もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
屋敷に乗り込んだはいいものの、応接室にリリィの姿はもう無い。ならば、この屋敷の何処かに居るという事が予想できるが……
「ヴィクトリー、リリィの気は感じないのか?」
ルカが聞くと、既にヴィクトリーは額に二本指を立てて気の察知を始めていた。だが、彼はすぐにそれをやめて首を振った。
「……ダメだ、この屋敷全域が嫌な気で満ちてる上に……リリィが気を消して隠れてやがる」
「屋敷をくまなく探すしかないわね……」
「みたいだな……皆、警戒しながら探すぞ!」
ルカがそう言って、先頭を歩く。それについて行きながら、アリスは腕を組んで考えていた。
「向こうからすれば、交渉は決裂したも同然。これ以上我々が意地を張るようなら、リリィとの戦闘は避けられまい」
「それでも、僕達は話をしなきゃいけないんだ……!」
「俺も言いてぇ事があるからな、どっちにしろ会わなきゃ何も出来ねぇ!」
入ってすぐ応接室のある脇道には寄らず、目の前の大扉を開ける。そこは、魔術の探求の跡らしき大壺があり……床には、何者かも分からない人骨が転がっていた。
「これは、魔術の研究の一環か……?」
「魔女狩りの村っていうのに、領主が魔女になっちまうなんてな……」
「ふーむ、人骨に外傷が加わった形跡は無いですね。触手で精を搾り取られた事による衰弱死でしょうか」
会話するルカとヴィクトリーを横目に、プロメスティンは人骨を持って観察している。
「やっぱり、リリィの……」
「きゅ……」
「身内の誰かだろうな。男連中の死は因果応報で、そやつも例によって……という訳だ」
ソニアとアリスはそう話すが、サラは首を振る。
「……因果応報なんかではないわ。サバサがもっと早くこの事に着手して、解決すれば……彼等は、法廷で裁かれるはずだった。裁くべきだったのよ」
「そう、だな……余の失言だった」
そう話してから進むと、右の通路に行くか左の通路に行くかで別れる事になっていた。その奥には、地下室への道まである。
「地下室は後回しだね、右から行こう」
「広い屋敷だな……元々格式の高い所には違いねぇんだな」
右の通路を行く、ルカ達。右は、使用人用の部屋らしき場所だった。広めのキッチンルームやベッドがいくつもあるベッドルームなんかがある。
「……なぁルカ、サバサは何でこの一件を放置してたんだろうな」
「僕に聞かれても分からないな……でも、何か事情があった事は確かだよ。これだけの惨劇、中央政府が放置している訳が無い……」
「グランゴルドとグランドノアとの戦争は、最近になってからのはずだ。話を聞くに、この事件はもっと昔に起きている……サバサで、何かしらの事件があったのか……それとも民事不介入がそこまで厄介なものだったのか……」
「…………」
ヴィクトリーとルカとアリスの会話に、サラは何か言いたげではあったが……当時の彼女は、まだ生まれたばかり。何も言えないのは当然だった。
見かねたソニアとヌルコが、彼女の隣に来る。
「みんなサラを責めるつもりは無いわ。何も知らないなら、手の打ちようが無いのは当たり前だもの……ほら、サラも少し前までリリス三姉妹に操られてた訳だし、どうしようもなかったわよ」
「きゅ」
「……ありがとう。でも、この事件は言わばサバサの恥部……早期解決に乗り出せなかった中央政府の非を認めざるを得ないわ」
「そうね……だから、今更になってここに来られるのは物凄く迷惑よ」
唐突に声が響く。その声の方を振り向くと、村娘がそこに立っていた。
「何だおめぇは!」
「私は、リリィ様に仕えてるしがない村娘……この村の狂気の被害者よ」
「村娘か……僕達に何の用だ?」
「リリィ様の命令よ……屋敷を漁るネズミどもを、駆除しろってね。ついでに男二人は、事が終わったら私が吸ってあげるわ」
彼女が言うと、指の間が割れ、そこから腕が五枚おろしになったかのように引き裂け……それが、触手へと変異した。
「敵襲かっ!!」
「やるぞっ!!」
ヴィクトリーは気を解放し、気弾を連続発射する。だが彼女の腕の触手がそれを受け止め、更に強い力で投げ返してきた。
「烈風剣!!」
サラの剣技が炸裂する。横一文字に振った剣から斬撃が飛び、それで気弾を斬り払った。
「聞いて、私達はリリィと話したいだけなの!」
「リリィ様はそうでは無いのよ。失せなさい……!!」
村娘が触手を振りかぶり、薙ぎ払ってくる。サラがそれを剣で受け止めてから弾き、ステップして再び激突する。
二人が激突する中、「どすん」という音が響く。
「なんだ!?」
「……女の顔の、棺桶?」
