もんむす・くえすと!ぱらどっくす×ゼノバース 作:ジョーカー:ゼノ
「そのノートを……私達の戦いを無駄にするな。希望は、お前達に託したぞ……」
「た、託すって……おめぇは、どうすんだ?」
「……」
彼女は歩き出し、ルカ達の間をすり抜ける。そして、階段方面へ向いた。
「……最上位アポトーシスが、すぐ下の階まで来ている。私が、脱出の時間を稼ごう。この部屋の奥にある魔法陣で、1階にまで降りられる。後は、そのままこの世界を脱出しろ」
「そんな……この世界が滅びるなら、ラ・クロワさんも逃げないと!」
「そうだ! 今ならまだ間に合う! みすみす死ぬことなんてねぇんだぞ!」
ルカ達の声を聞くが、ラ・クロワは
「希望は……すでに託した。お前達はそれを、お前の世界の私に届けろ」
「ラ・クロワさんを置いていくなんて……! 僕達も一緒に、最上位アポトーシスとやらと戦う!」
「……自分の世界を、この世界のようにしたいのか? お前達がここで消えれば、全ては消え去る……早く行け……そして、お前の世界を守れ」
「……」
立ち尽くすルカの手を、アリスが引っ張る。
「ルカ、義務を果たすぞ……こいつはこいつの、我々は我々のな……」
「…………」
ルカは、少し迷ってから奥へと行く。アリス達もそれに続くが……クロムが残った。
「……何をしている?」
「お、お姉ちゃん……? お姉ちゃんだよね……?」
「…………」
3秒ほど、沈黙が続く。しかし、先に破ったのはラ・クロワだった。
「……違う。私は、お前の姉とは別人だ。私にも、お前に似た妹はいたが……数十年前に、失ってしまった。そして私も、お前の姉と似ているが別人だ……私達はそれぞれ別世界の住人、血の繋がりなどない」
「で、でも……!」
「お前の姉は、おそらく道を誤っているはずだ。救ってやれるのは、お前しかいない……」
「えっ……?」
「行け、クロム。お前は、お前の姉を救ってやれ……」
「…………」
クロムは泣き出しそうな顔をするが……その顔のまま、アリス達に続くのだった。
全員が奥の方へ行き、魔法陣に目をつけた時だった……
「最後にもう一つ、お前達に頼み事がある……ラディオの事だ」
不意に、ラ・クロワはそう言ってきた。彼女の言葉に、ルカ達は止まる。
「……」
「こいつは、私の恩ある同志が作った初期型だ。性能はそう高くないが……ここで壊すには忍びない。こいつを、連れて行ってはもらえないか?」
「もちろんです」
ルカは、真っ先にそう答えた。他のメンバーも頷き、文句はないようだ。
「そうか、感謝する……ラディオ、マスター権限の移譲だ」
「了解しマシた……ルカを、新たなマスターに設定しマシた……」
ラディオはラ・クロワに頭を下げる。
「……
「はい……今まで、ありがとうござイマした」
そう話してから、ラディオはきゅるきゅるとルカの所に来た。
「よろしくお願いしマス、ますター……」
一行が、ラディオをメンバーに加える。それを見た彼女は頷き、ゆっくりと階段方面を向き直した。
「……さぁ、それでは行け」
「ありがとうございました、ラ・クロワさん……!」
「感謝する、ラ・クロワ。こちらの事は、我々に任せるがいい」
「このノート……いや、この世界の人達が繋いだ希望! 確かに預かりました!」
「この剣も、確かに受け取った!! ぜってぇ無駄にはしねぇからな!!」
口々にラ・クロワに礼を言うルカ達。そして、最後にクロムが前に出てきた。
「お、お姉ちゃん……」
クロムは今にも泣き出しそうな顔で表情に影を落とすが……涙をグッとこらえ、真っ直ぐにラ・クロワを見た。
「儂は栄光あるアルテイスト家の末娘、クロム! 全て儂に任せるのじゃ!」
真剣だが、いつもの得意気な顔でそう言う。それに、ラ・クロワも静かに頷いた。
そのやり取りを最後にルカ達は魔法陣を踏み、転送された。
一人、ラ・クロワが残される。
「頼むぞ……世界を、救え……」
そう言いながら、息を吐く。しばらくの沈黙の後、ペストマスクの下で静かに笑みを浮かべた。
「つくづく、私には過ぎた花道だな。まさか最後の最後に、クロムの姿を見られるとは……」
