もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース   作:ジョーカー:ゼノ

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ヒーローの誇り

 見えたのは、別の世界線の己の記憶。

 

 イリアスベルクでグランベリアを退け、その後も色々あったが……程なくして、天使が突如として降臨し、世界中で暴れ出した。蜻蛉返りしてイリアスヴィルに戻ってきた時には、もう手遅れで……その時の自分への怒りが、(スーパー)サイヤ人へのきっかけとなった。

 

 天使と戦いながら、滅んだ世界を放浪する毎日……心身共に荒んだ自分が最後に探索したのは、タルタロスだった。

 

 訳の分からない魔物やらを退け、開かずの扉を無理やりこじ開け、辿り着いたのは……そこも、やはり滅んだ世界。しかも、滅びようが前の世界よりも酷いと来た。

 

 その世界では、管理者の塔と呼ばれる所に皆が集まっていた。世界がこんな風になった理由を研究しながら、生き残りをかけた戦いを毎日してるそうだ。

 

 そこの長であるラ・クロワの研究が完遂すれば、タルタロスが何なのか……なぜあの世界が滅びたのか、それが分かる気がしたので自分も協力する事にしたのだった。

 

 

 そして、5年前。

 

 20年前に自分以外の人間が全滅し、そして去年に最後の魔物がアポトーシスとの戦いで力尽き、この塔には防衛用のモンスターとラ・クロワとラディオとヴィクトリーだけになってしまった。

 

「……とうとう、私達だけになってシマいました……」

「俺達だけじゃねぇ……アポトーシスどもがいる」

 

 剣の手入れをするヴィクトリーと、それを眺めるラディオ。

 

「ヴィクトリーは、変わらないノデスね……人間なのに、加齢が見られマセん……」

「ああ、サイヤ人は長いこと戦いに生きる種族だからな。老いねぇようになってんだ……それより、研究はまだ纏まりそうにねぇのか?」

「はい……マスターによれば、あと少しとノコとですが……」

 

 自分が学者筋なら研究にも協力できたのだが、生憎戦うしか能がないのだ。

 

 アポトーシスはどんどん増えてるし、たまに来るアドラメレクとやらは出現する度に強くなっている。次に出てくる時は、危ないかもしれない。なので、急いで研究を纏めて欲しい……なんて、言うつもりはない。

 

「ここまで付き合ったんだ。最後まで付き合ってやるさ……それにこの俺がダメでも、絶対に別の世界の俺がここに来て……おめぇ達の希望を受け継ぐ」

「……なぜ、断言出来るノデすか?」

「元タイムパトロールの俺の事だ、この世界を見逃す筈がねぇさ。まぁ……そうじゃなくても俺がここに来れたんだから、俺以外の奴も来れるかもよ? 例えば……身長がちょっと低くて、マント羽織った男の子の勇者とか、な」

 

 そう言うヴィクトリーの胸には……心折れて故郷に引きこもり、天使に殺されたかつての友の顔が浮かんでいた。

 

 もしもあの時心折れずに冒険を続けていたら──そう考えていた時だった。

 

 ここで、爆発のような音と地鳴りが響く。そして、凄まじい気がタルタロスの付近に現れた。

 

「……おい、ウソだろ……!!」

「最上位アポトーシス、アドラメレク出現……急いでマスターに報セマす」

 

 ラディオはそう言うと、頭の中でピピピと何か音を鳴らす。そして、ヴィクトリーに向き直した。

 

「マスターの返信を確認。シルク・ドゥ・クロワのメンバーを三体付かせて、迎撃を要請するとのこトデす」

「言われなくても……!!」

 

 ヴィクトリーは(スーパー)サイヤ人になり、剣をしまう。そして、急いで塔から飛び出したのだった。

 

 

 クイーンラミア、クイーンスキュラ、海賊女王ロザ……錚々たるメンバーのアンデッドと共に、ヴィクトリーはアドラメレクに挑んだが……長期戦の末に両腕を折られ、二本指から放たれた光に直撃してしまう。

 

 そこから、アドラメレクの圧倒に次ぐ圧倒。女王級のアンデッド三体が力を合わせて戦うも、歯が立たなかった。

 

 そうしてアドラメレクは、管理者の塔に目をつけたが……

 

「──!!!?」

 

 突如として、背後から剣が高速回転しながら飛んでくる。間一髪でそれをかわし、飛んできた方を見ると……倒したと思っていたヴィクトリーが、立っていた。

 

「ハァーッ……ハァーッ……!! まだ……まだ……だ……!!!」

 