ルカとヴィクトリーが目をやると、そこに居たのは女の顔が象られた金属製の棺桶が立っていた。しかも浮遊してから前進して落ちてを繰り返している。
「魔導の気配……人造のモンスター!?」
「戦いの気に寄せられたか……何をしでかすか分からん、油断するな!」
アリスの言葉を背に受けたソニアが構えてから床を蹴り出し、棍棒を振りかぶる。その勢いで、力任せに振りかぶるが……見た目通り固く、棍棒が弾かれてしまった。
「っ、まだまだぁあっ!!」
踏ん張り、また振りかぶって棍棒を振り下ろす。そのまま連続攻撃で、金属をひしゃげさせたが……唐突に、その棺桶が勢いよく開いた。
見えたのは、夥しい密度の触手。それが、開いた棺桶の中を満たしている。それに驚いたソニアは動きを止めてしまい、そんな彼女を『捕食』しようと棺桶が迫る。
「っは!!?」
「きゅーっ!!」
ヌルコがソニアを触手で巻き付けて引っ張り、どうにかその『捕食』を逃れた。
「っ、ありがとうヌルコ……!! なによあれ!?」
「きゅきゅ……!」
「中に捕らえたものを、無数の触手で
プロメスティンがそう言いながら、指先に魔力を込める。それを薙ぎ払って、『真空放電』を巻き起こしてアイアンメイデン娘を後退させた。
「やるな、プロメスティン……余もいい所を……!」
「おっとぉ!」
アリスに強襲してきたのは、口のついた触手。牙を剥いて飛んできたそれを、レイピアで受け流す。
「っ、いい所を邪魔するとはな、無礼者……!」
「ラミアっぽいし、ついね……」
アリスが向かったのは、無数の口が付いた触手を下半身にしている女性だった。スキュラが、魔導科学で改造されたものらしい。
「私は魔導の力で自身を改造したスキュラ……リリィ様から教わった魔導で、触手を搾精口に変換したのです。ウーストレル、なんて呼ばれてます」
「なるほどスキュラか……余はラミアの血が濃いからな……!!」
そう言いながらアリスが目を見開くと、ウーストレルのいた所が爆発炎上する。だが彼女は寸前で飛び避け、包丁を手に突撃してきた。そのまま、レイピアとぶつかり合って鍔迫り合いになる。
相手の得物を見たアリスは、ニヤリと笑った。
「包丁……本職はコックか!? 料理人の命でもある包丁を武器とするのは感心せんが……余が勝ったらポケット魔王城で腕を振るってもらおうか!」
「あはっ、食べるのが好きなんですね! なら、食べられるのも好きになってもらいましょうか!」
戦場と化したリリィの館で、勇者一行とリリィの配下がぶつかり合う。配下の激しい猛攻は、リリィの拒絶の意思なのだろうか。
「っち!」
ヴィクトリーが戦火から退避しながらバク転を繰り返し、一際大きく飛んでから壺の縁を掴んで逆立ちする。そうしてからその壺をぶん投げようと力を込めた、次の瞬間だった。
壺の中身──ドロリとした粘液──が溢れたかと思いきや、その中から腕が伸びてヴィクトリーを掴んできた。
「うわっ!!?」
「……あはっ!」
粘液の中から顔を出し、その横から触手を出してヴィクトリーを引き込みにかかる。すごい力で引き込まれるが、馬鹿力なのは彼も同じ。
「っかぁああぁあああ!!!」
ヴィクトリーは力勝ちして跳ね除け、着地した。
「何者だ、おめぇは……!! それに、その中身に壷……
「ちょっと、ヴィクトリー……!! こんなシリアスな戦いで、急に下ネタ言わないで!!」
聞いていたソニアが、顔を赤くして怒る。
「蜜壷って、女の子のアソコの事を言うのよ!!」
「えっ……そ、そうなのか? じゃあ、おめぇは……」
「いえ、私の名前は蜜壷ですが」
「蜜壷で合ってるじゃねーか!!」
「いや、そのまんまなの!!?」
ヴィクトリーとソニアが話してる前で、蜜壷は顔を出す。可愛い女の子だが、髪も全て蜜で、壺の中から触手を生やしている。
「ここは静かで気に入ってたんですが……」
「悪いな、今シリアスだから見逃してくれると助かるんだけど……」
「ふふ、あなたも美味しそう……一緒に蜜に浸かって、私と……」
話している途中に切り込んで来る影がひとつ。ヒルデだ。
「キルリアンレンジ……放射だよ」
ヒルデはマキナを起動し、手を向ける。すると、電磁フィールドが蜜壷を中心に発生し、バリバリと彼女を焼いた。
「きゃあぁあああ!?」
「おお、大ダメージだ!」
「……あいつ、ゴーストタイプ……霊特攻の攻撃、よく効くよ」
唐突に現れた蜜壷にも、対応出来ている。
「ほんじゃあ、そろそろ本気でやるかぁ!! はぁあぁあああ!!」
「ああ……行くぞ!!」
ヴィクトリーは気を解放し、ルカは精霊の力と天使の力を全開放する。そして、リリィの館で力戦奮闘するのだった。