もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「……」
ノームはじっとルカの顔を見上げ、右手をすっと差し出した。
「え……?」
「……」
ノームはルカの顔を見たまま、わきわきと手を動かす。
「握手してぇんじゃねぇか?」
「はい、あくしゅ」
ヴィクトリーが言うと、ルカはノームと握手する。
「……」
すると、ノームの気が吹き上げた。
手のひらを通じて、ルカに大地の力が流れ込んでくる。その力と共にノームの姿も光となってルカに入り込み……その体に、土の精霊の力が宿ったのだった。
「これは……っ!」
体の奥底から、力が湧いてくる。今まで不足を感じていたパワーが、これでもかと言うほどに溢れてきた。
「土の力の剛力か……だが、気をつけろよ。それだけ強大なパワーは、扱いが難しいのが常だ。時日、ノームも自分の技に巻き込まれて目を回していたぐらいだからな」
アリスの言う通り、この力も少々扱いに難がありそうだ。だが、扱えたのなら……ヴィクトリーにも負けない程のパワーを、遠慮無しに振るえるだろう。
「わーい! ノームちゃんもいっしょだー!」
「…………」
ルカの頭の中の精霊が、二人に増えた。これから、彼の中も賑やかになりそうだ。
「土の力の剛力か……ヴィクトリー、お主のパワーも立場が危ういのではないか?」
「ああ……ちょっとやべぇかもな。だから、負けねぇように鍛えねぇと」
クロムに言われたヴィクトリーが、そう言う。
ルカまで怪力を手にしたら、ルカがヴィクトリーの完全上位互換になってしまう……それには危機感を感じていた彼だが、まだ何か力を隠しているようだった。
「ともあれ、これでノームとの契約は終わりよね。だとすると、残す所はタルタロスの調査だけど……」
「きゅ〜……」
ソニアは気が滅入った様子で言い、ヌルコも彼女に合わせて鳴く。
「タルタロスの場所は、サルーンの東……何本か橋を渡った場所だ」
アリスは地図を見ながら、そう言う。
「ソニア、タルタロスが怖いの?」
ルカが聞くと、ソニアは自分の顔に両手を打ち、気合を入れ直した。
「ううん、これでサバサも最後かと思うと寂しくて……そんな事言ってられないわよね! それじゃあ、気合入れていこー!」
「おっしゃあ、いっちょ行ってみっかぁ!」
サラ女王の乱心事件、グランドールの大劇場解放、魔女狩りの村での騒動……サバサでの事件を全てを解決し、ついにノームとの契約を果たしたルカ。
最後に向かうは、大地に開いた謎の大穴、タルタロス。
そして、その向こうに存在する並行世界を調査しなければならない。次は、どんな異世界が待っているのだろうか。そこに、ルカの父親が居るのだろうか。
「……何だか、胸がザワザワする」
進んでる最中、ヴィクトリーが真剣な顔でそんな事を言う。それに、ルカが向いた。
「どうした?」
「分からねぇ……けどこの先、とんでもねぇ戦いが控えてる気がするんだ……」
「……タルタロスの中は、アポトーシスとかも居るからね。何が起きてもおかしくないよ」
二人が話している後ろで、クロムも何か険しい表情をしていた。それに、アリスが向く。
「クロム、どうしたのだ貴様まで?」
「あ、ああ……分からんが、凄く胸騒ぎがしてな。けど、次のタルタロスとやらには何がなんでも行かなきゃならん気がするのじゃ」
「……ふーむ……」
激しい胸騒ぎを覚える二人だが、決して歩を進む事を止めない。寧ろ、使命感が背を押しているのだ。
「ちょ、ちょっと……怖いこと言わないでよ二人とも! ただでさえ、タルタロスは危険なのに……!」
「きゅきゅー……」
狼狽えるソニアに、彼女の足元で鳴くヌルコ。
「ふむ……直感というか、虫の報せというものでしょうか。タルタロスに行くというのだから、緊張はしますが……」
