 

 ヴィクトリーとソニアとアリスで話し、頭を捻る。だが、サラがすぐに立ち上がった。

 

「……考えたい事はあるけど、ここで頭を捻っていても始まらないわ! 今すぐにリリィに会いに行きましょう!」

 

 彼女が言うと、ほかのメンバーもシャキッと立ち上がる。

 

「そうだな……行こう、皆!」

「おう!」

 

 ルカ達は先程追い出された屋敷に、再び乗り込むのであった。

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