もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

11 / 183
飛んでスラム街

 翌日……色々あってヴァニラとゴブが仲間になって、うさとレミがポケット魔王城に吸い込まれた。

 

「はしょるなーっ!!」

 

 アリスは、ナレーションに突っ込む。しかしそんな彼女の背中を、ヴィクトリーは撫でた。

 

「しょうがねぇだろ、ここまでおんなじ展開なんだからよぉ……」

「むぅう……」

 

 そんな二人を、ルカは変な目で見ていた……

 

「……あいつら、何の話をしてるんだ?」

 

 そう思いながら、歩いていると……目の前に、上半身がヘビで下半身が人間の女性のモンスターが現れた。なんとも、残念なラミアだ。

 

「かぁっ、気持ち悪ぃ……やだおめぇ……」

 

 ヴィクトリーが、明らかに嫌悪を示す。それも当然か。こんなに奇抜なデザインのモンスターなんか、初めて見るものだから。

 

「あら、あなたが勇者ルカなのね……」

「……お前は?」

 

 ルカに聞き返された残念なラミアは、待ってましたと言わんばかりにキメ顔をする。

 

「私がアミラ……情報屋よ……」

「君がアミラか……でも、盗賊団に攫われていたっていうのは?」

「ええ……あの時は……」

 

 どうやら酔っ払ってゴミ箱で寝てたら、例の盗賊団に捕まって、途中で捨てられて……って感じらしい。

 

「じゃあ、誘拐されてた訳じゃねぇのか……」

「そうよ……何処かで噂がねじ曲がったみたい」

「そうなのか……」

 

 アミラは咳をつき、二人に向かい直した。

 

「ともかく、私に用があったみたいね。何の情報をお望みかしら……?」

「実は、怪しいウサギを探してるんだけど……」

「怪しいウサギねぇ……極上の情報があるわ。おそらく、あなた達が求めている情報のはずよ」

 

 その言葉に、ヴィクトリーは喜んだ。

 

「おっ、流石情報屋だ! 話が早くて助かるぜ!」

「その情報、ぜひ教えて貰えるかな」

 

 アミラは、少し黙る。そして、改めて二人に向いた。

 

「……情報量、1500Gよ」

「お金、とるの!?」

「そうか、おめぇも情報()だったな……」

 

 情報の受け渡し……立派な商売だから、当然っちゃ当然だ。しかし──

 

「だけんど、1500Gって高くねぇか……?」

「そうだよ。そこをなんとかして欲しいんだけど……」

 

「何とかしてあげたいのは、山々なのだけれど。代金の伴わない情報のやり取りは、ギルドに禁止されてるの。組合勤めの辛いところね、昔はよかったわ……とは言え、方法もなくはないのよ」

「なくはない……? あるって事か?」

「ええ、あなた達も情報ギルドに加入すればいいわ。同業者の間なら、問題なく情報交換できるわ」

 

 アミラの提案に、ルカは迷う。

 

「それの方が大変そうなんだけど……」

 

 しかし、ヴィクトリーは好反応だった。

 

「ルカ、どうやら悪い誘いでもねぇらしいぞ。情報というのは、上手く回収出来れば戦いにおいて強みを発揮する。これから先、様々な情報が俺達の中に飛び込んで来るだろう。だったら、わざわざカネを払うよりタダで手に入れた方が楽になるだろうよ……」

「な、なるほど……」

 

 戦いが絡むと早口になるヴィクトリーに少し引きながら、ルカは納得する。

 

「いいじゃない!」

 

 すると、ソニアがいきなり飛び出してきた。

 

「やってみようよ、ルカ!」

「ええ……」

 

 その後、アミラから説明を受けた。

 情報ギルドに入るには、推薦と実績が必要だとか。推薦の方はアミラにしてもらうとして、実績が少し厄介なものなのだ。

 

「でも、これさえこなせれば一発よ。危険だけれど」

「おめぇ、仕事を俺達に投げてぇだけじゃねぇのか……」

「ムホッ! 鋭いわね……情報屋に必要な資質、備えていると見たわ」

 

 アミラは説明を続ける……

 最近、フェニックスの尾というアイテムの密売が横行しているらしい。これは、読んで字のごとくフェニックス娘というモンスターの尾だという。効果は、戦闘不能になった者を復活させることが出来るとか。

 

 希少なものなのに、流通量がおかしいらしい。調査した所、出所はイリナ山地のスラム街。ドン・ダリアという女が糸を引いてるらしい。そいつは裏世界に君臨するマフィアだとか……

