もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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完全交渉決裂

 村娘に言われた通り、地下への階段を進む。妙な魔術の気配を感じたが、それも『破惑の宝玉』が防いだ。

 

 そして、地下に着いて見えたのは立ち並ぶ地下牢だった。

 

「ホントに地下牢になってやがる」

「『魔女』を捕らえておくため……って言ってたけど、実際はここで女の人が拷問されていたんだろうな……」

「そうね……胸が痛くなるわ……!」

 

 話しながら進むと、扉が見えた。その扉を開け放ち、奥の部屋を見ると……やはりリリィが、机に向かっていた。

 

「あら、ノックもしないなんてマナーがなってないわね」

「悪いな。見ての通り生憎、マナーには疎いモンでよ……」

 

 リリィとヴィクトリーがそう話していると、サラが前に出てきた。

 

「お願い、リリィ……! もう一度考え直して! 今ならまだ間に合う……!」

「話す事なんかないって、さっきので分からなかったのかしら? それとも、そこまで食い下がってくるという事は……ルシア辺りに何か唆されたとみるわ」

「……ルシアの話も聞いてから、分かったことを踏まえてまた話をしに来たんだ。僕たちに敵対の意思はない」

 

 ルカの言葉を聞き、リリィはニヤリと笑う。

 

「ルシアの主張も、正しいように思えるわよね。蝕魔導の術を広めたら、かえって世界が混乱すると……でも、蝕魔導の術を秘めたものにしておくという事は……それを、一部の者のみが管理するということになるのよねぇ。それこそが、一番危険な状態だとは思わない?」

「確かに、そうかもしれないけど……」

 

 リリィの言葉に、そう言うソニア。

 

「何が言いてぇ」

「習得が容易なことで誰の手にも渡る……その事は、指摘済みのはずですが」

 

 ヴィクトリーとプロメスティンも続いて言うが、リリィは笑った。

 

「でも逆に、一部の者のみが力を独占する……それは間違いなく、暴虐と支配を生み出すわ」

「……この村のようにか?」

「そう……一部の力を持つ者が蹂躙の愉悦に酔い、弾圧を加速させる……なら、どのみち『敵』に利用されるとか適正の無い者に……など考える余地は無いわ」

 

 リリィが口にしたのは、盲目な救済。なりふり構わず、敵を仕留める為に力を授ける……たとえ、後でどんなしっぺ返しを喰らおうと、暴虐に晒されるよりはマシ……そういう考えだった。

 

「力無き者に力を与える……そうしなければ、嘆きの声が止まらなくなるのよ……ほら、今でも聞こえるでしょう……助けを求める声が……私はただ、この声を止めたいだけなのよ! あなた達にも聞こえるはずよ、虐げられた者達の声が!」

「その声は、たぶん君自身の中から発せられたものなんだよ」

 

 必死に訴えるリリィに、ルカは言う。そして、横からアリスが来た。

 

「貴様の中には、かつて虐殺を導いた罪悪感が残っている。弱者救済の使命感で、それを上書きしようとしてるがな……壊れかけの心を蝕魔導で押し隠し、使命感で塗り込め……自分の悲鳴さえ、他人のものと転嫁して……貴様、いずれは必ず壊れるぞ。そうなる前に、己の心と向き合わなければならん」

 

 アリスの言葉に、リリィは頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる。

 

「違うわ……私は、虐げられた者を救うために……弱き者の泣き声を消すために……! だって、そうしないと消えないでしょう……! この泣き声が……泣き声が……泣き声が……」

「蝕魔導の力が君を救った……それは確かだろうね。でも今は、その力が君を壊しかけている。その力と決別させるためなら、僕は剣を振るうことも(いと)わないつもりだ」

「救いたいやつを救いてぇって気持ちは、痛い程分かる。けど……今のその力は、人を救う事に向いてねぇ。むしろ、混乱と悲惨をもたらすだけだ」

「そうよ……自分をも蝕む力で、誰かを救えるとは思えないわ。だから……ごめんなさい、リリィ。貴女が食い下がるのなら、私も剣を振るうわ」

 

 ルカとヴィクトリー、そしてサラがリリィの前に並ぶ。

 

