もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「なんだあいつ」
「もしかして、さっき泳いでた子?」
仲間達も、泥人形に気付く。
泥人形は拍手してから、背を向けて歩き出す。逃げるのかと思いきや、振り返ってこっちを確認していた。
「……ついて来いってことか?」
「シルフ、分かるか?」
ヴィクトリーの疑問に、ルカも同じ事を思って自らの中に居るシルフに話しかける。
「そうだよ〜! どうやら、一次試験は合格らしいねっ!」
やはり、ノームからの誘いだった。一次試験と言っていたので、先程襲ってきた魔物達も、もしかしたらノームの手引きがあっての事かも知れない。
となると、二次試験はやはりノームとの直接対決になるのだろうか。
「行こう、みんな」
「ああ」
ルカは仲間を引き連れ、泥人形の案内に従って進む。
遺跡を進んで東に行くと、オアシスがあり……その中心点に不思議なオーラを纏った少女がいた。
帽子をかぶっていて、泥人形を抱いた、不思議な雰囲気の少女……その気は人間のものではなく、シルフのものに近かった。
「えっと……あなたが、ノームちゃん?」
ソニアが聞くと、少女はこくこくと頷いた。どうやら、この子がノームで間違いなさそうだ。
「無口か……友達になれっか不安だなぁ……」
「大丈夫だよ、ノームちゃんは優しいんだから〜!」
ルカの中からシルフが出てきて、ノームの周りを飛び回る。
「ノームちゃーん! また一緒に遊ぼーよー!」
飛び回るシルフを、目で追うだけのノーム。そんな彼女に、ルカは向いた。
「あの……君の力を貸してほしいんだけど……」
「……」
ルカに聞かれても、無口なままのノーム。だが、シルフが話しかけてくれる。
「ねぇ、ノームちゃん。この人間に取り憑いて、いっしょにあそぼうよー!」
「……」
「……そうなの。そうだね、ノームちゃんはルカと会ったばかりだもんね」
「……ちゃんと、会話通じてるの?」
「風の力の感応力なら何となく言うこと分かるんじゃねぇか?」
不審な視線を送るソニアに、ヴィクトリーは言う。風の力を間近で見てきたから、わかるのだ。
「力を貸して欲しかったら、その前に力を示せだって。つまり、ノームちゃんと戦って勝たなきゃいけないってこと」
「まぁ、そう来るとは思っていた……二次試験ってやつだね」
ルカの視線を受けたアリス達は下がり、観戦に徹する。そしてこの場は、ルカとノームの二人きりになった。
「よーし、負けないぞ……!」
いつまでも、ヴィクトリーに遅れを取るわけにはいかない。見せてやる、僕の全力を……
「……」
ノームは感情の覗けない表情のまま、気を高める。その気が爆発的に跳ね上がり、ノームの細腕に青筋が立った。
「な……!!?」
「こ、こりゃあすげぇ……!!」
力強い大地の力が波動し、地響きが轟く。どうやら、これが土の力のようだ……
「いい事教えてあげる! ノームちゃんはね、さっきのサンドワーム娘を振り回せるぐらい力持ちなんだよ〜!」
「えぇっ……!?」
「はぁっ……!!?」
シルフの言葉に、驚愕するルカ。後ろで、同じ反応をするヴィクトリー。
「……ありがとう、いい事を聞いた……!!」
戸惑った表情から一変、真剣になったルカは気を解放し、風の力を全開にした。旋風が吹き荒び、気が爆発する。
「……いくぞっ!!」
ルカは剣を抜き、斬りかかる。
ノームはそれを、気を纏った指で受け止めた。金属同士がぶつかり合うような、甲高い音が響く。
「っ……!!?」
「……」
全力の剣の振り下ろしなのに、こんな細指で止められるなんて──
そう思っていたら、ルカの腹にノームの正拳突きが叩き込まれた。それでルカは勢いよく吹っ飛び、柱に叩きつけられた。
「がっはぁあ……!!? あぅ、あうぅっ……!!」
打たれた腹を押さえながら、悶絶するルカ。だが剣を砂に突き立て、どうにか立ち上がる。
見ると、ノームはこちらに指を向けていた。そうしていると彼女の周囲の砂がモコモコと盛り上がり、複数体の泥人形が姿を現す。それらは、ルカに飛びかかってきて猛攻してきた。
「はぁあああっ……!!」
ルカは気合いを入れ直し、その猛攻に対応する。泥人形達の攻撃をどうにか剣を左右に往復して弾き凌ぎ、風の力と共に切り返す。それで強い旋風が発生し、泥人形達を吹っ飛ばしながらノームに突撃した。
ルカが疾走したのに遅れて、砂塵が舞い上がる。そして、ノームに突きが命中した。
「……っ!!?」
突きの手応えが、固い。まるで、大岩に刃を突き立てているかのようだ。
「…………」
ノームは、手のひらで剣の突きを止めていた。
土の力とは、その身に大地の剛力を宿す事である。ならば、この手応えも納得出来る。
「っだぁっ!!!」
しかし、続く二撃目の
「っ……」
ノームは両手を突き出し、ルカの体をドンッと押す。それだけなのに、彼の体は勢いよく吹っ飛んでしまった。
「くっ!」
空中で身を翻し、どうにか着地してノームの方を見る。そして、絶句した。
