もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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魔女の館の激闘

「あだだだだだだだぁあっ!!」

 

 ヴィクトリーは、大ダメージに怯む蜜壷にコンビネーションを叩き込む。そのままもう一撃で倒せると思ったその時、蜜壷は踏ん張った。

 

「っ、蜜の沼に溺れてっ!」

 

 蜜壷はそのまま頭を床に振り下ろす。すると、髪に見立てている蜜がそこから一気に広がり、床を飲み込み始めた。

 

「なっ!?」

「うわっ……!!?」

 

 回避が遅れたヒルデとヴィクトリーは、蜜に足を取られてしまう。だが、ヴィクトリーはすかさず仲間の方へ向く。

 

「ベッドの上だ、跳べ!!」

 

 その声で、皆は蜜に足を取られる前にベッドに跳び乗る。

 

「鋭いねぇ君! ほらっ!!」

 

 蜜壷の触手が、ヴィクトリーの膝を横から勢いよく打ち据えてくる。

 

「うわぁっ!!」

「ヴィクトリー!」

 

 バランスを崩したヴィクトリーは、倒れてしまう。その際に天井を見上げるハメになったが……そこで目にしたものに、彼は絶句した。

 

「は……!!!?」

「え……」

 

 そこには、得体の知れない生物がびっしりと張り付き、天井を埋めつくしていた。

 

 人間の頭部ほどの大きさだろうか。蕾のような肉に包まれており、数本の触手をうねらせている。それが、どことなく虎視眈々と獲物を狙うかのようだった。

 

「な、な、な、なんだこりゃあ……!!?」

「いつの間に……!!?」

 

 ヴィクトリーとヒルデの様子を見たルカ達も天井を見上げ、絶句した。

 

「な、なんだこれ……!!?」

「触手生物……いや、魔導の気! リリィの実験生物ね!?」

 

 サラが、攻防している村娘に聞く。だが、彼女は首を振った。

 

「ああ、『サックボア』の事を言ってるの……? 違うわ」

「じゃあ、何なのよこれは……!」

「この村の()()よ……私達と同じく、ね」

 

 村娘の発言に、ルカ達は戦慄する。

 

 この天井を埋めつくしている異形生物、サックボア……こいつら、否──彼女らは、全て人間だというのだ。

 

「に、に、に……にん、げん……!!?」

「……発言に嘘は無いようですね。私が実験に使う生物とは違う塩基構造を確認しました。その構造が、人間と一致している事も……」

 

 ヴィクトリーが動揺しているのを横目に、プロメスティンがそう言う。

 

「っ、ふざけないで! 人間をこんな姿にするなんて……!」

「いいえ、彼女らは今が一番幸せなのよ。そうでしょう?」

 

 村娘が天井を向き、そう言う。すると──

 

「うん」

 

 間を置いて、可愛い女の子の声が返事として返ってきた。

 

 その声の主は、間違いなく天井に張り付いてる生物──サックボア達からだった。

 

「私は、パパ達からいじめられ続けてたの」

「お前は魔女だってね」

「遊びで骨を折られたわ」

「やめてって叫び続けて、喉が擦り切れちゃったの」

「誰も助けてくれなかった」

「でも、みんなみんな吸っちゃった」

「この力で、バイバイしちゃった」

「リリィ様の力のおかげで、助かったの」

「だから、今が一番幸せなんだよ」

 

 口々に言う、サックボア達。戦いの中で無口を貫いていた彼女らも、思う事があったのか一斉に喋り出す。

 

 その言の葉は、怨嗟の声。この村の狂気と、その被害に遭った女達の叫び。それを救ってくれたリリィへの盲信。異形生物になった彼女達から発せられた、()()の声だった。

 

「……っ、っ……!!!」

 

 サラは言葉が出ずに、歯噛みする。そんな彼女を嘲笑うのは、村娘。

 

「うふふ、あははははっ! 皮肉よねぇ……人としての体を捨てた今の方が、私達はよほど人間らしく生きる事が出来ているのよ!」

 

 村娘がそう言うと、それを合図にサックボア達は倒れてるヴィクトリーに殺到する。ボトボトと落ちて、彼の体を埋めつくした。

 

「うわぁあぁあぁあああああ!!!?」

 

 ただでさえ蜜が服に染みて邪魔になってる所に触手が絡みつき、為す術なく精を吸われるヴィクトリー。

 

「サックボアは、食欲が旺盛なのよ……そのまま、干からびるまで吸われなさい」

「ヴィクトリーっ……!!」

 

 ヴィクトリーに気を取られたサラ。そんな彼女の腹に、村娘の蹴りが叩き込まれる。

 

「っがはっ……!!?」

「あなた達中央政府は、ここでの事件が因習が生み出したイザコザだとしか思ってないようだけど……この村で起きた事は、立派な戦争なのよ!! 殺さなきゃ、殺される……そんな環境で私達は戦って、そして勝った!!」

 

 サラを触手で滅多打ちにしながら、村娘は叫ぶ。為す術なく打たれ続けるサラはよろめいて、剣を杖代わりにしてベッドにひざまずいた。

 

「うぐ……」

「王宮でぬくぬくと過ごして、王女様と持ち上げられながら育ったあなたには一生分からないわ……私達が、どんな思いでリリィ様に忠誠を誓っているのか……!!」

「サラを責めるのはお門違いだよ」

 

 村娘にそう言いながら飛んできたのは、ルカだ。天使の光翼で飛びながら、剣を構えている。

 

「しぃっ!!」

 

 村娘は触手を薙ぎ払うが、ルカはそれをしゃがみ避けながら彼女の懐に飛び込む。そのまま踏み込みから渾身の突き上げで、顎をカチ上げた。

 

