もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
リリィは、目の前の三人を見る。
「弱者救済の為に戦うのは、あなた達も私も一緒のはずよ。何処が違うの、何が異なるの……!?」
「……力を授けて弱いやつを救いてぇっていうのは俺も分かるさ。だけど……力ってのは、そいつ自身が磨き上げて成らせるしかねぇんだ」
リリィは会話に気取られてる隙に、三人を分析する。
「それじゃあ、弱き者は先に弾圧に負けて死んでしまうわ……! 私は、今苦しんでる弱者を今すぐに助けたいのよ……!」
どういうカラクリかは分からないけど、金髪に変身したヴィクトリーが厄介……と思わせて、一番厄介なのは勇者であり、精霊の力を操るルカと見た。サラの始末は、この際後回しでもいいだろう。
だが……この触手の力なら、直接攻撃でじわじわとヴィクトリーを叩きながら、一気にルカを仕留めるのが得策。
そこまで分析して、リリィは触手を揺らめかせる。そして、床を蹴り出して突撃してきた。
「俺が引き受ける!!」
ヴィクトリーは拳を握り、リリィへ走る。そのまま二人は超高速でぶつかりあった。
十数の触手と二つの拳が入り乱れる近接戦。手数では圧倒的にリリィが有利だが、ヴィクトリーはそれを自前の素早さで速く腕を振って対抗してきた。
「はぁっ!!」
その攻防をしている最中に、リリィの横からサラが切り込んでくる。剣の一撃をリリィに叩き込もうとするも、やはり触手で防がれてしまった。
「しゃあぁあっ!!」
サラは負けじと触手を次々に切り払う。だが、新品が次々に生えてきてそれがリリィに辿り着くことを許さない。
ヴィクトリーとサラはそれでもリリィに食らいつくが、猛攻が彼女に届く事はない。
「っち!!」
「きゃっ!?」
ヴィクトリーは、サラを抱えて背を向けて逃走する。遅れて、さっきまで二人が立っていた場所が爆発した。
「っ、なに……!?」
「『超熱副射』ってやつだ! プロメスティンがよく使ってる!」
会話する二人の前の爆煙を突き破って、リリィが出てくる。しかし、そんな彼女に飛びかかってくる影が一つ。炎上した剣を振りかぶった、ルカだ。
「!!」
「『烈火天翔閃』!!」
炎を纏った剣の振り下ろしが、リリィに叩き込まれる。それが爆発して、リリィを吹っ飛ばした。
「攻撃の手を休めんなぁっ!!」
「えぇっ!!」
ヴィクトリーは丸鋸状の気の刃である『気円斬』、サラは同じく丸鋸状の斬撃を放つ『払車剣』を飛ばし、リリィに追い討ちする。
それが着弾したのと同時に三人同時に飛び出し、リリィに一撃した。しかし、三人の攻撃はまたしても触手に阻まれる。
「く……!?」
「ち……!!」
「そんな……!!」
二つの丸鋸状の斬撃は、リリィの左右にその痕を残している。弾かれたと見るのが妥当だろう。
「結局、弾圧者側は暴力を振るいたいだけ。魔女では無いって分かりきってる女を、自らのささやかな悦楽の為に拷問し続けた異常者よ。そんなクズどもは、法の裁きも待たずに始末するべきよ……!」
「勝手な事を言わないで……! どのような者であれ、人間である以上は法の裁きで裁かれるべきよ!」
「人道を外れた相手がいるからって、自分が人道を外れていい理由にはならないよ……!!」
「……!!」
ヴィクトリーは、見た。リリィの腕の触手……注視していないと見えないような小さな口が空いており、そこから自分の気を吸っていた。
「論点がズレてるわよ、勇者一行」
次の瞬間、リリィの触手が三人の顔を打つ。鞭のようだが中に重りでも仕込まれてるかのような、凄まじい威力だった。
「うぐぁっ!」
「きゃっ!」
「っくそ!!」