 

 問題は、仕入れ先が何処かだ。フェニックス娘そのものを密売しているとしか思えない……それだけの量を、裏取り引きしているようだ。

 

 ここで、アリスが口を開いた。

 

「妙だな、フェニックス娘とは神鳥に属する魔物。人間などに大人しく密売されるなど考えられん」

「だから不可解なのよ……」

「それを、俺達に調べて来いって話だな。分かった、ドン・ダリアっちゅう奴は何処に?」

 

「イリナ山地の洞窟を抜けた先よ。あなた達が盗賊を退治したのは、イリナ北の洞窟。そこから南にも洞窟があって、イリナ盆地に抜けられるのよ」

「おっしゃルカ! 面白そうだ、行ってみようぜ!」

「うん。もし本当にフェニックス娘が密売されていたら、黙っていられないからね……行くぞ!」

 

 一行は、動き出す。

 目指すはイリナのスラム街。果たして……

 

 

 

 イリナ北の洞窟……

 

「ここを抜ければ、問題のスラムに着くという話だったな。フェニックス娘の密売……本当だとしたら、放置は出来んぞ」

 

 アリスはそう言って、拳を握った。そして、新たに仲間になったヴァニラとゴブ……

 

「まさか、密売事件を調査する事になるとは……見習い商人の血がたぎるのだぞ!」

「それにはまず、この洞窟を抜けないとね。よ〜し、がんばるぞ〜!」

 

 こいつらが居れば、心強い。

 

 襲いかかってくる狼娘や、ネズミ娘を倒しながら進む道中……面白い光景が、目の前で展開していた。

 

「そんなに私について行きたいのですか? それでは、特別に使ってやりましょう……」

 

 あのちっちゃいイリアスが、スライム娘相手にえっへんと貧相な胸を張っていた……

 

「……イリアス様?」

「な、なぁにやってんだおめぇ……」

「……はっ!? な、何を見ているのです!?」

「おやおや……魔物嫌いのイリアス様ではないか。いよいよ窮も極まり、魔物を供にでもするのか?」

 

 アリスは嫌な笑いを浮かべながら、イリアスにそう言った。彼女は睨み返し、歯軋りする。

 

「地を這う者達などに、神の意図など分からぬものです。この私の遠大な計画など、あなたには理解できないでしょう。ところで……」

 

 イリアスは俺とルカの方を見て、手招きする。

 

「ルカ、ヴィクトリー、少しひそひそ話が。ひそひそしますので、腰を屈めて下さい」

「何だよ……」

 

 二人は、言われるがままにイリアスに耳を傾け、腰を屈める。

 

「二人とも、あの娘を信用してはなりませんよ。ルカの幼馴染み、ソニアという娘の事です」

「……!」

「……えっ? ソニアを?」

 

 ヴィクトリーは、反応する。ソニアに関しては、自分も違和感を感じていた所なのだ。

 

「私は創世の女神、この世全ての人間を知っています。記憶に欠損が出ている今も、老若男女全て把握済みです。もちろん、異世界から来た人間も……そんな私ですが、あのソニアという娘は知りません。それはつまり、歴史に存在するはずの無い人間という事。ソニアという少女は、この世界に存在しないのです」

「……」

 

 存在しない少女……? 

 ヴィクトリーの胸のもやもやが、再燃してきた。何だろう、この違和感は……もしイリアス様の言うことが本当なら、何で自分だけがこんなに違和感を感じてるんだ? 

 

「でも、僕はソニアの事を幼い頃から知ってるし……」

「ソニアの様子を見る限り、騙している素振りはありません。おそらく、自分でも自覚できていないのでしょうか……ともかく、心を許してはなりませんよ。これは、あなた達への忠告です」

 

 イリアスはそう言ってから、息を吸い、微笑んだ。

 

「それでは行きなさい、勇者ルカ、武闘家ヴィクトリー。決して、魔王に踊らされてはなりませんよ」

 

 そう言ってから、イリアスはさっさと進んでしまった。

 

「まってー!」

 

 スライム娘もそれを追いかけるように、走って行った……

 

「あの子がイリアス様だなんて……やっぱり、ちょっと信じられないなぁ」

 

 ソニアはそう言いながら、苦笑いする。その横で、アリスがクスクスと笑っていた。

 

「愉快なぐらい力を失っているが、紛れもなくイリアスだ。いったい、誰が奴に六祖大縛呪を掛けたのか……」

「……」

 

 そんな事はどうだっていい。今気になるのは、ソニアだ……果たして、この胸の違和感が取れることはあるのか……? 

