もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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ラ・クロワ

 あの衝撃が、また響く。

 

「なんだか、世界全体が揺れてるみたい……」

「次元クラック、45%増加……アポトーシス増加率、265%……カオス化、急速進行……タルタロス地点に、最上位アポトーシスの発生……」

「……!!!」

 

 ヴィクトリーは、おぞましい気を感じた。あまりのおぞましさに背筋が震え、鳥肌が立つ。

 

「個体名、アドラメレクと確認……周囲の空間をカオス化させながら、接近中……」

「最上位アポトーシス……だって!?」

「悪い予感しかしないな……早くマスターとやらに会うぞ!」

「マスターは、こちラデす……」

 

 一行はラディオに続き、急いで先へ向かう。床に巨大な魔法陣が描かれ、得体の知れない装置が立ち並ぶ所を駆け抜ける。

 

「この装置も調べたいのに……! ああ、時間が無いなんて……!」

 

 プロメスティンは駆けながら装置を見て……立ち止まり、注目した。

 

「これ、もしかして設計者は私……? 技術自体は未知ですが、そこかしこに私のクセが……」

「ちょっと、のんびりしてる暇は無いわよ!」

「そ、そうでしたね……失礼しました!」

 

 ソニアがプロメスティンを引っ張り、再び走る。

 

 急いで奥に向かい、階段を上って最上階……大量の書物が収められた本棚を両脇に通路があり、その奥には棺桶が左に二個、右に一個と並び……その真ん中で、ペストマスクを付けた黒いコートの女の人がいた。

 

 その横に、ラディオはつく。

 

「ようこそ、世界を超えた客人よ……私は、ラ・クロワ。この塔の主だ」

「……!!?」

 

 クロムがその声を聞いて驚き、ラ・クロワもクロムを見つめたが……

 

「あなたは、いったい……」

 

 ソニアが、ラ・クロワに聞こうとした瞬間……塔全体に衝撃が轟いた。

 

「アドラメレク、塔内に侵入しマシた……」

「防衛モンスターを全てぶつけろ。少しでも時間を稼げ……」

「了解しマシた、戦力を一点に集中シマす……」

 

 この事態でも、ラ・クロワは冷静だった。

 

「そういうわけで、時間が惜しい。私の素性を、悠長に説明している余裕はない……まぁ、アンデッドモンスターとでも思うがいい。この世界、もはや命ある者は存在していない」

「どうして、そんな事に……一体、何があったんですか!?」

 

 ルカの問いに、ラ・クロワは説明を始めた。

 

「ヨハネス歴1456年、レミナ地点より世界の混沌化は始まった。次元の亀裂が世界を覆い、混沌が空間を侵食し──それから30年で、このザマだ。そしてあと1時間ももたず、この世界は混沌に消えるだろう」

「その原因は何だ? どうして世界の混沌化は始まった……?」

「俺が来て世界が変になっちまったのか?」

 

 アリスとヴィクトリーの質問に、ラ・クロワは首を振る。

 

「世界が混沌に染まっていく中……強者や高い知能を持った者がこの塔に集まった。いや……追い詰められたというべきか。皆必死の状況の打開を願い、そして(たお)れていった……ある者はアポトーシスに討たれ……ある者は、混沌に飲み込まれ……ある者は、後に続く者の為の犠牲となった」

 

 ラ・クロワが、一瞬だけヴィクトリーに目を向ける。だが、すぐに皆へ向いた。

 

「そんな苦闘の日々の中で……私や同志達は混沌に関する研究室を必死で進めた。そして判明したのは……この世界が、正しい歴史を辿っていないという事実だった」

「正しい、歴史……!?」

「……白兎やルカの父ちゃんが言ってたやつだな」

「歴史のどこかの時点で、パラドックスが発生したのだ。矛盾事象は空間を混沌化させ、世界そのものをカオス化する。そこまで解き明かした頃には……もはや、私一人しか残っていなかった」

「パラドックスがカオス化を生む……そして、世界を混沌に還す……」

 

 矛盾した事象と正しい世界線との齟齬(そご)で生じた摩擦……それがカオス化という訳だ。

 

「混沌とは、「無」でもある。両者は等しいものなのだ……」

 

 そこまで説明し終えた時、ラディオがラ・クロワを見た。

 

「アドラメレク、2階へと侵入……味方損耗率、50%を越えました……」

「予備も全てぶつけろ、可能な限り足止めだ……」

 

 塔の下から、戦闘音が聞こえる。たくさんの気が、禍々しい気につっかかって攻撃しているのだ。

 