三人は後退するも、どうにか構え直す。リリィはそんな彼らを、またしても嘲笑った。
「優位に立った人間というのは、自分よりも下位にあたるものを、理由があれば弾圧や暴虐に晒したいと思うものだわ……そうしながら口々に法や道徳を問うの。そういう厚顔無恥な異常者を、始末するべきだと言ってるの」
「それは『救済』なんかじゃないわ、ただの『選民』よ……!!」
「そうね、だけどその結果が救済に繋がるのなら私はそうするわ……!!」
「リリィ!!!」
サラが走り、リリィに切りかかる。そして、そのまま攻防した。
「まるで、呪いだ……リリィは、救済の呪いにかかってる……!!」
そんな事を言うルカに、ヴィクトリーは頷いてから向く。
「ああ……アイツの正体がわかった所で、カラクリも分かったぞ……あいつ、俺の気を吸ってやがった」
「なに」
「通りで思うように力が出なかったわけだぜ……あの触手、よく見ると表面にタコの吸盤みてぇに小さい口が並んでんだ。俺と直接攻防してた時、触手で拳を受け止めながらその口で俺の気を吸ってたんだよ……」
「よ、よく気付いたな……
「剣がありゃ中距離で戦えたんだけど……今回は、蹴りと気功波で援護に回るしかねぇな!」
「そうか、なら頼んだ……!」
ルカが飛び出し、ヴィクトリーはその場で手を向けて気弾を放つ。
ルカとサラは並んで、リリィの触手を押し止めた。
「っ……!!?」
遅れて、顔面に気弾が撃ち込まれるリリィ。彼女はよろめくが、踏ん張る。
「疾風のように……」
「突く!!」
そんなリリィにルカとサラの『疾風突き』が迫り、その胸を打ち抜く。そして、彼女は吹っ飛んで壁に叩きつけられた。
「がはっ……!!?」
「かめはめ波────っ!!!」
すかさずヴィクトリーが『かめはめ波』を放ってくる。だがリリィはそれを転がり避け、触手の中で「パキパキ」と冷気を凝縮させる。
「電荷分離、実行……第一種相転移、凝固せよ!!」
リリィがそれを突き出し、炸裂させる。すると、『電荷相転移』により凍結が迫ってくる。
「任せろぉおっ!!」
ルカが吼えると、その剣が炎上する。そのまま腰を捻りながら剣を振りかぶった。
「『紅蓮廻天斬』!!」
薙ぎ払う炎の刃により、凍結を相殺する。
「ち……!!」
「あだだだだだだだだ────っ!!!」
ヴィクトリーは、無数の気弾を放つ。ベジータがやるような、気弾の連射だ。それをリリィは避けに徹するが、そこにサラがすれ違いざまに斬撃を入れてくる。
「ぐぅっ……!! ま、まさか、気付いた……!!?」
リリィは、精を供給出来なきゃ触手も魔力も次第に息切れを起こす。このままでは、ジリ貧だ。
「うおぉおおおおおお!!!」
「あぁあぁあああああ!!!」
ルカが切り込んできて、リリィに剣を振るう。それを触手を斬らせる事で凌ぐリリィ。だが、触手が生え変わる前にサラの突きが彼女を打ち抜く。
「っぐ! なら……直接あなた達から……!!」
「させるかよぉおおお!!!」
ヴィクトリーが、横から気弾を連射してきた。いくつか直撃するも、リリィは踏ん張って彼の方へ走る。そして触手で精を吸おうと振り下ろしたが、それは空ぶってしまう。
ヴィクトリーは
「がはっ……!!」
「剣閃よ、烈風の如く……!!!」
サラの声が響く。彼女は剣に気を込め、横一文字に振るう。そこから真空刃が飛び、リリィを吹っ飛ばした。
「っ、よし、吸われてねぇ!」
「油断するな!!」
リリィはもう持ち直しており、その場で触手を伸ばす。三人を絡め取ろうと乱舞するそれらを前に、ルカの剣が光る。
「『死剣・乱れ星』!!」
繰り出すは、踊るような連続斬撃。絶え間なく放たれるそれに、次々と触手は切り落とされる。そして、斬られた触手の間からヴィクトリーが飛んできた。