そう言うプロメスティンは、既にスポイトやらピッケルやらを用意している。サンプル採取する気マンマンで、緊張しているというよりワクワクしているようだった。
「タルタロス……アポトーシス……ヒルデの出番だね。何かあるなら、全力でみんなを守るよ」
ヒルデも、いつもより真剣な顔になって言う。本来の役目を果たすために、全力を尽くすつもりなのだろう。
「余はどんな事が待ち受けていようと、全力で突き進むのみだ。少なくとも、あのウサギをとっちめるまでは止まるつもりはないぞ!」
アリスは、自らをこんな姿に変えた白兎を追うのに躍起になっている。小さいのに、頼もしいばかりだ。
「……みんな、やる気みたいだぞ」
「ああ、俺達も負けてらんねぇなぁ!」
胸のざわめきはあるが、それぞれの意気込みのもとにルカ達は歩を進めるのだった。
※
サルーンより東に進んで橋を二回ほど渡ると、一際拓けた荒野の大地へと辿り着く。寂れたそこの中心点には、荒れ果てた環境により毒沼が広がっており……そのど真ん中に、大地が大きく深い口を開けている。
そう、これが『サバサのタルタロス』。サバサ大陸における最終目的。
「ここは整備されてるみてぇだな」
「ああ……調査隊の人がいる」
そこでは、数少ない研究者が四苦八苦していた。
「本国の研究者よね……こんな所に居残ってるなんて……」
「きゅ……」
「サバサ本国からは帰還命令が出ているとの話だが……サバサ王に敬虔な研究者が、居残っているらしいな」
ソニアとアリスが、そんな会話をする。
そう言えば、サバサ王……サラの父親は、このタルタロスに落ちただかで行方不明扱いになっていたか。本国にも王の死を受け入れられない民や兵士が居たので、このような者が居てもおかしくはない。
「…………」
深い大穴を見つめる、ヴィクトリー。彼は、タルタロス特有のただならぬオーラよりも何か別の衝動に駆られている様子だった。そうして惹かれるように歩く彼だったが……なんと土がモコモコと盛り上がり、壁になってしまった。
「おわぁっ!?」
「ヴィクトリー?」
「どうしたのです?」
いち早く駆けつけたルカとプロメスティンが、彼の傍に来る。
「つ、土がいきなり立ち塞がってきたぞ……」
「土ぃ? あんたらしくないわね……」
狼狽えるヴィクトリーの横を、ソニアが通る。
「ちょっと土が盛ってあるだけじゃない。こんなの、強引に乗り越えて……」
ソニアが土に手をかけて乗り越えようとしたら、その土がもこもこと盛り上がり、強引に行く手を阻んだ。
「動く土山にブロックされた!」
「なら、こいつはどうだ!?」
ヴィクトリーはソニアをどかして土壁に手を向け、エネルギー波を放つ。直撃して爆発するも、なんと土の壁は無傷だった。
「な、なんだと……!?」
「気功波に耐える土の山!?」
ヴィクトリーとソニアが揃って驚愕しているのを横目に、アリスが前に出る。そして、しげしげと土の壁を見つめ始めた。
「なにやら、強引な魔術が込められているようだな。しかし、土を支配するノームの力なら……」
アリスに言われたルカが、頷いてノームを召喚してみる。頭の中から呼び出しただけで、彼女はその場に顕現した。
「……」
ルカの中にいるノームが念じると、土山はたちまち崩れ去った。土の精霊なので、この程度なら造作もないのだろう。
「おお、さすがはノームだぜ!」
「うむ、これでタルタロスに入れるな……」
ヴィクトリーとアリスはそう言い、タルタロスに向かう。
しかし……不意に、妙な気が背後に現れた。
「……ん?」
「なんだ?」
「どうしたんだ、アリス……?」
ヴィクトリーとルカも、彼らを見ていた皆も釣られて振り返る。そこには、何も居ない筈だが……皆、すぐさまにその気配に気付き、構える。
そして──
「ばばーん!」
間の抜けた声と共に、白兎が現れたのだった。