 黒髪になってしまっており、折れた両腕をだらんと垂らし、固く閉ざした左眼から絶え間なく血が流れ続けている。そんな状態で一歩、また一歩と歩いてきていた。

 

 先程の剣は、口で咥えてから頭を振ってぶん投げたらしい。

 

「…………」

 

 そんな彼を見たアドラメレクは、動揺した様子で後ずさる。あんな風になっているのに未だ燃え尽きない闘志に、気圧されているのだ。

 

「まだ……終わっちゃいねぇぞ……!! この世界で戦ってきた者たちの想いを、踏み(にじ)らせてたまるかぁあぁあああああ!!!!」

 

 ヴィクトリーは、その状態で(スーパー)サイヤ人になる。今までよりも圧倒的な気が、天を衝くほどに噴き上がった。

 

「──ただちに消去する」

 

 アドラメレクも気を解放し、ヴィクトリーに向く。

 

「…………」

 

 啖呵をきったはいいものの……仲間は既に倒れ、両腕は使えないし、片目も潰れてる。どうあがいても、このままでは負けてしまう。

 

 ならば……もう、なりふり構っていられない。使うしかない──

 

「──ベジータさん、あなたが魔人ブウを倒そうとして使った技……お借りします……!!!」

 

 残った足で地面に踏ん張り、アドラメレクの腹に全力の頭突きをする。弾丸のように放たれたそれは彼女の腹に突き刺さり、その背中が盛り上がる程の威力だった。

 

 そのまま、押し出してなるべく塔から距離を取る。

 

「消滅せよ」

 

 だが彼女は顔色ひとつ変えることもせずに、翼のようになっている金色の曲がり棘でヴィクトリーを切り裂いた。その勢いで怯んだ彼の腹を、パンチで打ち抜く。

 

「っ、だぁあぁあああ────っ!!!」

 

 だがヴィクトリーは切り裂かれた所から血を噴き吐血しながらアドラメレクの腹に全力の蹴りを放ち、更に蹴っ飛ばす。

 

 アドラメレクは、ちょうどタルタロスの真上で体勢を整えて止まった。

 

「ああぁあああああ────っ!!!」

「消滅せよ……」

 

 ヴィクトリーが、そこに突っ込んでくる。アドラメレクはそれに手を向け、混沌の力を凝縮して撃ち放った。

 

 だが、それはヴィクトリーの姿をすりぬける。

 

「……!?」

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!!」

 

 ヴィクトリーは瞬間移動により、アドラメレクの背後に回る。そして、折れた腕をロープのように見立てて彼女の首を絞め、手を噛んでクラッチする。そして足に足を絡ませてガッチリとホールドした。

 

「っ……っ……!!!」

 

 アドラメレクは動揺の様子を見せ、身をよじりながらあの金の曲がり棘でヴィクトリーを切り裂く。全身をズタズタにされながらも、ヴィクトリーは決して離さなかった。

 

 その体から、気が溢れ出す。限界以上の気が、ブーンという音と共に曲線を描くように熱量を上げていく。彼の気でこの世界全体が震え、尚も高まり──

 

「トランクスさん、俺……ヒーローになれたかな」

 

 ──次の瞬間、凄まじい大爆発がヴィクトリーを中心に巻き起こり、飲み込むもの全てを融かす壮絶な光がドーム状に広がった。

 

 その壮絶な光の彼方に、ヴィクトリーとアドラメレクは融け消えたのだった……

 

 

 そんな記憶が、凝縮された時と共に今のヴィクトリーの頭に流れ込んできたのだった。

 

 ヴィクトリーはルカ達に見守られながら、剣を見る。刃はよく手入れされており、新品同様の様相を呈していた。

 

「もう一人の俺は……俺達を信じて、アドラメレクと相討った。最後まで、戦ったんだ。だったら、俺も戦うさ」

 

 刃に映る己の顔に、そう言うヴィクトリー。

 

 戦う意思の表現にもなっている、剣。最後まで使ったというそれは、彼の誇りであり……ヒーローとして戦い抜く意思の表れ。ならば、受け継ぐのは自分しか居ないだろう。

 

 その持ち手を握ってから、目を瞑って深呼吸する。

 

「私は、結局最期に立ち会えなかった。だが、彼のおかげで研究は纏まり……そのノートが、完成したのだ。彼は、本当のヒーローだ」

「…………」

 

 ルカは、受け取ったノートを見た後にヴィクトリーの方を見る。

 

「……この剣、確かに貰い受けたぞ」

 

 ヴィクトリーはそう言い、背中の鞘に剣を納めたのだった。

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