「結局、あなた達も私達を虐げようというのね……なら、あの男達と同じように……! 蹂躙し、陵辱し、報いを受けさせるわ! この触手に貪られ、惨めに尽き果てなさい……!!」

 

 リリィはその場で背筋を伸ばし、手を広げる。その両手の指の間から裂け、村娘と同じように触手へと変異した。

 

「両腕だと!?」

「それだけ卓越した蝕魔導ってわけだ!」

「っ、負ける訳にはいかないわ!」

 

 ルカとサラは剣を抜き、ヴィクトリーは(スーパー)サイヤ人となって構える。

 

 背後では、アリス達が控えているが……なんと、モンスターの気配が地下牢の方から溢れてくる。

 

「……まずいな、挟み撃ちか!」

「出来れば(スーパー)サイヤ人の観察をしたいのですが……させてはくれないみたいですね」

「戦闘モード起動……背後は任せて」

「ルカ、サラ、ヴィクトリー……頼んだわよ!!」

「きゅきゅっ!」

 

 アイアンメイデン娘やウーストレル、蝕魔導によって変異した村娘達が押しかけてきてるのだろう。そこはアリス達に任せて、早めに決着をつける必要がありそうだ。

 

「こうなった以上は、あなた達をみすみす逃す訳にはいかない……上澄み三人は私が直接叩き、他は私を支持する者や魔導モンスターをぶつけて……物量で叩き潰すわ」

「っはぁあああ!!!」

 

 ルカが最初に切り込み、突きで牽制する。リリィはそれをひらりと躱した。

 

 そんな彼女の左右からサラとヴィクトリーが来て、剣と蹴りの同時攻撃を放つ。だが蹴りは足で受け止められ、剣は触手で止められていた。

 

「ふんっ!!!」

 

 リリィはそのまま腰をギリッと捻り、両腕の触手の回転撃でサラとヴィクトリーをぶっ飛ばした。

 

「きゃ……!!」

「うぐぁっ……!!」

「あなたは違うと思っていた。分かってくれると思っていた……助けを求める声が、聞こえていると思っていた!」

 

 ヴィクトリーの背後から、リリィの声。すかさず彼は振り向き、肘鉄を放つ。しかしそれも見切られ、触手で受け止められる。

 

「……俺だって、目の前で救いたいやつがぶっ殺されるのを見た……俺がもっと強ければ、その子を助ける事が出来たのにな」

 

 ヴィクトリーは、悲哀の籠った声で言う。しかし、すぐにいつもの彼の声色で上塗りした。

 

「けど……その子は、俺に助けを求めたんじゃない。俺に、この世界を守ってくれって言ったんだ!」

「綺麗事ね」

 

 リリィがそう言うと、ヴィクトリーは額に青筋を浮かべる。そして、もう片方の拳を彼女の顔面へ放った。しかしその拳も触手で受け止められ、両腕に触手が絡みついてきた。

 

「なっ!?」

「ヴィクトリー!!」

 

 助けに来たルカの声。だが同時にヴィクトリーは持ち上げられ、助けに来てくれたルカの方へ勢いよくぶん投げられた。

 

「うわっ!?」

 

 ルカは何とか受け止めるものの靴を擦らせながら後退りして、後方にある壁へ激突してしまう。

 

「あなたの不幸自慢に興味なんか無いわ……それも結局は弱者に力が無かったがゆえの悲劇じゃない。私は、そんな弱者を救済するために戦うのよ」

「リリィっ!!」

 

 男二人と入れ替わるように来たのは、サラ。剣を振るって一撃を放つが、やはり受け止められる。だが諦めずに何度も攻撃し、やがて猛スピードで攻防し始めた。

 

「貴女の言う『救済』は、間違ってるわ! 力を得た弱者が、力を振るう悦楽に酔って新たな弾圧者となる可能性だってあるのよ!?」

「笑わせないで、元女王っ!!」

 

 触手と攻防している最中のサラに、腹への蹴りが一閃する。

 

「がはっ……!!?」

「私達が新たな弾圧者だって言いたいの……!? 違うわ、私達は被害者よ!! それを正当防衛しただけ!」

 

