もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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管理者の塔

「入口は開いているようだな……よし、中を探索してみるぞ」

 

 アリスが言い、塔の扉を開ける。

 

「かなり広そうな塔ね……」

 

 入るなり、ソニアがそう言う。

 

 その言葉通り、この塔はそこそこ高く造られており、建物自体もまぁまぁ大きい。これは、探索に骨が折れそうだ……

 

「注意しろ、前方から何か来るぞ……! これは……機械か?」

 

 アリスがそう言って、身構える。

 

 きゅるきゅると音を立てながら来たのは、青髪の少女風のロボットだった。メイドの格好をしていて、どこか暗い顔をしていた。

 

「ようこそ、いらっしゃイマシた…………」

「き、君は……? 人間じゃないよね……?」

 

 ルカはまだ身構えたまま、彼女に向くが……当の彼女は、感情が無いような顔のままヴィクトリーの顔を凝視していた。

 

「……ど、どうしたんだ?」

「……すみまセん。貴方は『彼』とは違うのでスね」

 

 彼女は意味深にそう言い、改めて皆に向き直した。

 

「私は、ラディオ……試作型の機械生命です……マスターの命令で、お出迎えシマす……」

「マスターとは何者だ? この世界の生き残りか……?」

 

 アリスの質問に、ラディオ首を振る。

 

「……この世界の知的生命体は絶滅しマシた……生き残りはいマセん……」

「知的生命体が……絶滅!? 人間も、魔物も……?」

 

 ソニアがそう言って絶句していると、ラディオは頷いた。

 

「5年前に最後の人間が、6年前に最後の魔物が死にマシた……この世界も、もう間もなく滅びマす……」

 

 その言葉で、ルカ達は沈黙してしまった……改めて、この世界の生命は全て途絶えたというのだ。

 

「……みんな、死んじまったんだな……」

「それじゃあ、マスターっていうのは何者なんだ……? 君みたいに、機械生命体……?」

「マスターの元まで案内しマス……ついてきてくダサい……」

 

 ルカの言葉に頷くでもなく、ラディオは奥へと行ってしまった……

 

「あっ、ちょっと……!」

「後を追うぞ!」

 

 アリスが、ルカの背中を叩く。ルカも頷いて、みんなを連れてラディオの後を追った。

 

「……」

 

 塔の中を進むヴィクトリーは、言い表せない感情が胸の中に渦巻いている。そして、ラディオに言われた「『彼』とは違う」という言葉を頭の中で反芻(はんすう)していた。

 

「ヴィクトリー……ヴィクトリーじゃない!」

 

 突然、名前を呼ばれたヴィクトリー。ルカ達も反応して周囲を見回すが、誰も居ない。壁に立てかけられた絵画やら、山積みになった物資しか見えないが……

 

「ここよ、ここ!」

 

 突如として絵画が震え、そこからにゅるんっと女の人が出てきた。

 

「うおぉっ!? なんだおめぇ!?」

「私よ、ガイストビーネよ!! 生きてたの!?」

 

 彼女は、涙ぐみながらヴィクトリーの肩を掴む。それを見ていたクロムが、彼の横に来た。

 

「ふーむ、北の屋敷にこんな魔物が居たような気がするのう……知り合いか?」

「い、いや、知らねぇ……おめぇ、誰かと間違えてんじゃねぇのか?」

「っ……そう、よね」

 

 ガイストビーネは、落胆した様子でヴィクトリーから手を離す。そこに、ラディオがきゅるきゅるとやってきた。

 

「その人は、『彼』とは違いマす……『彼』は、5年前の戦いで命を落としマした」

「……分かってたわ。馬鹿みたいね、こんな世界で、はしゃいで……」

 

 ガイストビーネは、絵画に戻る。

 

 ヴィクトリーとクロムは、ラディオに向き直した。

 

「……なぁ、『彼』って誰なんだ? マスターっちゅう奴も誰か分かってねぇのに……」

「そうじゃ、儂らは聞きたい事が山ほどあるぞ……」

「この下を、マッスグ進んでくダサい……」

 

 ラディオは、そう言うだけだった。

 

「あの、聞きたいことが色々あるんだけど……」

「余も気になる事が……」

 

 ソニアとアリスが、ラディオに言ってみる。

 

「この下を、マッスグ進んでくダサい……」

 

 だが、彼女はそう言うだけだった。

 

「あまり臨機応変に対応できないようですね。ヒルデより、数段劣った頭脳のようです……」

「ヒルデ、ほめてもらった……? ちょっとうれしい……」

「この下を、マッスグ進んでくダサい……」

 

 プロメスティンの煽りも、通用しない。単純にポンコツなのか、それよりも見せたいものがあるのだろうか。

 

「……従うしかないようだな」

 

 アリスが言い、ルカも頷く。そして、ラディオに言われるがまま進むのだった。

 

 

 塔の2階に差し掛かった時……あの爆発のような衝撃が、また巻き起こった。

 

「また、あの地響き……」

 

 ソニアは、心底不安そうに言う。

 

 それを横目に、道案内してくれていたラディオの頭からカシャカシャと音が鳴っていた。

 

「次元クラック、12%増加……アポトーシス増加率、145%……この世界は、間もなく崩壊しマス……」

 

 ラディオの言葉に、ルカとヴィクトリーは動揺した。

 

「まっ……!?」

「間もなく崩壊って……僕達が来た途端に、この世界が消えるって言うのか!?」

 

 彼らの後ろで、アリスが腕を組む。

 

「あまりにもタイミングが良すぎるな……もしかして、我々がこの世界に来たのが原因か?」

 

 アリスの言葉に、ラディオは頷いた。

 