「っがはっ……!!?」

 

 村娘は二、三歩後退するも、踏ん張って倒れるのを免れる。その前でルカは、サラを守るように剣を構えていた。

 

「この村では、そうするしかなかったのかも知れない。君達は蝕魔導のおかげで人間らしく生きてるとは言ってる。けど……そんな身体で力のままに殺戮するのが人間なのか?」

「っ、何が言いたいの!!」

「食欲のままに無感情に精を吸うのが人間なのか!? 恨みのまま力を振るうのが人間なのか!?」

 

 ルカの感情が昂り、その力が増す。それに呼応するようにサックボア達の間から黄金の光が迸り──

 

「っ、だぁあぁあああああ!!!」

 

 サックボア達を吹っ飛ばしながら、ヴィクトリーが出てきた。その髪は金色に染まっており、碧い瞳に村娘を見据えている。

 

「その魔導は、人の心を削っちまう……!! 悲劇から救う為に、救うべき人間の心を削っていい訳がねぇだろ!!」

「綺麗事を……!! 力を得る為なら、心ぐらい多少削るわ……!!」

「その多少から、どんどんヒビが入って……いずれ、完全に崩壊してもか? リリィのように……」

「……っ!」

 

 村娘は触手を揺らめかせ、ヴィクトリーに向かわせる。だが、その触手をルカは切り上げで叩き切った。

 

「隙だらけですよ〜!」

 

 そうしてる間に蜜壷が、ヴィクトリーの背後から襲いかかってくる。彼は目も向けずに握っている拳に気を込める。同時にルカの剣も炎上し──

 

「『烈火天翔閃』!!!」

「フンッッ!!!」

 

 ヴィクトリーは裏拳で蜜壷の顔面をぶん殴り、ルカは炎を纏った勇者技『烈火天翔閃』を村娘に叩きつけた。

 

 蜜壷は勢いよく遥か後ろにある壁にまでぶっ飛んで、そのまま「むきゅう」と言って失神してしまった……

 

「っがはっ……!!」

 

 倒れた村娘の腕が、人間の腕に戻る。どうやら、戦闘不能にすれば蝕魔導の力はしばらく使えなくなるらしい。

 

「あららら、ちょっと戦況が悪いかな〜! 退散っ!」

 

 それを見ていたウーストレルはボコボコにひしゃげたアイアンメイデン娘を担ぎ、逃げてしまった。サックボア達も床を這い回り、ウーストレルに続いた。

 

「ありがとう、二人とも。私、少し迷っていたわ。自分のやってる事が間違ってるかもって……」

 

 サラが、ルカとヴィクトリーに言う。

 

「大丈夫……これで、ハッキリしたことがある」

「おめぇは何も間違ってねぇ、気にすんな!」

「……ありがとう、もう迷わない。リリィの所に急ぎましょう!」

 

 蜜の床も落ち着き、皆床に足をつけて集まる。

 

「逃がしたか……まぁ、ここで勝ってもどうでもいい事だ」

「か、固かったわ……」

「きゅっきゅー」

「言う割にはソニアさんがボコボコにしてましたけど……」

「ヒルデ、サックボア達押しとどめてた……」

 

 皆集まったところで、ソニアの白魔法……広範囲回復をもたらす、『オールメガヒール』で傷を癒してもらう。そして見るは、村娘の方だった。

 

「……リリィは何処にいる?」

「その前に一つ聞かせなさい……リリィ様の心が……崩壊する……?」

 

 ルカに聞かれた村娘は、倒れながらヴィクトリーの方を見る。

 

「ああ……聞こえねぇ声が聞こえてる様子だった。明らかに普通じゃなかったし……何より、ルカに助けを求めていたんだ。これが、救う側の人間の言動って思えるか?」

「…………」

「お願いだ……リリィは君達にとっても、心の支え……助けてくれた英雄には違いないんだろ? 僕達が今すぐ行かないと……」

「私からもお願いよ……この村を救えなかったサバサとして、せめてものケジメとして……リリィの心だけは、守りたいの」

 

 ルカとサラの訴えに、村娘は目を閉じてから考える。

 

「……地下牢の奥よ」

 

 そして、重く開けられた口から答えが返ってきた。

 

「え……?」

「元々『魔女』を捉えておく地下牢があって、そこを道なりにいけばリリィ様の研究室に辿り着けるわ……これも持っていきなさい」

 

 渡されたのは、妙な魔力を感じる宝玉。

 

「これは『破惑の宝玉』……リリィ様は、地下階段に移動魔術を仕掛けているわ。それをスルー出来るはずよ」

「そうか……ありがとうな」

 

 地下牢……屋敷の正面奥に行った所に、地下室への階段と思われるものがあった。おそらく、そこを進めば……リリィに会えるのだろう。

 

「勘違いしないで、あなた達なんかにリリィ様は救えない……直接見て、分かってもらうしかないって判断したまでよ……」

「そうか……」

「負け惜しみになるけど……結局の所、水掛け論の堂々巡りね……力で力に対抗するしかなかったのよ。過去の私達も、今のあなた達も。だけど分かって欲しいわ……魔女には、魔女の救世主が必要なのよ」

 

 村娘はそれだけ言い、倒れた。

 

「……魔女には、魔女の救世主……か。理屈でしかないが、否定も出来んな」

 

 アリスがそう言って、腕を組んで考える。

 

「大丈夫、俺はヒーローで……ルカは勇者だ」

「ああ……絶対に救ってみせる。この惨劇を終わらせる」

「ええ、そうね……終わらせましょう、私達の手で……!」

 

 ヴィクトリー、ルカ、サラはそう意気込んで、前へ進むのだった。

 

 向かう先は、地下牢……その先の、リリィの研究室だ。

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