「さて、以上がこの世界で起きた全てだ。まだ不明な点や、立証されていない部分も多いがな……」

「歴史のどこかでパラドックスが発生したから……それで、世界がこんなことに……」

 

 ルカは、ヴィクトリーと顔を見合わせる。

 

「や、やっぱ俺がここに転移しておかしくなっちまったんじゃねぇのか!? 信じてもらえるか分かんねぇけど、俺別の世界から来てさ……」

「それは無い。訳あってその線も研究したが、歴史の大筋に関わるような矛盾を意図して引き起こさない限りはカオス化には干渉しない」

 

 説明しようとするヴィクトリーを遮り、ラ・クロワは言う。

 

「ある男の例えを借りるならば……森を作る苗木の傍に人がタイムマシンでやって来て、苗を抜けばそこは荒野になるだけ……それがパラドックス。苗を抜かずに慎ましく暮らせば、本来通りに森が出来る。それが今のお前だろう」

 

 一本の苗木の例え話……それは、ヴィクトリーが滅びたイリアスヴィルでした話だ。

 

「……その話……」

「話を戻そうか。肝心のパラドックスだが、この世界由来の事象ではないようだ。別の並行世界で発生したパラドックス……それが、連鎖的にこの世界にも影響をもたらしたのだ」

「別の並行世界の影響だと……!? そんな事が起きるのなら、もしかして……」

 

 アリスがそう言うと、ラ・クロワはそこに向いた。

 

「察したか……ならば結論を言おう。お前達の世界も、近いうちに同じ道を辿る」

「私達の世界が……!?」

 

 ソニアは、絶句する。しかし、ラ・クロワの口からは更に衝撃的な言葉が出てくる……

 

「いいや、お前達の世界だけではない。全ての並行世界が、互いを巻き込みながら消滅していく。そして、全ての世界が混沌に飲まれ……残るのは、完全な「無」だけだ」

「まさか、そこまでの事が……」

 

 一行が、絶句する中……ラディオは、またラ・クロワを見た。

 

「アドラメレク、3階へと侵入……味方損耗率、90%以上……」

「反カオスフィールドを3階に集中、装置は使い潰して構わん」

 

 暴れ回っていた気の動きが止まった。拘束は成功したようだが、時間稼ぎにしかならない。

 

「さて、話していられる時間はもうない……渡すものがある。まずはこれだ」

 

 ラ・クロワが渡してきたのは、一冊のノートだった。

 

「それは、私と同志達が戦い抜いた成果。観測や研究の結果が事細かに記されてる……見る者が見れば、事前に何らかの対策を取り得るかも知れん。そのノートを……お前達の世界にいる私に渡せ」

「ちょっと失礼……」

 

 プロメスティンが手を伸ばし、ルカはノートを渡す。彼女に読ませれば、何か分かるだろうか……

 

「……ダメです。私にはさっぱり……今の私の知識では、歯が立ちそうにありません……」

 

 どうやら、書いてある内容が高度すぎてプロメスティンでもお手上げらしい。やはり、彼女の言う通りに元の世界のラ・クロワに渡すしか無いのだろうか。

 

「……ラディオ、例のものを頼む」

「はい、マスター……」

 

 ラディオはきゅるきゅると部屋の隅の棚に行き、何かを取り出す。そして、ヴィクトリーの所にそれを持ってきた。

 

「……それは!!!」

「はい……ここで戦った、『彼』の剣でござイマす……」

 

 それは、トランクスの剣と同じ製法で作られた模造品の剣……ヴィクトリーの剣だった。

 

「じゃあ、やっぱりその『彼』って……!!!」

 

 ルカが言うと、ラ・クロワは頷く。

 

「ああ……アイツは異世界を渡り、ここに辿り着き、滅びると分かっていながら最期まで協力してくれた。そして、いつか別の世界の自分が来るとも断言していた……『彼』の名前は、ヴィクトリー。正真正銘の、ヒーローだった男だ」

 

 やはり……別の世界のヴィクトリーが、ここに来たらしい。しかも、最期までこの世界でラ・クロワ達のために戦い……そして、強大な敵と相討ったのだ。

 

「この剣は、そんな『彼』が最期まで使っていたもノデす……貴方にしか、使えマセん……」

「ヴィクトリー、必要だろ?」

 

 ルカにも言われ、ヴィクトリーは頷く。そして、その剣を手に取った瞬間──

 

「──ッッッ!!!?」

 

 背中でも撃たれたかのような衝撃が全身に走り、頭の中に流れ込んでくる。そして、走馬灯のようなものが彼の視界と記憶を覆ったのだった。

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