「は……!!?」
なんと、ノームが巨大な岩石を持ち上げていたのだ。しかも、次の瞬間にはそれをぶん投げてきた。
「うわっ!?」
ルカは走ってそれを避け、その辺の柱の陰に隠れる。そうしながら『瞑想』し、傷を回復して次に備える。
「……」
ノームはおもむろに走り出し、その柱に体当たりする。すると柱も粉砕して、ルカも轢かれるようにぶっ飛ばされた。
「っぐぁああ……!!?」
宙を舞う、ルカ。それを見て驚くばかりのヴィクトリー。
「なんちゅうパワーだ……!!」
「パワーでは圧倒的にルカが不利だな……だが、それを承知でルカは戦ってる」
アリスがそう言うと、皆はいっそうルカに注目する。
「っ、くっ!!」
ルカはすぐに歯を食いしばり、風の力を身体に込める。そのまま壁を蹴ってノームに肉薄し、攻撃してから反撃を貰わない内に離れる。
「以前のスピードとは訳が違う……その持ち前の速度で、敵の攻撃を
アリスの言う通り、ルカの風の力による速度上昇は半端では無い。疾風の如くノームのところに駆け、ヒットアンドアウェイで翻弄している。
「っ……!!」
ノームは、腕をグンッと振り上げる。すると、彼女の四方を囲むように土の防壁が出来上がった。それに、ルカの剣が阻まれる。
「うっ!?」
次の瞬間、その土壁を破壊しながらノームの連続パンチ──『爆裂拳』が、ルカに襲いかかった。
「うわぁあぁああっ!?」
為す術なく拳を打ち込まれ、吹っ飛ぶルカ。だが、どうにか踏ん張ってダウンを免れ、剣を構え直して向かう。疾風の高速移動でジグザグと動き、また姿を消す。
「また消えたわ!」
「なんてスピードじゃ……儂には全く見えんぞ……!?」
「上だ」
動揺する仲間達に対し、ヴィクトリーは冷静にルカの姿を追っていた。
彼の言うとおり……ルカは跳び上がり、振りかぶった剣に紅蓮の炎を纏わせている。そのまま急降下し──
「『烈火天翔閃』!!」
紅蓮の剣による、兜割りの一閃を叩き込む。それはノームに直撃し、炎が炸裂して爆発を巻き起こして彼女を吹っ飛ばした。
「っっ……!!?」
どうにか体勢を整えながら、立ち上がるノーム。相も変わらず無口だが、動揺の様子が見て取れる。
「ふっ……!」
ルカは、得意気に笑ってみせた。
「ヴィクトリーは、今のが見えたのか」
「ほんのギリギリ見えるだけだし、見切れるかと言われたら自信がねぇ……ルカは、すげぇぞ!」
アリスに聞かれたヴィクトリーが、そう言う。
このまま、ルカの勝利になると思われたが……ノームは、ここで最後の力を見せてきた。
目を瞑って合掌し、大地の力を充実させる。それで地響きが轟き、尋常ではないパワーが溢れ出していた。
「な、なんだ……!!?」
「ルカ、次のノームちゃんの攻撃は危ないよ! だから、私の力を全力で使って!」
自らの頭の中のシルフに、頷くルカ。
「おい、ヤバそうだぜ!!」
ヴィクトリーは、
「飛んで避けるぞ! 飛べない者はヴィクトリーに掴まれ!!」
アリスがそう指示を出し、ヴィクトリーが「え、俺?」と呟く間にもソニアとヌルコとヒルデとクロムが彼にしがみつく。
そして……ノームは溜めた気を、全開放した。
大地の怒りによって激しい地震が巻き起こり、巨大な流砂が津波のように巻き起こった。それが、飲み込むもの全てを破壊する。
「うおおぉおおおお!!!」
ルカはシルフの力を全開放し、風の防護壁でどうにか耐え抜く。
「なんて破壊力……!!」
「土の力は凄まじいようだな……!!」
プロメスティンとアリスは、翼を生やして飛んでいた。
ヴィクトリーも全力を出して、流砂から逃げていた。
「おおおおおっ、高い、高いのじゃーっ!!」
「絶対離さないでねっ! あと、ヘンなところ掴んだらコロスから!!」
「きゅーっきゅーっきゅきゅきゅーっ!」
「そんな無茶苦茶な……!!」
ヴィクトリーにしがみつく、クロムとソニア。ヌルコはソニアの体に触手を絡ませている。
そして、抱きつくように彼の背にしがみついているヒルデは冷静に眼下を見下ろした。
「一帯が流砂に呑まれたね……直撃してたら、為す術ないよ……」
「って、ルカは……!?」
「心配すんな、ルカの気は衰えちゃいねぇ!」
心配するソニアにヴィクトリーが言うと、ある一点から旋風が巻き起こる。そこには、風の防護壁で身を守りきったルカが居た。
「っふぅっ……す、凄かったなぁ……」
ここで、ヴィクトリー達もここに降り立ってくる。そして、辺りを見回した。
「……あれ、ノームはどこに行ったんだ?」
「ルカの足元だ、ほら見ろ」
アリスが指す所に、何やら帽子だけがぴょこんと飛び出している。ルカはそれを掴んで引き抜くと、目を回したノームが居たのだった。
「……」
どうやら、先程の自分の技に巻き込まれていたようだった。
そうして困惑していると、ノームはぱちくりと目を開ける。そして、大人しくなった。様子を見るに、戦闘続行の意思は無いらしい。
「…………」
「これで、試験は合格だよっ! やったねーっ!」
なんと、ノーム本人ではなくシルフがそう言って喜んだのだった。