そう言ってから、腕を上げて指を鳴らす。すると、並んでいた棺桶から次々にアンデッドモンスターが立ち上がった。
「……シルク・ドゥ・クロワ! さあ、最後のステージだ!」
アンデッドモンスター達はラ・クロワの後ろに並び……ついに、階段から最上位アポトーシスである『アドラメレク』が来たのだった。
「第二種断界接触──ただちに消去する」
「観客もいない、最後の舞台……だが、存分に舞わせてもらおう!」
※
塔の1階……通路は既に、あの黒い裂け目まみれだった。
「ここまで空間が侵食されて……! これも、あのアドラメレクとやらの力だというのか!」
アリスは、走りながらそう言う。その前で、ヴィクトリーも異変に気付いた。
「……!」
とんでもない気と、ラ・クロワとシルク・ドゥ・クロワのメンバーの気がぶつかりあってる。かなり激しい戦闘が、繰り広げられているようだ。
「前マスターとアドラメレクの戦闘が開始されマシた……」
「急いで脱出しよう! ラ・クロワさんの願い、無駄にしちゃいけない!」
「ああ!」
ルカの言葉で、走る足が速くなる。ヴィクトリーは、気の察知で戦況を見ているようだ。
「ヴィクトリー……」
「でけぇ気が、乱れ減ってる……お互い、持ちそうにない……!」
そうこう走っている内に、とうとうお互いの気が消えた……それと同時に、ラディオも上を見る。
「前マスターの反応、途絶えマシた……アドラメレクも、消滅しマシた……」
やはり、相討ち。シルク・ドゥ・クロワのメンバーも誰一人残らず破壊されている。
「……行こう!」
「ああ……!」
「儂は、泣かないのじゃ……!」
少し間を置いたルカ達は、再び走り出す。
そして、塔の出口に差し掛かった時だった。
「……!!」
「接近反応があリマす。これは……」
ヴィクトリーとラディオの察知が、接近してくる気を捉える。凄まじい気が、だんだんここに近づき……それが、ルカ達の目の前に着地してきた。
「……おめぇは……!!!」
記憶で見た、最悪の敵……この世界で、ヴィクトリーだけでなくラ・クロワまで倒した最上位アポトーシス──アドラメレクだった。
「第二種断界接触──ただちに消去する」
無表情のまま彼女はそう告げ、ルカ達に歩み寄る。
「そんな……ラ・クロワさんが命を賭けてまで戦ったのに……」
ソニアが、後ずさりしながら唾を飲む。しかし、ルカ達は怯えなかった。
「気はそんなに残ってねぇみてぇだがな……そうだろ、ラディオ?」
「はい……残量エネルギーは10%程度です。先の戦いで、ダメージを負ってイマす……」
「10%程度の力しか残っていないというなら……ここで我々が討ち倒してくれるわ!」
アリスがそう言いながら、レイピアを抜いた途端……アドラメレクは嗤い、気を解放した。その強大な力が、周囲をカオス化する。凄まじい気がビリビリと肌を痺れさせてきた。
「消去、開始──」
「ぐっ、これで10%の力なんて……でも、僕達は絶対に負けられない……!!」
僕達は、この世界の希望を託された。この世界の人達が、命をかけて残した希望を──
「この希望を、僕達の世界に繋いでいくために……絶対に負けるわけにはいかないんだぁあああ──っ!!!」
ルカは気を全開放し、構える。
「余達も、戦うぞ!」
「ラ・クロワさんのためにも、負けるわけにはいかないんだから……!」
「きゅっきゅーっ!」
「絶対に勝ちましょう……!!」
「ヒルデも、全力で戦うよ……!」
「儂も、お姉ちゃ……ラ・クロワの為に、全力で戦うのじゃ!」
「私も戦いマす……あの人達も前マスターも戦い抜いたノデすから、今度は私が戦う番でス」
相手が相手なだけに、総力戦。仲間達も、一緒に戦ってくれるようだ。
「…………」
ヴィクトリーは、アドラメレクから放たれている気に黒髪を靡かせながら目を瞑る。
敵は、前の自分がシルク・ドゥ・クロワのメンバーと協力してようやく相討ちに持ち込めた相手だ。だが、今は状況が違う。
ラ・クロワ達が戦ってくれたおかげで手負いで、仲間も多い。これで負けたら……カッコ悪くて、前の自分に顔を合わせられない。
「負ける訳にはいかねぇな……はぁあっ!!!」
ヴィクトリーは
こうして今、命運をかけた戦いが幕を開けるのだった。