「あなた達の出現は、第二種断界接触にあたリマす……カオス化がますます促進され、この世界はもちマせん……」

「そんな……私達のせいで、この世界は滅びちゃうの!?」

「すでに知的生命は滅びテイます……この世界も、滅びてるモ同然でス……まだ、時間の余裕はあリマす……マスターに、会って下サい……」

 

 そのまんま、きゅるきゅると先へ行ってしまった……

 

「世界が滅びるんだったら、早く逃げないとまずくない? このままじゃ、私達ごと……」

「時間の猶予はあるって言ってた……急いで、マスターとやらの元に向かおう!」

「きゅーっ!」

 

 ルカがみんなにそう言い、先頭に立つ。ヴィクトリーが、彼の隣に並んだ。

 

「ああ……なんだか、とんでもねぇ感じがする……」

 

 塔を登るごとに、胸騒ぎが加速する。だが、足は重くなるどころか先へ先へと急ごうとする。

 

 そうして進むと、ラディオが待ってくれていた。

 

「世界のほとんどが混沌に飲マレた後……数少ない生き残りが、この塔に集まりマシた……この階は、彼らが住んデイた場所です……今はみんな絶滅しマシた……」

「……なぁラディオ、見て回っていいか?」

「僕も気になる……時間の余裕はどれぐらいあるんだ?」

 

 二人に、ラディオは頷く。

 

「まだ、時間の余裕はあリマす……案内しまス」

 

 世界が滅びそうになっている今、そんなことをしている余裕など無さそうだが……知りたい事も聞きたい事も山ほどある今、彼らの提案に反対する者は居なかった。ラディオの案内付きならば、大丈夫だろう。

 

 

 植物園……少しでも綺麗なものを残そうと、花を管理したアルラウネ達が居たという。

 

「ここに、少しでも多くの植物を保護シヨウトシました……でも、枯れてしまいマシた……せめて乾燥させ、綺麗な頃の姿を保たせていマス……」

「…………」

 

 ヴィクトリーは、枯れ朽ちたリンドウの花の前で立ち尽くす。そんな彼の横に、クロムが来た。

 

「ここは……本当にもう、死んでしまった世界なのじゃな……」

「それは、乾燥が間に合いマセンでした」

「…………」

 

 何も言えなくなってしまう、ヴィクトリー達。

 

「ごめんナサい……私には、花の美しさが分かリマせん……残されたのは、こんな私ダケで……ごめんナサい……」

 

 

 一際拓けた、雑貨が転がった広い部屋……

 

 戦闘の跡と、未だに残ってる血痕のシミが、起きたことの陰惨さを伝えている。

 

「三度目の大襲撃の時、避難民が最後に立てこもった部屋……みんな、死んでしまイマシた……」

 

 

 柔らかいカーペットが敷かれ、ドレスやぬいぐるみがあり、まだ封の開けられてないプレゼント箱が沢山ある部屋……

 

 やはり戦闘の跡があり、血痕がそこらに飛び散っている。

 

「偉い人や妖魔は、この部屋で暮らしマシた……でも、みんな死んでしまイマシた……」

 

 

 研究室……大きなテーブルの上に研究資料や薬が並び、乱雑に散らかっている。

 

 この世界の異変に立ち向かった、武器を持てぬ彼らの戦いの跡がそこにあった。

 

「ここは研究室でス……もう研究する人はいマセん……」

「実験ノートや実験器具がそのままですね。失礼……」

 

 プロメスティンが前に出て、テーブルの上を漁る。実験器具を観察したり、ノートに目をつけてペラペラ捲ったりしているが……表情は、難しいものだった。

 

「ノートの内容は……数値データばかりで詳細不明です」

「全ての研究データは、マスターが持っテイます……マスターに会って下サイ……」

 

 

 図書館……膨大な量の本が、目録に沿って並べられている。

 

 人が生きた証を残すために書物を管理した人達も、ここで奮闘したのだろう。

 

「図書館でス……後の世代のために……知的資源を……一冊でも多く保護しようとしマシた……でも……後の世代が残りまセンでした……もう誰も読みマセん……みんな、あんなに頑張っタノに……」

 

 本棚の前に、ルカ達は行く。

 

「ホイポイカプセルがありゃ、みんな纏めてポケット魔王城に納められるんだけどな」

「色々と調べたいところですが……その時間は無いようですね」

 

 ヴィクトリーとプロメスティンは、蔵書を見上げながら言う。

 

「蔵書数は膨大……ヒルデ、難しい本は分からない……けど、ここに残された思いは分かるよ。みんな、みんな戦ったんだね……」

「……今まで案内された部屋を見てたら、分かるわよ。必死で戦って……せめて、戦った後を残そうって、誰かに希望をバトンタッチしようって頑張ったのよね……」

 

 ヒルデとソニアが、そう話す。

 

「…………」

 

 すると、ラディオが何か言いたげについてきた。

 

「私には、感情がありマセん。悲しいとか、悔しいとか、分かりマセん……なのに、私は残ってしまいマシた。感情なんて持っテイない、私だケが……みんな、あんなにがんばッタのに……最期まで、生きようと必死で戦っタノに……」

「ラディオちゃん……」

「……ラディオは、悲しんでるんだよ。悲しんでて、悔しいんだよ」

「私が……? 私に、感情はありマセん……」

「ヒルデには分かるよ。ラディオ、よく頑張ったね」

「私は…………」

 

 沈黙が、この場を包む。切り出したのは、ヴィクトリーだった。

 

「マスターとやらに会おうぜ」

 

 彼の言葉に、ルカが頷く。

 

「ああ……ここで必死になって戦ったみんなの為に……僕達が、バトンを繋ぐ番だ」

 

 ルカも言い、ラディオも皆も頷いた。

 

「……ありがとうございマス。引き続き、マスターのもとへ案内しマス」

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