もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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存在しない記憶

「……おい、大丈夫か?」

「平気か、ヴィクトリー……?」

 

 アリスもルカも、心配してヴィクトリーに声をかける。先程までの切羽詰まったような戦い方は、明らかに何時もの彼ではなかった。

 

「……普通に戦えてたから、多分体調は平気だ……けど、ますますこの先に行かなきゃならねぇ気がしてきた」

 

 ヴィクトリーは、道の先を見据えながら言う。見れば、あの黒い亀裂が奥に行くほどに増えている。あの道を、行かねばならぬと本能が訴えているのだ。

 

「黒い裂け目が……進む程に……」

「前々から思っておったが、タルタロスとはやはり普通では無いのじゃな。どうなっておるのだ……?」

 

 プロメスティンとクロムが、道の先を見ながら言う。

 

 だが、尻込みをしていても始まらない。どれほど異様な光景だろうと、自分達にはこの奥へ行く義務があるのだ。

 

「……進もう。引き返せないって、白兎からも言われてるしね」

「ああ」

 

 ルカとヴィクトリーが、再び先頭に立つ。そして、引き続き警戒しながら先に進むのだった。

 

「ヴィクトリー、例の頭痛……また痛むのか?」

「ああ……さっきまで、痛かった。ついでに、変な記憶も見えた」

「やっぱり、それって……別の世界線の、お前の記憶なんじゃないか?」

 

 ルカがそう言うと、ヴィクトリーは黙って考え込んでしまう。そんな彼に、ルカは続ける。

 

「僕もイリアスベルクの時やミカエラさんの時に、頭痛を感じて……それで、存在しない記憶が頭に入り込んだんだ。お前のも、たぶん同じものなんじゃないかって」

「かも知れねぇな……別の世界線に居る同一存在同士だと、記憶が共有される事があるのか?」

 

 少し考えて、それは無いと気付くヴィクトリー。

 

「……そうしたら、ソニアとかアリスとかに同じ現象が起きてもおかしくねぇよな?」

「私は頭痛なんて感じてないわよ」

「余もだ」

 

 だとすれば、この現象はルカとヴィクトリーにだけ起きているという事になる。

 

 そう言えば前に白兎から、ルカは出生が特別だという話を聞いた。確かに熾天使と歴戦の勇者のハーフと来れば、特別なのだろう。しかし世界間で干渉することは神であっても不可能と白兎が断言していたので、多分ルカはそれ以上に特別なのだ。世界を超えるための扉を触れただけで開けられるのも、彼だけなのだから。

 

「……」

 

 ならば、なぜ自分がルカと同じ事が出来るのだろうか。前職のタイムパトロールという業務形態上、過去と未来を行き来するのが茶飯事で……それが、身体に妙な影響でも与えたのだろうか? 

 

 ヴィクトリーが考えながら歩いていると、その髪が黒い裂け目に掠る。すると、「ジュッ」という音と共に髪が消えてしまった。

 

「うわぁあ!?」

「ど、どうしたヴィクトリー!?」

 

 アリスは驚き、すぐに彼の方へ向いた。

 

「こ、この亀裂……! 触ったら消えちまうみてぇだぞ……!」

「うん……見て……」

 

 ソニアが、道の先を指す。

 

 あの裂け目が、更に多い頻度で発生していた。もう、身をよじって進むしか無さそうだった。

 

「空間の裂け目みたいなやつ、かなり多くなってきたわね……」

「歪みのようなものが、奥に行くほど広がっているようだな。いや……むしろ、奥の方からこちらに侵食してくるのか」

 

 立ち止まる、ソニアとアリス。黒い裂け目もさることながら、その奥から感じる尋常ではない雰囲気に、思わず気圧されてしまう。

 

「ヒルデ、凄く嫌な予感がする……マスター、準備は万端?」

「アイテムはバッチリだし、いざとなったらヴィクトリーの仙豆もあるよ」

「あと7粒だ。用心しねぇと」

 

 景気よくあった仙豆も、残り7粒。死にかける場面が何度もあったが……これだけの消費で抑えていただけ、大したものだろう。

 

「もうすぐ栽培出来そうではあるのですが……」

 

 プロメスティンがそう言うと、ヴィクトリーは驚きながら彼女に振り向く。

 

「えっ、マジでか……!?」

「一度に取れる量は極少数と予測されてますので、温存しておいた方がいい事には変わりありません」

 

