もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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「キミは、世界を救え」

「うわぁっ!?」

「またおめぇか……!」

 

 驚くルカに、構えたままのヴィクトリー。

 

「今度はいったい何のつもりだ!?」

 

 彼らの横で、啖呵を切るアリス。しかし、白兎は平然な顔を崩さずヘラヘラといつもの調子だった。

 

「イヤガラセじゃないよ〜! 鎌もった厨二病に追い掛けられながら、頑張って造ったのに。あのヒト、どうにかならないのかな? まったく、親の顔が見たいよね……」

「ええい、御託はいい! これ以上邪魔をする気なら、ただじゃおかんぞ!」

「ボク邪魔なんてしてないよ。この先に進む前に、ノームくらいは持ってほしかっただけ」

 

 白兎はアリスの視線を気に留めず、ヴィクトリーの方へ向く。その表情が、いつもの調子から真剣な表情になった。

 

「そうか、やっとこの世界のキミもここまで来れたんだね」

「……俺に言ってるのか?」

 

 何時に増して真剣な雰囲気の白兎のせいで、ただならぬ空気がこの場を包む。ルカ達は黙って見ることしか出来ず、当のヴィクトリーは困惑するしか出来ない。

 

「この先……キミにとっては、少し辛い世界になるかも知れないよ。巻き込まれただけのキミには、今なら引き返すチャンスがあるし……この先に行けば、もう本当に後戻りは出来ない。それでも行くのかい?」

「……あたりめぇだ。この世界に転移してきた時点で、後戻りできるなんて思っちゃいねぇよ」

 

 ヴィクトリーの言葉を聞いた白兎はニッと笑ってから目を瞑り、息を吐く。その雰囲気は、まるでそう返すのが分かっていたかのようだった。

 

「……なら、ボクは敢えてキミを呪うよ」

 

 そう言い、真剣な目でヴィクトリーと目を合わせる。そして──

 

「キミは、世界を救え」

 

 そう言って、ヴィクトリーに聴かせたのだった。

 

「もちろん、ルカと一緒にね」

「え……?」

「ちょっと待て、それってどういう事だ!」

「見れば分かるはずさ……混沌に覆われた、この先の世界をさ」

 

 困惑する、ルカとヴィクトリー。呪うなんて言ったから何をされるかと思いきや、世界を救えなんてお願いされるとは思わなかった。しかも、その意味がこの先の世界を見れば分かるという。

 

 いったい、このタルタロスには何が潜んでいるというのか。

 

「それじゃあね〜!」

 

 そう考えていたら、白兎は消えてしまった。

 

「あっ、待て……くっ、また逃げられたか」

「呪うなんて大仰なこと言った割には、世界を救えとはのう……期待されているみたいじゃな」

「世界を救うのは、ヒルデの使命でもあるよ……」

 

 歯噛みする、アリス。クロムとヒルデも、白兎の発言の意味を考えてみるも、核心は分からずじまいだ。

 

「うーむ、やはり今回も意味深な事だけ言って逃げられてしまいましたね……瞬間移動で追えませんか?」

「無理だ……そもそも、気を一切感じねぇんだから捉えようがねぇ」

 

 プロメスティンが提案するも、ヴィクトリーはそう言って首を横に振る。やはり、現時点での白兎の追跡は無理なのだろう。ならばと、タルタロスに向き直した。

 

「この先、何があるんだろう……ずいぶん、もったいぶった事を言ってたよね……」

「きゅー……」

「ふん、いつもそれっぽい事ばかり言いおって! どうせ……」

 

 ソニアとアリスが並んだと思った次の瞬間だった。

 

「あっ、そうだ! 忘れてた!」

 

 白兎が、再登場した。

 

「っ!?」

「ひゃあっ!?」

「きゅっ!」

 

 アリスとソニアは、驚いてタルタロスに落ちそうになる。それを、ヌルコが止めてくれた。

 

「また出た!」

「また出た!」

 

 二人の言葉が、シンクロする。

 

 白兎はというと、ルカの所へテクテクと歩いてきた。

 

「はい、これあげる! 何の役にも立たないけど、邪魔だからあげる!」

 

 白兎がそう言って渡してきたものは……あのネロのメガネだった。

 

「どつきあってる時に、奪ってやったの。ネガネ、メガネって言って、傑作だったよ!」

「あのクール(風)キャラにそんな事言わせたの!?」

「実は嘘、言ってないよ。それどころか、お返しとばかりに頭をもぎ取られちゃった……見ての通り、すぐ生えてきたから心配ご無用」

「ひゃー、魔人ブウみてぇだなおめぇ……」

 

 ネロも化け物だが、白兎も相応に化け物らしい。仮に追いつけたとしても、どうこうできる程の力は今の自分達には無いだろう。

 