「なっ……!!?」
「どりゃあぁあああ!!!」
そのまま、長い足を振ってリリィを蹴り飛ばした。蹴っ飛ばされた彼女は壁に激突して、その勢いのまま壁を転がり、本棚に激突した。その本棚も崩落して、彼女はそれに埋まった。
「ハァッ、ハァッ……お、押してるわっ……!!」
「リリィ……!!」
「…………」
リリィの気は、減っている。これまでの攻撃も、確実に効いているはずだ。
「わ、私は……救済を……この声を消す為に……この泣き声を、助けを求める声を消す為に……!! 救済し続けなければ、ならないのよ……!! こんな、こんな所で……!!」
ガラガラと本やら木片やらをかき分けながら出てくるリリィ。両腕の触手は左右一本ずつだけになっており、足もふらついているが……その敵意だけは、未だに消えていない。
「……」
このまま戦っていたら、リリィの命までも危ない。彼女が取り憑かれた、『救済の呪い』……次の一撃で、それを消す必要がある。サラは、握っている剣に気を込める。
「っ、わぁあぁああぁあああ!!!」
リリィの悲鳴と共に、その両腕から触手がまた生え変わる。そして、三人に襲いかかってきた。
「任せて」
サラが前に出てきて、気を込めた剣に更なる力を込める。剣士としての底力か、妖魔の血が入ってるが故の力か……その剣気は、今までになく強大なものだった。
ヴィクトリーもルカも頷き、一応構えながらも一歩下がる。
「こんな所で、私は負けられないのよぉおおおおお!!!!」
悲鳴を上げながら、走ってくるリリィ。それを迎えるように剣を構えながら走る、サラ。
二人の一閃が交差した次の瞬間、凄まじい気のぶつかり合いにより衝撃波のような旋風が巻き起こる。彼女らはすれ違い、互いに背を向けて止まった。
「……」
「……」
刹那の静寂の後──サラは振り抜いた剣をゆっくり仕舞う。
「──『二刀十字斬』」
そう言いながら、「チン」と納剣した次の瞬間──リリィの胸に十文字の斬撃が炸裂したのだった。
「……そう、結局……私達は、踏み躙られるのね……」
リリィはそう言いながら、触手になった腕を人間のものへ戻す。そのまま、倒れたのだった。
「いえ、踏み躙らせはしないわ……ただ、お願いよ。もう少しここで、眠って頂戴……」
サラはそう言いながら目を瞑り、フラッとバランスを崩す。だが、黒髪に戻ったヴィクトリーがそれを支えた。
「……リリィを倒したな」
「ああ」
「……丁度、終わったようだな」
ルカとヴィクトリーが顔を合わせてると、アリスが背後から声をかけてきた。
そっちに向くと、ソニア達も控えていた。みんな、無事にモンスターの群れを押し返せたようだった。
「みんな」
「これだけ消耗させれば、当分蝕魔導は使えまい。ルシアとの取引は、これで成立だな……」
アリスは、眠るように倒れるリリィを見る。ついでに『回復の魔眼』でその傷を治してやった。
「いろいろ難しかったみたいね……」
「……ああ」
白魔法の『オールメガヒール』をかけてくれるソニアに、サラを支えたままのヴィクトリーは返事する。
「リリィは、きっと強い人だから……蝕魔導から解き放たれて、自分の心と向き合うと信じるよ」
「その時には、救済の呪いも解けてるといいよな」
ルカとヴィクトリーはそう言葉を交わし、皆の方へ向き直した。
「……結果的に、ルシアの頼みを飲む羽目になったが……報告に行くのか?」
「うん、取り敢えずは事の顛末は話さないとね……みんな、行こう」
取り敢えず、リリィをその場に残して研究室を後にする。
彼女の『救済の呪い』は、これで一旦の終わりを迎えるのだった。