 プロメスティンは天使で、天使は神の使い。しかもめちゃくちゃ頭がいいと来た。同じく神の使いであるカリン様と同じ事が出来ても不思議では無いとは思ったが……こんな早くにそこまで研究が進むとは。

 

「あの豆、効能は本物だからな……数が少ない今、ルカとヴィクトリーだけ食うのがいいだろう」

「エリクサーもあるから、心配しないで」

「きゅきゅ!」

「単純な怪我なら、儂やプロメスティンもいるからな」

「よし、進むぞ……!」

 

 準備万端なことを確認し、進む。そして、タルタロス恒例のあの扉があった。

 

「いつもの扉だね……」

「うむ……」

「……ちょっとリベンジさせてくんねぇか?」

 

 ヴィクトリーが前に出て、扉を持ち上げにかかる。しゃがんで扉を掴み、力を込め──

 

「ふんっ!!」

 

 立ち上がると同時に、「グゴゴ」と扉が持ち上がった。しかも今度は、ヴィクトリーの腰辺りまで持ち上がっている。今までの旅路とは、全く違う反応だった。

 

 資格のない者が、無理やりこじ開けてるような感じは否めなかったが……それでも、彼はこの扉を開けてるのだった。

 

「おおっ!?」

「きゅーっ!」

「も、持ち上げてる……凄いですよ!」

「あの扉、力ずくでは絶対開かんという話じゃが……」

「馬鹿な……貴様、そこまで脳みそ筋肉なのか……!!?」

「まっちょパワー……ヒルデもムキムキになれば、開けられるかな……?」

「いいぞヴィクトリー!」

 

 応援されたり好き勝手言われたりする、ヴィクトリー。だが、黒髪のままでは腰あたりまでしか持ち上がらない。ならば……

 

「はぁあああーっ!!」

 

 ヴィクトリーは(スーパー)サイヤ人になり、扉を全開にした。

 

「やった! 扉が!」

「よっと」

 

 扉を開けた先に入る、ヴィクトリー……しかし、すぐに扉は落ちて閉まった。

 

「あーっ!! ヴィクトリーっ!!」

 

 ルカは扉に触れて、全開にした。

 

「平気か、ヴィクトリー!?」

「平気だよ、大袈裟だな……それより見ろ」

 

 黒髪に戻ってるヴィクトリーは、顎で道の先を指す。すると、またしてもあの星空のような空間の道が現れた。

 

「ここは……!」

「今回は、レミナゾーンは無ぇみてぇだぜ」

「ここは、いつものアレよね。私達の世界と、並行世界を繋ぐトンネルみたいなところ……」

「この空間も、不明な事ばかりだが……とりあえず今は進むぞ」

「……」

 

 ルカは、眉間に皺を寄せて考えていた。この光景に既視感を覚え、記憶を探っているのだ。

 

 やっぱりここ、どこかで見た気が……タルタロスの中じゃなく、もっと別の……

 

「……ルカ」

 

 ヴィクトリーが、ルカの肩を叩く。

 

「ああ、ヴィクトリー……ごめん」

「いや、急かしたつもりはねぇんだ……俺も、少し考え事してたからな」

 

 そう話し合ってから進むと、やはり転送魔術の魔法陣があった。これも、異世界に繋がっているのだろう。

 

 ここでソニアが、また暗い顔をして皆を見る。

 

「ねえ、やっぱり行くのやめない……? この先、絶対に危ないよ……」

「何が起きてるのか、確認しなきゃ駄目だよ。ここで引き返せないなんて、ソニアも分かってるだろ?」

 

 ルカの言葉に、ヴィクトリーも頷く。

 

「ああ……俺は行く。行かなきゃならねぇんだ」

 

 パンッと拳を叩くヴィクトリーの隣で、クロムも頷く。

 

「儂も、この先に行かねばならん。論理的に説明できんが、そんな気がするのじゃ」

 

 クロムの言葉に、皆も同意し……改めて、転送門に向き直した。

 

「さあ、行くぞ。この先で何が待ち受けているか、この目で見るのみだ!」

「ああ……!」

 

 もう、後戻りはしない。ルカ達はそう覚悟を決め、魔法陣を踏む。すると魔法陣が光り、その光が皆を包み込み……体が急速に持ち上げられる。

 

 いつもの転移の感覚に、身を委ねる皆だったが……

 

「…………え?」

 

 ここで、ヴィクトリーの視界に記憶が入り込んできた。

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