 

「ヴィクトリーっ?」

「あ、ああ! すまねぇ!」

 

 そんな事考えてる暇も無さそうだ。

 今は、目の前の問題を片付けねば。

 

 

 

 イリナ北の洞窟を抜け、イリナ盆地……そこにある、名も無きスラム街に一行は到着した。

 

「この薄汚いところが、目的のスラム街よね。さぁ、スパイ大作戦を始めましょー!」

 

 ソニアはでかい声で、嬉しそうにそう言う。

 

「なんでそんなノリノリなの……?」

 

 ルカは、ジト目でそれを見ていた。

 

「美少女スパイの私としては、まず情報から攻めないと。そういうわけで、酒場に行ってみるわよ!」

「……」

 

 ソニアのテンションに引き気味になる、男ふたり。

 

「……おめぇの幼馴染み、こういうの好きなんか?」

「うん……僕以上にね」

 

 アリスはソニアの後ろで、腕を組みながら息を吐く。

 

「ちまちま探りを入れるなど、性に合わん。そのドン・ダリアとやらの元に乗り込んだ方が早いぞ」

「そう言うなよアリス。これからがかかってんだから、慎重に行かねぇとな」

「ああ、情報集めから入らないとね。情報が集まる所と言えば……酒場よね!」

 

 

 

 ソニアの言う通り、一行は酒場に入る。

 

「……」

「ハァハァ……ドン……」

「……」

「……」

 

 変なのが一匹紛れてるが、それ以外は商人やシーフや怪しい男が黙々と酒を飲んでいた。

 

「……おい、あんた達」

 

 怪しい男が、俺達に目をつけて手招きする。

 

「ん……?」

「あんた達、旅人だろ? フェニックスの尾、いっぱいあった方がいいよなぁ……?」

「……」

「まぁ、はい……」

「それじゃあ、面白い取引の話をしてやるよ。武器屋の近くのテントで、フェニックスの尾が激安だ」

「!」

 

 早速、お目当ての情報っぽい。

 

「詳しく聞かせてくれねぇか?」

「ああ……だが、誰にでも売るって訳じゃねぇんだ。この取引には合言葉ってのが必要なんだよ。その合言葉だが……今ここで20G払うなら、教えてやる。さぁ、どうするね?」

「げーっ、金とんのか!? おめぇ、情報屋って奴か……」

「でも、アミラよりは良心的だね」

 

 ルカはそう言って、20Gを差し出した。

 

「毎度あり……」

 

 怪しい男はそれを受け取り、懐にしまう。

 

「それじゃあ、教えてやろう。合言葉は『おっぱいもませろ』だ」

 

 ヴィクトリーとルカは、素っ頓狂な言葉にずっこけそうになる。

 

「てめぇ、嘘言ってんじゃねぇだろうな!」

 

 俺は怪しい男の胸ぐらを掴み、揺すぶった。

 

「いやいや、本当だって……! まったく、ドンも冗談が過ぎるぜ……」

 

 とりあえず、これしかアテが無さそうだ。

 

 

 一行は酒場を出て、例の武器屋の近くのテントに入った。

 

「……ん?」

 

 居たのは、ガラの悪そうな女だった。

 

「オレのテントに、何の用だ?」

「わっ、怖そうな人……」

 

 ソニアは、ルカの背後でそう呟いた。

 

「ほら、とっとと要件を言えよ。オレだって、暇なわけじゃないんだよ」

「あの……えっと……」

「おっぱいもませろ」

 

 ルカが迷うから、ヴィクトリーがきっぱりとそう言った。

 

「ちょっ、ヴィクトリーっ!?」

「しょうがねぇだろ、これしか情報がねぇんだから!」

「なるほど……お客ってわけか」

 

 ガラの悪そうな女は立ち上がり、ヴィクトリーの目の前に来る。

 

「ほぉら、好きなだけ揉みなよ」

 

 そう言い、大きな胸を揺らしながら突き出した。

 

「ぇ……?」

「どうした? この胸、揉みたいんだろ……?」

 

 ヴィクトリーは胸を見てから……ぶんぶんと頭を振る。

 

「そうじゃねぇんだ」

「はははっ、少しからかっただけだよ」

 

 女は笑い、元の所にどしんと座る。

 