「そういうわけで、また厨二が襲ってくるからボク行くね。ばいばーい!」

 

 そう言い残し、また消えてしまった。

 

「いったい、何なのだ……」

「ね……」

「きゅ……」

 

 唖然とするしか無い、アリス達。これで、白兎の追跡はほぼ無理というのを思い知った。ならば、本目的であるタルタロスに皆の視線が向いた。

 

「気を取り直して、タルタロスに入ろう!」

「そうだな……」

 

 ヴィクトリーとルカが並び、大穴の前に立つ。あの動く土の壁も無くなり、今なら簡単に侵入できそうだ。

 

 胸のざわめき、使命感……それらが、ルカ達ひとりひとりの胸にそれぞれ宿っている。

 

 この先に、何があるのか。そして、どんな異世界が待ち受けているのか。白兎があそこまで大仰なことを言う、その意味とは。

 

 それらを、いまこそ自分の目で確かめなければ。

 

「ほんじゃ、おっさきー!」

 

 ヴィクトリーはそう言ってぴょんと跳び、そのまま自由落下していった。サイヤ人である彼には、縄ばしごを使うよりこちらの方が手っ取り早いのだろう。

 

 彼なら、舞空術もあるので心配は要らない。

 

「僕達も続こう」

「ああ!」

 

 ルカ達は普通に縄ばしごを伝い、穴を下るのだった。

 

 相も変わらず真っ暗な穴の中を伝い、下へ降りる。

 

 ヴィクトリーは一足早く着地し、ルカ達も遅れて彼の横に降り立った。

 

「……おい、今回はかなりヤバそうだぜ」

「みたいだな……」

 

 無機質な研究所のような場所や、森の中の一画のような場所、洞窟のような場所が、切り取って貼り付けたかのように入り交じっている場所だったが……それに加え、空間そのものが裂けてテクスチャが抜けたかのように黒い場所が散見された。

 

「な、何なのじゃこれは……?」

「不気味……ここだけ、何も無いみたい……」

 

 クロムとソニアが、黒い裂け目を観察する。

 

「むむ、作用しているのは次元そのもの……黒く裂けている部分だけ、何かズレているようですね」

「空間そのものが、何かに侵食されている……? いや、同化か……余にも全く検討がつかん。とにかく、それには触れるなよ。何かとても危険なものの気がする……」

 

 プロメスティンとアリスも、黒い裂け目を観察して言う。

 

 得体も知れないし、触るのも危険……ならば、相当に注意して進まねばならないだろう。

 

「きゅきゅっ!」

 

 ヌルコが、また新しいマキナを見つけてきた。嬉しそうに持ってきて、ソニアに見せてくる。ヒルデも、それを覗き込んできた。

 

「わぁ、また新しいマキナ……」

「『電磁アーマー』だね。ヒルデにも使えそう……」

「きゅーっ!」

 

 新しいマキナを手に入れて、ご機嫌のヌルコだが……

 

「…………」

「ヴィクトリー?」

 

 やけに静かなヴィクトリーに、ルカが向く。彼は、何やら色々な感情がごちゃ混ぜになっているかのような難しい表情をして、頭を抱えていた。

 

「おい、どうしたんだ……?」

「分からねぇ……ただ、嫌にイラつくし頭も痛ぇ……! 俺の体、おかしくなっちまったのか……!?」

 

 ズキンズキンと痛む頭に、心の中までもが掻き回されているかのよう。ヴィクトリーの身に、何かが起きているようだ。

 

「タルタロスの中で、病気が……? いや、でも私達は何ともありませんし……ヴィクトリーさんの身体は、至って健康体なのですが」

「タルタロスの中は酸素が薄いという訳でもない……病気ではなさそうじゃな。心理的なものか?」

 

 プロメスティンとクロムが診察しても、彼の身体には何も異常は無いという。

 

「私達も何ともないわよ……ねぇ、ヴィクトリーはポケット魔王城に帰った方がいいんじゃない?」

「きゅっきゅ……」

「一旦外に出るか? ハーピーの羽を使えば一瞬だ」

 

 心配する仲間に、ヴィクトリーは首を振る。

 

「ありがとう、みんな……けど、大丈夫だ。身体はバッチリ動くしな」

「そっか……あんまり無茶するなよ」

 

 ルカがヴィクトリーの背を叩き、進もうとすると……やはり、アポトーシスの気配が近づいてきた。一点に留まっていたので、集まってきてしまったのだろう。

 

「やっぱり来たか、アポトーシス……!」

「よっしゃ、いっちょやってやろうぜ──」

 

 構える男二人に続くように、皆も構える。

 

 そんな彼らの前に現れたアポトーシス達。それらを見たヴィクトリーは、静止し──

 

「──」

 

 ──次の瞬間、彼は起爆したのだった。

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