 リリィは筋肉を張らせた触手を巻き束ね、それをハンマーに見立ててサラに振りかぶる。しかし、リリィのこめかみに気弾が命中した。

 

「殺意向けてくる奴が被害者ぶるんじゃねぇ!!」

 

 ヴィクトリーが手を向けながら走っており、その手を拳にして振りかぶる。だが、それがパンチになるより早く彼のこめかみに触手のハンマーが薙ぎ叩きつけられた。

 

「うぐぁああっ!?」

 

 剣をも防ぐ程の触手を、束ねてハンマー代わりにする。その威力は凄まじく、彼は鈍い音と共にきりもみ回転しながら本棚に叩きつけられ、その本棚が倒壊した。

 

「ヴィクトリーッッ!!?」

「殺意を向けなければ、私もこんな事しないの──」

 

 ここで、ルカが天使の光翼で滑空しながら、風の力も乗せて勢いよくリリィの腹に飛び蹴りする。

 

「──よッッ!!?」

 

 それで彼女は吹っ飛んで、壁に叩きつけられた。

 

「サラ、立てる!?」

「ええ、まだやれるわ……!!」

「いぢぢぢぢぢ……い、いってぇ……!!!」

 

 倒壊した本棚から、ヴィクトリーが出てくる。打たれたこめかみを抑えながら、ルカの所へ来た。

 

「平気か!?」

「大した事ねぇよ……ただ、まだ(スーパー)サイヤ人に身体が慣れてくれねぇ」

 

 ヴィクトリーは中途半端に破けた赤い道着を、自らの手で破き捨てる。

 

「……()()()ほど痛くないわ、あなた達の攻撃は……」

 

 リリィは既に立ち上がっており、つかつかと三人の前に歩み出た。

 

「この村の男達は、慎ましく生きてただけの女達を『魔女』と呼び、ありとあらゆる暴虐を因習という言葉で正当化してきた。なら、最初から私達が『魔女』になるのは時間の問題だったのよ」

 

 リリィの言葉を待たず、ヴィクトリーは拳を構えて突撃する。

 

 走りながら放たれた右の拳を、リリィはまたも(かわ)す。ヴィクトリーの勢いがすっぽ抜けたかと思いきや、彼はその場で踏ん張って両手を合わせ──

 

「波ぁっ!!!」

 

 ──振り向きざまに『かめはめ波』を放った。

 

「っ!!!」

 

 リリィはそれを、束ねた触手で弾き飛ばす。だが、そのかめはめ波の陰からサラが飛び出してきた。

 

「月に舞うは、修羅の太刀!!!」

 

 サラが放ったのは『月影の太刀』。腰に携えていた剣を、居合切りの要領で繰り出す。だが、それは防ごうとした触手をいくつか叩き切ったのみだった。

 

「そこだっ!!」

 

 そこに、ルカが飛び込んでくる。剣に稲妻を纏わせて雷のような速度で迫り、ガラ空きになった彼女の顔面に『血裂雷鳴突き』を叩き込んだ。

 

「まぁ、こんなものでしょうね」

 

 リリィが額に剣を受けながらそう言い、触手の中で雷を「バチバチ」と発破させる。

 

「えっ……」

「効いてない……!!?」

「やべぇっ!!」

「電圧過剰負荷、電子放出……真空電圧!!」

 

 リリィが放つは、魔導科学技の『真空放電』。彼女の手の中で雷が炸裂したかと思えば、それが三人に浴びせられた。激しい放電が、三人を容赦なく焼く。

 

「きゃあぁああっ!!」

「ぐぁあぁああっ!!」

「うぎゃあぁあっ!!」

 

 三人は吹っ飛ぶも、どうにか踏ん張って倒れるのを免れる。だが、ルカとサラは剣を杖にして肩で息をして、ヴィクトリーは跪いてしまった。

 

「ハァ、ハァ……!! つ、強い……!!」

「ああ……それ以上にっ……心の闇が深い……!!」

「けど、まだ負けたわけじゃねぇ!」

 

 諦めずに、構え直す三人。そんな彼らを、リリィは静かに嘲笑うのだった。

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