「さて、オレがドン・ダリアだ。フェニックスの尾でいいんだな?」

「まさか、ドン・ダリア自身が売ってるの……? 供もつけず、こんな汚いテントで……?」

 

 ソニアの言葉に、ドン・ダリアは頷く。

 

「しばらくは、単身でこのシノギをやって行きたくてな。手下率いるのは、もう飽きたんだよ」

 

 彼女はそう言い、フェニックスの尾を取り出した。しかも、三枚も。

 

「オレの身の上話なんぞ、どうでもいい。ほら、フェニックスの尾三個……セットで、60Gだぜ」

「……じゃあ……」

 

 ルカは60G支払い、それを買った。

 

「ははっ、毎度あり。これからも頼むぜ」

 

 そう言った瞬間、彼女の目が鋭くなった。

 

「……と思ったが、取引は今回だけだ。お前ら、どうにもうさん臭いな……商人ギルドの回し者か、官憲(かんけん)か……なんだか分からんが、失せな」

 

 俺達は、ドン・ダリアの言われるがままにテントから追い出されてしまった……

 

「美少女スパイ大作戦、見事に失敗……」

 

 ソニアはそう呟きながら、がっくりと肩を落としていた……

 

「おのれ、必ず尻尾を掴んでくれる。改めて情報を集めるぞ。怪しい場所も、入念にチェックする必要があるな。不審な建物など、探してみた方がいいだろう……」

 

 アリスの言う通り、怪しい場所を探してみる……どうやら、ドン・ダリアは街の隅にある空き家に出入りしてるとかどうとか……とりあえず、そこに向かう。

 

「……鍵がかかってるよ」

「やっぱりな……」

 

 ヴィクトリーとルカはその扉を開けようとするが、どうやら鍵がかかって開かないようだった。

 

「おい、そこで何やってんだ?」

「いっ!?」

 

 二人が振り向くと、そこにはドン・ダリアが居た。

 

「どきな」

「は、はい……」

「……」

 

 彼女は鍵を使い、空き家に入った。

 

「この建物、やっぱり怪しい……」

「そう言えば、酒場にスリの請負人が居たような……」

 

 そいつに頼んで、鍵をスッてもらおうか……そう提案しようとしたが、ヴィクトリーは違った。

 

「そんなん必要ねぇ、どいてろ」

「え……!?」

 

 彼は、扉に思いっきり蹴りを放った。扉吹っ飛び、建物内の床に倒れる。

 

「っ!?」

「なにっ!?」

 

 その先の光景……ドン・ダリアが、小さなフェニックス娘の尾を抜いている最中だった。

 

「……やっぱりな」

 

 ビンゴ……こんなにも早く、真実にたどり着けるなんて。

 

「そこまでだ、その子を解放してもらおう!」

「てめぇら、テントで会った……!」

「誰なの、この人達……!?」

 

 ドン・ダリアとフェニックス娘は、ルカ達に向く。

 

「おいミニ、そいつらは悪い奴だ」

「分かったぞ、ドン! こいつらはあたしを捕まえて、密売する気なんだな!?」

「ああ、そうだ……やっちまいな、ミニ!」

「よし、あたしがやっつけてやるぞ〜!」

 

 ミニと呼ばれたフェニックス娘は気を解放し、ルカに突っ込んだ。

 

「違う、君は騙されているんだ……! くっ、聞く気は無いか……!」

「見事なまでに飼い慣らされおって……! 仕方ない、ドアホな鳥はしつけてやらねばな。ルカよ、怪我をしない程度に叩きのめすぞ!」

 

 ルカやアリスは構え、フェニックス娘と激突した。

 

「よっしゃ、俺も……!!」

 

 ヴィクトリーも、ミニに攻撃しようとした時だった。ドン・ダリアが高速移動で彼の横に飛んできて、横っ腹に蹴りを放った。

 

「っ!!?」

 

 その蹴りに直撃してしまい、壁に叩きつけられた。

 

「ぐっ……!?」

「ふふふ……」

 

 ドン・ダリアは不敵に笑い……そして、その目を赤く光らせ、邪悪なオーラを波動させた。

 

「な、なんだと……!?」

「お前の相手はこのオレだ……ふっふっふっふ……」

 

「ヴィクトリーっ! くそっ!」

 

 ルカが駆け寄ろうとしたが、ミニに邪魔されてしまう。

 

「ちょっと油断しただけだ! そっちはフェニックスの方を!」

 

 そしてヴィクトリーは立ち上がり、豹変したドン・ダリアに向いた……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。